波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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番外編
番外1:始業直前焼肉パーティー


復興も少しずつ進んで、雄英も避難所としてはお役御免になった。

荒廃した街も見た目だけは綺麗になっている。

まぁ、お店とかは経営者とか店員とかの問題とかがあるからまだ再開しているところはごく少数ではあるんだけど……

それでも、スーパーとかのライフラインに関わるところは積極的に再開してくれていて、政府の政策と外国からの支援もあって日用品の買い物には困らないくらいになってきていた。

そのおかげもあって、公安からの私たちの復興活動への協力要請も解除された。

先生たちもヒーロー活動を中断出来る状態にようやくなって、ついに明日から学校再開の運びとなっていた。

そうなれば当然皆も意気込むわけで……

 

「それでは!始業直前焼肉パーティーを、始めようー!!!」

 

「かんぱーい!!」

 

鍋パの時のようにパーティーをすることになっていた。

今回は焼肉パーティーだ。

焼肉は料理の準備が楽だから、私としては嬉しい。

代わりに臭いが凄いことになるんだけど。

入寮初日に焼肉した時も翌日まで臭いが残って大変だった。

……うん、臭いに関してはもう考えないことにしよう。

楽しまないと損だし。

とりあえずいつもの料理が出来るメンバーで野菜に加えてキムチ、ナムル、サラダにおにぎり、さらにビビンバとかチヂミとかのサイドメニュー系を準備しておいた。

他の皆はお肉を調達したり部屋とかホットプレートの準備とかをしてくれた感じだ。

 

「よーし!どんどん焼いていくよー!」

 

「とりあえず……野菜焼く人少なそうだし……私は野菜を焼いていくね……」

 

「じゃあ私が瑠璃ちゃんの分もお肉焼いておくね!」

 

「ん……ありがと……」

 

玉ねぎとかピーマンとかをどんどん投入していく。

そんな私の隣で、透ちゃんもすごい勢いでお肉をホットプレートに載せていっていた。

まあお肉を大量に並べているのは透ちゃんだけじゃなくて、男子も所狭しとお肉を焼いていた。

障子くんあたりは複製腕も利用して焼いてるけど、あれは多分峰田くんとかのも焼いてるだけかな。

皆焼肉が好きなのは間違いなさそうだった。

 

「ほら、この辺り焼けたぞ」

 

「よっしゃ!この辺の肉はオイラのもんだ!」

 

「峰田くん!そんなことをしたら皆が食べられなくなるじゃないか!」

 

「ま、まぁまぁ飯田くん。沢山あるし大丈夫だよ」

 

「百ちゃん!持ってきてくれたお肉すごく美味しいよ!」

 

「それならよかったです。まだ沢山ありますし、お好きなだけ食べてくださいまし」

 

「瑠璃ちゃん!お肉焼けたよ!あーんして!あーん!」

 

「さ、流石にそれは…………ぅぅ……あ、あー…………うん……美味しい……ありがと……」

 

透ちゃんが無理矢理食べさせてきたり、峰田くんが例のごとく取れる範囲のお肉を独り占めしようとしていたり、百ちゃんが持ってきてくれた高級なお肉を目を輝かせながら食べていたり。

最初の方は皆とにかく食べるのに夢中になっていて、ある程度お腹が満たされるまではとにかくお肉を消費していった。

皆お互いに気を遣いながらではあったけど、女子はともかく食べ盛りの男子高校生が10人以上いるのは分かり切っていたのだ。

遠慮しないでいいくらいの量のお肉は準備してある。

……まぁ峰田くんだけは一切その辺りを気にしてないけど。

バーベキューの頃から一切成長してないなこういうところは。

まあ別にいいんだけど。

男子や百ちゃんが凄まじい量食べるのは容易に想像がついたことだし。

そんなこんなで皆順当にお肉を食べ進めて、サラダとかを食べたりおにぎりを焼き始めたりしたところで、ようやくのんびり雑談しながらの食事に移行していった。

 

「それにしても、ようやく休校も終わりだねぇ」

 

「長かった……」

 

「なんだかんだで1か月以上インターンしてただけみたいな感じだったもんね」

 

透ちゃんが白米をもぐもぐしながらぼんやりと呟いたその言葉に、響香ちゃんと一緒に反応を返す。

実際学校の復旧作業とかはサポート科主体でやっていたから、ヒーロー科はプロのところで治安維持に努める感じが主だったのだ。

響香ちゃんは前と同じでギャングオルカのところに行っていたし、透ちゃんたちヨロイムシャの所に行っていたメンバーは今回はクラストさんの所に行っていた。

 

「でも、なんていうのかな……インターンの時とは周りの目ぇ全然違うたんやんな」

 

「あー、確かに」

 

「……ん……前みたいな……ミルコさんのおまけみたいな感じじゃなかった……」

 

お茶子ちゃんたちは、お姉ちゃんがサイドキックをしているリューキュウの所に引き続き行っていたけど、その言葉には共感しかなかった。

私を含めて最悪だった印象が、マスコミの報道を通して改善したのはいいんだけど、代わりに私たちA組の世間の評価がおかしなことになってしまっているのだ。

まあ、十中八九マスコミが謝罪文と一緒に掲載していた決戦の時の戦闘の記録が原因だ。

改めて確認したけど、そうなるのも仕方ないという感想しか抱けなかった。

ミルコさんたちトップランクヒーローの活躍は当然のように写っていたんだけど、それ以上に、幹部と直接対決していた私たちの姿ががっつりと写ってしまっていたのだ。

死柄木は緑谷くん、爆豪くん、お姉ちゃんたちビッグ3。

荼毘は轟くんと飯田くん。

スピナーは障子くんと口田くん。

ヒミコちゃんは私。

ギャシュリーは砂藤くんと尾白くん。

クニエダは青山くんと透ちゃん。

ギガントマキア防衛戦で三奈ちゃんと切島くんと峰田くん、小大さん、骨抜くん、柳さん、心操くん。

AFOは私、物間くん、響香ちゃん、常闇くん、お茶子ちゃん、梅雨ちゃん、透ちゃん、青山くん。あとは世間で賛否はあるけどヒミコちゃん。

まぁつまり、雄英内部で色々してくれていた百ちゃんと上鳴くん以外の活躍が世間に大々的に公表されていた。

その結果が、周囲から向けられる視線の変化だった。

 

超常解放戦線と戦った私たちは、プロ、というよりも、英雄のように扱われてしまっていたのだ。

まあ、依存しきった結果の崩壊を経験したおかげで、以前に比べればヒーローに依存しきった感じが減っているから全然マシではあるし、そこまで気になる程じゃない。

これで困ることといえば、インターンくらいだ。

以前はミルコさんのサイドキックとしてサインを求められていたんだけど、今はAFOに正面から立ち向かったヒーローとして、私個人のサインを求められるようになったのだ。

ミルコさんが唯一サイドキックとして認めたのも納得だとか、ミルコさんの目に狂いはなかったとか言われるのは嬉しいけど、それでもそういう感じで見られるとムズ痒いような何ともいえない気分になってしまう。

 

まあ、私の実害は今のところ外を歩きづらくなったのと最近の寮でのアレくらいだからいい。

それ以上にいい点もあったし。

そう!なんといってもお姉ちゃんの活躍も全世界に報道されていたおかげで、お姉ちゃんの人気が凄まじいことになっているのだ!

ようやく世間がお姉ちゃんの魅力を理解したのだ!

私も鼻高々である。

これからもSNSとかを通じてもっともっとお姉ちゃんの良さを布教して、ビルボードチャートが再開した暁にはお姉ちゃんがトップ10になれるように今から下準備を進めなければいけない。

そこまで考えを巡らせて、気分が有頂天になった私は響香ちゃんたちと話を続けていたお茶子ちゃんに意気揚々と声をかけた。

 

「お茶子ちゃん!またお姉ちゃんの活躍を、お姉ちゃんが大人気だった話を、聞かせて欲しい!」

 

「またぁ!?もう10回は話したよ!?」

 

「何回聞いても足りないよ!!お姉ちゃんのことをさらに布教するためにも、世間の理解度を正確に把握しないといけないから!!」

 

私が興奮気味にお茶子ちゃんに詰め寄ると、お茶子ちゃんは冷や汗を垂らしながら後ずさりし始めた。

なぜだ、お茶子ちゃんたちもお姉ちゃんのことは好きなはずだ。

尊敬している思考がちゃんと伝わってくる。

まだ崇拝まで至ってないから足りてないけど、十分理解できているはずなのだ。

それなのに、なんで話すのを渋るのか。

こういうのは実際に見た人から聞かないとノイズが多くて困るのに。

そう思っていたら、梅雨ちゃんが私の肩を優しく叩いてきた。

 

「あとで瑠璃ちゃんのお部屋でじっくりお話しましょ。それで大丈夫かしら」

 

「ん!約束!!」

 

梅雨ちゃんがにっこり笑顔で言ってくれるのに頷きながら、しっかりと約束を取り付ける。

梅雨ちゃんの物分かりがよくて助かる。

そんな話をしていると、真剣な表情でスマホを見ていた透ちゃんが私に話しかけてきた。

 

「……このアカウント、やっぱり瑠璃ちゃんだよねぇ……もうバレてる気もするけど、個人情報とかにだけは気を付けてね」

 

「……?SNSのアカウントのこと……?そんなの当然……お姉ちゃんが困ることはしないよ……?」

 

「うん、大丈夫だと思うんだけど、一応ね」

 

苦笑したまま念を押された。

私、そこまで馬鹿じゃないんだけど。

納得いかない。

 

「まあ波動の話はそれでいいとして、世間の見る目が変わったせいで困ってることと言えば、あれしかないよね……」

 

「あれ?」

 

「あー、あれね……うん」

 

響香ちゃんが話を切り替えると、今まで話に参加してなかった人たちも会話に交ざってきた。

……うん、まあ、世間の評価の変化で困っていることで、今のところ一番実害が出てるのがアレだし、皆も割とすぐに納得していた。

世間から英雄視されるのは、まあ結局のところ寮から出なければそこまで実害はないのだ。

実害があるのは、寮にいてもお構いなしで襲撃してくる大きな変化の方で……

どうせいつものにつながっちゃうからってB組を招いて合同パーティーをするのもやめたわけで……

今まさにその実害の根源が寮の扉の前に来ている。

そして、ノックすらなしでバァンッ!!!と激しい音を鳴らしながら扉が開かれた。

 

「やぁやぁA組諸君!!今日も白黒つけに来てあげたよ!!!今日こそB組の方が優秀だということを、君たちに思い知らせてあげよう!!!」

 

「またか……」

 

「昨日も寮にいたメンバーで勝負したのにまたやるのか?」

 

もう以前の状態に戻った物間くんが、B組男子数人を引き連れてHAHAHAHAなんて高笑いをあげながらズカズカと乗り込んできた。

皆も結構げんなりしている。

これは仕方ない。だって物間くんが寮にいる時は結構な頻度で乗り込んでくるし。

うん、まあ、世間の評価の変化を見て、物間くんがすっかりこの状態に戻ってしまったのだ。

B組は幹部と正面から戦っている生徒はそんなにいなかったから、A組程英雄視はされていなかった。

というよりも、公表された映像に写っていたB組生徒が物間くんと小大さん、骨抜くん、柳さんくらいなのだ。

しかもギガントマキア防衛戦の方は対幹部戦よりもスポットライトが当たっていないから、実質的に物間くん自身以外は評価がそこまで上がっていない。

自分の評価が上がっていたとしても、一緒に戦っていたはずなのにクラス単位でここまで評価に差がついてしまっている現状が、物間くんは耐えられなかったらしい。

そのせいで、B組の皆のためではあるんだけど、A組を倒すことでB組の方が優秀だと証明するなんていう思考に戻ってしまったのだ。

まあ、こういう思考の流れになるのは物間くんの気質からして仕方ない気がする。

損な性格してるなぁとは思うけど。

せっかくA組の中で上がっていた物間くんの株が結構な勢いで急降下して地を這う勢いだし。

本人はもうこの調子だし仕方ない。

結局物間くんの強引な誘いを断ることも出来なくて、男子たちが物間くんの挑戦を受けることになった。

男子たちはビビンバとか焼きおにぎりとか、食べたいものは大体もう食べきったみたいだし、腹ごなし、なんて考えている人もいるくらいだ。

気にするだけ無駄か。

とりあえずその内拳藤さんが回収しに来てくれるだろうし、放っておこう。

 

 

 

男子が寮の前の庭でバカ騒ぎしているのを尻目に、私たちは食後のティータイムに移行していた。

まあ、男子皆物間くんの挑発に乗せられて勝負しに行ったから、例の如く女子会の流れになっただけだ。

 

「男子は相変わらずだねぇ」

 

「まあ……物間くんがあの調子な限りは……仕方ない……」

 

「あれはねぇ……なんでああなっちゃうかなぁ?雄英が避難所になってた時の物間、普通にいいやつだったのに」

 

「B組のためにしていることだというのは分かるんですけど……」

 

皆でうーんと渋い表情をしながら、少しの間沈黙に包まれた。

そんな空気を打ち破るように、パッと明るい表情を浮かべた三奈ちゃんが、話題を強引に捻じ曲げてきた。

 

「こんなこといつまでも考えてても仕方ないし、別の話しよ!私としては恋バナ希望!」

 

「恋バナ恋バナー!!」

 

……いつも通りな流れでしかなかった。

透ちゃんも嬉しそうに同意している。

決戦前のあたりで色々思いつめていたけど、それはそれとして恋バナは好きだから仕方ないって感じか。

でも、誰か進展なんて……あったな、そういえば。

お茶子ちゃんがこの前緑谷くんと話してた時にそんな感じの流れになってたはずだ。

まあそれはそれでいいとして、話題が無いと私が最近青山くんを避けていることをネタとして提供されそうな気がする。

……最近、青山くんから私に向けられる感情がムズ痒くて若干気まずいのだ。

私から何か思うところがあるわけではないけど、自分にそういう感情を向けられているというのが未知の経験過ぎてどうすればいいのか分からなくて、なんとなく避けてしまっていた。

透ちゃんはそのことを察しているみたいだし、まず間違いなくネタにされる。

どう回避するべきだろうか……

私がそんなことを考えている内に、特に別の話題が提案されなかったから恋バナが開始されていた。

とはいっても恋バナで一番最初に餌食になるのは間違いなくお茶子ちゃんなんだけど。

 

「麗日!しまっておくって話とかはどうなったの!?結局そのままな感じ!?」

 

「やっぱり私!?何も変わってないよ!?」

 

「え……?」

 

お茶子ちゃんの全力での否定に、思わずつぶやいてしまった。

その瞬間、皆の視線が私に集中した。

お茶子ちゃんなんてどういうことか一瞬で理解したらしく、私の口を塞ごうと動き出している。

だけど、すぐ近くにいた三奈ちゃんに取り押さえられてしまった。

そんな2人を背に、目を輝かせた透ちゃんが凄まじい勢いで私ににじり寄ってきた。

 

「ちょっ!?三奈ちゃんやめっ!?」

 

「これは進展があったってことでしかないじゃん!!邪魔はさせないよ!!」

 

「瑠璃ちゃんがそういう反応するってことは何かあったってことだよね!?なになに!?なにがあったの!?」

 

……どうしよう。

正直、どうするか迷ってしまう。

三奈ちゃんと透ちゃんだけじゃなくて、響香ちゃん、百ちゃん、梅雨ちゃんもだいぶ気になってる感じの思考してるし……

恋愛的な意味かと言われると間違いなく現状はNO。

だけど、確実にこれが進展するための第一歩になるとは思う。

そして、このままお茶子ちゃんだけに任せると、何事もなく無難に終わって何も変わらないと思う。

…………言うか。

 

「このまま放置すると……何も進展しないと思うから……言うことにします……お茶子ちゃん……緑谷くんの家に招待されてるんだよ……日程はまだ決まってないみたいだけど……」

 

「マジ!?」

 

「家に招待とかこれはもう付き合ってるとかそういうこと!?」

 

「付き合うとらんよ!?」

 

「付き合ってないっていうだけってことは、招待されてるのは間違いないんだ?」

 

「ちがっ!?ちが、く、はない、けど……うぅ……」

 

透ちゃんたちのキャー!なんていう黄色い声が響いてから、パニックみたいな興奮状態になっていた。

お茶子ちゃん本人は顔を真っ赤にして何も言えなくなってしまっている。

……一応、事情はちゃんと説明しといてあげよう。

 

「……ちゃんと説明しておくと……緑谷くんの意思というよりも……緑谷くんのお母さんからのご招待……お茶子ちゃんにお礼がしたいんだって……」

 

「あぁ、そういうことでしたのね」

 

「緑谷ちゃんのお母さん、あの演説の後にお茶子ちゃんにすごいお礼言ってたものね。納得だわ」

 

「それでもこれはすっごいチャンスじゃん!!」

 

「ちゃ、チャンスとかじゃ、違う、ちゃうよ!?」

 

「ここで押して押して押し切れば親公認カップルになれるかもしれないよ!!」

 

百ちゃんと梅雨ちゃんは納得してるだけだけど、三奈ちゃんと透ちゃんの圧が凄い。

結局全員興味津々だったのもあって、ストッパー不在のままお茶子ちゃんは根掘り葉掘り質問攻めにあっていた。

結論としては、そこで告白したりするつもりはないけどおめかしとかはしっかりしようってことで、女子全員でサポートすることになった。

その日着ていく服とか手土産とか、近いうちに皆で話し合うことになったりしたけど、お茶子ちゃん自身が真っ赤になってオーバーヒートしてたからどこまで理解してたか分からない。

まあ承諾自体はしていたし大丈夫だろう。

 

そんなことをしている内に、時間も時間だからってことで明日に備えて就寝することになった。

……恋バナ、私の話題にならなくてよかった。

お茶子ちゃんに悪いことしちゃった気がするから、緑谷くんとのことは全力でサポートする所存だ。

とりあえず、緑谷くんの好きな味付けとかを教えてあげることから始めよう。

そんな計画を頭の中で描きながら、片付けも終わらせてベッドに入った。

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