波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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決戦前日

配属希望を出した翌日には、まだ配属先が決まってなかった皆にも配属先が伝えられた。

青山くんの両親からAFOへの連絡も、とりあえず反応からしてうまくいっていると思える状態みたいだ。

明日、緑谷くんを孤立させた青山くんから、AFOに連絡をするという手筈らしい。

つまり、明日が決戦の時だ。

 

 

私の配属は、奥渡島。

何をするか分からないトガを隔離する場所に選ばれた、太平洋の沖合約200kmにあるリゾート地。

ここに、ギャングオルカを筆頭にセルキーを始めとした海で有利に動くことが出来る個性の持ち主たちと、シリウスら感知系個性の持ち主を集める。

そこに、希望を出した私と、トガと接触回数の多いお茶子ちゃんと、セルキーらと連携を取ったことがあって海でも有利に動ける梅雨ちゃんの3人が、配属されていた。

トガは、私を中心に対応に当たることになっている。

私が一番トガと相性がいいから、当然ではある。

感知で常に位置を把握できて、戦闘能力があることも保証されている私を中心に据えて、それをギャングオルカたちにサポートしてもらう。

 

他の配属地域は……

死柄木を閉じ込める雄英に、ベストジーニスト、ミルコさん、エッジショット、相澤先生を筆頭としたプロヒーロー。

学生は、緑谷くん、爆豪くん、物間くんに加えて、莫大な遠距離攻撃を放てるお姉ちゃん、透化で攻撃をいなせる通形さん、ポテンシャルならプロの中に入ってもトップクラスの天喰さんのビッグスリー。

AFOを飛ばす群訝山荘跡地には、個性を取られにくいヒーローたちを集める。

プロヒーローはエンデヴァー、ホークス、シンリンカムイを筆頭とした、飛んだり遠距離攻撃ができるプロヒーロー。

学生は、響香ちゃんと常闇くん。

荼毘を飛ばす神野区には、炎への耐性が高いものが中心として編成されている。

バーニンを始めとしたエンデヴァー事務所の炎のサイドキッカーズといった、炎熱系の個性の持ち主が中心だ。

そこに、荼毘への対応に当たる轟くんと、そのサポートに飯田くんが配属される。

黒霧奪還に来るのは容易に予測できるから、黒霧がいるセントラル病院にも人が配属される。

結局、情報戦には引っかかってくれなかったらしい。

マイク先生を始めとしたプロヒーローと、希望を出した障子くんと口田くんが配属される。

ギガントマキアは、蛇腔総合病院跡地に拘束されている。

その奪還阻止に、Mt.レディと、類まれな拘束力を持つ峰田くん、Mt.レディの武器を生成できる小大さん、ギガントマキアに一矢報いた切島くんと三奈ちゃんと、後は洗脳でギガントマキアを操れる可能性のある心操くんが配属された。

そして、ダツゴクの中でも特に力を持っている存在、ギャシュリーやクニエダを飛ばす先として想定されている、多古場競技場。

そこに、クラストを筆頭としたプロヒーローと、砂藤くん、尾白くんが配属される。

さらに、どうしてもワープゲートを通らないですり抜ける者が発生する可能性があるから、仮設要塞"トロイア"に、リューキュウ、ファットガムを筆頭としたプロヒーロー。

それと、青山くんと透ちゃんもそこに配属されていた。

透ちゃんに関しては、青山くんとの連携に慣れているのと、AFOと死柄木以外ならどんな相手が残っても潜伏して奇襲を仕掛けられる可能性がある汎用性の高さを見込まれての選抜だと思う。

 

後は百ちゃんが雄英内で資材の生成、上鳴くんが死柄木隔離の為のエネルギー生成の役割を担っている。

A組は全員主要地域に割り振られた感じだ。皆、気合を入れなおしていた。

 

 

それを聞いて、私はお姉ちゃんがいる3年生の仮設要塞の方に顔を出していた。

一応、先生にも確認して許可をもらっての訪問でもある。

お姉ちゃんが死柄木の所に割り振られたのが、ちょっと心配だったのだ。

お姉ちゃんも訓練を終えて天喰さんたちと話していたみたいだけど、私を見てすぐにこっちに駆け寄ってきてくれた。

 

「瑠璃ちゃん!どうしたの?」

 

「ん……お姉ちゃんと……少し話したくなって……」

 

「そっかそっか!じゃあちょっと私の部屋行こっか!」

 

お姉ちゃんは私の言葉に、嫌な顔一つしないで手を引っ張って部屋まで連れて行ってくれた。

お姉ちゃんの部屋も、特に何もない殺風景な感じなのは、私たちと同じだった。

やっぱり服くらいしか持ってきてないんだと思う。

そんなことを考えながら、お姉ちゃんに話しかけるために口を開いた。

 

「お姉ちゃん……死柄木のところに配属されるって……聞いた……」

 

「うん。天喰くんと通形と一緒にね……心配になっちゃった?」

 

「ん……心配……」

 

「そうだよねぇ。でも、私も瑠璃ちゃんが心配だから、お互い様かなぁ」

 

私の言葉に、お姉ちゃんは小さく笑みを浮かべながら、私の頭を撫でてきた。

いつも通りの丁寧で心地いい撫で方に、思わずお姉ちゃんに抱き着いてしまう。

そのまましばらく、お互いに何も言うことなく時間が過ぎ去っていく。

お姉ちゃんが心配してくれているのは、嫌と言うほど私に伝わってきていたし、私がお姉ちゃんを心配していることも、お姉ちゃんは分かり切ってるみたいだった。

だから、それに関しては、もうお互いに何も言わなかった。

 

しばらく経ってから、お姉ちゃんは私を撫でながらにっこりと笑顔を浮かべて口を開いた。

 

「そういえば!聞いたよ瑠璃ちゃん!お父さんとお母さんにヒーローになるって言ったって!」

 

「ん……私……お姉ちゃんだけじゃなくて……皆を……大切な人たちを守れる……ヒーローになる……初めて、そう思えたから……」

 

「そっかそっかぁ!ついに瑠璃ちゃんも、私を手伝うためなんて理由じゃなくて、ちゃんと自分の夢が出来たんだ!」

 

お姉ちゃんは、気にしないようにはしていたみたいだけど、そのあたりのことはやっぱり心配していたみたいだった。

私がお姉ちゃんを手伝うためだけに、他を一切気にしないで、周囲から罵声を浴びせられる可能性のあるヒーローになることを、すごく心配してくれていた。

だから、あれだけ非難されて、友達と一緒に立ち上がって、大切な人の為にヒーローになりたいって言ったのを、すごく安心してくれてたみたいだった。

 

「お姉ちゃん……結構私のこと心配してたの……?」

 

「えー?するでしょー。だって、妹が自分の夢とか何も言わずに、私のことを手伝うために同じ仕事するって言ってるんだよ?これで心配しないお姉ちゃんいると思う?」

 

「でも……お姉ちゃん……私と一緒にいる時にそんなこと……考えてなかったよね……?」

 

「うん?そうだった?その時々で思ったことを隠したりしてなかったはずだけど」

 

お姉ちゃんはちょっときょとんとした感じの表情で聞き返してきた。

嘘は、吐いてなさそうだ。

……お姉ちゃん結構移り気だし、素直にいろんなことを考えてるから、分かりづらかったとか?

よくわからないな。実際読めてなかったし。

まぁ心配とは言っても負の感情とかそういう感じのものではなかったみたいだし、パッと分かるものじゃなかったのは確かかな。

 

「まあでも、これで瑠璃ちゃんにもちゃんとした夢が出来たんだから!葉隠さんも、A組の皆もいるし!もう安心だね!」

 

「安心……なのかな……?」

 

「安心だよ!私の安心度が全然違う!」

 

「……お姉ちゃんが安心なら……私も安心……」

 

「あはは!その辺は相変わらず!」

 

私が思ったことを素直に返すと、お姉ちゃんがケラケラ笑った。

うん、お姉ちゃん可愛い。

やっぱりお姉ちゃんがいるだけで世界平和なんて容易いな。

このお姉ちゃんの可愛さを世界に知らしめなければ。

そんなことを考えていたら、お姉ちゃんは私を撫でるのをやめて、目を合わせて話し始めた。

 

「私たち、これが終わったら卒業式してもらおうと思ってるんだ!今まで通りにはできないだろうし、瑠璃ちゃんも協力して欲しいな!終わったら一緒に色々考えよ!」

 

「ん……!任せて……!お姉ちゃんの門出……!!私が盛大に盛り上げるから……!!」

 

「私だけじゃなくて、皆の卒業式だからね!あんまり私の事だけで盛り上げたらダメだよ!」

 

「…………わ、分かった……気を付ける……」

 

お姉ちゃんの最高の卒業式を作るために一気に考えを巡らせていたら、お姉ちゃんに注意されてしまった。

お姉ちゃんに言われてしまったら、仕方ない、のかな……

凄く残念だけど、お姉ちゃん1人を盛り立てまくって布教しまくる卒業式は脳内で却下した。

悲しい。

お姉ちゃんがそんな私を見てさらに笑い始めているのがちょっと不本意だった。

 

 

 

しばらくお姉ちゃんと話し続けて、私はA組の方の仮設要塞に戻ってきた。

皆、部屋で集まって話したりして英気を養っている。

爆豪くんなんて、友達じゃないって言っていたはずの轟くんの部屋で話していた。

そして、透ちゃんは私を待っていてくれたみたいで、扉を開いて入ったところで勢いよく駆け寄ってきた。

 

「おかえり!ねじれ先輩元気そうだった?」

 

「ん……いつも通り……可愛くて天使なお姉ちゃんだった……」

 

「よかった!じゃあ私の部屋で一緒にのんびりしよ!」

 

「分かった……って、いたいっ……いたいから引っ張らないで……!」

 

透ちゃんにぐいぐい腕を引っ張られて、ちょっとだけ痛みを覚える。

……透ちゃん、不安な感じかな。

思考も感情も、必死で取り繕おうとしてるけど隠しきれてない。

そのままちょっと震える手で私のことを引っ張る透ちゃんにされるがままにされて、透ちゃんの部屋に連れ込まれた。

 

透ちゃんの部屋で、ベッドを背に隣り合わせに座ってぽつぽつと話し続ける。

やっぱり、透ちゃんの不安が結構強い。

その不安を軽減できるように、透ちゃんと何気ない話から話し始めて、ゆっくり話していた。

そんな時間がしばらく過ぎた後、透ちゃんが真剣な表情になってポツリと呟いた。

 

「いよいよ明日、だね」

 

「ん……明日……」

 

「瑠璃ちゃんは不安じゃないの?」

 

「……不安じゃないわけじゃないけど……お姉ちゃんのことも心配だし……」

 

そこまで言ったところで、床に置かれていた透ちゃんの手に、自分の手を重ねる。

 

「透ちゃん、私ね……!さっきお姉ちゃんと約束してきた……!これが終わったら……3年生の卒業式を、盛大にやるから……!大天使お姉ちゃんの卒業式!!私も協力して……!過去に類を見ない盛大なものに仕上げなきゃいけないから……!透ちゃんも協力して欲しい!」

 

「……ぷっ、瑠璃ちゃんこんな時にそんなこと話して来てたの?」

 

透ちゃんがちょっと噴き出しながら、私にそんなことを聞いてくる。

『相変わらずだなぁ』なんて考えているけど、お姉ちゃんのことで盛り上がって何が悪い。

あんなに可愛くて綺麗で最高なお姉ちゃんがいたらこうなるのも仕方ないだろう。

 

「だから、皆で、お姉ちゃんを盛大に送り出すんだよ!!」

 

「……分かった、私も協力する!皆がびっくりするような卒業式にしよ!」

 

「ん!透ちゃんも協力してくれれば成功間違いなし!」

 

そこまで言ったところで、私も透ちゃんも、ちょっと緊張していた糸が途切れて笑い出してしまった。

ひとしきり笑った後、透ちゃんと改めて手を重ねて、ゆっくりと言葉を続ける。

 

「頑張ろうね……」

 

「うん!頑張ろうね!」

 

透ちゃんと気合を入れなおして、気を引き締める。

いよいよ明日は、作戦決行日だ。




配属先一覧
ヴィラン(予定) ヒーロー(一部のみ記載)
AFO     エンデヴァー(No.1)、ホークス(No.2)、シンリンカムイ(No.7)、耳郎、常闇
死柄木     ベストジーニスト(No.3)、エッジショット(No.4)、ミルコ(No.5)、相澤、緑谷、爆豪、物間、ビッグ3
荼毘      炎のサイドキッカーズ、轟、飯田
トガ      ギャングオルカ(元No.10)、瑠璃、麗日、蛙吹
スピナー    マイク、障子、口田
蛇腔(マキア) Mt.レディ、心操、峰田、芦戸、切島、小大
多古場     クラスト(No.6)、尾白、砂藤
(ギャシュリー、クニエダ)
トロイア    リューキュウ(No.10)、ファットガム、青山、葉隠
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