波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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その後のお話

目を覚まして、すぐに違和感に気が付いた。

ここが病院だとか、そんなのはどうでもいい。あれで入院するのは当然でしかないし。

そういうことではなくて……波動が、見えてる?

個性消失弾が直撃したのに?

なんで?

 

「ルリさん!!」

 

私が困惑していると、小さな陰に勢いよく飛びつかれた。

飛びついてきたのが誰なのかは、見るまでもなく分かった。

 

「よかったよぉ!わたし、失敗したんじゃないかってぇ!」

 

「エリちゃん……?」

 

泣きながら抱き着いてくるエリちゃんに困惑していると、近くで見守っていたお姉ちゃんが口を開いた。

 

「瑠璃ちゃんが悪いんだよ。また自分から消えかねないことしたでしょ」

 

「お姉ちゃん……そうだけど、でも……ああしないと……どうなってたか……」

 

「そうだとしてもだよ。瑠璃ちゃん、緑谷くんとかが自分から死にに行くようなことするの、すごく怖がってたって聞いてるよ。瑠璃ちゃんもそれと同じことしてるの。心配される理由は分かるでしょ」

 

「……ん……そう、だね……ごめんなさい……」

 

お姉ちゃんに言われたことに対して素直に謝ると、お姉ちゃんはエリちゃんごと私を抱きしめてきた。

 

「無事でよかった。私も心配したんだよ」

 

「ん……ごめん……」

 

お姉ちゃんに重ねて謝って、しばらくされるがままになってしまった。

 

少しして落ち着いたところで、不思議に思ったことを聞いてみることにした。

なんでまた個性が使えるようになっているのか。

なんであの状態……極度の波動の枯渇状態まで行って、普通の状態に、戻っているのか。

 

「お姉ちゃん……私、個性消失弾当てられてたはずなんだけど……」

 

「ん?ああ、そのことね。というか、それも瑠璃ちゃんが無茶するから、急いでどうにかしてくれたって聞いてるよ」

 

「急いでどうにか……?」

 

「そうだよ!瑠璃ちゃん、本当に消えかけてたんだよ!?枯渇だけじゃなくて、薄くなった瑠璃ちゃんの身体から波動の粒子みたいなのが出てくるところまで行っちゃったみたいなんだから!!」

 

お姉ちゃんの怒りがちょっとぶり返したみたいで、プンプンした感じで言ってくる。

あれ、やっぱり限界までやってたのか。

でも、その状態からどうやって治療したんだ。

波動の粒子が出てくるってことは、霧散し始めてるってことだし。

 

「でも……なら……どうやって治療を……」

 

「エリちゃんが頑張ってくれたの。その状態になった瑠璃ちゃんを見たオールマイトが、エリちゃんに巻き戻してもらうべきだって言ってくれたんだよ。それで、物間くんがすぐにワープゲートでエリちゃんの所に連れて行ってくれて、エリちゃんが巻き戻してくれたの」

 

「そう……なの……?」

 

「うんっ!わたし、がんばったよっ!」

 

エリちゃんが涙を拭ってから顔を上げて、フンスッ!って感じで鼻息荒く主張してきた。可愛い。

この感じだと、力が溜まり切ってないのに無理して少しの巻き戻しを頑張ってもらった感じかな。

つまり、エリちゃんが命の恩人ってことか。

個性も、その巻き戻しの副産物として戻った感じかな。

 

「そっか……ありがとね……エリちゃん……」

 

「うん!」

 

エリちゃんにお礼を言うと、エリちゃんは満面の笑みでまた抱き着いてきた。

そんな様子を見ながら、お姉ちゃんが私を心配してきていた。

 

「ねぇ、瑠璃ちゃん……その……個性なんだけど……使えないままの方が、よかった?」

 

お姉ちゃんが聞かない方がいいかを迷いに迷った後に、そう問いかけてきた。

お姉ちゃんも、私の個性に対するコンプレックスは、いろいろ考えてはいたらしい。

それが今回、無個性になるっていう手段ではあったけど、その個性から抜け出すことが出来ていたことを、気にしているみたいだった。

でも、それはいらぬ心配だ。

 

「そんなことないよ……ない方がいいなんて、思ってない……それよりも、この個性を、大切な人の役に立てたいって思ってる……だから、大丈夫だよ……個性も、読心も、全部含めて私だから……」

 

本当に、心からそう思っていた。

私の個性は、嫌われやすい物かもしれないけど、大切な人の役に立てることが出来る個性だ。

無い方がいいなんて思ったこともあったけど、透ちゃんたち……友達といろいろ経験して、先生たちやミルコさんにいろいろ教えてもらって、ヒミコちゃんと向き合って……今は、無い方がいいなんて、思っていなかった。

やっぱり、辛いことも多い個性だけど、これも含めて私なんだって、知ることができたから。

そのことをお姉ちゃんに伝えるために、穏やかに、少し笑みを浮かべて言葉を返した。

 

「……そっか。そっか!」

 

「お、お姉ちゃん……痛いよ……」

 

「妹がこんなにいい子に成長してるのに、喜ばないわけないよっ!!少しの間抱きしめさせてっ!!」

 

お姉ちゃんが凄い力で抱きしめてくる。

お姉ちゃん自身も、怪我をしていて包帯が巻いてあるのが、感触としても伝わってきていた。

ちょっと心配だけど、お姉ちゃん自身は元気そうだし、まあ大丈夫だと思うことにしよう。

それよりも、今はお姉ちゃんの感情が歓喜で満たされているし、されるがまま、好きなようにさせてあげることにした。

 

そして、お姉ちゃんが私から離れたあたりで、病室の扉が開いた。

そこにいるのが誰かは、見るまでもなく分かってはいる。

 

「あーっ!!瑠璃ちゃん起きてるっ!!!」

 

「ちょっ、透ちゃんっ……!ここ病院っ……!ぐぅっ!?」

 

「よかったっ!!本当によかったよぉっ!!」

 

透ちゃんが叫んだのを止めようとすると、すごい勢いで飛びかかられた。

エリちゃんの巻き戻しで傷も治ってるとはいっても、流石に息が詰まってしまう。

お姉ちゃんは苦笑いしていて止めてくれなかったし、エリちゃんは突撃してくる制服を見てサッと避難していた。

ちょっと薄情なんじゃないだろうか。

そんな私を押し倒した透ちゃんも、私と顔を見合わせると満面の笑みを浮かべてくれていた。

 

 

 

そんな感じでバタバタした入院生活も数日で終わって、無事に退院出来た。

私以外にも入院していた人は結構いたみたいだけど、皆、遠くないうちに退院できるだろうってことだった。

 

決戦がどうなったかも、もう把握している。

皆色々教えてくれたし、周囲の思考からも伝わってきていた。

AFOは、オールマイトの手によって気絶させられて消滅。

死柄木は、緑谷くんとお姉ちゃんやミルコさんたちヒーロー、それにレディ・ナガンとか、ジェントルとか、そういう元ヴィランの協力者たちの協力もあって、無事に倒すことが出来たらしい。

緑谷くんが色々死柄木と話したみたいだけど、そこまで深くは聞いてない。

聞かない方がいいかなって思ったのもある。

とりあえず、死柄木関連は緑谷くんが納得してるからそれでいい気がする。

荼毘に関しては、ナイトアイの予知もあって自爆予定地点に轟くんの家族を待機させていたらしい。

それで、エンデヴァーと、飯田くんが超特急で運んだ轟くんと、轟くんのお母さん、お兄さん、お姉さん、家族皆で荼毘を凍り付かせて、強制的に自爆をどうにかしたらしい。

凄い強引だけど、それで止まったみたいだった。

まぁ、当然全員無傷とはいかなくて火傷だらけらしいし、荼毘……轟燈矢も、逮捕とかできるような状態じゃないほどの重傷で、監視下ではあるけど、病院で治療しているらしい。

でも、そもそも死ぬ可能性が高いような状態らしいし、治療が終わって仮に治っても、まず間違いなく逮捕はされるんだろうけど。

とりあえず、轟くんはゆっくりと話すことが出来て、少し満足気にしていた。

スピナーは逮捕された。

ただ、すごい数の個性を埋め込まれていたみたいで、もう理性はほとんど残っていないような状態だったらしい。

この人は、少しかわいそうだと思ってしまうような幕切れだった。

まぁ、自業自得ではあるんだけど……

黒霧は、決戦中に相澤先生、マイク先生と、いろいろあったらしい。

それで、白雲さんとしての心を取り戻して、最終的には、死を選んだって聞いている。

先生たちがすっきりした感じだったから、多分悪い感じではなく終わったんだろうなとは思えるのが救いだろうか。

他のダツゴクとかは、軒並み逮捕出来たと聞いている。

 

 

 

そしてヒミコちゃんは―――

 

「お邪魔しまーす!」

 

「やっと来てくれたっ!!もうっ!!遅いですよっ!?」

 

「ん……ごめんね……最近退院できたばっかりだったから……」

 

プンプン怒るヒミコちゃんに、苦笑いしながら謝る。

 

ヒミコちゃんには、思った以上に温情がある措置が取られていた。

なんでも、トゥワイスとしての戦闘継続をやめて自首したこと以外にも、私を助けるためにAFOに立ち向かったことが、ヒミコちゃんの印象をすごくよくしてくれたらしい。

あの状況でヒミコちゃんが戦ってくれなかったら、私と物間くんは殺されて、オールマイトの死体と治崎も消されて、死柄木と合流されていたから、当然なのかもしれない。

もちろん、ヒミコちゃんが人を殺していた過去は消せないし、超常解放戦線の幹部としてしていたことはなかったことにはできないけど、それでも、温情をかけてもいいと思わせてくれるだけのものを見せてくれていた。

その結果が、今の状態だった。

ヒミコちゃんへの措置は、最初に私が提案したものをさらに緩くしたものになっていた。

雄英、というよりも私の近くの、厳重な鍵と監視付きの室内への幽閉。

ただ、その中での行動は自由だし、監視に欲しい物を言えばある程度融通してもらえる。

テレビとかの娯楽もあるし、連絡手段としてスマホも与えられている部屋。

もちろんスマホは中も全部監視されてるわけだけど……

まあ、私が読心とテレパスが出来ちゃうから、何を話されてるか分からない状態よりも、記録として残るスマホを使った連絡の方がいいって考えなだけな気がする。

 

そして、ヒミコちゃんが軟禁されている部屋には、私を筆頭としたヒミコちゃんのお友達との面会の自由を許可されていた。

しかもその面会も、ガラス越しに話すだけじゃなくて、同じ室内で過ごしてもいいっていうレベルのもの。

つまるところ、ただの謹慎みたいなものでしかなかったのだ。

もちろん、外出は許されないし、私が引っ越しをすればその周囲の監禁出来る部屋に強制的に移動させられるし、今後一生出られない可能性が高い。

だけど、私たちが結構簡単に訪問できるようになっているっていうのは、ヒミコちゃん的には大きかったらしい。

大喜びで私に連絡を取ってきた。

 

そして、今日はお土産にヒミコちゃんの好物のザクロを持ってきたのと、あとは、お茶子ちゃんと梅雨ちゃんも一緒に来ていた。

 

「はい……ザクロ持ってきたよ……一緒に食べよ……」

 

「ザクロかぁ。ザクロもいいけど……ねぇ、今日は血を飲ませてくれる?」

 

「ん……いいよ……お茶子ちゃんたちは……?」

 

「うん、大丈夫。私のも飲んでいいよ」

 

「私のもいいわよ」

 

「ほんとですかっ!?」

 

ヒミコちゃんは案の定血を要求してくるけど、私も、お茶子ちゃんたちも、特に嫌悪感もなく受け入れていた。

今のヒミコちゃんに悪意なんて微塵も感じないし、特徴的で純粋な笑顔を浮かべて私たちの血を飲みながら楽しそうにお話しするヒミコちゃんに嫌悪感なんて、感じるわけもなかった。

 

「じゃあ恋バナしましょう!恋バナ!お茶子ちゃんから色々聞きたいですっ!!瑠璃ちゃんと梅雨ちゃんも、好きな人とかいますっ!?」

 

「うえっ!?い、いきなりそれっ!?」

 

「……私は……特にいないよ……」

 

「私もいないわね」

 

ヒミコちゃんのいきなりの提案に、私と梅雨ちゃんが素っ気なく答える。

その一方で、お茶子ちゃんが顔を真っ赤に染め上げていた。

まぁ、ヒミコちゃん的には同じ人を好きになったお茶子ちゃんに対する興味は尽きないだろうから、格好の獲物だろう。

 

「えぇ~ほんとですかぁ?でも、それじゃあ仕方ないかぁ……なら、お茶子ちゃん!出久くんのこと、沢山話そうっ!」

 

「え~……うぅ、分かったよ」

 

「やったー!!えっと、じゃあ、まずはぁ―――」

 

お茶子ちゃんが諦めたように頷くと、ヒミコちゃんが子供のように無邪気に喜んでいた。

 

その後は、外が暗くなるまで4人で恋バナをしたり、何気ないお喋りをしたりして過ごした。

ヒミコちゃんは終始いい笑顔を浮かべていて、楽しそうに過ごしていた。

時間になった時は、流石に寂しかったみたいだけど、スマホでやり取りしようって提案したのと、また来る約束をしたことで満足したみたいだった。

 

 

 

面会も終わって、私たちは雄英に戻った。

雄英はボロボロだから、まだまだ復興作業を進めないといけない。

そんな中での息抜きも兼ねてのヒミコちゃん訪問だった。

とりあえず、今日はもう暗いし、雄英の敷地内に戻ってきていた学生寮に戻って休むことになった。

また明日から復興作業を進めて、パトロールとかにも協力して、その隙を見て卒業式の準備を進めないといけない。

やることは、山積みだ。

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