波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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予知

少しして、近づいてきたオールマイトに待機している部屋をテレパスで伝える。

オールマイトはそのまま教えた教室に入ってきてくれた。

 

「遅くなってすまない。ナイトアイ、波動少女」

 

「いえ……私は全然……」

 

「私も、先程来たばかりだ。気にするほどの事じゃない」

 

ナイトアイがオールマイトに何気ない言葉を返している。

思考からして、蛇腔の件がある前まではある程度の間隔でオールマイトがお見舞いに行ったりしていた感じかな。

そんなことを考えている間にも、オールマイトはナイトアイに言葉を続けた。

 

「センチピーダーの方は大丈夫かい?」

 

「ああ。センチピーダーもバブルガールも、頑張ってくれているよ。裏方しか手伝えないのは心苦しい限りだが……」

 

言葉の通り、ナイトアイは今自分の事務所の再開するのではなく、センチピーダーを代理としたまま事務作業や他事務所との連携を一手に引き受けている。

本当に復帰しているような状態なら、自分が前に出なくてもナイトアイ事務所を再開して、センチピーダーとバブルガールがどうするかを相談するのでよかったんだろうけど、まだナイトアイは万全とは言えない。

それはそうだ。

あれだけの重傷を負って、数か月単位で入院してて、手足を一本ずつ持っていかれて、全身の筋力まで衰えてしまった。

義足と義手を装着できるようにする手術を終えてから、必死でリハビリをしているって話は聞いてはいた。

そのリハビリの成果なんだとは思うけど、たった半年で、普通に歩くことが出来る程度にまで回復していた。

とはいっても、まだ走ったりすることは難しそうだし、戦闘なんてもってのほかだと思う。

筋力も、依然と比べるとだいぶ萎んでしまっているし。

だから、ナイトアイは本来ならまだ仕事に復帰なんてできる状態じゃない。

だけど、この世間の状況に、何もしないではいられないってことで、センチピーダーのところで裏方ではあるけど、ブレーンのような形で動いていたようだった。

オールマイトもそんなナイトアイの状況は知っていたみたいだった。

そんなことを考えていたら、オールマイトが私に声をかけてきた。

 

「それで、話をしたいんだったね、波動少女」

 

「……はい……オールマイト……緑谷くんを連れ戻した日の思考なんですけど……」

 

「ああ、波動少女には隠せないよね……」

 

私がオールマイトがちょっと陰った感じの笑顔を浮かべた。

だけど、ここでこの狂人の思考をどうにか捻じ曲げないと、間違いなく自分から死に向かって突き進んでいくと思う。

ナイトアイもそれは望んでいないはずだから、詳細を話せばきっと止めてくれる。

止めることが出来なかったとしても、1人で抱え込むような状況はどうにかしたい。

 

「……オールマイト……戦うつもりですか……」

 

「……ああ。私は、自分はもう現役ではないと私自身が決めつけていた。だが、そうではない。君たちが灯す新しい火、その征く先を見届けるために……私も、できることをしようと思ったんだ」

 

「……方法は……?方法は……どうするつもりですか……?OFAはもう緑谷くんに譲渡済み……ムキムキの姿になるのも数秒が限界……身体も……以前よりはマシですけど……戦えるような筋力はありません……こんなの……死にに行くのと、何が違うんですか……?」

 

私がそこまで問いかけると、オールマイトは少し考え込んだ。

どこまで話すべきかなんて考えてるけど、それを私に対してすることに、何の意味があるんだ。

 

「隠さないで……全部話してください……私に隠し事するのが無理なのは……もう分かってますよね……?ここでオールマイトが言わないなら……誘導尋問して……ナイトアイに全部話します……」

 

「……あぁ、分かった。話すよ。考えていること全て。そのうえで、波動少女とナイトアイの意見を聞こう」

 

オールマイトがちょっと顔を歪めてから、ゆっくりと話し始めた。

個性が無くても戦えるようにするための、パワードスーツの開発を依頼したこと。

執行猶予中でI・アイランドから出ることが出来ないデビット博士に開発してもらって、なんとか間に合わせてもらったこと。

そうして開発してもらった車とアタッシュケースを展開して全身に纏うことで、今のオールマイトの状態でも戦えるようになること。

もちろん、ずっと戦えるだけの体力はないから、決戦の中で、ピンポイントで使おうと考えていること。

オールマイトは、ここまで話しきって、目を伏せた。

 

「……オールマイト。私が過去にした予知を覚えていて、それでもなおそう言っているということか。波動がここまで強引に私を呼び、あなたと話をする場まで設けたのは、あなたに死んでほしくないと願ってのことだということも、分かっていて言っているのか」

 

「……ああ、分かっているよ。ヴィランと対峙し、言い表せようもない程……凄惨な死を迎える。忘れたことなんて、あるわけがない。この予知を自分のゴールと定めて走ってきた。だが、神野を経て緑谷少年と話し、運命を捻じ曲げようと決心もした。だけど、これだけの状況だ。こんな命でも、新しい火を紡ぐ礎になれるなら、私も、地を這ってでも戦うべきだと考えた」

 

オールマイトはぽつぽつと言葉を続けた。

だけど、そんな自分勝手で自殺紛いな行動を、許容できるはずがない。

これ以上、信頼してる先生たちが死ぬようなことは、絶対にあって欲しくなかった。

オールマイトのことは、散々新米教師だなんだと心の中では言ってきたけど、それでも、オールマイトは私の大切な、信頼してる先生の1人だ。

そんなオールマイトが死ぬのは、自分から死に向かって行くのは、耐えられそうになかった。

 

「……なんで……オールマイトも……緑谷くんも……2人とも……そんなに簡単に……自分の命を捨てようとするんですか……?なんで……もっと抗おうとしてくれないんですか……もう……ミッドナイト先生みたいに……信頼してる人が死ぬのは……イヤなんです……もっと自分の命を大切にしてくださいよ……オールマイトが死ぬと……悲しむ人がいっぱいいるんですよ……?」

 

「すまない、波動少女。これを他の皆に言っていないのも、緑谷少年たちのことを想ってのことだろう。辛い思いをさせてしまった。だが、私もそう簡単に死ぬつもりはない。全力で抗うつもりだよ」

 

「予知を変えるために、全力をかけると?」

 

「ああ。もちろん、そう簡単な事ではないとは思うけどね」

 

そこまで言ったところで、オールマイトも、ナイトアイも、静まり返ってしまった。

私も、それ以上は何も言えなくなってしまった。

 

「すまない、波動。君の望みは、ここで私がオールマイトを止めることだったんだろう。だが、オールマイトを止めることがどれだけ困難なことか、私は嫌というほど思い知っている。また喧嘩別れなどという結末にもしたくない。だからこそ、私は、オールマイトに協力しようと思う。オールマイトが未来を捻じ曲げるために全力をかけるというなら、私が、それをサポートしてみせる」

 

「……はい……ナイトアイが……そういうなら……お任せ、します……止めることができないなら……1人で抱え込んで……暴走する方が……嫌なので……」

 

「ナイトアイ……波動少女……」

 

ナイトアイの宣言を、私も特に否定することなく肯定する。

緑谷くんの考えを捻じ曲げるのが、どれだけ難しかったかを実感を持って思い知らされた今、似た者師弟のオールマイトを説得できるなんて思えなかった。

それでナイトアイが全力をかけてくれるというなら、予知で未来が変わったかも見ながら関われるというなら、それはそれでいいと思った。

 

 

 

その後は、ナイトアイとオールマイトの話し合いが始まった。

 

「オールマイト、見るぞ」

 

「……ああ、任せる」

 

ナイトアイが、オールマイトに対して予知をかける。

私も、そんなナイトアイの思考を深く読み続けた。

 

しばらくして、ナイトアイがオールマイトから離れる。

その額には、冷や汗が流れていた。

私にも、驚愕、悲嘆……そんな感じの感情が伝わってきていた。

 

「やはり、変わっていないか」

 

「……ああ。大筋は変わっていそうな感じだったが、凄惨な死を迎えていた。過程が変わったのは、緑谷の影響だろうが……それでも、最後には死を迎えている」

 

「……でも……大筋は変わってるんですよね……?未来が……変えられないわけじゃ……なさそうなんですよね……?」

 

「前回は、ここまで閑散として荒廃した都市での戦闘ではなかった。状況自体は変わっている。未来は、変えられる」

 

ナイトアイが力強く頷いてくれる。

それが分かっているなら、全力で抗うだけだ。

そのためにも、状況の確認が必要だと思う。

 

「ナイトアイ、状況を教えてもらえるかい。荒廃した都市での戦闘と言ったね」

 

オールマイトが、静かに聞き返した。

それに対して、ナイトアイが話し始めた。

 

「ああ。まず場所……崩壊している街の中だ。これだけでは、すぐにどこかは判別ができない。そして相手だが……」

 

「ナイトアイ?」

 

ナイトアイが、言葉に詰まった。

なんだ、その間は。

思考からして、AFO?

でも、そんな相手に、オールマイトが無個性で突っ込むって、それは、さっき立てた作戦が瓦解しているような状況じゃないとあり得ないんじゃ……

 

「AFOか?」

 

「……そうだ。だが……これは……」

 

「ナイトアイ、言ってくれ。抗うためにも」

 

「……AFOは……AFOだ……だが……オールマイト、あなたがその重傷を負った時よりも、さらに若い姿をしたAFOと、対峙していた」

 

「っ!?……まさか、巻き戻しかっ!!?」

 

「そ、それじゃあ……エリちゃんから……!?」

 

オールマイトの思考が、驚愕に染まった。

なんだ、その最悪の展開は。そんな切り札が使えるのか。

でも、巻き戻しを使えるってことは、エリちゃんから個性を奪った?

本当に、どういう状況だ。

エリちゃんは、雄英の中にいる。

そんなエリちゃんから個性を奪える状況となると、拉致くらいしか思いつかない。

わざわざ強行突破ということはないだろう。

だけど、拉致されたとして、黒霧もいない現状で、どうやって拉致したんだ。

今の雄英バリアを、どう攻略した?

考え出したらキリがない。

だけど、そこまで考えたところで、ある可能性に行きついた。

 

「あっ……もしかして……個性消失弾から……エリちゃんの細胞を取り出して……個性を複製した……?だとしたら……」

 

「それは……あり得るな……いや、むしろ、今の雄英にいるエリ少女から個性を奪うのは至難の業だ。その可能性が高い。だが、これは……!この情報はまずいぞ……!つまり、全盛期のAFOが出現する可能性があるということじゃないか……!」

 

そこまで話したところで、オールマイトがあわただしく動き出した。

 

「ナイトアイ!!ついてきてくれ!!塚内くんや他の教師も呼んで話を詰める!!対策を練らねばっ……!!」

 

「ああっ……!」

 

「波動少女!すまないが失礼するよ!波動少女は寮に戻って皆と共にいるんだ!」

 

オールマイトはそういって、すごい速さで出て行った。

ナイトアイがついて行ったけど、すぐには追いつけそうにない。

オールマイトの思考から行きそうな部屋をテレパスで伝えておくと、ナイトアイから感謝するような思考が返ってきた。

 

私は、待ち受ける最悪の状況に頭を抱えそうになっていた。

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