波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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感知訓練

寮の裏手の広場で、各々でできる訓練をしていた。

そんな中、私は緑谷くんと向かい合っていた。

 

「……危機感知の感覚……どんな感じか教えて欲しい……それによって教える内容が変わるから……思考的に……私の悪意感知と同じだとは思うけど……」

 

「うん。えっと……攻撃されそうな時とか、すごいヴィランが出てきたり何かしようとしたりしたら、頭を刺すような感覚がするんだ。タイミングとかから考えて、僕自身に危害が及ぶ可能性が高い時に警笛が鳴る、みたいな感じだと思う」

 

緑谷くんが教えてくれた内容は、読心で私が予測していた内容と大きな差はなかった。

本人がまとめてくれているように、自身に危害が及ぶ可能性が高い時に警笛が鳴る感覚で間違いないと思う。

まずはこの危害って部分がどんな感じなのかを見極めていかないといけない。

 

「ふむ……ちょっと試してみるから……危機感知が反応したら教えて……あと……試す段階で攻撃を加えるけど……普通に避けていいからね……」

 

「分かった。いつでもいいよ!」

 

「ん……じゃあ始める……私が攻撃し始めるまでは……なるべく棒立ちでお願いね……」

 

「うん!」

 

緑谷くんはすぐに了承して、多少警戒しつつ棒立ちの状態になってくれた。

それじゃあ、始めるか。

まずは、緑谷くんまで一気に距離を詰めて……

 

「発勁っ!」

 

「……発動、してないね」

 

わざと緑谷くんに当てる直前で手を止めて、波動の噴出もしなかった。

私がもともと寸止めするつもりで距離を詰めたのもあって、案の定危機感知は発動してない。

再度距離を取って、続きを始める。

次は……

 

「波動弾っ!」

 

「っ、発動したよ」

 

私が怪我をさせるつもりで勢いよく波動弾を押し出すと同時に、緑谷くんが飛び退いた。

だいぶ発動早かったな。

結構感度がいい感じか。

まあとりあえずこれは予想通りの結果でしかない。

 

「じゃあ次……爆豪くんっ!協力してっ!」

 

「あ?……なんで俺なんだよ。別に俺じゃなくてもいいだろ」

 

私だとできない部分を誰かに依頼しようと思って、2択になった上で適任だと思った爆豪くんに声をかけた。

だけど、爆豪くんは自分の特訓をしていたタイミングだったのもあって若干不満そうに聞き返してくる。

 

「自分である程度予想できてる人の方が……余計な思考が混ざらないから……結果に影響が出ない……爆豪くんか百ちゃんの2択……私だと感知のせいで無意識の攻撃が難しいから……」

 

「チッ……わぁったよ。次は無意識で当たりに行けばいいんだな」

 

「ん……話が早い……」

 

用意しておいた布を渡すと、爆豪くんはすぐに目隠しをしてくれた。

爆豪くんは話が伝わるのが早いから本当に助かる。

爆豪くんの視界が塞がったのを確認して、緑谷くんにテレパスで位置の指示を出す。

 

『緑谷くん……そこから右に2歩、後ろに3歩動いて……』

 

緑谷くんも指示に従って静かに動いてくれた。

位置に着いたのを確認してから、爆豪くんに声をかける。

 

「じゃあ爆豪くん……まっすぐ歩いて……」

 

爆豪くんは何も言わずに歩き出した。

そして、少し歩くと、棒立ちしている緑谷くんに思いっきり肩をぶつけた。

 

「どうだった……?」

 

「発動してないよ。間違いなく肩は当たったけど、発動しなかった」

 

「ん……予想通り……じゃあ次……」

 

予想通りの結果だったことを確認して、そのまま次の指示を出す。

少しの間、爆豪くんに協力してもらいながら、無意識の攻撃、無意識の程度、故意に当てようとしたか否か、その故意の程度による差はあるのか、攻撃の威力と意識の関係性とそれによる危機感知の反応の仕方の変化とか、透ちゃんの集光屈折ハイチーズや轟くんの穿天氷壁を利用した範囲攻撃への反応などなど、とにかく確認できることをどんどん確認していった。

 

 

 

確認の結果、緑谷くんの危機感知は私の悪意の感知とほぼ同じ判定が下されているということが分かった。

これなら教えやすいし私も助かる。

 

「大体わかった……自分に向けられた悪意とか……自分が巻き込まれかねない悪意に対して……危機感知が発動してる……私の悪意の感知が……自分への悪意だけに変わってる感じだから……詳しく指導できる……」

 

「やっぱりそうだよね!じゃあ具体的なアドバイスを……」

 

緑谷くんが嬉しそうに口を開くのを確認してから、それを制した。

アドバイスをするのはいいけど、危機感知自体を過信することがよくない。

それをすり抜ける相手が、超常解放戦線にはいるんだから。

 

「ん……その前に……注意が一つ……AFOと戦うなら……その取り巻きの超常解放戦線のことも考えないといけないから……」

 

「……トガ、だよね。波動さんの感知もすり抜けるほどのミスディレクションとなると……」

 

「多分……というか、絶対……全く反応しないと思う……私の感知もすり抜けるほど……意図して無意識になれるし……後は……言い方は悪いけど……トガは狂ってるから……」

 

「狂ってる?」

 

緑谷くんもトガのことを言っていることはすぐに分かってくれたけど、狂っているっていう部分には疑問符を浮かべた。

まあ緑谷くんは謎の興味を持たれていた程度の印象しかないだろうし、そうなるのも仕方ないか。

 

「ん……狂ってる……ね、緑谷くん……緑谷くんは……好きな人にナイフを振りかざせる……?好きな人を……ナイフで刺すことが出来る……?」

 

「そ、そんなのできるわけないよ」

 

「だよね……でも……トガはそれができるんだよ……むしろ……好きだから……同じになろうとして……血を取ろうとしてくる……ここに悪意って……あると思う……?」

 

そこまで言ったところで、緑谷くんが固まった。

まあ、善意の塊のような緑谷くん的には分かりづらいだろうし、さらに言うと女子と話すだけであんなにガチガチに緊張しまくってた感じからして恋愛感情としての好意とか考えたこともなさそうだし。

私もそういう経験があるわけではないけど、感情の機微には人一倍詳しいと自負はしている。

 

「そう……悪意なんてないんだよ……トガは……私に対しては……友愛みたいなのを向けてきてる……そのせいか知らないけど……攻撃されてる時に……その攻撃行動単体からの悪意は……感じたことが無いんだよ……」

 

「じゃあ、もしかして僕も?」

 

「ん……緑谷くん……自覚してるか分からないけど……トガから恋愛感情を向けられてる……トガはそんな好意を抱いている緑谷くんを……嬉々として殺そうとしてくると思うよ……そして……そこに悪意なんて存在しない……」

 

私がそこまで言うと、緑谷くんはゴクリと唾を飲み込んだ。

 

「だから……トガの攻撃は危機感知にはほぼ反応しない……その認識を持っておいて……感知のコツとか……感じる感覚からできる行動予測とか教えるけど……過信はしないで……致命傷になりかねないから……」

 

「……うん、分かった。ありがとう」

 

「ん……じゃあ、始めよっか……」

 

「うん!お願いします!!」

 

緑谷くんがしっかりと頷いて、元気よく返事をしてくれたのを確認してから、訓練に移った。

 

 

 

他の人が訓練してるところに紛れ込ませてもらって、攻撃を一緒に予測しつつ感知したことと感覚のすり合わせをしたり、緑谷くんが模擬戦をしている時に助言をしたりといった感じで、危機感知の訓練を重ねていった。

そして、爆豪くんとの模擬戦が終わって緑谷くんがアフロになったところで、爆豪くんが緑谷くんに説明するように口を開いた。

 

「エンデヴァーんとこで学んだ"溜めて""放つ"。そいつを一発だけじゃなく、汗の玉にして同時多発させる。それが新境地"クラスター"これから俺の技は全て底上げさせる。あっためんのに時間食うが」

 

「ああ、だから冬服!!」

 

「だからそこまで……汗びっしょり……」

 

「暑くて体力削られっからどっち取るかだ」

 

爆豪くんはその言葉の通り、凄い量の汗でびっしょりになっていた。

こう考えると爆豪くんの個性も大変だな。

汗かかないと大きな力を発揮できないし。

緑谷くんはその流れで轟くんの新技にも感想を漏らしているけど、轟くんの技はまだ爆豪くん程完成していない。

炎と氷の合わせ技はまだ練習中みたいだった。

そんな中、皆の練習を眺めていた上鳴くんと峰田くんがぼやくように話し始めた。

 

「総力戦っつってたけどさ」

 

「うん?」

 

「大将2人は今弱ってるじゃんね?ギガントマキアも拘束して眠らせ続けてんだろ?見つかりゃ今度こそいけそーじゃね?」

 

上鳴くんが凄く浅はかなことを言っていた。

まずAFOが見つかるなんて思えないし、AFOにヘドロワープが残っている可能性がある以上日本に拠点がある保証すらない。

加えてこちらの戦力不足。

さらに、こっちは守らなければいけない拠点がある以上、戦いを始めるタイミングは、ほぼ向こうが握っているということ。

この辺りから考えて、どう考えても見つかるとは思えないし、勝てる保証もないという絶望的な状況であること自体は変わりなかった。

それを少しでも有利にするために、人海戦術なんて方法を取ってまで拠点を探しているのだ。

私がそんなことを考えていたら、同じようなことを考えていた爆豪くんが口を開いた。

 

「ざっくり3点あめぇ」

 

「えええ。3つもあまいの……?」

 

「まず1つ。多分見つからねぇ。これまで脳無格納庫や死柄木のアジト……研究施設は見つかっても、オールマイトに敗北後奴自身の所在は掴めたことがねぇ。逃げ隠れるなら世界一なんだよあの顔金玉」

 

「シモやめて」

 

爆豪くんが1つ目の指摘点をササッと説明してくれる。

その説明の中に出てきたAFOの酷いあだ名に対して、響香ちゃんが心底嫌そうな顔をして文句を言っていた。

その様子を見ながら、指摘点に気が付いている百ちゃんも続いて口を開いた。

 

「2は、そもそも前回の死柄木が不完全な状態だった……ですわね。こちらの甚大な戦力減を鑑みると、五分と言えるか……」

 

「それ」

 

百ちゃんが説明に、爆豪くんも同調している。

最後は私が言うか。

私が理解してることも爆豪くんは分かってるみたいだし。

 

「3つ目……戦いを始めるタイミングは……向こうが握ってる……サーチと、あのヘドロワープが消えていたとしても……相手の拠点が分からないのに……こっちの防衛しなきゃいけない拠点の場所は分かり切ってる……後手は必至……」

 

「だからこその今のヤケクソ人海戦術なんだよ」

 

私の説明に、爆豪くんが補足を入れてくれる。

そんな補足を聞いて、緑谷くんが決意を固めた表情で言葉を続けた。

 

「だから、せめて出方を……動きを誘導できるように、早速僕も捜索に出る」

 

「僕たち、だろ」

 

また1人でやるような発言をする緑谷くんに、飯田くんがすかさずツッコみを入れてくれた。

人のことを言えないのは分かってるけど、緑谷くんは相変わらずだった。

 

「……そうだ、それで言うと……出歩いていいんだよね?」

 

「ある程度は。麗日くんの演説を受けて、ヒーロー科と避難民の接触も緩和されたからな」

 

飯田くんの補足を受けて、お茶子ちゃんが顔を真っ赤にして照れ始めた。

その様子を見て梅雨ちゃんが微笑ましそうに見ているのと同時に、三奈ちゃんと透ちゃんが凄くキラキラした目で見ていた。

まあ、あれだけのことをしたら緑谷くんの中でのお茶子ちゃんへの好感度はうなぎ上りだろうし、緑谷くんのお母さんにも認知されただろう。

それとお茶子ちゃんの反応をあわせて、弄りに行きたいっていう思考がありありと読み取れた。

一応、自重して今はやるつもりはないみたいだけど、食後とかの休憩中にそういう感じになりそうかな。

 

そんなことを考えながらのんびり眺めていた時に、嫌な感じの思考を感知した。

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