波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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薄暗い部屋で

部屋に戻って、真っ暗な部屋でベッドに飛び込む。

涙はいくら止めようと思っても、全然止まらなかった。

 

自分が恨まれることをしていた自覚はあった。

だけど、その場で最善の選択をしているつもりだった。

私が分かる情報で、より多くを助けるためにって、頑張っていたつもりだった。

夢の中まで見捨てた死体の山が出てきたりもしたけど、それでも、私は間違ってなかったって、多くの人を助けることが出来たんだって言い聞かせて、なんとか耐えていた。

それなのに、ここまで言われるなんて、思ってなかった。

確かに私は医者じゃないし、私の診断が確実に合っていたかなんて分からない。

それでも、私は私なりに、ちゃんと客観的な情報を基にして判断をしていたつもりだった。

そうじゃないと、罪悪感で押し潰されそうだったから。

ミルコさんも、私のことを責めるような思考はしてなかった。

むしろ、労って、私は間違ってないって言ってくれてたから、それで、大丈夫なんだって、自分に言い聞かせてたのに……

 

涙を流しながら横になっていても、自分の感情が制御できなくて、眠ることなんて出来そうにもなくて、現実逃避をするように皆や周囲の波動を見続けていた。

あの後、会見はベストジーニストと記者がいくつかやり取りをしてから雄英とかのヒーロー科の高校を避難所にする話を切り出したらしい。

実際、今も着々と生徒の家族が雄英に入ってきている。

一応その人たちは部外者だから、これ以上状況が悪化して欲しくないし、特に依頼とかはされてないけど変な思考の人が混ざっていないかを気にかけておく。

ここにトガヒミコとかが紛れ込んでいたら、洒落にならない。

対策として隔離してから入れるみたいだけど、万が一トガの個性がさらに成長した場合にはセキュリティは突破されてしまうかもしれないし。

今のところ、生徒の親にはおかしな人はいない。

青山くんの両親がAFOにつながってはいるけど、それだけだ。

タルタロスを含めた6つの刑務所が破られて既に数日が経っている。

AFOも脱獄しているから、つながりがあるものにコンタクトがあってもなんら不思議はなかった。

ただ、青山くんの両親だけはスルーだ。

その2人だけは、こっちの手札になる可能性があるし、先生たちもそれを承知の上で入れていた。

 

あとは、会見では当然のようにOFAのことも聞かれていたみたいだけど、エンデヴァーは「分からない」と答えるだけだったようだ。

ここまで、正直にすべてを話したエンデヴァーのその言葉を疑う者は、会見場には存在しなかったらしくて、それ以上の追及はなかったみたいだった。

奇しくも、自身のことを曝け出すことで、緑谷くんを世間から守ってくれたような状況になっていた。

最後にはエンデヴァーが、被害の一切の責任は死柄木を止められなかった自分にあって、私を含めた他のヒーローを責めずに、非難も不安も自分に向けて欲しいって感じの啖呵を切って、会見は終わったようだった。

 

私が現実逃避をしていたら、お姉ちゃんが凄く憤慨してこっちに向かってきていることに気が付いた。

あと、透ちゃんも私を追ってきて、もう部屋の前まで来ている。

皆も私を心配してくれているのは、すごく伝わってきていた。

あの爆豪くんすらも、記者に対して悪態を吐いている感じの思考になっていた。

皆のその思考に、励まされるような気持ちにはなるけど、それでも、さっき記者が言っていた言葉が頭の中をぐるぐる回って離れなかった。

 

そんな状態でぼんやりとしていると、少しして扉がノックされた。

 

「瑠璃ちゃん?いるんだよね?」

 

透ちゃんが心配そうに声を掛けてくれるけど、今出ても、透ちゃんと落ち着いて話す余裕なんてない。

だから、無視することにした。

それでも透ちゃんは諦めきれないようで、しばらくどんどん扉をノックしたり、チャイムを連打してきたりといった行動に出ていた。

 

「おーい!寝ちゃったのー?」

 

寝ちゃったのなんて声をかけてきてるけど、そう思ってないのはありありと伝わってきている。

しばらく無視を決め込んでいたけど、煩わしいくらい鳴らし続けられる騒音に耐えかねて、涙を拭って鍵を開けた。

 

「……なに……」

 

「ごめんね、強引に。でも少しお話したくて」

 

「……私は話すこと……ない……」

 

「私はあるの!というわけで、お邪魔しまーす!」

 

透ちゃんが強引に部屋の中に入ってきた。

強引な手段を謝ったばっかりなのに、すぐに強引な手段に出るのか。

もう入られちゃったし、これ以上は何も言わないけど……

 

「それで……話って……」

 

「……さっきのこと。何があったのか教えて。瑠璃ちゃんを一方的に責めるみたいな記者の質問も、あの動画も、信じられないから。全部教えて欲しい」

 

「……ベストジーニストが……言ってたでしょ……」

 

「私は瑠璃ちゃんの口から聞きたいの!親友を侮辱されて私だって怒ってるんだから!向こうが一方の話だけを聞いて責め立てるなら、私も一方の話を聞いて判断するから!瑠璃ちゃんの主観マシマシでいいから、全部教えて!」

 

透ちゃんが凄く憮然とした感じで言い切った。

嘘は吐いてない。

心の底から、そう言ってくれている。

 

「……聞いてて……気分のいい話じゃないよ……」

 

「それだけ瑠璃ちゃんが酷い目にあったってことでしょ!いいから教えて!」

 

「……透ちゃんがいいなら……いいけど……」

 

どこまでもゴリ押ししてくる透ちゃんに、私もいい加減諦めた。

もう観念して、ベッドの脇に透ちゃんと隣り合わせで腰かける。

 

それから、あの日あったことをぽつぽつと話し始めた。

周囲一帯が、怒り、悲嘆、憎悪、死に際の思考と言ったような、負の感情で埋め尽くされていたこと。

被災地には、トリアージ黄色と赤の人が大量にいて、とてもじゃないけどヒーローや救急隊の手が足りなかったこと。

そんな中、負傷者の状態はどんどん悪くなっていくこと。

それに伴って、さらに負の感情は強くなっていって、何回も吐きながら必死で救助の指示を出していたこと。

人手が足りないだけならまだマシで、救急車や車すらも使えそうになかったこと。

さらには、不満が爆発した市民がヒーローに八つ当たりし始めて、中途半端な考えのヒーローがどんどん救助活動から抜けていったこと。

近場の病院は大体ギガントマキアの行進で破壊されていて、患者は数km~十数kmは離れている病院に運ばざるを得なかったこと。

そんな状態で全員救うなんて不可能だって、早々に見切りをつけたこと。

そこからは、より多くの人を助けられる選択肢を選択し続けたこと。

家族に詰め寄られて説明しても、『悪魔』とか、『人でなし』とか、散々罵られたし、それが1回や2回じゃすまなかったこと。

私だって全く気にしてなかったわけじゃなくて、罪悪感に押し潰されそうになっていて、せめてもの罪滅ぼしで死体の場所は地図にメモしていたこと。

そして、救助が終わる頃には、私が見捨てた死体の山が、出来上がっていたこと。

それが夢にまで出てきて、頭から離れないこと。

 

話している内に、またポロポロと涙がこぼれてきていたけど、とにかく、話せることは全部話していった。

話し切ったところで、透ちゃんが私の肩を掴んで、無理矢理向かい合わせて目を合わせてきた。

 

「瑠璃ちゃん全く悪くないじゃん!!」

 

「でも……見捨てた人の家族も……記者も……」

 

透ちゃんが強い言葉で言い切ってくれるけど、見捨てられた側とか、世間はそうじゃないっていうのは、さっき見せつけられた。

そんな簡単に、割り切れなかった。

 

「でももだってもないよ!!瑠璃ちゃん何も悪いことしてないじゃん!!たくさんの人たちを助けられるように指示し続けたんでしょ!?トラウマになっちゃうくらい悩んで悩んで、悩み抜いた上での決断だったんでしょ!?その状況で、全部を救うなんてできないじゃん!!」

 

「……でも……」

 

「でもじゃなーい!!瑠璃ちゃんが優しい子なのは私が知ってるよ!私が嘘言ってないの、分かるよね?」

 

そういうと透ちゃんは、さぁ読心しろとばかりに両手を広げた。

……そんなことするまでもなく、透ちゃんの思考は読み続けていたから、今更なんだけど。

嘘を言ってるわけじゃないのは分かってる。

だけど、それは、透ちゃんが友達だから言ってくれてるだけのことだし。

 

「……嘘じゃないのは……分かるけど……透ちゃんは……友達だから……そう言ってくれるだけで……」

 

「それの何が悪いの?」

 

「……どういうこと……?」

 

「記者の人は、家族の人の告発を聞いて、それを信じた。私は、瑠璃ちゃんの話を聞いて、瑠璃ちゃんを信じた。それだけの話だよ。会見聞いてて思ったけど、あんなの正解がないじゃん。実際に記者の人もベストジーニストに聞かれて答えられなくなってたし。答えなんてないんだから、後はどっちの主張を支持するかの問題でしかないでしょ?」

 

「確かにその通りだとは……思うけど……」

 

「そういうことなの!」

 

なおも言葉を濁す私に焦れたらしい透ちゃんが、正面から私を抱きしめてきた。

 

「私は瑠璃ちゃんの味方だよ。瑠璃ちゃんは何も間違ったことはしてない。だから大丈夫」

 

「……大丈夫……かな……」

 

「大丈夫だよ。もし大丈夫じゃなくても、私は瑠璃ちゃんの味方をし続けるから。その時は、親友の私をどーんと頼っていいんだよ!」

 

ぎゅうって強く抱きしめながら言ってくれる透ちゃんのぬくもりに、安心感を覚えてしまう。

こういう感覚をお姉ちゃん以外で感じるのは、初めてだった。

その安心感のおかげなのか、いつの間にか涙は止まっていた。

 

「……透ちゃん……そうなった場合……頼りになるのかな……飯田くんみたいに……空回りしない……?」

 

「ふっふっふ……その辺はホラ!大丈夫だよ!なんといっても私、頼りがいのある背中だって皆にも評判なんだから!!」

 

「評……判……?そんなの、聞いたことないけど……」

 

「それは瑠璃ちゃんが噂に疎いだけだねきっと!」

 

「ぷっ……そうかな……」

 

「そうだよ!」

 

透ちゃんお得意の見えないよってツッコまれるボケに真面目な答えを返してあげると、にっこり笑顔で私を煽ってきた。

明らかな嘘なのは思考からして丸わかりなんだけど、そのいつも通りな感じの透ちゃんに、思わず笑ってしまった。

 

そして、そのタイミングでお姉ちゃんが扉の前に来ていた。

 

「瑠璃ちゃーん!!」

 

チャイムと同時にお姉ちゃんが私を呼ぶ声が聞こえる。

このまま放っておいたら、さっきの透ちゃんの二の舞かな。

 

「ん……透ちゃん……お姉ちゃんもいいよね……?」

 

「うん!大丈夫だよ!」

 

「ありがと……」

 

透ちゃんにお礼を言って、お姉ちゃんを招き入れる。

お姉ちゃんは私の顔を見てびっくりした後、にっこり笑顔を浮かべて透ちゃんの方に突撃していった。

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