波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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番外3:常夏の楽園

チケットをもらって少し経った週末。

私たちは、ついに常夏の楽園であるトロピカルに来ていた。

今は更衣室で着替えをしているところだ。

水着も皆で買いに行って一緒に選んでもらったし、なかなかいいのが選べたと思う。

コスチュームとか学校指定の水着よりも肌の露出が多いから結構恥ずかしいけど。

私が買った水着は紫がかった鮮やかな青色……瑠璃色のビキニだ。

フリルがついている感じの可愛いやつだったりする。

お姉ちゃんの去年の水着に似ているデザインを見つけたからそれにしようかと思ったんだけど、透ちゃんを筆頭にした皆にこっちの方が似合うと思うよって勧められたからこっちにした。

色が私の名前と被ってるのはわざとそういうのを選んだのかな?なんて思わなくもないけど、皆のおすすめだし嘘を吐いているわけでもなかったから拒否する理由もなかった。

 

「やっぱりそれ似合ってるね!瑠璃ちゃん!」

 

「ありがと……透ちゃんも……似合ってる……」

 

「ありがとー!」

 

透ちゃんの水着は花柄のワンピースタイプだ。

ビキニも持ってきてるみたいだったから、どっちにするのかなって思っていたけど、こっちにしたらしい。

多分私以外にもダイエットの成果が分かりやすい水着にしたんだろうなって感じだった。

実際ランニングと適度な食事制限を頑張っただけあって、その努力の成果は推して知るべしって感じだ。

もともとよかったスタイルがさらに際立っている。

あとは、珍しく髪の毛を結っているみたいだった。

花飾りがついたシュシュでポニテにしてる。かわいい。

 

「ポニテ……珍しいね……」

 

「ふふふ、瑠璃ちゃんもいるし色々あったのもあって、最近髪型のアレンジを色々考え始めたんだよ!」

 

「ん……かわいい……すごく似合ってる……」

 

「そう?そうかな?ならよかった!」

 

髪型の感想を言うと、透ちゃんはすごくにこやかな笑顔を浮かべて嬉しそうにし始めた。

やっぱり、髪を弄っても誰にも見てもらえないし感想も言ってもらえないんじゃ、興味も湧きづらいよね。

私なら問題なく透ちゃんが見えるし、それで喜んでもらえるなら私も嬉しい。

色々って辺りで青山くんがちらつくのはよくわからないけど、透ちゃんがサプライズにしたいみたいだしそれならそれでいいか。

深くは読まないでサプライズとやらを楽しみにしておこうかな。

そう思いながらお互いに褒め合って、皆の方に向かった。

 

皆ももう着替え終わって談笑していたみたいだった。

お茶子ちゃんはパステルカラーのビキニ。ストラップに綺麗な飾りがついてる感じのやつだ。

髪もハーフアップで結ってる。

梅雨ちゃんはワンピースタイプの水玉模様。

髪の結い方が凄く凝っててすごい。これだけでも時間がかかりそうだ。

三奈ちゃんはストライプのビキニ。フリルもついてる可愛いやつ。

髪に南国風の花飾りをつけてる。

響香ちゃんもビキニ。シンプルなやつだけど、チョーカーもつけてアレンジしてる。

百ちゃんは……なんというかすごい。

この前皆で水着を買いに行った時にこれは無理って私がすぐに却下した、クロスデザインのセクシーな水着。

胸元を惜しげもなくさらしてるし、真似できないししようとも思えない……

あれは百ちゃんみたいな身長と圧倒的なスタイルがないと無理だ。

創造をしやすいようにするためなんだろうけど、プールでその懸念をする必要があるのかは甚だ疑問だ。

普通のビキニでも十分すぎるほどの露出があると思うし。

 

「……百ちゃん……相変わらずすごい露出だね……そういうの……私だと絶対似合わない……」

 

「ヤオモモちゃんの水着はスタイルと身長と自信とって感じで、全部併せ持ってないと真似できないよねぇ」

 

「……?そうでしょうか?」

 

私と透ちゃんの感想に百ちゃんが腕を組んで頬に手を添えながら小首を傾げてるけど、その姿すらもすごいという感想しか出てこなかった。

私と透ちゃんも持っている側ではあるんだけど、百ちゃんはそれ以上の物を持っていた。

というか、響香ちゃんの雰囲気が怖いからこの話やめよう。

梅雨ちゃんもそんな雰囲気を感じ取ったのか、別の話題を振ってくれていた。

 

「4人とも、水着とても似合ってるわ。瑠璃ちゃんと色々している姿を見ていたから知ってはいたけど、ダイエット、頑張ったのね」

 

「とーぜん!やればできる女ですから!」

 

三奈ちゃんがドヤ顔で胸を張っていた。

その話題を聞いて、響香ちゃんの雰囲気ももとに戻っていた。

 

「まあでも、波動がいてくれたから無理なくダイエット出来たよね。私たちだけだったらがむしゃらに運動してただけだった気がするし」

 

「ねー、カロリー抑えめなはずなのにご飯すっごく美味しかったし」

 

「役に立ったなら……良かった……」

 

「役に立ったなんてもんじゃないよ!」

 

ダイエットが成功したのは皆が頑張ったからこそでもあるし、私は成功の一因でしかないはずだ。

走り込みとか若干物足りない食事の中での間食禁止とか、自分自身で頑張らないといけない部分があったのは確かなんだし。

それでも、皆が自信を持って水着に着ることができるようになったならよかった。

そのまま皆で和やかに褒め合いながら更衣室を出て、男子と合流するべくプールの方に向かった。

 

 

 

「ひょー!!」

 

「はしゃぎすぎ!!」

 

案の定こっちを見た瞬間に奇声をあげたブドウ頭に、三奈ちゃんが持っていたビーチボールで即制裁してくれた。

うん、まあこのくらいならもう慣れたから特に思うことはないんだけど、うるさいのは事実だしそういう意味での制裁はありだとは思う。

ビニールに空気入れてるだけのやつだからそんなに痛くないだろうし。

とりあえずブドウ頭は実害がない限り放置でいいや。

見られるのは分かった上での水着だし、実際他の男子の思考も結構浮き足立ってるし、何もブドウ頭だけじゃない。

緑谷くんなんてお茶子ちゃんがすぐに話しかけにいって初期みたいなドモリ具合になってるし。

お茶子ちゃんが積極的なのは私たち的にも嬉しい限りだし、そのまま緑谷くんにガンガンアタックをかけてもっと意識させてあげるといい。

そんな状況なのもあって、いくら私たちを見て妄想を働かせ始めてるブドウ頭だとしてもセクハラされない限り制裁はかわいそうな気もするから、とりあえずもう放置だ。

それはそれとして……

 

「……飯田くん……ユニークな水着着てるね……」

 

「良い水着だろう?機能美を追求したんだ。身体に密着し、縫い目を少なくすることで水の抵抗を最低限に、さらには撥水性にも優れているんだ。それに、エンジンにも干渉しない。まさに俺のための水着と言っていい」

 

「機能美……なるほど……うん……いい水着……だと思う……うん……」

 

飯田くんは、首から膝上にかけてぴっちり覆う水着を着ていた。

ここまでは男子でもそういうタイプの水着はあるだろうし珍しいことじゃない。

実際身体にフィットしているし、縫い目が少ないから水の抵抗が少ないというのは否定のしようがない事実だと思う。

問題はそのデザインだ。

全体が赤と白の縞模様ってどういうことだ。

機能美に優れた水着を自慢したいのか、飯田くん自身がそのクソダ……奇抜な水着を清々しい輝く笑顔で着てるし。

他の男子が無難な水着を着てるだけに余計に目立つ。

……本人が気に入ってるならこっちが口を挟む問題じゃないのは分かってる。

デザインに関して何かを言うつもりもない。

男子も飯田くんを微笑ましく見守っただけみたいだし、きっと他の女子もデザインにツッコんだりしないだろう、きっと。

 

「随分歯切れが悪くないかい?……まぁいいか。波動くんも、とてもよく似合っているよ」

 

「ん……ありがと……」

 

飯田くんの純粋な賛辞に素直にお礼を言う。

うん、飯田くんは本当に邪な思考が過りもしないな。

流石のクソ真面目だ。

ただ純粋に私に似合っているっていう点だけを褒めてくれている。

そんな純粋な誉め言葉に、悪い気は一切しなかった。

 

「じゃあ泳ごうぜ皆ーーー!!」

 

「イエーーー!!!」

 

私と飯田くんがそんなやり取りをしていると、とりあえず合流できたことで気が急ったらしい上鳴くんや三奈ちゃんがいきなりプールに飛び込んだ。

それを見た瞬間、さっきまでにこやかだった飯田くんの動きが止まった。

あぁ、そうだよね……クソ真面目だもんね……

 

「君たち!!飛び込んだら危ないじゃないかっ!!それに準備運動もしていないだろうっ!?」

 

「えー!?このくらいよくない!?せっかくの貸し切りだよ!?このおっきなプールに私たちくらいしかお客さんいないんだよ!?」

 

「そうだぜ飯田ー!こういう時じゃないと飛び込みなんてできないだろー!?」

 

「……一理ないわけではないが、そうだとしてももう少し落ち着きをもってだな―――」

 

……長くなりそうだな、これ。

そんな感じなのもあって、お説教を始める飯田くんを尻目に、プールサイドに残っていた皆で無言で頷きあってから粛々と準備運動を始めた。

 

 

 

「いくよー!そーれっ!!」

 

「ケロっ!」

 

お茶子ちゃんが上空から叩き落としてくるビーチボールを、梅雨ちゃんが下から掬って打ち上げる。

 

今は女子皆で円になってビーチボールで遊んでいた。

ひとしきり泳いだ後に何故か自然に始まったから、私と百ちゃんは困惑してたけど、他の皆は大盛り上がりでやり始めたから友達と水遊びってこういうものなのかもしれない。

実際、昔暇があれば読んでた小説とか漫画とかで、海とかプールとなるとこういう遊びをしていることが多かったし。

私は波動の揺らぎと思考から誰に返そうとしてるのか分かるから基本的に棒立ちだ。

自分の方向に打とうとする意思が読み取れる時とか、暴投で飛んできたときに対応するくらいだ。

そう考えたところで、三奈ちゃんが私の方に飛ばしてきそうな思考をし始めた。

それを受けて打ち返せるように準備を始める。

 

「っとと!?ごめん波動!」

 

「ん……大丈夫……」

 

三奈ちゃんがレシーブを失敗してしまって、ビーチボールは高く飛び上がってしまった。

まああらかじめある程度準備してたから普通に対応できる。

波動の噴出で一気に跳び上がって、波動を感知しながら打ち返す先を考える。

視界の端にプールサイドに座りながら『いい眺めだな』、『全くだ』なんて話してる2人がいて、ブドウ頭の内心と合わさって一瞬そっちに剛速球を飛ばしてやろうかと思ったけど、無視だ、無視。

ブドウ頭の私たちの身体を論評するような思考に加えて、さらにその節々から私の身長に対しての思考も読み取れるのがイラッとするけど、こういうのは無視するのが一番だ。

そう思って、百ちゃんの方に加減しながら打ち返した。

 

「百ちゃん……!」

 

「はい!」

 

百ちゃん含めてヒーロー科は基本的に運動が出来るから、それも簡単にはじき返してくれる。

次は透ちゃんの所に飛んで行っていた。

それはいいんだけど……百ちゃんが今の水着で運動するの、目の毒すぎる。

というか、ブドウ頭と上鳴くんの視線が百ちゃんに釘付けになってる。

……流石に運動系はやめといたほうがいいか。

響香ちゃんもそんな感じのこと考えてるし……うん、やめとこう。

透ちゃんがあらぬ方向に飛ばしてちょうどラリーが途切れたし。

 

「……ちょうどいいタイミングだし……別のことしよっか……」

 

「あー、そういうことだよね。うん、ウチもそうした方がいいと思う」

 

「そういうことって?」

 

透ちゃんが疑問符を浮かべながらこっちを不思議そうに見てくる。

それに対して、私は鼻の下が伸びてるブドウ頭の方を小さく指さした。

それを見て皆もすぐに察する辺り、前科がありすぎるブドウ頭だった。

 

その後はのんびり浮き輪に乗ったり、ビーチみたいになっているところでビーチチェアに座りながらトロピカルジュースを飲んだりして過ごした。

うん、こういう風に穏やかに過ごすのも悪くないと思う。

周囲にいるのがA組以外だと招待されてるヒーロー何人かって感じだから、邪で鬱陶しい思考とか視線はもちろん、囲まれたりとかもなくてのびのび出来るのがなお良しって感じだ。

 

そんな感じで過ごしてお昼になった。

お昼はトロピカル内にあるフードコート的なところで食事だ。

それで、私はちょっとわくわくしてることがあった。

それは、漫画とかゲームとかそういうのでは、海の家ではまずいラーメンが定番らしい。

ここトロピカルも南国風だし、海みたいな感じだし、噂のまずいラーメンという物を味わえるのではないだろうか……!?

なんて思っていたんだけど……

 

「……まずくない……普通に美味しい……なぜ……」

 

「え、美味しいのはいいことでしょ?なんでショック受けてるの?」

 

一緒にラーメンを頼んでいた透ちゃんが隣で不思議そうにしている。

美味しいのはいいことなんだけど、思ってたのと違うというかなんというか……

商業施設にそういう定番を求めること自体が間違いだったか。

いやでも、海の家だって商売してるはずなのに、なんでまずいラーメンが定番なんてことになるのか。

やっぱり食べてみないと分からない。

謎過ぎる。

そう思いながら普通に美味しいラーメンをつるつると食べていると、近くの席に座って緑谷くん、飯田くんと一緒にラーメンを食べていた心操くんが話しかけてきた。

 

「あれだろ?海の家みたいなのを想像してたとか、そういう感じの」

 

「あ、そういうことか」

 

「心操くん正解……海の家のまずいラーメンっていうの……興味あったから……」

 

「まずいラーメンなのに、わざわざ食べてみたかったの?」

 

「ん……小説とか……漫画とかで……よく出てくるから……どういうものかなって……」

 

透ちゃんの質問に正直に答えると、皆苦笑した感じになった。

飯田くんとか百ちゃんとかはきょとんとしてるけど、多分単純にそういうところで食べたことないだけな気がする。

というか、皆の思考を見る限り、まずい、そこまでまずくない、普通に美味しいとか、感想がバラバラだ。

そういう感じなのか。

それとも、地域差がある?本当に謎だ。

なんで客商売なのにまずいまま出すんだ。

 

「味自体は言ってくれた通りそこまで美味しくないのかもしれないけど、友達とか家族とかと楽しい雰囲気の中で食べるから美味しく感じたり、思い出に残ったりするのもあるんじゃないかな」

 

「……なるほど……?」

 

緑谷くんが割と腑に落ちる意見を言ってくれた。

なるほど。それなら確かに印象に残りやすいか。

実際私も、闇鍋とかもすっごくまずかったはずなのに、皆と一緒に食べてるってだけで楽しかった思い出として記憶に残ってるし。

つまり、基本的にはまずいけど、雰囲気とかのおかげで美味しく感じる可能性もあるってことか。

だから売れるし海の家もわざわざ変えたりしないでそのまま出し続けると。

なるほど納得。

そういうことなら今後機会があったら食べてみるくらいの感じでいいかな。

わざわざそれ目的で行動を起こすようなものじゃないな。

 

 

 

そんなこんなで食事を食べ終わってそのままフードコートでのんびりしていると、徐に透ちゃんが立ち上がった。

 

「よし!瑠璃ちゃん、ちょっと待っててね!」

 

「……?ん……分かった……」

 

思考の感じからして、朝考えていたサプライズ的な何かを過らせている。

……着替えに行った?

まぁいっか。

皆もまったり休憩モードになってるし、お喋りしながら待ってれば苦痛でも何でもない。

そう思っていたところで、青山くんが近づいてきた。

 

「波動さん」

 

「どうしたの……?」

 

「いや、その……この後、葉隠さんがしようとしていることに協力するからね。あらかじめこっちに来ておいたんだ」

 

本当のことを言ってるけど、本心じゃない?

……これ、透ちゃんとの約束か何かを口実に私と話に来たのかな?

というか、透ちゃんもしかしてこれを餌にして協力をお願いした?

……まあいいか。

悪意を感じないし、話したいだけみたいだし。

 

「は、波動さん!水着、とても似合ってるよ☆」

 

「ん……ありがと……青山くんも……似合ってる……」

 

青山くんはもはやチャームポイントと言ってもいい星の模様が入った海パンだ。

似合っているのは間違いない。

それはいいんだけど……ドモったりしてる理由も全部こっちに筒抜けになってるだけに、私としては気まずさが勝ってしまうのが困りどころだ。

その後も若干挙動不審になりながら話を振ってくる青山くんと話しながら透ちゃんを待った。

同性同士で話したりしてるところも多いけど、緑谷くんとお茶子ちゃんが顔を赤くしながら話してたり、響香ちゃんが上鳴くんをからかってたりとか、納得の組み合わせになってるところもある。

私はこのまま静観するつもりでしかないけど、お茶子ちゃんたちは進展があるといいなぁなんて思いながら話し続けた。

 

そんな感じで少し待っていると、透ちゃんが戻ってきた。

案の定フリル付きの白いビキニに、頭に花飾りを付けたりとすごくかわいい感じになってる。

皆には見えないのが勿体ないくらいだ。

 

「瑠璃ちゃんおまたせ~!」

 

「おかえり……水着、可愛い……そっちも似合ってるね……」

 

「ありがとー!着替えてきちゃいました!」

 

照れたような表情で頭を掻きながら、朗らかな笑顔で答えてくれる。

うんうん、可愛い。

 

「でも……なんで着替えてきたの……?」

 

「あれ、読心で読めてない?」

 

「読めてないというよりも……透ちゃんがサプライズって考えてたから……深く読まないようにしてた……」

 

「そういうことか!気を遣ってくれてありがとー!でも、読まないでくれたならそれだけびっくりできるサプライズだよ!」

 

透ちゃんがドヤ顔で胸を張っている。

青山くんが関わるなにかでびっくりできるサプライズっていうのがよく分からないけど、透ちゃんがそういうならきっとそうなんだろう。

そんなことを考えていたら、透ちゃんが青山くんの方に近づいていって、内緒話を始めた。

 

『瑠璃ちゃんとゆっくり話せた?』

 

『うん、ありがとう。葉隠さん』

 

『よしよし!それじゃあ、次は私に協力してね!準備は大丈夫?』

 

『大丈夫、いつでもやれるよ☆』

 

私には筒抜けになるから、その内緒話本当に意味がないんだけど……

言わぬが花か。

透ちゃんは皆から見える位置に移動して大きく息を吸い込んだ。

 

「はい!それじゃあ皆!こっちに注目!」

 

「んー?どしたの葉隠?」

 

「ふっふっふ……とっておきのサプライズがあるんだよ!大事に大事に温めた、とっておきのサプライズがね!」

 

透ちゃんのその言葉に、皆疑問符が浮かんだ。

だけど、一方で私は、この後何が起きるのか分かってしまった。

本当にそんなことができるの?

どういう原理?

私まで疑問符が浮かびまくってるのを尻目に、透ちゃんはドヤ顔で胸を張り出した。

 

「じゃあ青山くん!お願いします!」

 

「ウィ☆……ネビルレーザー!」

 

透ちゃんの掛け声と同時に、青山くんがレーザーを放った。

透ちゃんはそれを集光屈折ハイチーズとレーザーの捻じ曲げを応用したような感じの動きで、レーザーを拡散させながら霧散させた。

……それは、いいんだけど……

捻じ曲げ始めた直後から、透ちゃんが、見えるようになっていた。

波動でじゃない。

肉眼で、はっきりと見えるようになっていた。

 

「瑠璃ちゃん以外に直接見てもらうのは初めてだよね!改めて、葉隠透です!よろしく!」

 

透ちゃんはドヤ顔のままそう言って、最後ににっこりと輝くような笑顔を浮かべた。

その笑顔を、皆数秒間凝視してしまっていた。

 

「ええ~~~っ!?」

 

「ちょっ!?えっ!?どういうことっ!?なんで見えるのっ!?個性はっ!?」

 

「葉隠さんの透明化は光の屈折を利用したもののはず。青山くんのレーザーが当たることで見えるようになる?どういうシナジー?サラダ油がガラスに近い屈折率を持ってるから見えなくなるのと同じ原理で透明になってるのかと思ってたけど、違うのか?実際今まで葉隠さんは光の屈折とかを弄って光を収束させたりして光量をあげたり色を変えたり乱反射させたりしてたはず。レーザーを曲げる延長?本当にどういう……これは分析のし甲斐が「それやめろって何回言えば分かんだ出久ぅ!!!」

 

わざわざ水着を着替えたのはこのためか。

透ちゃんのスタイルなら、確かにこっちの方がインパクトも見栄えもある。

見える前提ならこっちの方がいいのは間違いない。

皆がパニックのようになっているのを尻目に、私は透ちゃんの方に歩いていって、ドヤ顔の透ちゃんと顔を見合わせながら話しかけた。

 

「透ちゃん……それ……いつから出来るようになってたの……?」

 

「これはねぇ、超常解放戦線との決戦の時に出来ることに気が付いたんだよ!クニエダを青山くんのレーザー捻じ曲げて奇襲した後に燃やし尽くして倒したんだけど、その時に何故か見えるようになってたの!私もびっくりしちゃったよ!それと同時に安心もしたけど!」

 

「安心……?」

 

「うん!だって急に見えるようになるんだよ!?もしも昔の手袋とブーツだけのコスチュームだったら……」

 

「あ……なるほど……コスチューム改造しておいて……よかった……」

 

「ホントにね!」

 

本当に、これに関しては良かったと私も思った。

もしも戦闘の真っただ中で急に透ちゃんの全裸が晒されたら……考えたくもないな。

少なくとも青山くんに全裸を見られることになりそうだし。

私も冷や汗を流しながら頷いていると、透ちゃんが急にグイっと近づいてきた。

 

「と、透ちゃん……?」

 

「私、瑠璃ちゃんとしたいことがあったんだ!」

 

「ひゃっ……!?」

 

急に透ちゃんに肩を引き寄せられて、お互いの頬が付いちゃいそうなくらい近くに顔を寄せられた。

 

「ほら瑠璃ちゃん!撮るからね!笑顔笑顔!」

 

「……なるほど……そういうこと……私も、透ちゃんと写真撮りたかったから、大歓迎……!」

 

いつだったか、発目さんに透ちゃんが写るカメラを作ってもらいたいと思ってしまうくらいには、透ちゃんと一緒に写真を撮りたかったんだ。

私だって一緒に撮りたかったに決まってる。

満面の笑みを浮かべて、透ちゃんが持っているスマホに顔を向けた。

 

 

 

「あ!いたいた!お~い!」

 

透ちゃんを中心に皆と一緒に写真を撮るのが落ち着いた辺りで、天使のような声が聞こえてきた。

お姉ちゃんだ。あとついでにリューキュウ。

来る日にちが被るなんて運がいい!

 

……まぁ、私がこの日に行くよってお姉ちゃんに伝えておいただけなんだけど。

そこになんとか半日だけとはいえ休みを被せてくれたんだろう。

 

「ねじれ先輩!リューキュウも!」

 

「久しぶりね、ウラビティ、フロッピー」

 

「お姉ちゃん……だいぶ遅かったね……大丈夫だった……?」

 

「大丈夫大丈夫!来る途中でヴィラン見かけて捕まえてただけだから!」

 

ケラケラ笑いながら教えてくれる水着のお姉ちゃんは今日も天使の如き可愛さと可憐さを振りまいている。

これは世の男たちが放っておかないのも無理はない。

私がドヤ顔で頷きながらこの後お姉ちゃんとすることを考えていると、お姉ちゃんが透ちゃんの方を見ていつもの興味をそそられる感じの思考をし始めた。

とりあえずそこを根掘り葉掘り聞くところから始まりそうだ。

そんなお姉ちゃんも無邪気で可愛いし止めるつもりもないから、透ちゃんは甘んじて受け入れて欲しい。

それが終わり次第、お姉ちゃんも含めて皆で遊ぼう。

あと、透ちゃんともっと沢山写真を撮らないと!

 

 

 

寮に帰って自室に戻ってから、透ちゃんがちゃんと写っている沢山の写真をいそいそと印刷した。

そんな写真を並べて、どれにしようかな、なんて思いながら、選別作業を進めていく。

でも、そんなに迷う必要もなかった。

透ちゃんと私が、2人とも満面の笑みを浮かべているツーショットの写真を、コルクボードの真ん中に張り付ける。

その写真を改めて見て、思わず笑顔を浮かべてしまった。




この話は9/18以前に9割方書き終えていた話です。
なんだったら番外2を書く前にここまで構想を練った上で書いてます。
だから今週のヒロアカと内容が若干被った感じになっているのは偶然です。
最新話の流れとか堀越先生のXでの葉隠のイラストの髪に無頓着とか、情報が出る前にこの話は9割方書き終えていたんです。
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