「どうだ、波動」
「……思考は読めちゃいますけど……悪意に関しては感じないです……まぁ……青山くんからは元々悪意を感じないので……意味を成しているか分かりませんけど……」
私の答えに、塚内警部と先生たちが頭を抱えた。
翌日になって、昨日相澤先生に言われていた確認作業を、青山くんや心操くん、警察や先生たちとしていた。
昨日はA組への謝罪が終わったら、B組にも謝罪しに行った。
私も付いていって説明を補強したけど、特に問題なく終わっていた。
物間くんが全てを把握していて、擁護するように一緒に説明してくれたのが大きかったと思う。
皆びっくりはしていたけど、すんなり受け入れてくれていた。
それにしても、昨日はあんまり気にしてなかったけど、塚内警部のやつれ具合が凄い。
多分休む暇もなく走り回ってるだろうから、仕方ないことではあるんだろうけど。
「波動少女、感知、読心の専門家として、AFOの電話で裏切りを見抜く技術に関して、どう思う?」
「……あくまで予想です……それでよければ……」
「ああ、それで構わないよ。思ったことを教えて欲しい」
オールマイトが率直に聞いてくる。
一応、予想がないわけではないから言えないわけじゃないけど、あくまで予想でしかない。
確実であるという保証はできない。
それを伝えたけど、オールマイトは本当に私の意見を欲していた。
「では……嘘の判別が個性で間違いないのは……皆さんも察していると思います……これ以外に……メッセージやメールなどではなくAFOが直接電話をする理由が思い浮かばない……加えて、AFOの嘘の判別方法は……読心ではないと考えています……理由は……林間合宿時点で……あの爆発的な波動の膨れ上がり方を知らない段階で……私の個性を欲した事実……他人に譲渡するために欲したとしても……個性の複製ができる殻木がいるのに……わざわざ本命の成功率を下げてサブに私を設定する……理由がありません……感知ならラグドールさんをメインにしてましたし……感知目的かと言われるとさらに微妙ですし……」
「まぁ、そうだろうな」
「はい……なので読心は選択肢から消します……そして、電話越しに言葉を聞いて判別しているということ……ここから……言葉、声などから何かを感じ取っていることが分かります……これらから嘘を見抜く読心以外の方法となると……真さんの
私の説明に先生や塚内警部は皆頷いて納得していた。
まあ、考えられる選択肢を最低限削っただけでしかない。
とはいっても、現実的にこれらくらいしか考えられないし、私はこれが大丈夫か確認すればいいと思っている。
「それで……確認の方法なんですけど……悪意に関しては……心操くんに私への何かしらの害意を抱かせながら……青山くんに喋らせてもらえれば判定できます……一応青山くんが内心で悪意を抱いているパターンも試すべきです……ただ問題は……直接見抜かれていた場合の方で……」
「やはり、そちらに関しては方法がないか」
「少なくとも……思いつかないです……私が嘘を判別する方法は……悪意と……言動と思考の乖離からなので……真さんみたいに……その人が嘘だと思ってることを言ったら反応する……バロメーターを持っている感じみたいなのとは……ものが違います……」
私がそこまで言うと、塚内さんが頭をぼさぼさとかきむしる。
確実性が無いのは怖いから、どうにか確認したいけど……
「真を呼べればよかったんだが、あいつはアメリカにいるからな……飛行機もない今、呼ぶのは難しいと言わざるを得ない」
「……青山くん……ちょっとだけでも嘘吐いたこととかない……?意に背かない範囲でのこととかでもいいんだけど……」
「……心にもないことを言ったことはあるけど、それを嘘と言えるかどうかは……それに、その程度のことなら気付いても無視されていただけの可能性があるから、何の信頼性もない情報しかないよ」
「ん……そっか……」
ちょっとしたことで誤魔化したりしたことがないかななんて思ったけど、そこまで大胆なことが出来るほど肝は据わっていなかったらしい。
まあ昔の青山くんの感じならそうだろうなとしか思わないから、本当に試しに聞いただけでしかないからいいんだけど。
「いや、その方法はありか……三茶、拘置所の方に連絡取ってくれ。AFOと繋がっていた者たちに、些細な事でも嘘を吐いたことがあるか、あればそれを見抜かれたことがあるかを確認してくれ」
「了解」
塚内警部とよく一緒にいる猫の異形型の個性の人が、敬礼しながら連絡を取りに退室していった。
それを見送ってから、塚内警部が話を続ける。
「嘘を直接見抜いたケースがないかは、こちらで確認してみる。波動さんには、悪意に関しての確認をしてもらいたい」
「分かりました……じゃあ青山くん、心操くん……よろしく……」
「えっと……じゃあまずは心操くんが悪意を抱くってケースからでいいかい?」
「それはいいけど、悪意を抱くってどうやればいいんだ?」
「えっと、それじゃあ……心操くん……なんでもいいから……私を罠にハメようと考えてみて……どうすればいいか分からなければ……私の悪口を言いふらそうと企んでみるとか……そういうのでもいいから……」
塚内警部の依頼を受けて、青山くんと心操くんに私個人への悪意を抱く方法を簡単に教えていく。
ただ、心操くん自身がヒーロー側の思考をしているだけあって、なかなかうまくいかなかった。
しばらくああでもないこうでもないって感じで相談して、やっと若干の悪意が感じられるようになって、そのまま確認作業に移っていった。
何度か試してみて、心操くんが悪意を抱いていても、青山くんが悪意を抱いていても、洗脳中の発言によってそれの感じ方が変わったりすることはなかった。
つまり、洗脳中のその言葉や行動自体には、そもそも悪意も、感情も乗っていなかったってこと。
自身への悪意を感知している方法だったら、確実にすり抜けることが出来ると思う。
そのことを伝えて、その場は解散となった。
心操くんも、青山くんも、自主トレに戻っていったし、先生たちと塚内警部は、別の部屋に移動していった。
ラグドールさんとかホークスとかが来ているし、作戦会議をするっぽい。
思考の感じからして、青山くんが誘き出したところで、敵主力を分断していく感じの作戦か。
まあ、AFOと死柄木が思考の共有をしているかもしれないなんていう情報とか、荼毘の蒼炎とかを考えると、その作戦が無難かなとは思う。
青山くんの誘導が成功するかにかかっている、さっきの私の確認で多少は自信が持てる部分もあっただろうし。
どうやって分断するつもりなのかはさておいて。
そんな感じの会議が始まるのを感じ取りながら、私は校門の方に歩いて向かっていた。
わざわざ来てもらうのは申し訳なかったけど、オールマイトと私が一緒に外部に向かうなんていうのは時間的にとてもじゃないけど無理だった。
だから仕方なかった。
校門の内側でしばらく待っていると、彼がゆっくりと歩いてきた。
義足のはずだけど、思った以上に安定しているし、そこそこの速度で歩くことが出来ている。
「すいません……わざわざ来てもらってしまって……」
「気にするな。君から重大な話を、オールマイトも交えて話したいなんて言われたんだ。おおよその予想はできている……オールマイトは?」
私が謝罪すると、ナイトアイはこともなげに流す。
更に周囲を見渡すと、オールマイトの所在を確認してきた。
「オールマイトは今……作戦会議中です……今日か明日に話すということ自体は……話をつけてあるので……とりあえず……会議が終わるまでは……少しだけ状況のすり合わせをしておきましょう……」
「分かった」
ナイトアイを先導して、校長先生にあらかじめ使用許可をもらっておいた教室の方に向かって行く。
緑谷くんとか通形さんに鉢合わせたら時間がかかりすぎるだろうし、仕方ない。
歩き始める前に、ナイトアイの荷物を持つって提案したんだけど、固辞されてしまった。
左手と左足が義手と義足になっちゃってるから大変かと思ったけど、本人的には大丈夫だったらしい。
気分を悪くしたりしている様子はないけど、悪いことを言ってしまっただろうか。
まあそれはそれとして、空き教室に辿り着いた。
教室に入って戸締りすると、ナイトアイが口を開いた。
「それで?一応、内容を確認しておきたい。電話で話せないこととは?」
「はい……オールマイトの未来と……過去にしたという……オールマイトの凄惨な死……という予知に関してです……」
「……やはりか。連絡をくれて助かった。いざという時には話さずに抱え込むとは思っていたが……」
私の返答に、ナイトアイは頭を抱えていた。
ナイトアイとしても、オールマイトが素直に相談してくれるとは思っていなかったようだった。
私が緑谷くんに感じていることと、ナイトアイがオールマイトに感じているところは、似た部分があるのかもしれない。
まあ、ナイトアイはオールマイトを信頼してるし、ヒーローとしての考え方にもすごい好感を持っているみたいだから、その辺の違いはあるけど。
そんな感じで少しの間話していると、ようやく作戦会議の方も一区切りついたようだった。
結局、オールマイトが最初から考えていた『敵主力全てを分断し、各個撃破。おびき寄せるのは青山くんを信じる』ということで、特に異議もなく決まっていた。
話が終わっているのを確認してから、オールマイトにテレパスをかける。
『オールマイト……先日お願いしたお話……これからしたいです……場所は……3階の空き教室の方です……』
『……もうナイトアイもいるのかい?』
『はい……来てくれてます……』
『分かった。3階の空き教室でいいんだね』
『近づいたらまた誘導します……では……待ってるので……』
オールマイトから了承の返事が返ってきたのを確認して、テレパスを終えた。
オールマイトは会議の事後処理とかをしてから、こっちに向かうつもりみたいだし、もう少しだけ時間がかかりそうだった。
それまでの間、ナイトアイと通形さんのこととか緑谷くんのことを少しだけ話して、時間を潰していた。