波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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対話と……

数時間後、目を覚ましたら少しだけすっきりした気がした。

もちろん、周囲の状況は全然変わってないから、この吐き気は完全になくなる気はしないけど、それでも、お姉ちゃんと一緒にぐっすり眠れたのがよかったのかもしれない。

しばらくお姉ちゃんと話し込んで、悩みとか、救助をしててつらかったこととか、いろいろと相談に乗ってもらった。

お姉ちゃんは、私は悪魔なんかじゃないって、必要なことをしただけだって、言ってくれた。

ヒーローとして、最良の決断をし続けただけだって、言ってくれた。

その言葉に、少しだけ報われた気がした。

 

その後もお姉ちゃんと話していたら、爆豪くんが大暴れしているのを感じた。

まだ緑谷くんの目が覚めないせいで暴れているようだった。

『死んだら殺す』とかいう意味不明な思考をしてて、ただ困惑することしかできない。

ただ、緑谷くんは見た目上は寝ているはずなのに、思考している。

『歴代の継承者たち……また夢の中……!』とか考えてるし、多分また継承者たちと話してるんだと思う。

すぐそばで緑谷くんに触れているオールマイトも何かを感じ取ってるみたいだし、間違いないかな。

 

他にも、ミルコさん、ホークス、ベストジーニストの3人が、エンデヴァーから何か話を聞いている。

まあこっちはいい。

轟くんとか、お姉さんとか、轟一家を含めて事情を説明してる感じだし。

この後OFAのことを聞かれるんだろうなとは思うけど、そうなるとしたら問題はオールマイトの方か。

お姉ちゃんの無事も確認できたし、添い寝してもらったり、話をしたりして、物足りなさはまだあるけど、ある程度落ち着きはした。

また後で戻ってくるとして、皆の方を1回覗きに行こう。

そう思ってお姉ちゃんに声を掛けたら、お姉ちゃんも快く送り出してくれた。

 

 

 

「デクてめゴラ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!」

 

緑谷くんの病室の近くに、爆豪くんの怒号が木霊していた。

 

「何で俺が起きててめーが寝とんだぁ!!」

 

「叫ぶな!!」

 

「こいつが起きると悲しむ暇もねぇ!」

 

「すまない梅雨ちゃんくん」

 

叫ぶ爆豪くんは、梅雨ちゃんの舌で雁字搦めにされて、砂藤くんと峰田くんに連れていかれた。

このまま病室に連行するつもりみたいだし、あれはもう放置でいいな。

爆豪くんは普通に重傷だし、動くべきじゃない。

看護師さんに「やっとどっか行った……!」とか言われてるし、やっぱり普通に迷惑行為だよね、あれ。

入院患者は今回の件に関わったヒーローだけじゃないわけだし。

というか、今回の件のヒーローしかいなかったとしても迷惑なわけだけど。

まあそれはそれとして、お茶子ちゃんたちに声をかけてしまおう。

 

「お茶子ちゃん……飯田くん……」

 

「波動くん!救助活動に当たっていたと聞いていたが、大丈夫だったか!?それに、あの時のことも……!」

 

「ん……それは……大丈夫とは言い難かったけど……大丈夫になった……と思いたい……あの時のは……それどころじゃなくなったのと……お姉ちゃんが……無事だったから……多少は……」

 

飯田くんが大袈裟な動作で聞いてくるのに、素直に答える。

実際万全とはいいがたいし、言われた罵倒は楔みたいに突き刺さってるし、周囲の思考と感情のせいで体調は最悪なままだ。

お姉ちゃんとの添い寝で気が紛れただけでしかないし。

 

「瑠璃ちゃん、さっきねじれ先輩のところで一緒に寝とったもんね。元気になったならよかったよ」

 

「ん……心配かけたみたいだし……ごめんね……?」

 

「それはいいんだけど……私こそごめんね?勝手にねじれ先輩に言っちゃって……ねじれ先輩の反応からして、言ってないんだろうなぁとは思ったんだけど、心配で……瑠璃ちゃんのケアならねじれ先輩が一番や思たし」

 

お姉ちゃんに言ったのは、まあいい。

特に文句を言うつもりもない。

だけど、そんなに分かりやすかっただろうか。

お茶子ちゃんたちにテレパスで指示は出したりしたけど、直接は会ってなかったはずなのに。

 

「……そんなに……分かりやすかった……?」

 

「……うん。瑠璃ちゃんの指示の声、だんだん冷たい感じに、変わってきてたから……私がもっと力になれれば良かったんだけど……」

 

お茶子ちゃんが、少し顔を歪めながらそんなことを言ってきた。

自責の念に駆られてる感じみたいだけど、そんなの全然気にしなくていいのに……

私がある程度正気を保っていられたのは、必死で頑張っているお茶子ちゃんや梅雨ちゃんの思考と、ミルコさんの私を心配する思考が読めてたからだったし。

 

「そんなことない……正直、気が狂うかと思ったけど……お茶子ちゃんと梅雨ちゃんが頑張ってる思考が……読めたから……私も頑張れた……」

 

「そう、なの……?」

 

「ん……だから、そんなに気にしないで……」

 

不思議そうに聞き返してくるお茶子ちゃんに肯定の返事を返す。

お茶子ちゃんは少しだけ照れ臭そうにしながら頬を搔いていた。

 

そんな話をしていたら、響香ちゃんがジャケットのポケットに手を入れながら歩いてきた。

 

「いーんちょ!常闇も上鳴ももう退院できるってさ」

 

「本当か?それは良かった」

 

響香ちゃんの報告に、飯田くんが安堵の溜息を吐く。

そんな様子をよそに、響香ちゃんは扉が閉められた緑谷くんの病室を気にしていた。

 

「……身体は無事なんだよね?」

 

「そう聞いてるけど……不安だ……」

 

お茶子ちゃんも、緑谷くんにするべき治療はもう終えていて大丈夫だってことは聞いているみたいだけど、心配は拭えないみたいだった。

まぁ、OFAに触れないことなら教えてもいいよね。

 

「大丈夫……緑谷くん……今は思考が読めるから……眠りは浅い……多分……近いうちに目が覚めると思うよ……」

 

「本当!?」

 

「ん……私、嘘は嫌い……」

 

「波動がそう言ってくれるなら、確かに安心かな。波動がはっきりと読心できてるってことは、少なくとも頭に異常があって目が覚めないとかじゃないもんね」

 

「ん……そういう障害があると……意味のある思考はほぼ読めないから……」

 

これは、あの救助の時に知ったことだった。

今まで病院の中で思考が読めない人とかは気にしたりしてなかったから、気付かなかった。

だけど、あの救助の中で、頭に瓦礫が当たった人とか、明らかに脳に障害を負った人とかは、意識はあるはずなのに思考は読めなかった。

まあ障害の程度とか、脳へのダメージの程度による部分も大きかったけど。

緑谷くんはOFAのせいで目が覚めない感じだからちょっと違うけど、それでも間違ったことは言ってない。

お茶子ちゃんもちょっと安心したようで、少しだけ笑顔が戻っていた。

 

 

 

そんな会話をしていると、連れていかれる爆豪くんの横を通りながら、ミルコさんとホークス、ベストジーニストがやってきた。

用件はもう分かり切ってる。

それなら、あとは話すかはオールマイト次第だ。

部屋のすぐ近くまで来たところで、ホークスがスマホを操作し始めた。

火傷で喉がやられていて、電子音声で話すしかない感じみたいだ。

 

『緑谷出久くんと話したいんだけど』

 

「今はオールマイトが2人きりにしてくれと―――」

 

『……オールマイトが……』

 

ホークスもベストジーニストも、もうオールマイトが関係している案件だっていうことに気が付いている。

このまま入っていくな、これは。

あとは、ミルコさんは、私が事情を把握しているであろうことにも気が付いている。

だけど、私が自発的に言わないなら、私から聞くべき話じゃないと思って流している感じみたいだった。

他に確認できる人間がいなければ話は別だろうけど、今は何かを知っていそうなオールマイトがいる。

無理に聞き出そうとすることはなさそうな感じだった。

 

今、オールマイトは、緑谷くんが歴代継承者と話している内容を感じ取っている。

だけど、もう重要な話自体はほぼ終わってると思う。

歴代継承者との対話、OFAの真実、オールマイトの師匠である志村さんの葛藤……そして、緑谷くんの、死柄木を、志村転狐を救けたいという、決意を。

そんなタイミングで、ホークスは病室をノックした。

ノックを受けて、オールマイトはすぐに病室から出てきた。

 

『初めまして、オールマイトさん。俺は速過ぎる男なんて呼ばれてまして、諸々すっ飛ばして伺いたいことが……って、緑谷くんやばい感じスか』

 

「いや!大丈夫。きっともうじき起きる。それより何だい、ホークスくん」

 

オールマイトが聞き返したタイミングで、ホークスは少し離れた所まで連れて行ってオールマイトに用件を伝えた。

その裏で、お茶子ちゃん、響香ちゃん、飯田くんの3人は、緑谷くんの病室に入っていく。

 

そこからはホークスが現状の世間のOFAの認識を、オールマイトに説明していった。

辞職したヒーローからの情報漏洩、それが世間でジワジワと広がってしまっている現状、エンデヴァーから伝えられた緑谷くんが死柄木に狙われていたという事実。

そこまで伝えられたところで、オールマイトももう隠しておく段階ではなくなったという認識になったようだった。

オールマイトが、場所を変えてすべてを話す決意をしていた。

 

それなら、私の出番だろう。

この病院から出て話すことは、マスコミのせいで難しい。

なら、どこかの個室で話すしかない。

だけど、病院の個室のセキュリティなんてたかが知れてる。

今の状況だと、その辺の一般人に話を聞かれるだけでも致命的だ。

 

『ミルコさん、オールマイト、ホークス、ベストジーニスト……私が監視し続けます……私の感知範囲内で話してください……もしも誰かが近づこうとしたり……盗み聞きをしようとするなら……すぐに伝えます……皆さんは……盗聴器などの機械にだけ……注意してもらえれば……』

 

『助かるよ、波動少女。辛い状況だろうに、本当にすまない』

 

ホークスももう予想がついていたのか、特に何も思考を返してくることはなかった。

オールマイトに連れられて、3人は空き部屋を目指して移動していった。

 

 

 

4人の会話と、周囲の状況を読み取りながら、私は、1つの事実を、感知してしまった。

今、三奈ちゃんたちが、上鳴くんや常闇くん、爆豪くんを順番にお見舞いしてたんだけど、その中で、ミッドナイト先生が殉職したっていう思考が、読めてしまった。

 

「ミッドナイト先生……殉職……したの……?」

 

思わず、緑谷くんの心配をしているお茶子ちゃんたちに問いかけてしまうと、3人の表情が一気に暗くなった。

間違いなかったようだった。

間違いだったと思いたかった。

セクシーポーズをしたりして、ちょっと困ったところはあったけど、入学してすぐの頃から相談に乗ってくれたりした、優しい先生だった。

それなのに……なんで……

まだ、先生に教えてもらいたいこともあったのに……

まだ、エリちゃんの七五三だってやってないのに……

エリちゃんが食べられる、鯛を使ったお祝い料理のレシピ……もう、調べてあったのに……

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