波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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自主訓練

寮に帰って私も色々考えていたけど、すぐに答えは出なかった。

AFOが全盛期になる可能性があるなら、どうすればいいのか。

今先生たちが協議しているのは、戦場の割り振りだ。

『その場にいなければいい』。

その考えの下、物間くんの個性で黒霧をコピーする。

黒霧の個性を使って、AFOたちを誘き出した後に分断して、担当として割り振られた者たちとともに、各地の戦場に送り届ける。

これはいい。だけど、割り振りをどうするかが問題だ。

敵幹部を全員分断するとしても、AFO、死柄木、荼毘、トガ、スピナー……スピナーはそれほどではないとしても、AFOと死柄木は異常な実力の持ち主で、荼毘もエンデヴァー以上の火力による広範囲攻撃ができるし、トガは感知にすら引っかからずに変身でこちらに紛れ込んでくる可能性がある。

他にも、決戦が始まった場合にAFOが奪還に動く可能性がある黒霧とギガントマキアへの備え。

さらに超常解放戦線の生き残りや、ダツゴクたち。

ダツゴクにも実力者がいることを考えると、手を抜くことはできない。

そんな状況なのに、AFOが全盛期に戻る可能性があるという情報まで入ると、どうすればいいか頭を悩ませてしまっていた。

正直、AFOまで全盛期に戻ってしまったら、対処法があるのかが分からなかった。

 

そんなことを考えている内に、お昼になっていた。

とりあえず、何か思いついたら先生たちに伝えるとして、私は私にできることをしないとダメだ。

会議に参加していない先生は、AFOの油断を誘うために必死な感じを装ってAFO捜索をしてくれている。

私たちに、決戦までにわずかでも特訓の時間を作るために。

その想いを無駄にしないためにも、私たちは、少しでも力をつけるべきだ。

 

そのために、パパっと昼食を取って、訓練に入った。

私が、先生たちに期待されていること。皆に期待されていること。

あの時の力を使いこなすことだ。

そう考えて、私の中でこの間から芽生えている、大切な人を守りたいという想いを、強く意識する。

危険に晒されているお姉ちゃんを、皆を、先生たちを、ミルコさんを、私が、守るんだ。

そう意識するだけで、波動の量が少しずつ増えて、身体から波動が揺らめきながら可視化していく。

ここまではいい。

ここまではこの前も出来た。

だけど、量が足りない。こんな量じゃ、荼毘にも敵わない。

そんな状況だと、私が戦うべきだと考えている相手と戦うのにも、不安が残る。

 

「……―――ちゃん、瑠璃ちゃん!」

 

「……透ちゃん……?どうしたの……?」

 

「いや、午前中出歩いてから、な~んか思いつめてるなぁって思って。少しだけ話に来た。どう?調子は」

 

そんなに思いつめていただろうか。

まぁ、AFOの全盛期……オールマイトに重傷を負わせた時以上の、AFOの全盛期というものを考えてちょっと気が滅入ってはいたから、それが原因か。

 

「……ん……とりあえず……多少は意識して……増やせるようになったよ……これ……見た目だけじゃなくて……波動の量が増えて……溢れたせいで……身体に纏ってる波動の濃度が濃くなって……可視化してる感じだから……」

 

「おぉ~!じゃあ成果ありだね!武闘派瑠璃ちゃんの誕生だ!」

 

「まだそこまでの量は……ないけどね……波動弾とかは……大きくできそうだけど……あの時みたいなのはまだ無理……透ちゃんはどう……?」

 

「私?私も色々考えてるよぉ~。なんとっ!!青山くんのレーザーを曲げるのをさらに応用した、私の新必殺技がっ!!」

 

透ちゃんがドヤ顔で胸を張った。

思考の感じからして、レーザーを曲げてるって聞いた時に私が想像したのを、本当に技にした感じか。

確かにそれなら、規模によってはすごい威力になる気がする。

とりあえず、透ちゃんも見せたそうにしてるし、見せてもらうか。

 

「見てみたい……見せて……」

 

「ふふふ、それでは見せてしんぜよう。これが私の新必殺技だぁっ!!名前はまだないけどっ!!」

 

そう言って透ちゃんは、両手を前にかざした。

次の瞬間、透ちゃんの両手を覆うくらいの光線が、体育館のセメントの床に照射された。

照射された光線はセメントを焼いているみたいで、少しずつ焦げくさい臭いと煙を放ち始めていた。

 

「つまり……集光屈折ハイチーズと……光の屈曲を合わせた……光学兵器だよね……!すごい……!これ、大規模で使いこなせればすごいことになるよ……!」

 

「でしょ~!私もこれはヤバいと確信している技なんだよ!ふっ、自分の才能が恐ろしいよ」

 

「そうだね……透ちゃん……すごい……」

 

私が褒めると、透ちゃんはますますドヤ顔を深めた。

かわいい。

この感じは結構久しぶりだ。

透ちゃんが元気そうでよかった。

 

 

 

そんなこんなで話し込んでいると、後ろから声を掛けられた。

 

「おーい!波動くん!葉隠くん!少しいいか!」

 

飯田くんが、少し離れた位置から呼んできていた。

その後ろには、少しずつ皆が集まり始めている。

なるほど、模擬戦か。

実戦形式の訓練は必要だと思うし、いいと思う。

そう思って、不思議そうにしている透ちゃんの手を取って皆の方に向かった。

 

「どうしたの?飯田くん」

 

「皆で模擬戦をしようと思ってね。自主訓練ではできても、本番でできなければ意味がない。そこで考えたのが、バトルロイヤル形式の模擬戦だ」

 

「バトルロイヤル?」

 

「ああ。チームを組んで戦うのもいいかもしれないが、状況が状況だ。最悪の場合、1人で多数のヴィランに囲まれることもあるだろう。その訓練も含めて、やっておきたいと考えてな。皆、チームは組まずに個人として参加して、最後の1人になるまで戦い続けるという方法で行いたい。どうだろうか、2人とも」

 

透ちゃんが聞き返したのに対して、飯田くんは丁寧に説明してくれた。

まあ確かにそれは練習しておいた方がいいか。

相手はヴィランだ。そんな訓練してなかったから戦えませんなんていう言い訳は通じない。

それなら、少しでも多くの状況に適応できるようにするために、周囲全てが敵という状況の訓練もしておいた方がいいのは間違いなさそうだ。

実際、今までの授業はチーム戦か1対1ばっかりで、乱戦の多対1になるような状況は中々なかった。

練習しておいて損はない。

 

「ん……いいよ……」

 

「大丈夫!もちろん参加するよ!」

 

「よし。じゃあそっちで待っていてくれ。あと何人かに説明して同意を得てくる」

 

飯田くんはそう言って、私と透ちゃんにパラパラと皆が集まってきている場所を示した。

……なるほど、飯田くんと百ちゃんで手分けして説明してる感じか。

それならそんなに時間はかからないかな。

 

 

 

透ちゃんと話しながら5分くらい待っていると皆が集まった。

飯田くんからルール説明が入って、皆散らばっていく。

ルール説明なんて言っても、最後の1人まで残った人が勝ちって程度でしかない。

後は、資源に限りがある現状で大怪我は困るから、最低限加減はするようにってくらいで、ほぼルール無用のデスマッチみたいな状況になっていた。

まあヴィランがルールなんて守ってくれるわけないから、これでいいんだろうけど。

 

開始の合図は私に任された。

爆豪くんと模擬戦をした時のように、皆にテレパスをかけてカウントダウンしていく。

そして、0ってテレパスした瞬間、私は波動の噴出で跳びあがった。

というよりも、皆ほぼ同じ行動を取っている。

理由は簡単だ。こういうのに対して、無法な手段で一瞬で制圧してくるヤバい人がいるし。

 

「穿天氷壁っ!!」

 

体育館が、一瞬で凍り付いた。

まあそれはいい。

滑りやすくなるから注意は必要だけど、普通に避けることができた。

問題は、獰猛な笑みを浮かべてこっちに飛んできている爆豪くんだ。

 

「ちっとは使いこなしたかよっ!!」

 

「そうだねっ……!少しだけっ……!」

 

爆豪くんが跳びかかりながら爆破を放ってくるのを高さを出して避けて、そこに波動弾で反撃をしかける。

爆豪くんも難なくそれを避けた。

正面から戦うのは不利だ。

少なくとも、今の波動の量だと。

そう思って、そのまま岩山を跳びはねながら、爆豪くんを撒こうと試みる。

その後ろを、爆豪くんが猛スピードでついてくる。

執着されてる……というよりも、あの状態になった私と戦いたいだけか。

まだそこまでじゃないんだけど……

なんて思いながら跳んでいたら、ちょうどよさそうな思考を捉えた。

 

その思考の持ち主の方に向かって跳びはねると、案の定爆豪くんもついてくる。

私が二段ジャンプで急上昇をかけて彼の攻撃範囲から逃れた瞬間、爆豪くんもそれに気が付いたようだった。

 

次の瞬間、巨大化したダークシャドウが、爆豪くんに襲い掛かった。

 

「チッ……俺との相性、悪いままじゃなかったのかよ」

 

「相性が悪いからこそ、こういう機会で経験を積んでおくべきだと考えた」

 

「……そうかよ」

 

常闇くんの言葉に、爆豪くんも受けて立ったようで正面から突撃していく。

そして、それを悠長に眺めて空中に浮かび上がっていた私に対して、敵意が向けられた。

あ、これはまずい。相性悪すぎっ!

回避はできそうにないから、せめて耳だけでも塞がないと!

そう思って、大急ぎで耳を塞いだ。

 

『ハートビートサラウンドレガートっ!!!』

 

響香ちゃんの技名の思考と共に、耳を塞いでいても大音量で聞こえてくる響香ちゃんの爆音を浴びてしまう。

流石にこれは放置できない。

耳を塞いで落下し始めていたのを、二段ジャンプで響香ちゃんの方に方向転換して、今度はこっちから襲撃を仕掛ける。

増えてる波動で強引に高出力の圧縮噴出をして、急加速をかけて落下していく。

 

「波動蹴っ!!!」

 

「あっぶなっ!?流石に正面からは分がわる……―――いっ!!?」

 

「あぐっ!!?これ、しびれっ……!?」

 

響香ちゃん飛び込んで波動蹴を避けて逃げ出した瞬間、フィールド全域を、極大の範囲攻撃が襲った。

上鳴くんが、凄まじい出力の雷を放出していた。

電撃を浴びてしまって、身体が痺れてすぐには動けない。

虚を突かれた皆も同様だった。

爆豪くんとか、凄まじい形相で歯ぎしりをしている。

上鳴くん、私が爆豪くんに気を取られてる間に隠れたのか。

今は本人も「うぇ~い」なんて言ってるけど、文句なしで上鳴くんの勝ちだった。

……まぁ、これが実戦ならショートした時点で殺される可能性があるから、絶対に取っちゃいけない戦法なんだけど。

今回は運よく全員行動不能にしたけど、すり抜ける人がいる可能性もあるわけだし。

 

「と、とりあえず、しびれているがっ、1回目は、上鳴くんの勝利でいいな、皆っ!?」

 

飯田くんが痺れている中でも確認してくるけど、皆してやられたことは把握していて、負け自体は認めていた。

 

「よし、では、少し休憩を挟んで動けるようになったら、2回戦だ」

 

そういって、飯田くんは話を区切った。

回復に努めることにしたらしい。

まあ痺れの回復が安静にしてただけで早まるかは謎でしかないけど。

とりあえず、私も2回戦に備えておかないと……

 

そんな感じで、日が落ちて少しするまで、バトルロイヤル形式の訓練を続けた。

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