波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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友達

「……いた……ヴィラン……ダツゴクに遭遇してる……ヴィラン名……ディクテイター……周囲に一般人がいて緑谷くんを襲ってるけど……こいつの個性で操られてるだけ……対処法は……被害者に強い衝撃を与えるか……本人を気絶させること……」

 

「そんだけ分かりゃ十分だ」

 

雨が降っている中を進み続けて、神野区に入って少ししたあたりで、緑谷くんが感知範囲に入った。

緑谷くんは、ヴィランに襲われていた。

こいつが誰なのかは、本人の思考を読もうとしなくてもすぐに分かった。

緑谷くんが全部、思い浮かべていたから。

私がその情報を皆に伝えると、爆豪くんが飛び出していった。

 

私たちも急いで爆豪くんを追っていく。

爆豪くんはディクテイターの直上まで到達すると、一点集中させた徹甲弾(APショット)で周囲の一般人には一切の被害を出さずに、一撃でディクテイターを気絶させた。

気絶したディクテイターを、轟くんが一瞬で凍り付かせて万が一に備えてくれる。

動けなくなったヴィランは、百ちゃんが創造した拘束具で雁字搦めにしていった。

 

「ダツゴク確保!やりましたねバクゴーさん!」

 

「大・爆・殺・神ダイナマイトじゃ!!」

 

「失礼しましたわ!」

 

爆豪くんが百ちゃんに盛大に文句を言ってるけど、本当にそれにするのか、ヒーロー名。

相変わらずヒーローって感じ皆無なんだけど……

まぁ、今はそんなことはいい。

緑谷くんだ。

周囲の脱ヒーロー派の一般人は、ヴィランの個性から解放されたら、散り散りになって逃げていった。

これで、邪魔者はいなくなった。

 

「皆……なんで……」

 

「心配だからだよ」

 

緑谷くんのつぶやきに、お茶子ちゃんがはっきりと答えた。

お茶子ちゃんの言う通り、皆、緑谷くんのことが心配だからこうしてここまで来てる。

荒れ果てて治安が悪化していることとか、ヴィランが大量にいることとか、そんなのは全く気にしないくらい、心配していた。

 

「僕は……大丈夫だよ……だから……心配しないで……離れて……」

 

「そいつぁよかった!さすがOFA継承者様だぜ!んで、てめぇは今、笑えてんのかよ?」

 

爆豪くんのその指摘に、緑谷くんは一瞬固まった。

それはそうだろう。

今、マスクで隠された緑谷くんの表情は、感情が抜け落ちた、抜け殻みたいな感じになってしまっている。

思考も、感情も、何もかも……人助けと、他人の迷惑にならないこととOFAの使命のことしか考えてない。

こんなの、見過ごせるわけがない。

 

「……笑うために、安心してもらうため……行かなきゃ…………だから……どいてよ、皆……!」

 

「どかせてみろよオールマイト気取りが!!!」

 

「……そんな表情で……そんな思考で……何が笑うためなの……見過ごせるわけ……ないでしょっ……!」

 

「緑谷くんが変わらないのは知ってる―――やるぞ諸君!」

 

「うん!」

 

飯田くんは、神野の時の緑谷くんの暴走を思い出しながら、皆に声をかけていた。

皆がその声に応えながら気合を入れなおす中、爆豪くんが表情を歪めながら挑発するように叫び出した。

 

「聞いたぜ!四・六代目も解禁したって!すっかり画風が変わっちまったなぁ!?クソナード!!」

 

「……ありがとう……来てくれて……」

 

緑谷くんはお礼を言うと、周囲に大量の煙幕をまき散らした。

これが六代目の煙幕か。

どのくらいか分からなかったけど、特に煙以外の効果があるわけじゃないみたいだし、私にはこんなもの無いに等しい。

皆にも、緑谷くんが使う可能性がある個性として、歴代継承者の個性は伝えておいた。

特に怯む様子はなかった。

 

「てめーら絶対逃がすなよ!!」

 

「煙幕!!」

 

ただ、場所が分かるとはいっても、緑谷くんの速度があると、煙幕を利用して後ろに回りこもうとしても後手に回るだけだ。

普通に逃げられる未来が容易に想像できる。

それなら、私が緑谷くんの状況を把握して、皆にテレパスして備えたり追い込んだりできるようにした方がいい。

私は緑谷くんの先回りをするように意識して、万が一逃げられた場合に備えつつ、調整するのが最善な気がする。

私がそんな行動をしている中、爆豪くんが爆風を発生させて緑谷君の周囲の煙を吹き飛ばした。

 

「話もしねーでトンズラか?何でもかんでもやりゃできるよーになると、周りがモブに見えちまうなぁ!?」

 

爆豪くんがさらに煽っていくけど、緑谷くんは平然と皆がいない、高層ビルの方に逃げようとし始めている。

そんな緑谷くんに対して、口田くんが操る鳥たちが、大量に襲い掛かった。

 

「戻ってきてダイジョブだって!!緑谷くん!!校長先生が戻っておいでって!!ね!?だから逃げないで!!」

 

「ごめん」

 

普段からは考えられないほどの大声を出す口田くんに、緑谷くんも一瞬思うところはあったみたいだけど、黒鞭で逃げようとし始めた。

その黒鞭に、青山くんが即座にレーザーを放った。

 

「辛いことと向き合ってるだけじゃ、キラメけないよ!緑谷くん!!そんな状態で、君が笑うことなんて、できるわけないじゃないか!!」

 

高速で黒鞭を打ちぬいたレーザーは、長続きはしなかったけど、それでも緑谷くんの動きを一瞬妨害した。

緑谷くんは、確かに落下し始めていた。

そんな緑谷くんに対して、響香ちゃんが音の防壁、心音壁(ハートビートウォール)を繰り出していた。

だけど、緑谷くんは再び黒鞭を射出して、すぐさま跳び上がっていった。

それを確認した私は、すぐに百ちゃんを拾い上げる。

緑谷くんの特訓の時の癖と、今の思考の感じと、さっきの黒鞭の挙動。

これだけ情報があれば、ある程度は移動する方向を予測できる。

 

『百ちゃん……罠を作るなら運ぶ……予想進路はある程度あたりをつけられるから……常闇くんに押し込んでもらおう……』

 

「ありがとうございます!波動さん!」

 

百ちゃんを高層ビルの7階に運びつつ、常闇くん含めた皆にもテレパスを送っておく。

罠にハメて動きの誘導を試みること。

その後に飛び出すであろう予測位置。

そこに待機しておいて欲しい人員。

どんどん調整をかけていく。

これだけやっても、今の緑谷くんを無理矢理捕まえるのは難しいと思う。

結局、筋金入りの狂人の緑谷くんを捕まえるには、強引にいって、そのうえで強く心に揺さぶりをかけられる人じゃないとダメだ。

だから、確保するのは私の役目じゃない。

その役目に適任なのは、きっと……最初の仲良し3人組だけだと思う。

 

「はっや……緑谷ぁ!どーでもいーことなんだけどさ!文化祭の時にノートのまとめ方教えてくれたの、かなり助かったんだよね!些細なことだけど……すっごい嬉しかったんだよね!」

 

響香ちゃんの叫びに、緑谷くんが意識を向けた瞬間、ビルの屋上から、尾白くんが緑谷くんに、尾空旋舞(びくうせんぶ)で回転しながら飛び掛かった。

 

「体育祭の心操戦覚えてるか!?おまえが俺の為に怒ってくれたこと、俺は忘れない!おまえだけがボロボロになって戦うのなんて、見過ごせない!」

 

「僕がいると……皆が危険なんだ……!AFOに、奪われる……!だから離れたんだ……!!!」

 

緑谷くんが、力づくで尾白くんの拘束を抜け出そうとし始めている。

拘束自体は緑谷くんの馬鹿力に勝てるはずもなくすぐに抜け出されてしまう。

だけど、その拘束を抜けた瞬間に、常闇くんが緑谷くんに飛び掛かった。

 

「押せ、ダークシャドウ!!」

 

ダークシャドウに押された緑谷くんが、百ちゃんの罠に押し当てられる。

そんな緑谷くんに対して、落下する響香ちゃんと尾白くんを回収した砂藤くんが、大声を張り上げた。

 

「緑谷!聞いてくれ!おまえは特別な力持ってっけど、気持ちは俺らも同じだ!さっき口田が言った学校の方の話もさ!!聞いてくれ!でなきゃもうエリちゃんにリンゴアメ作る時食紅貸してやんねー!」

 

砂藤くんの叫びは、押し込まれている緑谷くんにも確かに聞こえていた。

 

「いいよ……!エリちゃんだって……僕からじゃなくて……いいよ……!」

 

「初めは一同、あなたについて行くつもりでした。ですが、今はエンデヴァーたちと協力の下、"個性"を行使しています。緑谷さんの安全を確保するという任務で」

 

百ちゃんは話しかけながら眠らせる装置を起動する。

でも緑谷くんはすぐに動き出して、機械を破壊して抜け出してしまっていた。

 

「もう……かまわなくて……いいから……!僕から……離れてよ!」

 

「やなこった!緑谷!OFAだかも大事だと思うけど、今のおまえにはもっと大事なもんがあんぜ!全然趣味とかちげーけど、おまえは友達だ!だから無理くりにでもやらせてもらう!」

 

上鳴くんがガシッと緑谷くんの背後から肩を組むと、その隙に障子くんは上鳴くんごと緑谷くんに腕を巻きつけていく。

その障子くんの腕には、テープが巻いてあった。

 

「絶縁テープが巻いてある。八百万産のな」

 

「―――ここは、暗くていい……ダークシャドウ」

 

常闇くんの合図で、ダークシャドウが障子くんの腕でグルグル巻きにされている緑谷くんと上鳴くんを包みこんだ。

緑谷くんは、皆の説得を受けて少しずつ揺らいできている。

逃げようとしてるのは変わらないけど、苦しみ始めていた。

 

「ダークシャドウの攻撃力を"防"に利用するのは、おまえのアイデアだったっけな。緑谷」

 

「おまえにとって俺たちは庇護対象でしかないのか?」

 

「とりあえず風呂入ろ!な!?緑谷、風呂行こ!!」

 

上鳴くんの率直過ぎる言葉は、相変わらずの感じではあるんだけど、それでも、それが皆の率直な気持ちにも通じるものがあると思った。

皆、緑谷くんに戻ってきて欲しいんだ。

寮で、皆で、また普通に笑い合えるように。

 

……緑谷くんが飛び出そうとしているのは、もう分かってる。

揺らいでるのも、なにが原因でその揺らぎが大きくなってるのかも、なんで戻ろうとしないのかも、全部、分かってる。

それに、私はちょっと怒ってもいた。

緑谷くんに対しても、ちょっと怒ってるけど、それ以上に、AFOに対して。

世間をこんな状況にされて、友達までこんなに苦しめて、怒らないはずがなかった。

その怒りに合わせてなのか、波動の量がちょっと増えていく。

この前タガが外れたからなのか、波動が感情に影響されやすくなっている気がした。

私は、その波動を圧縮をかけていって、緑谷くんが飛び出すのと同時に吹き飛んだ。

 

緑谷くんは、皆の害意のなさに、気が付いていた。

これが"危機感知"……感知してるものが、私の悪意とそんなに違わないことには、すぐに気が付いた。

緑谷くんの隣を一緒に跳んでいた私は、緑谷くんの決意を少しでも揺らがせるために、口を開いた。

 

「ねぇ、緑谷くん……分かってるんでしょ……!皆に悪意が、害意がないことくらい……!皆、心の底から緑谷くんを心配してる……!私だってそうっ!!緑谷くんが心配だから、選別までしたっ!!緑谷くんに戻ってきて欲しいからっ!!大事な、友達だからっ!!内部はもう大丈夫っ!!外部からの危険だって、校長先生が尽力してくれたっ!!大丈夫だからっ!!戻ってきてよっ!!」

 

「離れてよ……大丈夫だから……!!僕は、大丈夫だから!!」

 

『轟くん!!』

 

私が合図すると同時に、遥か下の地面に立っていた轟くんの足元から、氷壁がせり出してきた。

予想もできていなかった氷壁に、緑谷くんはそのまま氷の壁にめり込んでいった。

私はすぐに二段ジャンプの要領で上に跳ね上がったから、氷にはぶつかってない。

これで、すぐには動けないはずだ。

 

「なんだよその面。責任が……涙を許さねぇか。その責任、俺たちにも分けてくれよ」

 

「行かせないわ。もうオロオロ泣いたりしない。大切だから。怖い時は震えて、辛い時には涙を流す、私のお友達。あなたがコミックのヒーローのようになるのなら、私たちは、1人ではそっちへは行かせない」

 

轟くんと梅雨ちゃんも畳みかけるように声をかけるけど、緑谷くんはすぐに氷を割ろうとし始めていた。

そんな緑谷くんの様子を見た轟くんは、声を荒げながら、さらに緑谷くんに語り掛けた。

 

「緑谷!今の状態がAFOの狙いかもしれねぇだろ!その隙に雄英狙ってくるかもしれねぇ!!そんなナリになるまで駆け回って見つかんねぇなら、次善策も頭に入れろ!!大切な雄英を守りてぇなら!離れず側にいるって選択肢もあるだろ!!俺たちも一緒に戦わせろ!!」

 

「……できないよ……これは、OFAとAFOの戦いだから、皆は……ついてこれない」

 

緑谷くんの頭の中には『次は、君だ』っていう、AFOの声が響いていた。

それが、呪いの言葉か。

その言葉を聞いて、オールマイトを振り切ったのか。

 

「"次は、君だ"って……それは、オールマイトが次代を担う皆に言った言葉でしょっ!?あなた1人にすべてを背負わせる言葉なんかじゃないっ!!AFOの言葉に惑わされないでよっ!!アレは、ドス黒い悪意しかない男だからっ!!わざと緑谷くんが苦しむような言葉を選んでるんだよっ!!なんでそれが分からないのっ!?」

 

私の叫びに、緑谷くんは一瞬こっちをチラリと見たけど、氷を破壊して跳び上がって行ってしまった。

正直、今の波動の量じゃ後手に回った状態で緑谷くんに追い付くことはできないし、追いつけたとしても、縋りついたとしても振り払われるのがオチだ。

それなら、別の方法を取るしかない。

そう思って、轟くんが形成し始めている氷の足場に着地する。

皆も、そこに集まり始めていた。

それを察知している梅雨ちゃんと峰田くんが、緑谷くんを少しでも減速させるために動き始めた。

 

「緑谷ちゃん!!」

 

「おまえのパワーがカッケェなんてオイラ思ったことねぇや!!オイラが惚れたおまえは、冷や汗ダラダラで!プルプル震えて!一緒に道を切り拓いて―――あん時のおまえだ!!」

 

梅雨ちゃんの舌を避けた緑谷くんに、峰田くんがもぎもぎをくっつけて重しになって、減速させる。

だけど、すぐにそれも振り払われてしまった。

緑谷くんは、そのまま黒鞭と発勁と45%の疑似100%で、逃げようとしていた。

……使えるようになったのか……疑似とはいっても、100%を。

お茶子ちゃんが飛び掛かってるけど、あの技なら上空に逃げられる。

逃げられたなら、最悪私と飯田くんと爆豪くん、轟くんあたりで追いかけて、他の皆は百ちゃんにバイクとか車を作ってもらって後からきてもらうのでもいいかもしれない。

実際、私がいれば付かず離れずで追いかけることは不可能じゃない。

追いかけっこをして油断したところを強引に捕まえてもいいかもしれない。

だけど、出来ることならここで、皆の説得を受けて止まって欲しかった。

 

「轟くん!!角度が足りない!!もう20度くらい射角上げて!!」

 

「ああっ!!」

 

微調整をかけるために轟くんに氷を増量してもらう。

その間に、緑谷くんに対して、一番響く言葉を投げかけられそうな、飯田くんを射出する準備を整えていった。

 

そして、お茶子ちゃんを避けた緑谷くんが、上空に高く跳ね上がった。

 

「皆ぁ!!!」

 

「溶解度0.1%保護被膜用アシッドマン!」

 

お茶子ちゃんの声を聞いて、三奈ちゃんがすぐに射出組に被膜を張って保護を試みる。

それを確認して、皆で一気に轟くん、爆豪くん、飯田くんを押し出した。

 

「行け轟!!」

 

射出してすぐに、轟くんが膨冷熱波を放って、上空に吹き飛んだ。

すれ違いざまにお茶子ちゃんが飯田くんを無重力にしてくれている。

そのまま、爆豪くんが空中でクラスターを使って、飯田くんを緑谷くんの方に吹き飛ばした。

 

そして、上空で飯田くんが緑谷くんの手を掴んだ。

『余計なお世話ってのは、ヒーローの本質なんだろ』っていう涙ながらの言葉を聞いて、緑谷くんは飯田くんの手を振りほどくことができなくなった。

 

確保を確認したお茶子ちゃんが個性を解除すると、飯田くんと緑谷くんが落下し始めた。

その落下先には、切島くんが来てくれていた。

切島くんは、そのまま2人をしっかりと受け止めてくれた。

どうやら、エンデヴァーの指示であそこに待機してくれていたらしい。

エンデヴァー、なんだかんだで協力してくれたのか。

 

私たちも、大急ぎで緑谷くんの方に向かっていって、合流した。

合流してすぐに、三奈ちゃんが声をかけた。

 

「緑谷……!もう誰かがいなくなんの嫌だよ!一緒にいよう!?また皆で授業受けよう!」

 

「……そう……したいよ……けど、怖いんだ……!雄英には……!たくさんの人がいて……!人に迷惑かけたくないんだ……!もう、今まで通りじゃいられないんだ―――……」

 

筋金入りの狂人の緑谷くんは、まだ逃げようとしていた。

でも、そんな緑谷くんに対して、爆豪くんが声を掛けようとしていた。

……言うのか、今の内心を。

確かに、飯田くん以上に、最も緑谷くんと関わってきたのは爆豪くんだ。

爆豪くんも、昔と比べたらすごく成長してるなって、素直にそう思えた。

 

「死柄木にぶっ刺された時言った事覚えてっか?」

 

「……覚えてない」

 

「"1人で勝とうとしてんじゃねぇ"だ。続きがあんだよ……身体が勝手に動いてぶっ刺されて……!言わなきゃって思ったんだ。てめぇをずっと見下してた……"無個性"だったから。俺より遥か後ろにいるハズなのに、俺より遥か先にいるような気がして……嫌だった、見たくなかった、認めたくなかった。だから、遠ざけたくて虐めてた」

 

爆豪くんの言葉を、皆静かに聞いていた。

緑谷くんも、呆然としたような表情で爆豪くんを見つめている。

 

「否定することで優位に立とうとしてたんだ。俺はずっと敗けてた―――雄英に入って、思い通りに行くことなんて一つもなかった。てめぇの強さと自分の弱さを理解してく日々だった。言ってどうにかなるもんじゃねぇけど、本音だ。出久……今までごめん」

 

爆豪くんは、そう言って頭を下げた。

緑谷くんは、もう狂気じみた思考を引っ込めていた。

それくらいの衝撃を受けていた。

爆豪くんは、頭を下げたままさらに話し続けた。

 

「OFAを継いだおまえの歩みは、理想(オールマイト)そのもので、何も間違ってねぇよ。けど今、おまえはフラフラだ。理想(オールマイト)だけじゃ超えられねぇ壁がある。おまえが拭えねぇもんは俺たちが拭う。理想(オールマイト)を超えるために。おまえも、雄英の避難民も、街の人も、もれなく救けて勝つんだ」

 

爆豪くんがそこまで言ったところで、緑谷くんが全身を脱力させて、倒れていった。

 

「"ついてこれない"……なんて……"ついてこれない"なんて酷いこと、言って……ごめん―――……」

 

「わーってる」

 

皆それを支えようと近づいていくけど、爆豪くんがすかさず駆け寄って、正面から受け止めていた。

 

 

 

「とりあえず第一関門はクリア……ですわね。ここからはより険しいですわ」

 

「……ん……弾いたのは……あくまで黒だけ……負の感情を抱いてる白は……全員通してるから……」

 

「……うん」

 

緑谷くんのその様子を見ながら、私はこの後のことを考えていた。

お茶子ちゃんも、百ちゃんも、皆、ほとんどの人は、この後起こり得ることを考えていた。

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