「私はこのまま突っ込む……ヒミコちゃんはここで降りて……私を蹴れば下に飛べるから……ヒミコちゃんの着地の10秒後に……
「分かった……私にも戦えって、言わないんだね」
私がヒミコちゃんに指示を出すと、ヒミコちゃんは不思議そうに聞いてきた。
そんなに不思議なことだっただろうか。
「AFOのことは……あんまり好きじゃないとは言ってたけど……戦いづらいでしょ……?ここまでついてきてくれただけでも十分だよ……」
「……そっか。AFOさん、すごく強いから……死なないでね?」
「ん……じゃあ……行ってくる……!!」
ヒミコちゃんが私の身体を蹴って下に飛んでいった。
思考的に、AFOから一定の距離を保ったまま廃墟に隠れるみたいだし、多分大丈夫そうかな。
今のヒミコちゃんなら、ヒーローから逃げたりもしないだろうし。
……ただ、私がここで死んだりしたら、どこかに行っちゃいそうな気がするから、生き残れるように頑張らないとダメか。
そんなことを考えながら、ヒミコちゃんの動きを確認してすぐに波動の噴出をして、再度急加速をかけた。
私がAFOの目の前に着地したのは、オールマイトが吹き飛ばされた直後だった。
ゆっくりとオールマイトに近づこうとしているAFOとの間に、身体を滑り込ませた感じになっていた。
奇襲を仕掛けることも考えたけど、そもそも私はサーチに登録されている。
奇襲にならない可能性がある上に、万が一掴まれでもしたら個性を奪われる。
そんなリスクは取れなかった。
オールマイトは、纏っていた全身の装甲をボロボロに砕かれて、地に伏せていた。
傷だらけで、血が付いていないところはないんじゃないかってくらいの状態で、全身の骨も、内臓も、破壊され切っていた。
どこまで恨みを晴らそうとすればこんな状況になるんだってくらいの状況だった。
それに対して、目の前のAFOは無傷だ。
攻撃自体は加えていたんだろうけど、それによってできたであろう傷は、巻き戻しで全て無に帰しているのが容易に想像できた。
「まさか追いついてくるとはね。そうなると、彼女は寝返ったか。だが、一足遅かったようだね」
「……遅くない……ギリギリ……間に合ってる……」
「そうかな?まだ微かに息があるのは間違いないが、もはや虫の息だ」
AFOの言うことは、間違っていない。
実際オールマイトの心臓の動きはどんどん弱くなってきている。
数分持つかも怪しい状態だった。
だけど私たちは、最悪を予測して動き続けてきた。
ただ、治崎の蘇生は、身体を分解、再構成して成し遂げる物だ。
跡形もなく消されたら蘇生なんてできない。
今の憎悪に支配されているAFOなら、最後にオールマイトを跡形もなく消してから雄英の方に行く可能性が高い。
蘇生も含めた打倒の作戦を遂行するためには、物間くんが必須になってくるから、彼がいつ気絶から目が覚めるのかが鍵になる。
私がそれまでの間、AFOを食い止めて、オールマイトの身体を守り切るしかない。
「まあいい。あまり時間がないからね」
そう言って、AFOは私の方に手をかざしてきた。
ここで私が殺されれば……ここでAFOを通せば、オールマイトを殺されて、蘇生の可能性を消されて、また移動を開始するだろう。
そんなことになれば、ヘドロワープによって雄英から呼び寄せることができてしまう距離に到達する。
死柄木とAFOが合流したら、全てが終わる。
ここで食い止めないと、魔王2人に、蹂躙される。
そんなことになれば、世界の終焉だ。
AFOの、魔王の支配する世界になってしまう。
皆殺される。生き残った人たちも、恐怖で支配される。
そんなの、許せるわけがない。
「消えろ。オールマイトと共に」
その声が聞こえた瞬間、AFOの手から、キィイイイという不愉快な音が響き始めて、まばゆい光を放ち始めた。
何をやるかは分かる。その対処法も。
こっちの周囲100mはくだらないくらいの範囲を、衝撃波で一気に吹き飛ばして、私もろともオールマイトを消し飛ばすつもりだ。
このタイミングでどうにかできる可能性があるのは、あの技だけだ。
私が守るんだ。
オールマイトを、お姉ちゃんを、皆をっ!!
この魔王からっ!!
「私が……!皆を守るっ!!!私がっ!!!」
爆発的に増える波動を、一気に前方に押し出した。
次の瞬間、凄まじい衝撃波が、周囲を包んだ。
波動の嵐が吹き荒れているところだけは、その衝撃を軽減できているけど、周囲はそうじゃなかった。
オールマイトとAFOの戦いで、結構ボロボロになっていても、まだ形を保っていた廃墟群が、凄まじい勢いで崩壊していく。
ヒミコちゃんはAFOの後方の離れた位置にいるから巻き込まれていないけど、それでも、洒落になってない威力の衝撃波だった。
こんなのをこっち側に連発されていたら、オールマイトの身体を守り切れない。
それなら、遠距離から攪乱することで、私の方に攻撃を散らすしかない。
そう思って、AFOが放つ衝撃波が途切れた瞬間に、上空に跳び上がる。
「やはり、その力は厄介だな。僕に敵うわけではないが……」
AFOが無表情で私を見据えながら、『奪うなら、もう一人の僕が奪うべきだ』なんて考えている。
憎悪を手に入れたAFOが、憎悪でもブーストがかかることに対して興味を示していた。
……私の個性を、死柄木に奪わせようと考えている感じか。
今奪おうとしないのは、私の個性が巻き戻しでAFOの身体と一緒に消えるのを惜しんだから?
でもそんなの、奪って、合流して、譲渡すればいいだけの話だ。
出来ればそうしたいと思ってるだけか。
まぁいい。どんな要素でも利用して、AFOの気を引き続けるだけだ。
無視しても大丈夫と思われたらそこで終わる。
とにかく攪乱し続けないと、ダメだっ!
「波動弾っ!!!」
跳び上がりながら作り上げた巨大な波動弾を、AFOに投げつける。
AFOはそれを、片手で簡単にあしらってきた。
多分、衝撃波だと思うけど、早い上に規模が大きすぎて判断が付きづらい。
だけど、一か所に留まるのはAFOに狙われるだけだ。
高速で跳びまわりながら牽制し続けるしかない。
「羽虫が……今は一分一秒が惜しい。目障りだ」
その言葉と共に、AFOは全周囲へ衝撃波を放った。
その衝撃波を、上空に高速で跳び上がることで乗り越えて回避する。
そのまま波動弾を形成して、それをかざしながら、AFOの方へ落下する。
落下の勢いに、さらに波動の噴出を合わせて加速をかけていく。
「目障りなら好都合っ……!私は、避けるのは得意なんだよっ……!」
AFOに波動弾を押し付けて、そのまま私は波動の噴出による再ジャンプで離脱する。
AFO自身は、波動弾を軽くはじき返した。
そして、そのタイミングで、オールマイトの心臓が止まった。
「おいおい、手を下すまでもなく死んだのか!拍子抜けするじゃないか!君も、恩師の死に何の反応も示さないのかい?君の個性なら死んだのは分かっているだろう!随分冷たいじゃないか!」
AFOが、ニヤニヤと嘲笑うように煽ってくる。
でも、ここで乗ったらダメだ。
冷静ではいられなくしようとしているのは明らかだった。
「……オールマイトは……あなたを止めるために全力を尽くした……私もその意志を引き継いで……全力で動くだけ……」
こいつ、わざわざ嘘の感知まで使って煽る材料を集めてるのか。
私が嘘を吐いていないのか確かめようとしている。
……だけど、私は悪意を持って騙そうとなんてしていないし、少なくとも嘘は吐いていない。
感知には引っかからないはずだ。
「……嘘を吐いていないにしては、いくらなんでも落ち着き過ぎているな。何かの希望を見ている……まぁいい。それなら、その象徴ごと希望を打ち砕けばいいだけだ」
私の反応から何かあることを察したAFOが、さらに腕を構える。
その腕は、オールマイトの遺体の方を向いていた。
読まれるのはある程度仕方ないけど、それだけはダメだ。
さっきの衝撃波の時と同じように、オールマイトとAFOの間に身体を滑り込ませてどんどん溢れ出てくる波動を練り上げていく。
AFOの技は、さっきの衝撃波と違うのは思考を読んで分かった。
一点集中の、ビームのようななにかを放ってくる。
そこまで予測してから一拍置いて、凄まじい光量の光線が、AFOの腕から放たれた。
それに合わせて私も、一気に波動を放出していく。
さっきとは比較にならないほどの凄まじい光線が、波動の嵐を押し返してくる。
これ、多分さっきギガントマキアを一蹴してたやつか。
「まだっ……!!まだぁっ!!!」
波動の放出の量をどんどん増やしていくけど、それでも、AFOの高威力の光線が、私の波動を押し返してくる。
お姉ちゃんたちの助けがあってやっとギガントマキアの腕を切り飛ばした私の波動と、一瞬で腕を消し飛ばしていたAFOの光線では、勝負になってなかった。
それでも、こんなのを後ろにそらしたら、オールマイトの身体が消し飛ばされて、蘇生できなくなる。
それに、オールマイトへの恨みを晴らしたら、AFOは死柄木の方に向かってしまう。
そうなったら、ヘドロワープで緑谷くんと死柄木を呼ばれて太刀打ちできなくなる。
だから、何としてでもここで食い止めないと……!!
そう思って、波動を絞り出す勢いで、湧き出す波動を放出に回していくけど、AFOの光線が少しずつ迫ってくる。
本当にまずい、このままじゃ私諸共、消される……!
そして、防ぎきれなかったAFOの光線が、私の波動を完全にかき消して、ビームとしての体を為していないレベルまで霧散させられてしまった。
目の前に迫っている光線に、思わず目を瞑ってしまう。
死を覚悟したところで、肩を掴まれて、身体を後ろに引っ張られた。
次の瞬間、AFOの光線が何かに弾かれる凄まじい光と、耳をつんざくような爆音が辺りを襲った。
恐る恐る目を開けると、緑色にたなびくマントが視界を覆っていた。
誰なのかは、顔を見るまでもなく波動で分かっていた。
「遅くなってすまないっ!!だが、よくぞ持ちこたえたっ!!!私も加勢するっ!!!」
No.6ヒーロー、クラストが、両腕の盾でAFOの光線を、弾き返していた。