波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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波動の勇者

いつもの感覚で、波動の操作をしていく。

見えないけど、これでできていないわけがない。

何百回と繰り返した動作だ。

いつもなら圧縮できていると思えるような流れをしたところで、波動を噴出する。

それに合わせて、身体はいつも通り、一気に前方に吹き飛んだ。

やっぱり、見えなくても使うことはできる。

自分の波動も見えないから、感覚で量を調整するしかないけど、それでも、波動を使った戦闘はできると思えた。

 

そして、血まみれのヒミコちゃんに向かって手をかざすAFOに、飛び掛かった。

その手は、キィイイという音を発していて、何かの力が収束しているのが分かる。

今、AFOが私に気付いている様子はない。

多分、私と物間くんが役立たずになったと見て、サーチを使ってない。

だから、この一撃は奇襲になる。

だけど、AFOを一撃でどうにかできるとは思えない。

出来るとしたら、腕を逸らすくらいだ。

 

そう考えて、AFOの手に向かって、全力で発勁を放った。

 

「ヒミコちゃんに、手を出すなぁっ!!!」

 

「……なに?」

 

AFOの手が、私の発勁で弾かれてあらぬ方向を向く。

それと同時に手から光線が照射されて、凄まじい轟音を立てて誰もいない廃墟を破壊し尽くしていた。

 

AFOは、静かに私を見据えていた。

この距離にいること、それ自体がリスクだから、ヒミコちゃんを背にするようにしながら距離を取った。

 

「……確かに個性消失弾が当たったはずだ。個性因子も、損壊しているのを確認した。どういうカラクリだ?」

 

「さぁ……どういうカラクリだろうね……」

 

AFOを見据えながら、両手で波動弾を練り上げる。

自分の波動を感じることが出来ないから感覚でしかないけど、多分、波動が増えたりはしてない。

放出される量からして、通常時の私の波動しかないと思う。

だから、そこまで無理はできない。

それでも、抗うしかない。

 

「まあいい。戦えるというなら、君から蹂躙するだけだ」

 

そう言って、AFOが手をかざしてくる。

ヒミコちゃんが後ろにいるから、避けちゃいけない。

攻撃に転じても、止められるとも思えない。

波動を練り上げられるだけ練り上げて、盾にするしかないか。

そんなことを考えている間にAFOは準備を終えたようで、その手から、光線が放たれた。

 

迫ってくる光線に、波動弾をかざす。

守り切れるとは思えないけど、少しでも威力を減衰したい。

目の前に、極大の光線が、渦巻いて、周囲に暴風をまき散らしながら迫ってくる。

覚悟を決めて波動弾に波動を注ぎ続けて、少しずつ巨大になってきた波動弾は、なんとか身体を覆える程度になってきていた。

 

 

 

波動弾に光線がぶつかる。

そう思ったところで、目の前にワープゲートが開いた。

 

「波動っ!!遅くなったっ!!!」

 

物間くんの声が辺りに響く。

目の前に開いたワープゲートは、AFOの光線を完全に飲み込んでいた。

AFOは光線を出すのをやめて、物間くんを静かに見据えている。

 

そして、そんなAFOの背後から、AFOの光線には劣るけど、巨大なビームが放たれた。

 

「波動さんっ!!!」

 

青山くんが、ナインに放っていた極大のビームを、AFOに照射していた。

ナインの時には肩とかから放たれた小規模なビームも正面に飛ばしていたのに、それらは上空に飛ばしているけど、大元の巨大な光線は、AFOに放たれていた。

AFOを襲う巨大なビームに対して、AFOはそっち側に手をかざして衝撃波を盾のように放ち続けて相殺することで対応している。

 

「……恩知らずが……僕の前にまた来るとはね。わざわざ粛清されに来たのかな?」

 

「違うっ!!!僕はっ、僕を救ってくれた人をっ!!!僕に希望を見せてくれた人をっ!!!救けに来ただけだっ!!!AFOっ!!!お前なんかにっ!!!僕の大切な人をっ!!!殺させたりしないっ!!!」

 

「愚かな……情に絆されて情勢すら見えないとは」

 

青山くんが、すごく真剣な表情で、AFOに啖呵を切っていた。

そんな青山くんを、AFOはゴミを見るような目で見据える。

青山くんは、いつもならもうお腹が痛くなっているくらい時間は経っているけど、それでも、ビームを放ち続けていた。

 

「この程度の攻撃で、僕を止められると思われているとは……舐められたものだ。僕がいらないと判断した個性だけで、抗えるなどと思わないことだね」

 

AFOが、衝撃波でビームを防いでいるのとは別の手をAFOにかざす。

AFOの手に、また光線を放つための光が、集まり始めていた。

そして、光線が放たれた。

青山くんのビームが、一瞬で押し返されていく。

 

そのビームが青山くんに到達しそうになったところで、今度は、上空からとてつもない熱量を伴った光線が、照射された。

なんで熱量があるって分かったかというと、照射されたAFOの腕が、黒く焼け焦げていたからだ。

すぐに再生されているとはいっても、それはAFOの腕を焼き続けていた。

 

「……透明化……?どういう使い方をしているのか知らないが……羽虫どもが……鬱陶しいっ!!!」

 

「あれっ!!?なんかバレてるっ!!?」

 

「サーチ持ってるんだよっ!!ほら、早く移動するよっ!!!」

 

上空には、浮いた状態の透ちゃんとお茶子ちゃん、響香ちゃん、梅雨ちゃんがいた。

透ちゃんの、新必殺技の光学兵器に、青山くんが上空に放っていたネビルレーザーを組み合わせて、あの光線を放っていたようだった。

AFO自身は、上空に光線を放つことで透ちゃんの攻撃を打ち消したみたいだけど、透ちゃんたちはちゃんと避けていた。

全員無重力の状態で、響香ちゃんの音の衝撃波で移動して、掴めるところが近づいたら梅雨ちゃんの舌でさらにそっちに移動するという手段を取っているみたいだった。

 

「こいつは避難させとくっ!!波動も下がれっ!!!」

 

物間くんが、私の背後から声を掛けてくれる。

ヒミコちゃんをワープゲートで避難させてくれたみたいだった。

そして、先行してきた青山くんや透ちゃん以外にも、ワープゲートから、ぽつぽつと人が出てきていた。

多分、AFOに個性を取られないで戦えるヒーローだけ、呼び寄せた感じかな。

個性を取られたら、要救助者になりかねないし。

でも、増援は沢山来てくれた。

これで、時間稼ぎもやりやすくなる。

 

 

 

そこまで考えたところで、再びゴミを見るような目をしたAFOが、周囲に集まってくるヒーローたちを見据えていた。

 

「有象無象が集まったところで、どうにかなるとでも思っているのか。鬱陶しい。ただただ煩わしい。小さな光に集る羽虫どもめ……だけど、時間もない。君たちを相手にしている暇はないんだ。だから、一撃で―――」

 

AFOが、上空に飛び上がっていく。

上空からの広範囲攻撃で一掃しようとしているのは、明らかだった。

消される。

直感で、そう感じた。

これをどうにかしないと、透ちゃんも、青山くんも、物間くんも、お茶子ちゃんたちも、皆、皆消される。

青山くんや透ちゃんも、何かをしようとしているのを察してビームとかで攻撃してくれている。

だけど、AFOはそれを全く意に介していなかった。

攻撃が当たった側から、すぐに巻き戻しで無傷に戻っていた。

 

AFOが、さっきまでとは比較にならないほどの光を、その手に収束させていた。

多分、ここでこの攻撃をどうにか出来る人はいない。

物間くんがワープゲートを使ってさっきみたいにどこかに光線を飛ばそうとしても、軸をずらされたらそれだけで終わりだ。

さっきのは、あくまで増援が気を逸らしてくれたから成功しただけの話。

一応、物間くんの仕掛けがまだ残ってるから、それで少しの間はしのぐことが出来るけど、あくまで数秒だ。

墜落もすると思うけど、それで殺しきれる可能性はゼロに等しいと思う。

追撃をしようにも、今から周囲にそのことを伝達しようものなら、AFOに対策を練られる。

そして、隠しダネを使っても、それが切れた瞬間に同じ結果になるだけでしかない。

それなら、この後の攻撃は、どうにかして防いで、次に繋げないといけない。

 

 

 

……一応、私自身が取れる手はある。

可能性はゼロじゃない。

だけど、リスクが大きい。感知も出来ないから、確実性もない。

でも、ただの時間稼ぎにしかならないとしても、その後どうにか出来るか分からないとしても、やらないとダメなのは分かった。

 

波動をどんどん圧縮していく。

勝負は一瞬だ。

跳ぶ前に気付かれたら終わる。

あそこから突き落とすだけの力も必要だから、その波動も練り上げていく。

 

「物間くん……あれを……私を守るために使ったりしないでね……」

 

「は?おいっ!?波動っ!?どういうことだっ!?」

 

物間くんが問いかけてくるのを無視して、地面を蹴って、一気に跳ね上がった。

結構な量を圧縮したのもあって、AFOのさらに上まで、高速で移動することが出来た。

だけど、それ自体はAFOもすぐに気が付いている。

 

「本当に、鬱陶しい羽虫だ。こんなことなら、早々に殺しておくべきだったか。だがそれも、ここまでだ」

 

AFOは、さっきまで溜めていたそれを、私に向けてくる。

 

そして、躊躇なくそれを、放ってきた。

広範囲の光線が、私に方に向けて迫ってくる。

それに対して、波動を一気に放出して、巨大な波動弾を形成して、盾にするためにAFOの方に向ける。

 

「ははははっ!!その程度のエネルギーで、どう対抗するというんだい!?消し飛ぶといいよっ!!」

 

「この、程度っ!!!」

 

光線を正面から受けて、一気に波動が霧散していく。

だけど、波動弾自体が一瞬で消されているわけじゃない。

波動の噴出で落下に加速を掛けながら、私の波動を注ぎ込み続けることで波動弾を維持する。

 

少しずつAFOに近づけてるけど、同時に、凄まじい脱力感が襲ってくるのが分かる。

このままやり続ければ、自分が消える可能性があるのが分かってしまう。

だけど、ここでやらないと皆が殺される。

お姉ちゃんも、ミルコさんも、透ちゃんも、A組の皆も、先生たちも、皆殺されてしまう。

そんなことを、許すわけにはいかない。

そんなことを、させるわけにはいかない。

私なら出来る。自分にそう言い聞かせて、極大の光線に抗い続ける。

相手がAFO……魔王だったとして、どうにかしないといけない。

 

大切な人たちを、守るためにもっ……!

私は……勇者なんだからっ!!

勇者は、魔王に抗えるものなんだからっ!!

私は、波動の力で、大切な人を守る……波動の、勇者なんだからっ!!!

 

「オールフォーワンっ!!!」

 

「……っ……なぜ、抗えるっ!!」

 

憎々し気に言い放ってくるAFOに、巨大な波動弾をそのまま押し付ける。

それも衝撃波で打ち消そうとしてくるから、波動弾を構成する波動が霧散して消滅しないように、自分の波動を限界まで注ぎ込んで、波動を補充し続ける。

身体が明滅し始めているのが分かってしまうけど、ここで止まることはできない。

ここで止まれば、AFOは、また皆を殺そうとする。

 

「今の貴様は無個性のはずだっ!!無個性の小娘が、なぜこのような力をっ!!」

 

「個性は使えなくてもっ!!!波動は、ここにあるっ!!!」

 

波動弾を押し付けながら、さらに加速して地面に向けて落下していく。

意識が飛びそうになるけど、止まるわけにはいかない。

波動が増えてるわけじゃない。

私の波動を出し切ってでも、こいつを止めるしかない。

大丈夫……抗える……まだやれるっ!!

自分の波動を、信じるんだっ!!!

そう思って、あと少し、自分を奮い立たせるように、声を張り上げながら、波動を絞り出した。

 

「波動は―――我にありっ!!!」

 

その声と共に、ダメ押しで限界まで波動を注ぎ込みながら、紫黒の波動が渦巻いて周囲に暴風を巻き起こしている特大の波動弾を一気に押し出して、AFOを地面に叩き落とす。

バチバチと激しく明滅を繰り返しながら、光の粒子のようなものが霧散していくように舞い始める身体ではこれ以上どうすることも出来なくて、そのまま落下していってしまう。

 

 

 

薄れゆく意識の中で、衝撃に備えていたけど、その衝撃は、来なかった。

誰かに、衝撃すらもほとんどないくらい、上手く受け止められていた。

 

「ここまで、よく耐えてくれた。よく頑張ってくれた。もう大丈夫―――私が来た」

 

その力強い言葉と、支えてくれている大きな身体に、やったんだと安心感を覚える。

そのまま優しく地面に下ろされると、巨体の気配が、AFOが墜落していったと思われるところに、ガチャガチャと装甲の音を鳴らしながら、向かっていった。

 

「オールマイト……その姿は……なるほど、わざわざ古傷を治した状態で蘇生してもらったのかい?だけど、それでどうなるというんだ?OFAもない君が、サポートアイテムを使ったところでどうなる?」

 

「これで十分だ。これだけあれば、お前を気絶させることが出来る。その驕りが、お前を終わらせるんだ」

 

オールマイトの声が、戦場を静かに振るわせていく。

その自信に満ちた言葉に、声に、かつて象徴だった者の姿に、皆、全てを委ねているようだった。

 

『物間少年……もし万が一、策が全て上手くいかず、抹消の制限時間以内にAFOを倒せないと悟ったら、その時は―――』

 

私も、オールマイトの言葉を思い出しながら、彼に任せれば、なんとかしてくれると信じていた。

 

「終わらせる?君がかい?それこそ驕りじゃないかな?まあいい。これが君たちの希望だったわけだ。だが、その程度の希望でどうなるというんだい?これで終わりだよ、オールマイト……なに?」

 

「それがお前の驕りだと言ったんだっ!!!これで、長年の因縁も終わりだっ!!!」

 

「抹消だとっ!?それは、時間切れになったはずっ!!……まさかっ!?」

 

「DETROIT SMAAASH!!!!!」

 

うっすら目を開けて、その姿を目に焼き付ける。

サポートアイテムで武装したオールマイトの渾身の拳が、AFOの顔にめり込んでいた。

そして、凄まじい轟音と共に、AFOが、地面にめり込んだ。

 

「……さらばだ。オールフォーワン」

 

オールマイトが、立ち上がりながら静かに呟く。

そのまま動かなくなったAFOは、少しずつ身体が若返っていって、完全に消え去った。

 

それを視認して、光の粒子になって自分から霧散していく波動越しに私に向かって走ってくる透ちゃんたちの姿を見ながら、私の目の前は、真っ暗になった。

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