「わざわざ来てもらってすまない」
決戦の前日、私はナイトアイに呼び出されていた。
その内容自体は、既に分かっていた。
ナイトアイの予知を、ここ毎日してきたけど、オールマイトの死の回避につなげられていなかった可能性が高いから、その対策として、やるべきことがある。
ただそのやることは、緑谷くんやエリちゃん、塚内さん、相澤先生と、話を通していない人を呼んでいるから、先に私を呼んで、詳細に関しては話を詰めておきたかったらしい。
「大丈夫です……用件は分かってます…………私には……どこまで教えてもらえますか……?」
ナイトアイの予知は、写真を連続で見ている感じらしい。
そのせいか、思考を見ていても断片的過ぎて予知の内容が読み切れないのが問題だった。
だから、私も予知の内容は把握しきれてない。
昨日再確認したオールマイトの予知で、死が覆っていなかったことが分かっているだけ。
他のことは、正直そこまで分かってない。
ただ、ナイトアイとしても考えがあって話していない感じだ。
未来を話すことで、変えたくない部分、変えてしまったらいけないプラスの要素も変えてしまう可能性がある。
だから、どこまで話すのかはナイトアイに任せて、なるべく聞かないようにしていた。
「……そうだな。波動本人に関わらない部分は教えてもいいと思っている。私がオールマイトの予知をした翌日から、毎日予知をしていたのは知っているな。予知をしたのは順番に、エンデヴァー、ギャングオルカ、緑谷。そして、昨日再びオールマイトを見た」
「はい……そこまでは大丈夫です……」
私がそこまでは把握していることを肯定すると、ナイトアイは小さく頷いて、説明し始めた。
「まずエンデヴァーだ。エンデヴァー、ホークスを筆頭としたヒーローたちの連携によって、AFOを燃やし尽くすことに成功したが、そこで巻き戻しを使っていた。そのまま、AFOは全盛期の肉体に戻った。その後、ワープゲートを通った荼毘が姿を現している。ワープゲートは個性の複製の産物か、黒霧かは分からん。一応プレゼント・マイクに伝えはしたが、それでどうにかなるかはなんとも言えんな。荼毘に関しても、バーニンと轟に伝達してある」
「……蛇腔にヘドロワープの脳無がいたので……ワープゲート持ちの脳無がいる可能性は……ゼロじゃないと思います……」
「ああ。その報告は私も受けている。その上での判断だ。エンデヴァーに全盛期に戻る可能性があることと、荼毘が来る可能性があることは伝えている。だが、私の今までの経験からして、変わらない可能性も高い。今まで未来が変わったのは、緑谷の一件だけだからな。だからこそ、失敗した時や、過程が変わっても結果が変わらなかった時に備えて、対応の指示を出している」
ナイトアイの言うことは、その通りだと思った。
実際、未来を変えるのは生半可な方法じゃだめだと思うし。
それに、結果を変えようとして、変えたくない過程が変わるのは絶対にダメだし。
さっきから何回も思考にトゥワイスが過ってるのに、一切そこに言及しないし、私に関わる可能性があるのは明らかだ。
ギャングオルカの予知をしているのが、その証拠ですらある。
私本人を見てないのは……ナイトアイの未来の見方だと私の感知してる内容とかテレパスは分からないし、万が一遠くで読むだけになられると予知1日分を無駄にする可能性があるから、ギャングオルカの方にした感じだろうか。
とりあえず内容を言わないってことは、捻じ曲げたいような未来じゃないんだろうけど……
「次はギャングオルカだな。これに関しては、そこまで言えることがない。言うべきではない」
「……大丈夫です……そんなに聞くつもりはないので……」
「それでいい。次は緑谷だな。だが、ここに関しても、そこまで言うことはないな。警察とともに練った当初の作戦通り、順調に推移していた。ミリオと君の姉と、天喰の連携、ミルコの遊撃、ベストジーニストとエッジショットの遠隔攻撃による行動の誘導、爆豪のサポート、協力者の攻撃。それら全て、緑谷に対していい方向に働いていた。抹消さえあれば、あれで行けるだろうと思えるくらいにはな。問題はこの後だ」
緑谷くんのところが一番心配だったから、そこが問題ないなら結構安心できる。
ナイトアイはオールマイトの死の回避に注力してる関係からか、最後の所までは見ていないみたいだけど、経過が順調になるっていう予知が見えるだけで結構安心できた。
そんな中で、ナイトアイは深刻な表情で話を続けた。
「問題はオールマイトの予知だ。死の未来は変わらなかった。周囲の状況や過程に多少の変化があった程度でしかない」
「……でも……それをどうにかするための……今日の集まりなんですよね……?」
「ああ、そうだ。未来を変えるには、大きなエネルギーがいる。そして、それを必ず成し遂げることが出来るかは分からない。現に、対策を打っているにも関わらず、未来が変わっていない。だが、それならそれで、打つ手がある」
そこまで言うと、ナイトアイは一息置いて、眼鏡に手を添えながら静かに言葉を続けた。
「死の予知を変えることができないなら、受け入れてしまえばいいのだ」
ナイトアイは、覚悟を決めた真剣な表情で、言い切った。
ナイトアイの内心は、その賭けに出なければいけなかった不甲斐なさと、一方で、その賭けが成功すれば、オールマイトを助けることが出来るという可能性に希望を見出している前向きな感情とが、ごちゃまぜになっていた。
「私も、あまり取りたくない方法ではあったが、こうするしかないと判断した。一度死に、予知が成就されてしまえばいい。私は死後の予知はできない。そこから先は読めなかったから、成功するかは分からない。だが、死を受け入れてなお、希望を見出すことが出来る男の存在を、私は、私たちは知っている。できることなら、頼りたくはない男だったが……」
「……治崎……ですね……そのために私を呼んだ……」
「そうだ。そのために、今日の予知を取っておいた。奴は、エリちゃんに心から謝罪することを条件に、死穢八斎會組長と引き合わせてもらう約束を、緑谷としていたらしい。これからその謝罪と、問題が無ければ治崎の巻き戻しを行いたい。君にも、読心で奴の言葉に嘘が無いかを確かめて欲しい」
ナイトアイのその提案を、拒否する理由がなかった。
オールマイトのこともそうだし、エリちゃんのこともそうだ。
エリちゃんにとっては、凄まじいトラウマと直面して、しかもそのトラウマの対象を治す必要がある。
だからこそ、私も参加して治崎の本心を確かめつつ、エリちゃんのケアをした方がいいと思っていた。
「分かりました……任せてください……」
「ありがとう。それと……一つだけ、君に関することも伝えておく。昨日、オールマイトの予知をした際に、死ぬ間際に、君の姿が見えた。ここから先を見ることが出来ないから、これがいい予知なのか、悪い予知なのかは分からない。だから、伝えるだけに留めておく。状況を見て、君自身がどうするか決めてくれ」
「……はい……」
ナイトアイのその予知の意味が、どういうことなのかは分からない。
だけど、少なくとも私がAFOに立ち向かう可能性があることが、示されていた。
そして、話が終わって、緑谷くんたちが待っている部屋に、ナイトアイと移動した。
ナイトアイの方から警察には話を通したみたいで、オールマイトの死には触れずに、作戦の重要な立ち位置にいることを説明して理解を得たようだった。
もう既に雄英から先生の護衛付きで来たエリちゃんもいて、緊張した面持ちでスカートを握りしめていた。
一応、エリちゃんにも説明はされていて、理解はしてくれた上でここに来てくれている。
通形さん、緑谷くん、私の役に立つならって言って承諾自体はしてくれたらしいけど、気持ちだけでどうにかできる問題でもないのは確かだった。
「エリちゃん……大丈夫……?」
「る、ルリさん……!」
声をかけると、エリちゃんが走って抱き着いてきた。
そのままぎゅっと抱きしめてあげる。
やっぱり、あれだけの残虐な行為をしてきた男に会わなければいけないとなると、負担が大きいみたいだった。
数日前に相澤先生の短期間分の巻き戻しを成功させていたけど、それとこれとは話が違うのは言うまでもなかった。
しばらくそんな感じであやし続けて、エリちゃんがある程度落ち着いたところで、緑谷くんがエリちゃんに優しく声をかけてあげていた。
私に抱き着いたままそれを聞くエリちゃんを眺めながら、治崎の波動を注視する。
あいつは、組長に謝りたいという強い思考と、そのためにエリちゃんにも謝ろうとはしていた。
目的のための謝罪。それが本心かは別の問題があるけど、一応、嘘とか、取り繕った謝罪をしようとしているわけではなかった。
そんな緑谷くんの声掛けも終わって、警察が治崎を連れてきた。
今の治崎は両腕が無いから、脅威なんてない。
だけど、エリちゃんの表情はこわばって、がたがた震え始めていた。
「壊理……」
「ひっ……!?」
「大丈夫……大丈夫だからね……無理はしないでいいから……」
縋りついてくるエリちゃんを抱きしめて、優しく撫でてあげる。
「もう、だいじょうぶ……」
「ん……ちゃんと見てるから……大丈夫だからね……」
少しの間あやして、落ち着いたところで、エリちゃんは自分で私から離れて、治崎の前に進んでいった。
その姿を見た治崎は、顔を少しゆがめてから跪いて、頭を床に擦り付けた。
「すまなかった……!」
潔癖症の気があるみたいだから、そのせいで嫌悪感を感じているっぽいけど、この謝罪の言葉に嘘はない。
「何もかもが終わってから、そこの病人に言われてから、何度も何度も考えた。あの時こうしていればよかったとか、くだらないことを、なんどもっ……!だが、この末路は、親父が俺に警告してくれていたことだったとようやく気が付いたっ……!そのことを親父に謝りたいと思ったが、何もかも、遅かったっ……!俺は、親父の言う人の道から逸れた行いをしていたっ……!だから、それを謝らなければいけなかったっ……!」
治崎が懺悔の言葉のようなものを、ツラツラと話し続けた。
エリちゃんも、その姿を静かに見つめている。
私も、治崎の言葉に嘘が無いか、何かを企んでいないかを、慎重に見極めていた。
「これは、親父に会わせてもらうためにしている謝罪だっ……!だが……親父への謝罪を考えて、そこの病人の言葉を聞いて、改めて、お前にしてきたことを振り返った……!そのうえで、お前に対しても、謝るべきだと、謝らなければ、許しを得なければ、親父に顔向けが出来ないと、ようやく気が付いたっ……!本当にすまなかったっ……!」
治崎はそこまで言うと、土下座したまま動かなくなった。
……一応、忠告してくれていた組長に謝罪したいのも、組長の忠告を思い出して、エリちゃんに謝らないと顔向けできないと思ったのも、嘘ではなさそうだ。
エリちゃんが恐る恐る私の方を振り向いて確認してくるのに対して、頷いて答えてあげる。
それを見たエリちゃんは、表情を引き締めて、ゆっくりと治崎の方に歩みを進めた。
「……あなたは、こわいけど……デクさんが、ルリさんが、あなたをひつようとしてる。だから、私は、あなたのことを……」
そこまで静かに言って、エリちゃんの手が治崎に触れた。
それと同時に、エリちゃんの角が光を放った。
「瑠璃ちゃん、大丈夫?上の空だけど」
「ん……大丈夫……そろそろ着くよ……ヒミコちゃん……」
治崎のあの感じなら、最低限は信用できる。
そんなことを考えながら、必死で加速し続けて、ようやく目標地点が近づいてきた。
そして、凄まじい悪意と憎悪が渦巻く男と、その正面に、ズタボロになって倒れているオールマイトが、感知範囲に入ってきたのを、感じ取った。
ナイトアイの予知理由
1日目オールマイト:言わずもがな
2日目エンデヴァー:前日に全盛期のAFOが見えたため、その対応に当たっていたはずの筆頭のエンデヴァー
3日目ギャングオルカ:ここが問題ですね
ナイトアイはエンデヴァーを見た際にワープゲートから出てくる荼毘、トゥワイスを確認しています
これを踏まえた上で予知対象を考えると、マイク、瑠璃orギャングオルカ、轟orバーニンが考えられます
荼毘に関してはエンデヴァーの予知で結末も把握しているので、この中で優先度高めなのはワープゲートとトゥワイスですね
ここで問題になるのは、このワープゲートが黒霧なのか他の脳無なのかが分からないことです
そもそも黒霧は脳無であり、個性の複製が出来る以上他のワープゲートの隠し玉を作られている可能性が0ではありません
分断に成功して即座に帰還しないことから分断が有効であることは分かりますが、座標が分からないとワープ出来ない個性の性能上、黒霧でも脳無でも即座に対応は出来ないことも分かります
そしてもし黒霧じゃなかった場合、マイクを見てしまうと収穫0で1日を無駄にします
そのため、ギャングオルカか瑠璃の2択を選んだ方がいいと判断しています
瑠璃にしなかった理由は、瑠璃の感知、読心、テレパスは、ナイトアイの予知だと確認できないためです
万が一にでも離れたところからサポートなんて行動に移られたら何も見えません
そのため、奥渡島のトップヒーローであるギャングオルカを選んでいます
4日目緑谷:トゥワイスによって崩壊したら困る戦闘の行方の確認と、AFOが雄英に来ていないかの確認
ここでトゥワイスの消滅と対死柄木戦が問題ないことを確認しています
また、エンデヴァー、ギャングオルカの予知で瑠璃が即座にトガを追いかけたこと、緑谷の予知でそんなに時間差なくトゥワイスが消滅したことを確認したため、瑠璃がトガに勝ったと判断
そのため、変えない方がいいと判断して瑠璃には何も言ってくれませんでした
5日目オールマイト:未来が変わったか確認。結果は変わっていないことを確認
6日目治崎:蘇生結果の確認
結果は他人に言わずに、信頼できるとだけお墨付きして終わりです