波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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罪の告白

先生の取り計らいもあって、寮で話していていいということになった。

相澤先生以外の先生たちの方は、まずは塚内警部たちが青山くんの両親を尋問して、行おうとした内通行為の内容の詳細を確認して、今後の対応を考えるらしい。

一応、さっき青山くんに話していた内容である、緑谷くんを雄英から誘き出せで間違いないんだろうけど。

とはいえ、AFOの電話越しに何かを見通しているであろう個性に対してどう対処するかという問題がある。

とりあえず塚内警部たちの尋問が終わるのを待つ方針だった。

 

その間に、私たちA組と相澤先生は、寮に集まっていた。

皆はソファに座っていて、先生はその後ろに立っている。

ただ一人、青山くんがその中央に立っていた。

緑谷くんと透ちゃんの困惑が酷いことになっている。

そんな2人を横目に見ながら、青山くんが話し出した。

 

「ごめんね。集まってもらっちゃって。これから、全てを説明させてもらうよ。さっき緑谷くんたちが見たことも、集まってもらった理由も……この話を聞いて、僕をどうするかは皆に任せる。どんな答えが返ってきても、僕は受け入れるつもりだし、これからすることは何も変わらないから……ずっと、謝らせて欲しかったんだ」

 

「謝るって、何を……」

 

青山くんの要領を得ない話に、皆ただただ困惑することしかできていなかった。

それを分かっている青山くんは、そのまま話を続けた。

 

「緑谷くん、葉隠さん。さっき見たこと、どういう意味か分かったかい?」

 

「どういうって、青山くんの両親が、先生たちに囲まれながら、警察に……」

 

緑谷くんが答えを返すけど、その内容は全然理解しきれていないものだった。

そんな緑谷くんに、青山くんはさらに問いかける。

 

「うん。それで間違いないよ。なんで逮捕されたか、想像できるかい」

 

「それは……」

 

「……内通か」

 

緑谷くんが言葉に詰まって答えられなくなったところを、爆豪くんが静かに引き継いだ。

爆豪くんのその言葉に、皆が息を呑む音が聞こえた。

 

「……波動が素通ししたってことは、全て既定路線ってことだな。てめぇの謝らせろっつー発言と合わせると……神野の後か」

 

「うん。その通りだよ。特に爆豪くんには、ずっと、ずっと謝りたかったんだ。本当に申し訳ないことを、取り返しのつかないことをしてしまったっ……!ごめんっ……!!」

 

青山くんが、爆豪くんに向かって土下座をした。

爆豪くんはそれを静かに眺めている。

その様子を見ながら、状況を飲み込み切れない三奈ちゃんが口を開いた。

 

「ちょ、ちょっと!1人で納得しないでよっ!!何っ!?どういうことっ!?」

 

「チッ……こいつの両親が内通行為をしたから逮捕された。じゃあ今、誰がそんなことするんだよ。顔金玉以外いねぇだろ。内通者は波動が弾いてやがるはずなのに、親なんていう情報を抜きやすい位置にいる奴を見てねぇはずがねぇ。そいつが内通行為をした瞬間に逮捕されたってことは、これを待ってたってことだ。じゃあいつからんな計画立ててたのかってことになる。そこにこいつの謝らせろって発言を考えると……」

 

「……両親だけではなく、青山さん自身も内通者だったということですか。神野の後ということは、林間合宿と……USJが内通行為の結果ですか?」

 

「……うん、そうだよ。僕が、手引きした」

 

「う、嘘だろ……!?嘘だって言えよ……!!」

 

切島くんが困惑したまま、信じられないという顔で青山くんに訴えかける。

だけど、こんなことで嘘を吐く意味がない。

私が証明してもいいけど、青山くんがそれを望んでない。

自分の口で話すのが、犯してしまった罪に対する責任だって考えているみたいだった。

そんな彼の考えを、決心を、邪魔するつもりはなかった。

 

「嘘じゃないよ。合宿2日目の深夜……補習の後に、AFOに、合宿地を教えた。あれは、僕のせいで起きた襲撃だったんだよ」

 

「な、なんでっ……!?どうして、そんな……」

 

「……僕はね……もともと、無個性だったんだよ」

 

「それって……」

 

青山くんが暴露していく内容に、皆の困惑と驚愕が、どんどん広がっていく。

爆豪くんと百ちゃん以外も、ようやく青山くんの最初の発言の意味をちゃんと理解し始めていた。

 

「僕が小さい頃に、パパンとママンを通じて、個性を与えてもらったんだ。それからだよ、AFOに支配されたのは。高校入試のことを考え始めるような時期になって、指示されるようになったんだ。雄英に入学しろ。クラスが孤立するタイミングを教えろ。合宿先を、教えろってね……」

 

「じゃあ、青山くんは……」

 

「出久と同じってことだろ。個性をもらった相手の違いで、だいぶ歯車が狂ったみてぇだけどな」

 

「で、でも、じゃあなんで、青山は、逮捕されてないんだ……?警察も、先生たちも、知ってたってことだろ……?」

 

「……波動か」

 

障子くんが確認するように聞いてくる。

流石にこれに答えないのは変だろうし、私も言葉を返した。

 

「……そう……林間合宿で……ほぼ確信したから……先生たちも含めて……色々話した……」

 

「色々って言うと……」

 

「……事実の確認と……なんで内通したのか……なんで言うことを聞いていたのか……あとは……何で悪意を感じなかったのかとか……」

 

「悪意が、なかった……?」

 

「ん……入学してから……青山くんからは一切悪意を感じなかった……だから……浅い思考しか読んでない時に気づけなかった……それで……先生に……真意を確認させて欲しいって……提案した……その結果が……殺害を仄めかした脅迫……」

 

私がそこまで言うと、爆豪くん以外が息を呑んだ。

爆豪くんは予想がついていたみたいだけど、皆も、AFOがそういうことをするやつだって言うのは、もう痛いほど分かっているみたいだった。

 

「僕の心が弱かったから、脅迫に屈したんだ。だけど、脅迫なんてただの言い訳だ。脅迫されていたからといって、許されることじゃない」

 

「……だろうな。脅迫されていたとしても、齎した被害がでかすぎる。林間合宿での被害から考えて、脅迫されてたから無罪なんてことになるような状況じゃねぇ……波動がした真意の確認ってのに、警察でも呼んで取引しやがったな。その取引の内容は」

 

青山くんが言い訳せずに自分の非を詫び続ける中、爆豪くんがさっさと話を進めようとして察した取引の内容を話すように促す。

だけど、皆爆豪くんほど飲み込みがいいわけじゃない。

爆豪くんの話についてこれてるのは百ちゃんと、かろうじて緑谷くんくらいで、他の皆は困惑が強すぎて理解が全く追いついてない。

そんな皆を代表するかのように、お茶子ちゃんが声を上げた。

 

「ちょっ、ちょっと待って!整理させて!つまり……」

 

「つまり、波動さんの読心で、情状酌量の余地があることを先生方と警察の方の前で証明したのでしょう。まあ、あの時期の波動さんは読心を明かしていませんでしたし、証拠として使えるかと言われると疑問を覚えてしまいますが……」

 

「百ちゃん……正解……私が読心しながら……塚内警部と……先生たちが監視してる中で話した……ただ……やっぱり私1人の読心じゃ証拠としては弱い……だから……先生たちにお願いして……協力者を呼んだ……」

 

「あ……入寮前日に、補習とかで急に呼ばれたのって、そういうこと?物間が朝からブラキン先生に連れていかれて、青山が帰り際にマイク先生に連れていかれてたけど……」

 

百ちゃんの言葉に私が答えると、三奈ちゃんが思い出したように呟いた。

まあ、三奈ちゃんたちは補習で呼ばれてたし、タイミングまで言われたら流石に気が付くだろう。

 

「ん……そう……補習の名目で……呼び出してもらった……理由は……物間くんに私の個性をコピーしてもらって……一緒に読心してもらったから……物間くんと、もう1人……嘘かどうか見分けられる個性の人を呼んでもらって……話をした……」

 

「物間くんが瑠璃ちゃんの個性をコピーしたっていうの、いつやったのか不思議に思ってたけど……そういうことだったんだ……」

 

「んなこたぁどうでもいいわ!!で、もう状況は理解しただろ。取引の内容を言えや」

 

透ちゃんが納得したように呟いているのを遮って、爆豪くんが吠えた。

時間がないのは事実だけど、そこまで急ぐようなことだろうか。

まあ、私はいいんだけど……

 

「取引の内容は、僕が二重スパイになることだよ。もしも、ヴィラン連合から内通行為を持ちかけられたら、その情報を包み隠さずに開示して、向こうの行動をコントロールできるように働きかけること。これを条件に、塚内警部から司法取引を持ち掛けられた」

 

「それだけじゃ裏切らねぇ保証がねぇ。他に条件つけられたな」

 

「うん……本当に、話が早いね、爆豪くんは。そうだよ……この腕輪が、その条件なんだ」

 

「その腕輪……」

 

青山くんが土下座しながら腕輪が見えるように袖をまくると、透ちゃんと三奈ちゃんが私を凝視してきた。

私も、首から下げてる指輪を通したネックレスを外して、机の上に置いてしまう。

 

「この腕輪は、波動さんが持っている指輪から1km以上離れると、波動さんと、先生たちが持っている指輪が警報をならして、腕輪の位置情報を表示するようになっている……らしい。僕自身で外すことはできないし、鳴らしたことが無いから本当かは分からないけどね」

 

「つまり、瑠璃ちゃんの感知範囲内に常にいることで、裏切らないか監視され続けてたって、こと……?」

 

透ちゃんが、泣きそうになりながら震える声で確認してくる。

思考の感じからして、轟くんに対して私が声を掛けたりしてたのと同じように、恋とかそういうことにつなげちゃってた自分を責めているみたいだった。

 

「そうだよ。常に波動さんに思考を見てもらうことで、裏切っていないか監視してもらっていた……その分、波動さんには、負担を掛けちゃったけどね」

 

「じゃあ、さっきのって……」

 

「パパンとママンに、内通するように持ち掛けられた瞬間だったということだよ」

 

緑谷くんが確認するのに、青山くんが答える。

それに対して、さっきの条件を聞いて信頼できると判断した爆豪くんが、口を開いた。

 

「で、その内容は」

 

「……緑谷出久を、雄英から誘き出すこと」

 

「やはり、それか……」

 

青山くんのその返答を聞いて、飯田くんが力なく呟く。

皆、それに対して何も言えなくなってしまっていた。

そのまま少しだけ間が空いて、青山くんは言葉を続けた。

 

「僕は、AFOを欺くために働きかける。嘘を吐いて殺された人を見せつけられたから、どうなるかは分からないけど……それでも、AFOの居場所が分からなくて、探し回っている現状で、唯一僕だけが、明確な意思を持って、AFOに働きかけることが出来る……僕は、戦うって決めたんだっ!僕を信じてくれた波動さんを裏切りたくない。その信頼に、応えたいんだっ!クズの僕を信じてくれた恩を、返したいんだっ!皆は僕を信じられないかもしれない。だけど、それでも……僕が、やらないといけないだからっ……!」

 

「青山くん……」

 

青山くんが啖呵を切るのを、皆息を呑んで見守っていた。

そんな中、爆豪くんだけが動き出して、青山くんに近づいていった。

 

「……いつまでも土下座なんてしてんな。立て」

 

「爆豪くん……?」

 

「いいから立て。立って歯ぁ食いしばれ」

 

「……分かった」

 

爆豪くんがしようとしていることは分かった。

確かに、これは青山くんの引け目を打ち消そうとするには有効かもしれない。

そして、それをするのは、一番被害を被った爆豪くん以外にあり得ない。

 

ゆっくりと青山くんが立ち上がると、青山くんの正面まで歩いていった爆豪くんが、青山くんの頬目掛けて拳を振り抜いた。

鈍い音がなって、青山くんがよろめきながら数歩後退する。

そんな青山くんに背を向けながら、爆豪くんが口を開いた。

 

「これでチャラだ。俺はお前を信じる。お前を信じた波動を信じる。戦うって決めたんなら、いつまでも頭なんか下げてねぇで前向きやがれ……青山」

 

「爆豪くん……ごめん……ありがとうっ……!」

 

「お前らもいいな」

 

青山くんが泣きそうになりながらお礼を言うのを尻目に、皆に確認するように言葉を投げかけた。

その言葉に、皆は覚悟を決めたような顔をして、青山くんに歩み寄っていく。

私も一緒に、青山くんの方に歩み寄る。

そして、飯田くんが代表するように、声を張り上げた。

 

「もちろんだ!!青山くんの心の内を掬い取れなかったのは俺たちの責任でもある!!だからこそ、友として!!戦うと決めた彼と、共に征くだけだ!!」

 

「皆っ……!ごめんっ……本当にごめんっ……!僕はっ……僕はっ……!」

 

その言葉を聞いた青山くんは、いよいよ涙をこらえきれなくなって泣き出してしまった。

私は、青山くんの手を握ったりして落ち着くのを待った。

皆も、青山くんの背を摩ったり、声を掛けたりしていった。

 

そして、頃合いを見計らって、今まで静かに見守っていた相澤先生が声をかけてきた。

 

「話はまとまったな。俺に考えがある。AFOの嘘を見抜く何かを欺く方法、その作戦だ。心操が、最近の特訓の成果で他者を喋らせることが出来るようになっている。それを使って、青山の両親と青山からAFOに直接コンタクトを取らせる。そして、AFOを誘き出す。事前にどこまで見抜けるかの検証に、波動にも協力してもらいたいところではあるが、これが、内通を予測して塚内さんたちとある程度考えてあった作戦になる」

 

「心操くん、そんなことが出来るようになってるの!?」

 

「それなら……確かに可能性は……それに、波動さんも検証に加わるというなら、より確実性は……」

 

皆が驚きを露わにする中、百ちゃんが真剣に考え込み始めている。

……確かに、心操くんがそんなことができるようになっているなら、可能性はある。

電話越しの、嘘の判定か悪意の感知か、分からないけどその程度の事しかしてないなら、他人に勝手に動かされれば反応しない可能性は、全然ある。

 

「お前たちは、捜索隊に合流しないで自己研鑽に励め。正直、これだけ探しても手掛かりが見つからない相手を探し回っても、見つけられるとは思えん。俺たちも、警察も、青山は信頼できるものであると判断した。既にこの作戦を、決戦のための作戦の中核に据える方針になっている。穴倉に隠れて出てこない敵に対する、切り札になるんだ。やれるな、青山」

 

「……はいっ!」

 

先生の言葉に、青山くんが力強く頷く。

涙をぬぐいながらのその言葉に、皆も強く意思を固めていた。

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