爆豪くんと寮に戻る。
爆豪くんは、待っていた轟くんと常闇くんと情報共有した上で、動き出した。
どうやら私が日中に避難民の受け入れをしている間に、先に2人には相談していたらしい。
ホークスとエンデヴァーとつながる可能性がある2人だから、当然ではあるけど。
そして、爆豪くんは皆を共有スペースに集めた。
私にテレパスさせたりせずに、わざわざ部屋を回って全員を集めていった。
皆も、爆豪くんが自分からコンタクトをかけてきたことに最初は不思議そうにはしてたけど、表情を見てすぐに言うことを聞いて集まってくれていた。
「あのクソナード!!十中八九エンデヴァーたちといる!!」
爆豪くんが、緑谷くんの手紙をビリビリに破りながらそう言い放った。
その発言を受けて、皆も爆豪くんを静かに見つめている。
「それ……本当に?」
「十中八九……?連絡をして確認を取ったんじゃないのか?君たちの師に……」
皆が疑問の声を発する中、飯田くんが窺うようにしながら、声をあげた。
飯田くんが聞いていたのは、エンデヴァー、ホークス、ベストジーニストに関してだった。
この中に、ミルコさんは含まれてない。
あの3人は、少し前にチームアップしたっていうニュースがあったから、爆豪くんのエンデヴァーたちといるって発言を受ければ当然の内容だった。
「幾度もしたさ。だが、電話には出なかった」
「ジーパンも」
「親父もだ。忙しいとはいえ不自然だ。俺たちに隠し事してるとしか思えねぇ」
3人とも、自分たちからの連絡に応答がない師匠に対して、苛立ちとか悲しさとかを感じているみたいだった。
轟くんは、エンデヴァーの心配っていうよりも緑谷くんの心配って感じだけど。
それに続けて、響香ちゃんが思い出すように言葉を続ける。
「たしか……オールマイトも戻ってないんだよね?」
「うん……多分、瑠璃ちゃんが見たっていう手紙を入れた時が、最後に帰ってきたタイミングだと思う」
「……授業は停止、進級も留め置かれてる。ヒーロー科生徒は基本寮待機と周辺の警備協力。細かい情報が得にくい環境だ。この状況で……」
「でも、トップ3のチームアップしかニュースになってないぜ?オールマイトは入ってない」
皆が考え込み始めたところで、爆豪くんは畳みかけるように口を開いた。
「ジーパンとヘラ鳥と兎は病院でデクに接触してる。オールマイトとも……だから、抱え込んで話さねぇやつに確認したんだよ。案の定、情報持ってやがったがな」
爆豪くんがそういった瞬間、飯田くんとお茶子ちゃん筆頭にした、私が病院に来ていたことを知っているメンバーが、私の方に顔を向けた。
……協力するって言ったんだし、ここで言わないのは、流石にダメだな。
私も、緑谷くんに帰ってきて欲しい。
皆と協力してどうにかできるなら、その方が嬉しい。
「おまえ、オールマイトに伝言頼んだな。AFOの影響をここから排除しても、あのクソナードが知らねぇとなんの意味もねぇ。おまえの目的がデクが帰ってきやすいようにすることだったなら、伝えてねぇ方がおかしい」
「AFOの影響って……」
「雄英へのAFOの影響となると……避難民に、スパイでも紛れ込まされていましたか……?」
「だから瑠璃ちゃん、私にしかできない、なんて言って……」
「……ん……手紙を入れようとしたオールマイトを待ち伏せして……オールマイト経由で……校長先生に協力を申し出た……認めてもらえてすぐに……オールマイトには……緑谷くんに伝えて欲しいって……伝言した……」
私がそう返答すると、皆がちょっとびっくりしたような表情に変わった。
そんな中、透ちゃんが、恐る恐ると言った感じで口を開いた。
「えっと、私、瑠璃ちゃんの話聞いて、てっきりオールマイトは手紙を持ってきただけだと思ってたんだけど……その後のこととか、緑谷くんのこととか、何も言ってなかったし……オールマイト、緑谷くんの所に、戻ってたってこと?」
「……ん……オールマイトは……緑谷くんと一緒にいる……お弁当とかも作ろうとしてたし……多分位置情報も把握してる……」
「そういうことだ。あいつら、組んで動いてやがる。エンデヴァーたちと組んでやがるのも、こいつに兎に確認させた。今はどうか分かんねぇが、作戦が変わってなければエンデヴァーたちと組んでるのも言質が取れた」
爆豪くんはそこまで言って、いったん言葉を区切った。
「な、なんで言わなかったんだよ?」
峰田くんが、若干困惑した感じで、聞いてきた。
だけど、そんなの言えるわけ、ないじゃないか。
あの時、あの状況で、どうすれば緑谷くんを連れ戻せた。
エンデヴァーたちも、オールマイトも、緑谷くんの行動の協力者でしかない。
こっちへの協力なんて得られるとは思えない。
爆豪くんたちの電話を無視してるのが、その証拠でしかない。
ミルコさんも、電話の感じからして不干渉を貫くつもりみたいだ。
校長先生すらも、半ば認めるような思考をしていた。
そんな状況で、どうすればよかったかなんて、分かるわけない。
「……皆は……緑谷くんがどれくらいおかしい思考してるか……知らないから……緑谷くんが……どれくらい、自分のことを度外視して……人助けのことしか考えてない……狂人みたいな思考をしてるか……知らないからっ……!言えるわけないよっ……!言ってもっ、連れ戻せるなんて思えなかったっ……!下手に動いたら、それこそ、オールマイトすら振り切るんじゃないかって考えたらっ……!心配でっ……!どうにかしたいと思っても、どうすればいいか分からなくてっ……!ならせめて、私はっ、緑谷くんが帰ってきやすいようにってっ……!」
「……す、すまねぇ……オイラ、責めるつもりで言ったわけじゃ……」
峰田くんが慌てた様子で謝ってきた。
そんなつもりがないのは、私だって分かってたけど、どうしても、言わずにはいられなかった。
透ちゃんが、私を宥めるように背中を摩ってくれているのが、ただただ申し訳なかった。
「俺はエンデヴァーたちよりも、波動よりも、デクのこともオールマイトのことも、知ってる。今の状況は、考え得る最悪のパターンだ」
「じゃあ!とりあえず連絡手段をどうするか!!?だな!!」
爆豪くんの言葉に、切島くんが勢いよく立ち上がりながら、力強く言い放った。
その言葉を聞いて、皆も一層気合を入れなおしている。
連絡手段を考えたところで、轟くんが私に問いかけてきた。
「なあ、波動。ミルコって確か、親父に連絡取れてただろ。ミルコ経由で連絡取れねぇのか」
「……さっき電話した時に聞いたけど……よほどのことがない限り……その回線は使わないって言われた……多分……死柄木とか……超常解放戦線とか……脳無とか……そういうのを見つけた時に……使うんだと思う……」
「……俺たちにとっては重要でも、向こうから見ればただの私的な要望でしかない。信用されなくなったらそれこそ問題だ。チームアップの可能性があるミルコなら、仕方ない判断だろう」
私の答えに、障子くんが納得を示してくれた。
皆も、特にそれ以上言ってくることはなかった。
そんな中、お茶子ちゃんが、覚悟を決めたみたいな感じの表情になって、スッと立ち上がった。
「轟くん、エンデヴァーって雄英卒だよね……」
お茶子ちゃんが、静かに轟くんに言葉を投げかける。
轟くんは、驚いたような反応はしていたけど、否定はしていなかった。
「強引に行こう」
力強くそういったお茶子ちゃんは、自分の考えを皆に話していった。
校長先生に協力を仰いで、エンデヴァーを呼び出してもらうっていう、強引な手段ではあったけど。
「校長先生って、協力してくれんのか……?」
「……一応……校長先生は……どっちつかずな感じ……本人が戻りたがってなくて……ヴィランの目的が……緑谷くんだから……容認してるだけ……」
「それなら、可能性はあるんじゃないか?」
それからは、話は早かった。
皆で、校長先生に直談判して、エンデヴァーを呼び出してもらうように働きかけることにした。
校長先生は、まだ校長室の方にいた。
受け入れの後処理をしたり、敷地の改修案をパワーローダー先生と相談したりしていた。
皆にそのことを伝えて、すぐに行動を開始した。
「……波動くんが事情を把握しているから、いつかはこうなると思っていたけど、随分と早かったね?」
「その反応ならもう要件察してんだろ。話がある」
「そうだね……だけど、君たちの口から、どういうつもりなのか考えを聞いておきたい」
そういって校長先生は、話すように促した。
校長先生には、緑谷くんがいかに狂っているかとか、私たちの気持ちとかを包み隠さずに伝えていった。
緑谷くん本人のこと、オールマイトのこと、協力しているであろうエンデヴァーたち3人のこと……
そして、このまま放置した場合に起こり得ることまで伝えたところで、校長先生は溜息を吐いた。
「……分かった。轟くんを私の名前で呼び出そう」
「本当ですかっ!?」
「本当さ!こんなことで嘘を吐く必要がないしね。私自身も、思うところがないわけじゃないのさ。君たちの話を聞いて、対話の余地があると判断した。協力しようじゃないか」
「あ、ありがとうございます!」
「今日はもう遅いし、轟くんの予定もあるだろうから、そんなにすぐに呼び出すことはできないよ。それでも大丈夫だね?」
「もちろんですっ!」
校長先生の、ハッキリとした肯定の返事に、皆は一気に盛り上がった。
全く手段が思いつかない状態から、解決の糸口が微かに見えてきたような状態でしかないけど。
それでも、少しとはいえどうにかできるかもしれない可能性が見えたのは、暗いニュースしかなかった最近の皆にとってはすごく大きなことだった。
正直、この後エンデヴァーの説得と、緑谷くんの説得があるのを考えると、私には、まだまだ難しいとしか思えない。
エンデヴァーを説得できても、緑谷くんとか、私たちを見たら即座に逃げそうな気もするし。
それでも、その微かな糸に、私も縋ってみたいと思ってしまった