波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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番外2:常夏の楽園に向けて

「うおおおーーー!!!生きててよかったーーー!!!」

 

「どうした峰田!?」

 

放課後に寮でのんびりしていたら、峰田くんが雄たけびを上げながら玄関から駆け込んできた。

皆その声にびっくりして振り返って、ブドウ頭が凄い勢いで噴き出している涙にドン引きしている。

上鳴くんだけはさっと反応を返してあげていた。

私は思考を読んでどういうことか分かってたけど、そのピンク色に染まった思考にドン引きしていた。

 

「どうしたもこうしたもねぇよ!!!ほら!!!これ見てくれ!!!」

 

「団体招待チケット?……トロピカル……?これどうしたんだ?というか、そもそも再開すらしてなくなかったか?」

 

トロピカル。

簡単にいうと、いつでも常夏を感じられる南国リゾート館が大ウケしていた大型の屋内プール施設だったはず。

入場チケットだけでも1年待ちとかいう常軌を逸した人気具合だったと思う。

凄く大きな施設だっただけあって、治安崩壊した時に色々壊されたりしていたみたいで休業してたと思うんだけど、峰田くんの思考を見る限りそろそろ再開するらしい。

 

「もらったんだよ!!!相澤先生に!!!」

 

「先生に?」

 

「おう!トロピカルがそろそろ営業再開するらしいんだよ!それでトロピカルが、超常解放戦線との決戦の功労者に感謝の気持ちを込めて、招待してくれるんだってよ!さっきA組の分の招待券を相澤先生から渡されたんだ!!数日は招待客の貸し切りらしいぜ!!」

 

「マジかよ!?」

 

「トロピカルってアレだよね!?海ーーー!って感じのところだよね!?」

 

「行ってみたかったけどチケットが手に入らなくて諦めてたあのトロピカル!?」

 

「そーだよ!!オイラたち皆で頑張ったご褒美をもらえたんだよ!!」

 

ブドウ頭の興奮しきった言葉に、皆が色めき立つ。

透ちゃんなんて大興奮で手を前後に動かしながら目を輝かせていた。

うん……まぁ、楽しみではある。

楽しみではあるんだけど……

それ以上にブドウ頭の妄想が目も当てられなくて、私は何も言えなかった。

ブドウ頭は嬉しくて興奮してるのもあるけど、私たちの水着姿やそれに付随する卑猥な妄想を繰り広げていて、それで大興奮していた。

決戦前は真面目だったのに、もうすっかり元の卑猥な妄想やセクハラ行為ばかりしてくるブドウ頭に戻ってしまっている。

最近のセクハラ行為には苛立ちしか感じないけど、まだ妄想だけだから……妄想だけなら……まだ、見逃してあげ―――

 

「は?」

 

それを認識した瞬間、ブドウ頭の方に歩いて近づいていく。

このブドウ頭、許されざる妄想をした。

制裁待ったなしだ。

ブドウ頭は目を見開いて鼻息を荒げながらにやけている。

 

「ヒョヒョヒョ!2ーAだけじゃなくて、マブイお姉さんたちも見放題「ねぇ」

 

ブドウ頭の頭を鷲掴みにして持ち上げる。

その隙に何をするのか察してくれた梅雨ちゃんが舌でブドウ頭の手からチケットを回収してくれていた。

 

「今誰の妄想した?」

 

「あ」

 

ブドウ頭はすぐに妄想をやめて、気持ち悪い表情をスッと引っ込めて真面目な表情でこっちを見てきた。

 

「……オイラは悪くない」

 

「……続けて」

 

まさかの言い逃れである。

私が何に対して怒っているか自体はすぐに察していて、どうにか制裁から逃れようと必死で考えているのも全部伝わってくる。

……一応、言い分だけは聞いてあげよう。

 

「波動先輩が魅力的すぎるのが悪いんだ。オイラを魅了するあのおっぱ、じゃなくて、魅力的なスタイル。波動だっていつも自慢してるじゃねぇか。だから、そんな波動先輩の水着姿を想像しちまうのも、悲しい男の性ってもんだ」

 

……確かに私はお姉ちゃんの美貌を皆に自慢して布教していたけど、このブドウ頭の妄想は許しがたいものでしかなかった。

お姉ちゃんを欲望に塗れた汚らわしい目で見るなって言っておいたはずなのに、ブドウ頭のさっきの妄想は、とてもではないけど許容できない。

ブドウ頭を掴む手に波動を集めて、身体強化をかけてどんどん握力をあげていく。

上鳴くんはブドウ頭が何を考えたのか察したらしくて、いつの間にか離れて皆と一緒に今後の話し合いを始めていた。

皆はブドウ頭のこれがいつものこと過ぎてもう何も言わずに無視を決め込んでいる。

 

「……男の性……さっきのラッキースケベがどうとかいう妄想も……その一環……?」

 

「お、おう。そうだ。水着で肌の露出が増えるイベントだぞ。ラッキースケベ、期待しちまうもんだろ。それもこれも水着のマブイ姉ちゃんたちが悪いんだ」

 

「水着……あの妄想が、水着の妄想?お姉ちゃんの、裸どころか、それ以上のことまで考えてた、あれが?」

 

「申し訳ありませんでしたぁ!!!」

 

どこまで読まれたのか察したらしいブドウ頭が、即座に謝罪してきた。

水着の妄想だけなら、お姉ちゃんの美貌に魅了されたんだって見逃してあげようと思ったけど……

だけど、そんな謝罪でお姉ちゃんへの許されざる所業を見逃すわけがない。

 

「お姉ちゃんをそういう目で見るなって言ったでしょっ!!!」

 

「ぐぇっ!?」

 

腕に更に波動を集中させた上でなぜか近くにあった長い布で雁字搦めにしていく。

ギチギチに縛り上げて身動きをできなくしたうえで、天井につるし上げた。

……とりあえず、今はこれでいいか。

後でブドウ頭が汚らわしい思考と視線を二度とお姉ちゃんに向けないように教育するとして、皆の方に合流しよう。

上鳴くんが震えながら顔を真っ青に染め上げて、『波動がいるのに波動先輩で妄想するとか勇者かよ』とか考えているのが伝わってくるけど、無視しておくことにした。

 

 

 

とりあえず、集まって盛り上がっている女子の方に向かう。

響香ちゃんが冷や汗を流しながらこっちを見ていたみたいだけど、これはお姉ちゃんを汚したブドウ頭が何もかも悪い。

 

「トロピカルに行けるんや!」

 

「楽しみだね!」

 

「波動制裁終わった?」

 

「ん……とりあえず今はおしまい……後で布教はするけど……」

 

「あ、相変わらずだね波動」

 

三奈ちゃんの質問に答えると、響香ちゃんがさらに冷や汗を増量しながら苦笑いしてきた。

そこまで引かなくてもいいんじゃないだろうか。

そう思っていたところで、飯田くんが皆の方を向いてにこやかに言い放った。

 

「ああそうだ!皆!水着の用意も忘れずにな!」

 

その言葉を聞いた瞬間、集まっていた女子の内半数が、時が止まったように固まった。

うん、まぁ、決戦が終わってから色々お祝いとかしたり、市民の人たちからもお礼として色々もらったりとかしてたから、そうなっちゃう子も多いよね、うん。

固まらなかったの、一切気にする必要がない百ちゃんと、ちゃんと管理してる梅雨ちゃんくらいだし。

私はそこまで問題はない。

甘い物を沢山食べた分は運動量を増やしたり食事を調節したりしてなんとかしていた。

というか、私たちヒーロー科は元々運動量が凄いから余程のことがないと太らないと思うんだけど……

お茶子ちゃん、響香ちゃん、三奈ちゃん、透ちゃんはそうでもなかったらしい。

 

『今水着はやばい……!最近おもち食べ過ぎたかな……』

 

『食堂の新メニュー全制覇とかするんじゃなかった』

 

『いけないと分かってても夜食しちゃうんだよね……』

 

『最近気が緩んで油断してた……絶対見せられないよ!』

 

透ちゃんはそこまで気にする程じゃないと思うけど……

本人にとっては気になるみたいで、4人でチラチラ見合って牽制し始めた。

この調子なら、今砂藤くんが作ってくれてるスイーツは4人はいらないよね。

4人がこそこそ話してたけど、その中で三奈ちゃんがそんな感じの思考してるし。

 

「特に砂藤のスイーツに注意!!」

 

「今日もスイーツ作ってみたんだけど誰か味見してくれねーか?」

 

三奈ちゃんが叫ぶのと同時に、砂藤くんが笑顔でキッチンから出てきた。

その手に持っているのはクリームたっぷりのパフェのようなスイーツだ。

当然私はもらう。

カロリーとか面倒くさいことはまた後で考えよう。

だって甘い物はカロリーゼロだから!

甘い物を食べる時に余計なことは考えちゃいけないんだから!

 

「食べる……!!透ちゃんたちはいらないみたいだから4人の分も私がもらってあげる……!!!」

 

「え、そうなのか?」

 

「う、うん!悪いけど、人からもらった甘味は喉を通らないんだよね」

 

「ええ……?いつも嬉しそうに食ってたよな……?それなら仕方ねぇけどよ……」

 

三奈ちゃんの言葉に、砂藤くんが困惑して寂しそうな表情を浮かべる。

まあ、甘い物は私たち女子が喜ぶ傾向が強いから、砂藤くんも結構それで調整したりしてくれている。

その女子の大部分が食べないなんて言えばこの反応になるのは当然か。

 

「私は食べるから……!パフェちょうだい……!」

 

「おう!たくさんあるし、好きなだけ食べてくれ!」

 

砂藤くんが渡してくれるパフェを受け取って、スプーンでクリームとアイスを掬って一気にほおばる。

キーンって若干の頭痛が来るけど、同時に口の中に甘い至福の味が広がっていく。

 

「砂藤くん天才……!!!クリームあっさり目で濃厚なアイスにぴったり……!それに蜜までかけちゃっててもうやばい……!至高の甘味だよ……!」

 

「そ、そんなに美味しいの……?」

 

私が砂藤くん作のパフェを大絶賛していると、透ちゃんが恐る恐る聞いてきた。

 

「ん……!今まで食べたパフェの中で5本の指に入る出来……!」

 

「……ゴクリ……わ、私も、ちょっとだけなら……」

 

「う、ウチも味見しようかな?」

 

「本当か!」

 

透ちゃんと響香ちゃんが甘味の魅力に負けたようだ。

お茶子ちゃんもこっちにフラフラと近づいてきていて、止める三奈ちゃんを一口だけなんて言って振り切っていた。

 

「……!砂藤また腕上げたんじゃない?」

 

「へへ……そうか?」

 

「もう一口いいかな……」

 

「口の中に幸せが広がる!」

 

「おいしい……幸せ……」

 

3人もなんだかんだで一口なんかじゃ止まらなくて、結局私と一緒にパフェを食べ続けていた。

私もスプーンが止まらない。

満面の笑みを浮かべてパフェを口に運び続ける。

 

「……やっぱ食べるーーー!私も入れてーーー!」

 

三奈ちゃんも耐えきれなくなったようで、泣きながらこっちに飛びついてきた。

うん、やっぱり砂藤くんのスイーツは我慢できないよね。

仕方ない仕方ない。

 

 

 

で、まあ私はそんなに気にしてないけどダイエットしたいのに結局甘い物を我慢できない4人は気にしちゃうわけで……

数日後、百ちゃん、梅雨ちゃんとお茶談義していたところに4人が泣きつきに来た。

 

「助けてヤオエモ~ン!!」

 

「……まあ……そうなるよね……」

 

「近頃様子が変だと思ってたわ……」

 

「事情は分かりましたけど……今すぐ痩せる道具を創造するというのは難しいかと……」

 

これは百ちゃんの言う通りでしかないだろう。

そんなすぐに痩せることができるような道具が存在するならダイエットなんて存在しないわけだし。

とはいっても三奈ちゃんは必死みたいで、百ちゃんにさらに縋っていく。

だけど、それを百ちゃんに聞くのは無駄でしかない気が……

 

「じゃあどうやってスタイル維持してるか教えて!実践するから!!」

 

「しっかりと脂肪を蓄えることですわ!創造で消費してしまいますからね!」

 

「ムリだー!!」

 

「というかそれ……太らないようにするっていうよりも……痩せないようにするスタイル維持の方法だよね……」

 

案の定過ぎる返答に三奈ちゃんも絶叫することしかできてない。

まあでも、真似したらおデブさんまっしぐらだし当然か。

百ちゃんの個性があるからこそ成り立ってるスタイル維持の方法だし。

そんな百ちゃんを尻目に、今度はお茶子ちゃんが梅雨ちゃんに問いかける。

 

「梅雨ちゃんは?あんまり気にしてなさそうやけど……」

 

「私は胃を出し入れできるから……」

 

「どう頑張ってもムリだよー!!」

 

三奈ちゃんがさらに絶叫した。

梅雨ちゃんのそれも蛙だからこそできることであって、普通の人が真似できることじゃないからこれも仕方ない。

というか、真似出来る方法なんて私の方法だけなのでは?

とはいってもオーソドックスな運動でしかないから皆に受けるかは微妙なんだけど。

そんなことを考えていたら、困ってる4人が助言をもらう流れだったのもあって、透ちゃんが私にも問いかけてきた。

 

「瑠璃ちゃんは?甘い物あんなに食べてるのに全然気にしてないけど……」

 

「……私……毎日ランニングしてるし……甘い物は量気にしないで食べてるけど……食事は昔と変わらない常識的な量しか食べてない……後は授業でも散々運動してるし……体重増えたりしてないから全然気にする必要ない……」

 

「は、走り込み……やっぱりそうだよね……地道な運動しかないよね……」

 

「ん……というよりも……皆だって……授業だけでも相当な運動量になってると思うんだけど……?」

 

私が問いかけると、4人は冷や汗を流しながら目を逸らし始めた。

 

「……運動した後って、お米が美味しく感じちゃうよね」

 

「おもち、美味しいから……しょうがなかったんだよ……」

 

「い、いただきものダメにしたら申し訳ないし……」

 

つまりそういうことらしい。

私と一緒に甘い物を食べたりしてるのに、もらったお菓子とかをいっぱい食べた上に、食事でも結構な量を食べてたからカロリーオーバーになって太ってしまったわけだ。

波動で体形を見ててもそこまでじゃないとは思うんだけど、4人的にはダメらしい。

 

「痩せなくちゃダメなのかしら……?みんな今のままで十分魅力的よ」

 

「透ちゃんもだけど……体形全然変わってないとおもうんだけど……」

 

「……ありがとう梅雨ちゃん、波動……けどね、それ以上にこの気の緩みを正したいんだよ……!」

 

梅雨ちゃんと私でダイエットはいらないんじゃないかって提案をしてみるけど、4人の決意は固いみたいだった。

本気で危機感を覚えているらしい。

……お茶子ちゃんだけはこのままの状態で緑谷くんに見られたくないっていう恋心から必死な感じみたいだけど。

 

「ではやはり運動でしょう。波動さんの先程の話を聞いているので分かると思いますけど、有酸素運動が効果的です。ジョギングやウォーキング、水泳など、筋肉への負荷が比較的軽く長時間継続して行う運動ですね」

 

「そうだよねぇ……ねぇ瑠璃ちゃん、明日から一緒にランニングしてもいい?」

 

「ん……大歓迎……なんだったら……食事の管理も私がしようか……?お姉ちゃんの食事作ってる時に……運動量と摂取カロリー考えて調整したりもしてたから……カロリー抑えめで味も美味しいの作れるよ……?隠れて食べたりしないっていう約束をしてもらう必要はあるけど……」

 

一緒にランニングを受け入れるついでに、食事管理を提案してみたら4人の目が輝きを取り戻してこっちに詰め寄ってきた。

 

「本当!?約束するからお願いしていいかな!?」

 

「わ、私もいいかな!?」

 

「私も!」

 

「う、ウチも……」

 

「ん……じゃあ皆でがんばろっか……」

 

「よろしくお願いします!」

 

4人とも特に異論はなかったみたいだ。

今日はもうランチラッシュ先生のご飯が来ちゃうから、明日から食事も色々考えよう。

明日からはランニングも皆と一緒にだし、結構楽しみかもしれない。

毎日ランニングしてるとはいっても走るのはそもそも嫌いだから、皆と一緒にランニング出来るなら私のモチベーションにもなる。

あと、皆に頼みたいこともあるし私が協力できるところは協力しておきたい。

海水浴とかプールとか、物心ついてからは行こうとも思わなかったから、お洒落な水着なんて買ったことがないのだ。

お姉ちゃんのは色々見てきたけど、自分のをわざわざ買ったことはなかった。

だから、皆と一緒に買いに行って色々助言をもらいたかった。

4人がダイエットに本気だから、ある程度トロピカルに行く日が近くなってから一緒に新しい水着を買いに行くのがちょうどいいだろうか。

そんな先の予定を思い描きながら、食事のレシピに思いを馳せた。

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