押し出した波動は、特大の光線になって、ギガントマキアが振りかぶっていた腕の根元、左肩に突き刺さった。
だけど、ギガントマキアの外皮は凄まじい強度で、腕の動きで押し返されてしまいそうになってしまう。
ギガントマキアは、光線の直撃を食らい続けながら、腕を私の方に振り下ろし始めた。
「小蝿がぁあああぁあああああ!!」
ギガントマキアの腕が、迫ってくる。
ここで私が避けるのは簡単だ。だけど、そんなことをしたら、ミルコさんと通形さんは避けられるかもしれないけど、爆豪くんとベストジーニストは直撃する。
ベストジーニストがやられれば、超常解放戦線のメンバーも動けるようになるし、ギガントマキアももっと動きやすくなってしまう。
押し出す波動の量を増やして、どうにか腕を弾けないか試してみるけどギガントマキアの装甲が厚すぎる。
少しずつ外皮を抉ってきてはいるけど、腕を弾くところまではいけなかった。
振り下ろされてくる腕をどうにか押し返そうと、湧き上がってくる波動の光線を注ぎ込んでいく。
それでも、ギガントマキアの腕は止まらなくて、もう、目の前に―――
「てめぇ、さっき顔を覆う装甲付けてやがったな。わざわざ守るってことは、外皮は硬くても、目はそうじゃねぇってことか」
手が振り下ろされる瞬間、ミルコさんが、大きく跳び上がった。
その跳躍は、私の波動の光線も、ギガントマキアの腕もすり抜けて、巨人の顔の目の前まで、跳び上がっていた。
それを見たせいか、ギガントマキアは腕を止めた。
……止めたというよりも、害を為す可能性が高いミルコさんを狙うために、照準を変えただけだけど。
「おせぇよ、ノロマが」
ギガントマキアの顎にある顔を覆う装甲が上がり切る前に、ミルコさんはギガントマキアの顔まで、距離を詰めきっていた。
「
ミルコさんの強力な蹴りの連打が、ギガントマキアの左目に叩き込まれた。
コンクリートすらも砕くミルコさんの蹴りの連打を受けたギガントマキアの目は、潰れてしまったのか、周囲に何かをまき散らしていた。
だけど、ギガントマキアは痛覚を感じていないのか、全く痛がる様子もない。
これは、私が放ち続けている波動の光線に対してもそうだ。
多分、痛みを感じていない。痛覚がない。
そのせいか、ギガントマキアは一切ひるまずに、ミルコさんに対して、手を振り上げて払いのけた。
「ミルコさんっ!!?」
重力に従って落下していたミルコさんの身体が、宙を舞った。
そして、ミルコさんを弾き飛ばしたギガントマキアは、また左腕を振り上げて、波動を放出し続ける私とベストジーニストに向けて、振り下ろそうとし始めていた。
外皮は少しずつ削れてきてるけど、まだ足りない。
守らないとって思いがあると同時に、荼毘やこいつらに対する怒りが、恨みが、悲しみが、湧き上がり続けて、自分の感情は制御できてないままだ。
波動が膨れ上がり続けているのも分かる。
だけど、足りない。
今ベストジーニストがやられたら、こいつらは、完全にフリーになる。
それだけはダメだ。
ありったけの波動を、こいつにぶつけないと……
もっと、もっと波動をぶつけないと、ダメだ。
これ以上、誰も傷つけられないためにも、私が……私がっ、やらないとダメだっ!!
私自身はどうなってもいい、それで、お姉ちゃんを、ミルコさんを守れるなら、私がっ!!!
「―――約束、破ろうとしてるでしょ」
「え……?」
全身から波動を絞り出してでもギガントマキアをどうにかしようとした瞬間、後ろから、声を掛けられた。
「
次の瞬間、お姉ちゃんが両手で練り上げていた莫大な量の波動が、私が放出している波動の光線の着弾点と同じところに降り注いだ。
「おねえ、ちゃん……?大丈夫なの……?」
「妹が身体張ってるの見たら、私も頑張るしかないでしょ!瑠璃ちゃんもいるし、通形もいる!平気!不思議!」
お姉ちゃんは、広範囲の火傷を負ったままだ。
意識だって朦朧としているし、全身激痛に襲われてるのに、それでも、来てくれた。
お姉ちゃんの波動も合わさって青色と黄色の光線が、ギガントマキアが振り上げた左腕に突きささった。
ギガントマキアの外皮は、抉れてきている。
大きな傷さえ作れば、そこが致命的な弱点になる。
それさえ作れば……
お姉ちゃんの砲撃は、長くは持たない。
そんなのは分かってる。
こんな状態で無理してここに来てくれてるんだから、活力を多大に消費する極大のビームを放出し続けるのは、それこそ命に関わる。
ここで私が失敗したら……ミルコさんとお姉ちゃんに協力してもらったのに、ギガントマキアに力負けしたら、お姉ちゃんも殺されてしまう。
それを認識した瞬間に、私の波動の量は、さらに爆発的に増え始めていた。
自分でもどれくらいになっているのか分からないほどの波動は、私の周囲を渦巻いて、嵐のように暴れまわっていた。
「もう、お姉ちゃんも、ミルコさんも、誰も、誰もっ!!傷つけさせないっ!!私のっ、波動の力でっ!!!」
溢れ出す波動をありったけ詰め込んだ波動の光線は、ギガントマキアの上半身程の大きさになって、巨人の左上半身と振り上げていた左腕に降り注いだ。
ギガントマキアの外皮は、筋肉は、厚くて、硬かった。
私の波動単体だったら、外皮を傷つけることすら出来たか、分からないくらい。
だけど、波動を照射し続けて、お姉ちゃんの波動の力も借りて、外皮を抉ることはできていた。
その外皮の抉れが、ギガントマキアにとっては致命的な傷になっていた。
抉れていた部分から、身体の中の異様に硬い筋肉に楔を打つように、莫大な波動の光線が貫いていく。
少しずつ、少しずつ傷口が広がっていって、波動は、傷があった場所……ギガントマキアの腕の付け根である、肩を貫通した。
向こう側まで突き抜けたその光線は、凄まじい勢いで傷を広げていって、振り上げられたギガントマキアの腕を、吹き飛ばしていた。
「あ……?」
ギガントマキアの呆然としたような声を認識したところで、波動の放出を止めた。
それと同時に、凄まじい疲労感が襲ってくる。
でも、さっきほどじゃないとはいっても波動は湧いてくるから、まだ、戦うことはできる。
「マキアぁ!!?」
「マジかよ……!?」
「ハッ、こりゃいい。おい!!ジーニスト!!」
「分かっている!!」
宙に舞っていたギガントマキアの腕が、凄まじい轟音とともに地面に落ちた。
ミルコさんが大声でベストジーニストに指示を出しているのが聞こえる。
近くにクラストがいるから、ミルコさんを受け止めたのはクラストみたいだった。
ベストジーニストがミルコさんの声を聞いて、さらにワイヤーの締め付けを強くし始めているのが見えるけど、ギガントマキアはまだ立っている。
自分の左腕が千切れたことに呆然としながら、私に怒りの感情を向けて、右腕を振りかぶっていた。
私も、追撃を仕掛けないと。
そう思って、もう荼毘と戦っていた時と同じくらいの量に戻ってしまった波動を圧縮しながら、ギガントマキアの方に跳ぼうとする。
次の瞬間、ギガントマキアは、全身から力が抜けたように崩れ落ちた。
「~~~~~!?力が……!」
「―――!!!山荘からの連絡にあった……効果は無かったって報告だった……!!麻酔が効いてる!!!」
状況の理解は追いつかないけど、通形さんのその声で、ギガントマキアの無力化に成功したことが分かった。
動けなくなったギガントマキアに対して、ベストジーニストが再度ワイヤーでの拘束を施していった。
その状況になって、ようやく気が付いた。
ベストジーニストの周りの、脳無たち。
それに対抗するように、通形さん、爆豪くん、轟くん、飯田くんが、戦っている。
お姉ちゃんとミルコさん、クラストも、脳無たちに応戦しようと動き出していた。
超常解放戦線は、脳無たち以外は、スピナーとMr.コンプレス、荼毘はワイヤーで拘束されている。
本当だったら、荼毘にもっと怒りと恨みをぶつけたいところだけど、今はそれどころじゃないし、なによりも、お姉ちゃんの近くで、お姉ちゃんを守りたかった。
だから、私も応戦しないと……
そう思って、ミルコさんたちが脳無と戦う場所まで、跳びあがった。
そのタイミングで、ベストジーニストを囲んで守るように戦っていたメンバーの中の1人である、爆豪くんに、ベストジーニストが声をかけた。
「
「それは仮だ。あんたに聞かせようと思ってた!今日から俺はぁ……"大・爆・殺・神ダイナマイト"だ!!」
せ、成長してない……
爆豪くんが職場体験でお世話になった師匠的ポジションのベストジーニストに、新しいヒーロー名を叫んでいた。
それはいいんだけど、なんで殺の字を入れたままなんだ。
仮だったのは思考から分かってはいたけど、理解したから仮であっても"バクゴー"にしたんじゃなかったのか。
お姉ちゃんにも『物騒!!』って思われるってよっぽどだ。
言われたベストジーニストすらも『小二!!』とか考えてるくらいだし。
ミルコさんにすら『なげぇ』って素で思われてる上に、なんだったらヴィランにすら『ダセェ』とか『ダッセ』とか思われてる。
いい反応を返そうとしているのは通形さんくらいだ。
「良いヒーロー名だね!ユーモアがある!」
「欠片もねえんだが!!?」
通形さんがユーモアがあるとか喜んでるのは、ナイトアイの指導の賜物なんだろう。
実際今もそんな感じのことを言ってるし。"元気とユーモアのない社会に明るい未来はやってこない"っていうのがモットーらしい。
通形さんらしいし、いいモットーだと思う。
爆豪くんも怒るならもう少しまともなヒーロー名を考えたらいいのにと思ってしまう。
脳無に波動弾を叩き込みながら、ちょっと肩の力が抜けてしまいそうになった。
だけど、ここで気を抜くことなんてできない。
少しずつ湧き出す量が減ってきている波動を節約しつつではあるけど、波動弾とクラストの盾で怯んだ脳無の頭部に、いつもの数倍の威力の波動蹴を叩き込んだ。
グシャっと嫌な感触とともに、脳無の頭がつぶれる。
ミルコさんも同じ感じで脳無の頭部を潰していて、集まってきた脳無の数も減ってきていた。