波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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出立前夜

オールマイトからの概要の説明はそう時間もかからずに終わった。

雄英の空中要塞化とか、感知で改造していることを知っていても、本当にその動きができるのか信じがたいようなこともあったけど、それでも、とりあえず概要は分かった。

明後日の朝には、作戦に備えて仮設要塞に移動する予定らしい。

雄英から約30kmの地点に作った仮設要塞にヒーロー科生徒を移動し、青山くんがそこから少し離れた孤立した位置に、AFOを誘い出す作戦らしい。

そのために、明日の内に荷物の準備をしておくようにと言われていた。

そんな説明を受けて、皆気合を入れなおしている。

だけど、訓練で疲れているし、今日はもう休むことになった。

 

そして、翌日。

寮の扉を開けて、相澤先生が入ってきた。

昨日は物間くんに付き添って黒霧の方に行っていたみたいだけど、今日は物間くんの方はブラドキング先生に任せることにしたらしい。

そして先生は、入ってきて早々に青山くんに声をかけた。

 

「青山、行くぞ」

 

「ウィ☆」

 

青山くんも、いつもの調子ですぐに答える。

まあ、用件はもうとっくに分かってる。

青山くんの両親も含めて、作戦を練るんだろう。

……私も、行った方がいいだろうか。

心操くんの確認とか、青山くんのこととか、いろいろ関わったし。

 

「……先生……私も行った方が……いいですか……?」

 

「いや、お前は来なくていい。これに関してはお前がいなくてもどうとでもなる。どのみちAFOと連絡を取るのは、お前の感知範囲外でやるのはもう決まってるからな」

 

「……サーチ対策ですか……分かりました……」

 

私の問いかけに、先生はすぐに否定した。

まあそれもそうか。

万が一サーチが残っていたら、内通行為を他の誰かが近くにいるタイミングや私の感知範囲内でやるのはおかしいと思うし。

 

「波動は自分の訓練に注力しておけ。時間は有限だ。戦うと決めたなら、時間を無駄にするな。生存率を少しでも上げるためにもな」

 

「……分かりました……あの……でも午後に……あれをやるんですよね……?ならせめて……エリちゃんの方は……」

 

先生が午後にエリちゃんの所に行こうとしてるのも思考から分かっているから、心配になってしまう。

お父さんを消しているトラウマに、重なる可能性があることをさせようとしているわけだし。

 

「……そっちも大丈夫だ。エリちゃんは俺が見ておく」

 

「……先生の立ち位置的にも……重ねちゃいそうだと……思うんですけど……」

 

「大丈夫だ。あの子だって、いつまでも弱いままじゃない。お前や緑谷のおかげで、成長できたんだ。お前も信じてやれ」

 

先生のその言葉に、何も言えなくなってしまう。

確かにエリちゃんは精神的にも成長しているし、個性の扱いも随分うまくなっている。

でも、そっか。

エリちゃんだって、成長してる。

通形さんの巻き戻しだって成功させたんだから、信じてあげないとダメか。

そう思って、私は私にできることをしっかりとしておくべきだと思いなおした。

 

「分かりました……すいません……我儘言って……青山くんも……頑張ってね……」

 

「メルシィ☆……とは言っても、今日はあくまで作戦会議だけどね」

 

「でも……今日……お父さんと……お母さんを説得するんでしょ……?なら……やっぱり……頑張ってねであってるよ……」

 

「……そうだね。ありがとう」

 

青山くんに激励の言葉をかけると、彼は小さく笑みを浮かべて頷いた。

やっぱり、青山くん的にもいろいろ思うところはあるみたいだった。

まあ、協力してくれないって言うなら心操くんで無理矢理洗脳するだけなんだろうけど、それでも、進んで協力してもらいたいっていう風に考えているみたいだった。

 

 

 

そんなこんなで、今日の訓練も終わった。

青山くんもエリちゃんも、今日やるべきことは無事に終わったようだった。

明日の出立の準備は、皆もう終わっている。

というよりも、皆最低限の荷物しか準備していないのだ。

私だって着替えくらいしか準備してない。

必要最低限のものだけを持っていくつもりだった。

そんな準備も終わって、今は男子も女子もお風呂に入って、今日の疲れを取っているところだった。

のんびりお湯に浸かっていたら、三奈ちゃんがぼやくように口を開いた。

 

「ついに明日にはここを出るのか~」

 

「ここに帰ってくるのは、全部が終わってからになるのよね」

 

「そういうことになりますわね」

 

百ちゃんと梅雨ちゃんも、ちょっと緊張した面持ちで三奈ちゃんのつぶやきに続いていく。

それを受けて、ぼんやりした様子の透ちゃんがポツリと呟いた。

 

「本当なら、今頃2年生になって、後輩も出来てたはずだったのにねぇ」

 

「……鍋パの時と……言ってること違くない……?」

 

「有能な後輩来ちゃうかも~って言って怖がってたよね、葉隠」

 

「やだ~とか言ってたよね」

 

「そ、それはそうだけどさ!それとこれとは話が違わない!?」

 

透ちゃんに私と響香ちゃん、お茶子ちゃんの3人で透ちゃんの過去の発言との矛盾にツッコむ。

それを聞いた途端、透ちゃんはプンプン怒っているようなポーズを取り出した。

まあ表情がちょっと笑ってるし、感情も怒ってる感じは皆無だから冗談なのはすぐに分かる。

 

「まあでも、皆でまたここに戻ってきて、また授業受けるんだもんね!」

 

「そうね」

 

「授業受けれても……後輩ができるような状況かは……分からないのが何とも言えない所……」

 

「そうだとしてもさ!先生たちに教えてもらいたいこと、まだいっぱいあるし!頑張ろうよ!」

 

「そのためにも、誰一人欠けることなく生き残らないといけませんわね」

 

百ちゃんの言葉に、皆もすぐに気合を入れなおす。

敵が強大なのは百も承知だ。

それでも、やらなきゃいけないことがある。

緑谷くんだってそうだし、轟くんだって荼毘……燈矢と向き合おうとしている。

私たちも、頑張らないと。

 

「でも、まだヤオモモ以外場所決まってないんだよねぇ」

 

「ヤオモモは、雄英で死柄木に破壊された場所を補修する材料作るんだよね?」

 

「ええ、パワーローダー先生たちと協力して」

 

「女子は他に誰も言われてないもんねぇ……瑠璃ちゃんもまだ知らない感じ?」

 

「ん……というより……緑谷くん……青山くん……轟くん……百ちゃん……上鳴くん以外……まだ決まってないよ……うちのクラス……」

 

「そっかぁ」

 

皆もちょっと不安になってるけど、誰が、どこの戦場に配置されるのかも、まだ言われてない。

というよりも、緑谷くん、青山くん、轟くん、百ちゃん、上鳴くん以外はまだ決まってもいない。

……だけど、私は、どこの戦場に配置されるか、希望を出すつもりだった。

オールマイトたちが私をどこに配置するか迷っていたのは知っている。

あの時の波動弾とかビームの遠距離攻撃に期待してAFOに割り振るか、ギガントマキアの腕を切り飛ばした一撃に期待して死柄木のところか、ギガントマキアのところか、一方的に蹂躙した荼毘のところか、それとも、感知で位置を把握できるトガのところか。

スピナー以外の幹部のところは、軒並み候補に挙がっているようだった。

だけど、だからこそ、私にはやりたいことがあった。

他の戦場に私じゃないとダメなことがないなら、私は、トガとの戦場に、割り振って欲しかった。

オールマイトに伝えるのは、ここを出て向こうについてからにするつもりではある。

 

「……私は……配置される場所の……希望を言うつもり……通るかは……分からないけど……」

 

「希望?」

 

「波動の配置とか、先生めっちゃ悩んでそうだけど大丈夫かな……」

 

「まぁ……悩んでるのはほんと……スピナー以外……すべての幹部が候補に挙がってたし……ギガントマキアのところも候補になってた……」

 

響香ちゃんの呟くように心配してくれる言葉に、先生たちが実際に悩んでいたのを伝えてしまう。

そんなやり取りをしている間に、透ちゃんが真剣な表情で問いかけてきた。

 

「……トガヒミコのところ?」

 

「トガ?なんで?」

 

「……瑠璃ちゃん、トガに勧誘されてたから……似た者同士だとか言われて」

 

「勧誘!?」

 

「それは、いつの話なのかしら?林間合宿ではされてなかったわよね?」

 

「仮免試験の1日目。二次試験が翌日に延期になったでしょ?あれ、トガが侵入したのを、瑠璃ちゃんが公安委員会に伝えて、警戒のために延期した感じだったから……」

 

「……あぁ!?あの人がトガヒミコだったの!?」

 

「ん……透ちゃんの言う通り……トガのところであってる……」

 

透ちゃんが、守秘義務のある内容を話してしまっていた。

もう治安は崩壊しちゃったし、秘密にしておく意味はないんだけど。

そんな透ちゃんの言葉に、お茶子ちゃんが驚愕の声を上げる。

まだ気づいていなかったらしい。

まあそんなことは今はいい。透ちゃんの言ってた理由で概ねあってるし。

 

「トガが似た者同士だって言ってたの……別に……間違ったことを言ってるわけじゃないんだよ……小さい頃の環境とか……自分の感情を……思ってることを隠して……過ごしてきたところとか……私とトガは……お姉ちゃんみたいな……信頼できる人がいたかどうかっていう……小さな違いしか……なかったから……だからこそ……私が止めないといけないって……思ったから……」

 

「……そっか」

 

「ですが、大丈夫ですか?トガは波動さんの感知をすり抜けるのですよね?」

 

百ちゃんが心配そうに聞いてくる。

それはその通りだけど、集中して見続ければその限りじゃない。

むしろ、その特性は私以外に対しての著しい脅威だし。

 

「悪意を感じづらい上に……ミスディレクションで思考も読めなくなるせいで感覚は狂うけど……集中して見続ければ……場所は分かるから……私なら……変身も見抜けるし……」

 

「あー、お互いに相手にとっての脅威になってる感じなんだ」

 

「ん……だから……直接戦闘で困るのは……お互い様……」

 

皆も頷くようにして納得した様子を示してくれる。

お茶子ちゃんだけは蛇腔でトガと色々あったみたいで考え込んでいるけど……

お茶子ちゃんはお茶子ちゃんで、トガと色々話したいことがある感じみたいだった。

 

その後もしばらく皆で話して、お風呂から出た。

男子は男子で轟くんの冷たい炎のことで盛り上がったりしていたみたいだけど、そう変わらないくらいの時間でお風呂から出てきていた。

明日は朝早いし、もう休もうってことで部屋に戻った。

移動だけとは言っても、相手もイレギュラーな行動を取ってくる可能性はあるわけだし、体力は残しておくに越したことはなかった。

仮設要塞っていうのがどういうところかまでは分からないけど、皆、気合を入れなおしていた。

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