波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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油断

「ほぉ、クラストじゃないか。君の盾は確かに強靭だが、果たしていつまでもつかな?」

 

放出され続ける光線を、クラストさんが両手の盾を使って弾き続ける。

だけど、AFOの光線が徐々にクラストさんの盾を侵食し始めていた。

 

「クラストさんっ!!」

 

「来るなっ!!」

 

少しでも威力を減衰させるために波動の放出で加勢しようとしたら、クラストさんが即座に声を返してきた。

そして、そのまま私に対して思考を向けてきていた。

 

『長くは持たんっ!!限界まで弾き、周囲へ受け流すことでダメージはどうにかするっ!!君はオールマイトをっ!!蘇生できる可能性があるのだろうっ!?傷付いた身体でなお巨悪に立ち向かった偉大な男を、我らで救うのだっ!!』

 

クラストさんは、司令部から私が食い止めていたことと、読心できることを聞いていたようだった。

AFOに聞かれることが無いように、思考を向けることで意思を伝達してきていた。

オールマイトをどうして欲しいのかまでは思考としては向けてこなかったけど、何を考えてそう言ったのかはすぐに分かった。

少なくとも、攻撃の余波が届かない所まで、オールマイトの身体を避難させること。

それまでの時間を稼ぐと、クラストさんは言ってくれていた。

 

『分かりましたっ!!避難させたらすぐに戻ってきますっ!!』

 

私がテレパスで返すと、クラストさんはニヤリと笑って大きく口を開いた。

 

「この程度かAFOっ!!憎しみに囚われた哀れな男よっ!!」

 

「くく……煽るじゃないか。まあいい。その挑発に乗ってあげるとしよう」

 

クラストさんがAFOを煽って、AFOの気を引いてくれる。

それを受けたAFOがさらに光線の出力を上げていた。

その様子を尻目に、私は後方に倒れ伏しているオールマイトの所へ走った。

 

 

 

息絶えたオールマイトの身体は、とても見れた状態じゃなかった。

纏っていた機械は砕け散って、全身から夥しい量の出血をした痕跡があって、骨も、折れたり砕けたりしていない所を探す方が難しかった。

心臓が止まってなお、弱弱しく流れ続ける血が、その悲惨さを物語っていた。

だけど、オールマイトは、想定以上にうまく立ち回って、AFOの足止めをしてくれていたようだった。

だって、欠損している部位が一つもない。

纏う機械を砕かれても、骨を折られても、それでもなお、私が来るまでの間、ただ一人で、無個性のオールマイトが、AFOを……魔王を足止めしていた。

その事実に、驚愕せずにはいられなかった。

 

なにも事前情報もなくオールマイトのこの姿を見てしまっていたら、絶望してしまっていたかもしれない。

だけど、まだ蘇生の可能性はある。

一応、治崎から蘇生の条件は聞いている。

死んでから時間が経ち過ぎていないことと、身体の大半が消失しているなんていう状況にないこと。

それが、蘇生の条件だと言っていた。

なんでも、死んでから時間が経ってしまうと、分解、修復しても何故かうまくいかないらしい。

身体をもとの形に戻すことはできても、なぜか心臓が動き出してくれないと言っていた。

時間が経つことによって、修復しても治しきれない何かの要素があるのだろうか。

でも、とにかく時間との勝負だって言っていた。

だから、死体を放置して、決戦が終わってから蘇生するのは恐らく無理だろうというのが、治崎の見解だった。

だから、作戦は治崎をワープゲートでこの地点まで連れてくること。

そして、治崎が蘇生をしている間に、AFOは物間くんの抹消で個性を消してけりをつける。

それが、作戦の概要だった。

 

元々は、エンデヴァーたちの所に、物間くんが隙を見てワープして、抹消で個性を消すことでAFOをどうにかする作戦だった。

だけど、私がヒミコちゃんにトゥワイスへの変身を許したこと、ワープゲートでそれが大量に他の戦地に飛ばされたことが悪影響を与えた。

それに加えて、そもそも物間くんが抹消の扱いが未熟で先生には劣ってしまうこと、マニュアルさんのようなサポートをAFOが暴れる戦場では受けられないこと、物間くんがワープしてから抹消を使うまでタイムラグが出来てしまうこと、相澤先生と離れた物間くんは5分しか抹消が使えないこと、物間くんがサーチに登録されていることがネックとなって、大きな隙が出来なければそもそも呼ぶことすらも難しいと当初から言われてはいた。

だから、それが出来なかったのは仕方がない。

多分、ナイトアイの予知でもそう変わらない結果になっていて、変えようと動いたけどどうにもできなかったということなんだろうし。

だからこそ、ここでどうにかするしかなくなってしまった。

この後も、物間くん頼りの作戦になってしまうから、早く目を覚まして合流してくれることを祈るしかない。

 

そう考えながら、オールマイトを余波を受けにくい離れた位置まで運んだ。

見てるとは思うけど、一応位置情報を司令部の方に伝えておく。

これを伝えておかないと、物間くんが目を覚ましてもすぐに治崎が蘇生を始めることが出来ない。

そして、それを伝え終わってすぐにAFOの方に踵を返した。

 

 

 

「どうした?もう終わりか?」

 

AFOが、両手から光線を繰り出してクラストさんの盾を粉々に砕いていた。

それに対して、クラストさんはさらに追加で盾を生成しているけど、それを即座に砕かれていく。

私がオールマイトを運んでいる間にもその流れを何度も何度も繰り返していて、既にクラストさんはボロボロになってしまっていた。

 

「まだ、終わりじゃないさっ!!」

 

クラストさんが片腕の盾を砕かれながら、もう片方の盾をAFOに投げつける。

AFOはそれを軽くあしらうようにして砕いてしまう。

そのタイミングで、波動の噴出で爆発的な加速をかけて、一気にAFOの側面に回り込んだ。

 

「波動弾っ!!!」

 

「戻ってきたか。だが、その程度では傷一つつかないよ。それで、オールマイトの遺体を運んでどうするつもりだい?」

 

軽く衝撃波を放つだけで、大量の波動を練り上げて作った巨大な波動弾を、いとも簡単に打ち消してくる。

その動作をしながらの癖に、AFOはニヤニヤとおぞましい笑みを浮かべていた。

オールマイトに対する憎悪が濃すぎて、見ているだけで吐き気が凄まじい。

だけど、そんなことを気にしている余裕なんてなかった。

AFOは、光線と衝撃波だけで、私とクラストさんを軽くあしらい続けている癖に、憎悪のせいなのかオールマイトの遺体を損壊させようとしていた。

 

「リオルっ!!」

 

『ありがとうございますっ!!』

 

AFOが衝撃波を放ってくるのに合わせて、クラストさんが盾を私の前に投げ入れてくれる。

これの強度はさっき見せてもらった。

この衝撃波なら、この盾は砕けない。

それを認識しているからこそ、衝撃波で盾が吹き飛ばされないように、反対側から波動の噴出で盾に体当たりを加えて衝撃波をやり過ごした。

 

AFOを観察しながら、遠距離攻撃をし続ける。

波動弾、真空波、小規模な波動の光線。

それらを織り交ぜながら跳びまわって攻撃し続けるけど、悉くあしらわれてしまう。

それに織り交ぜるように、クラストさんが盾を投げて牽制してくれる。

それに対するAFOの反撃は、オールマイトの身体を狙われない限りは私も、クラストさんも、防御か回避に徹していた。

だって、時間さえ稼げば自然消滅してくれるなら、時間稼ぎすればいいだけだ。

私とクラストさんによる遅滞戦闘に、AFOは既に苛立ってきていた。

逃げて雄英の方に向かえばいいのに、向かおうともしない。

ここでオールマイトを無視して逃げられた方が、こっちの選択肢がないのにだ。

一応、私の波動の嵐で追撃はかけられるし、足を止めざるを得ないとは思う。

だけど、確実性に欠ける。

だから逃げられたら困るのに、それをしないのが本当に理解できなかった。

 

 

 

そして、そんなタイミングで、オールマイトの近くと、ここから少し離れたところにワープゲートが開いた。

私がそれを認識するのと同時に、AFOもそれを認識していた。

ワープゲートの中から物間くんが出てくるのを、サーチで完全に見られていた。

 

AFOは冷たい眼光でそちらを射抜くように見据えると、物間くんがゲートから出切る前に、そっちに向かって、ここまでの遅滞戦闘で一切見せなかった高速移動のような何かで移動を始めた。

 

「物間くん逃げてっ!!!」

 

「なに……―――」

 

叫んだ時には、もう遅かった。

リスクとして認識していた、最も恐れていた行動をされていた。

物間くんの前方で、宙に浮いたAFOが、手をかざしていた。

私ももう動き出しているけど、ここからじゃ間に合わない。

物間くんは、ワープゲートから抹消に切り替えようとしているけど、明らかに間に合っていなかった。

 

「既に見せたワープゲートと容易に想像がつく抹消の合わせ技とは、随分と舐めた真似をしてくれるじゃないか。その油断の報い、思う存分味わいたまえ」

 

その言葉と共に、AFOの手が一際強く輝き、物間くんもあまりのまぶしさに思わず目を瞑ってしまっていた。

 

「ファントムシーフっ!!!」

 

光線が放たれた瞬間に、物間くんとAFOの間に、盾の生成すら間に合っていないクラストさんが、身体を滑り込ませた。

僅かに生成されていた盾を器用に使って、最低限のダメージは軽減しているけど、AFOの光線は防ぎきれていなかった。

夥しい量の血をまき散らしながら、凄まじい轟音とともに、クラストさんが吹き飛んでいく。

 

その一瞬の間に、私は物間くんを抱き上げて一気に射線から外れた。

勢いを重視したせいで着地がうまくいかなくて、物間くんを庇いつつ転がってしまう。

途中で物間くんと離れてしまったけど、AFOの攻撃からは逃れていた。

 

「抹消使ってっ!!!早くっ!!!」

 

「あ、ああっ!!」

 

物間くんの髪が少し逆立って、AFOをその視界に収める。

これで、個性は使えない。

巻き戻しも抹消を使っている間は止まるだろうけど、それでも、無個性のAFO相手なら、いくらでも取れる方法は―――

 

 

 

なんだ、その手に持ってるもの、なんだ、その思考……

いつそんなものを……まさか高速移動しながら!?

まずいっ!!!

 

波動の噴出で物間くんとAFOの間に飛び込んでいく。

 

それと同時に銃声が響いて、脇腹に焼けるような痛みを感じた。

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