波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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番外4:HLB(前)

HLB。

ヒーローリーグベースボールの略称で、端的に言うと野球好きのプロヒーローが設立した草野球団体の総称だ。

草野球とはいっても、その人気自体は結構凄いものがある。

理由はHLBで採用されているルールにあると思う。

選手は先発出場の9人のみ。途中交代はなし。

ポジションチェンジは何回でも可能。

勝敗は9回終了時の点数差か、全員退場による試合続行不可能に陥るかのどちらかによって決まる。

で、ここからが一番重要なんだけど……

個性の使用が自由で、退場者が出ても試合はそのまま続行。

打者が負傷退場したら自動的にアウトになる。

ここで勝利条件の相手全員試合続行不能が悪さをしてくる。

つまり、野球の皮を被った個性使用自由のデスマッチなのだ。

そんなルールだから、とにかく派手な試合になる。

それに、プロヒーローがやっているだけあって選手の知名度も高いし、個性も一定以上の水準が保たれている。

だから草野球なのに人気なのも納得だ。

 

それで、なんでこんなことを考えているかというと……

コスチュームに着替えて、野球のグラウンドに集められたうえで、相澤先生に野球をしてもらうとか言われたのだ。

ヒーロー基礎学なのに。

 

「お前たちも困惑しているとは思うが、これはHLBからの依頼だ。もともとテレビ局からHLBにきていた依頼でな。テレビの再開に伴って、バラエティ番組やニュース番組だけでなく、どうにかスポーツによる娯楽を放送したいという話があったらしい。ただお前たちも知っての通り、多数の欠員が発生してプロスポーツは軒並み活動休止中、依頼の話が来たHLBもプロヒーローは復興のために多忙を極めている。人数を集めること自体が困難でな。そこでお前たちに白羽の矢が立った」

 

「HLBっていうと……?」

 

「HLBっていうのはプロヒーローが組織してる草野球連盟のことだよ!ギャングオルカのオルカーズとかシシドのライオネルズとかが有名だよね!」

 

挙がる疑問の声に緑谷くんがサッと解説してくれる。

まあ、いくら人気とは言っても所詮は草野球。

興味がない子は知らない子が多いのだ。特に女子。

透ちゃんとか疑問符が飛びまくってるし。

緑谷くんはヒーロー関連だから結構深い所まで知ってるっぽい。

思考からオタク知識が大量に読み取れるけど、相澤先生の説明中だから最低限の説明に抑えたらしい。

 

「ああ、そのHLBだ。こちらとしても、個性の応用という点で受けるのもありだと考えてな。特にお前たちは例の件で急成長したのもあって、既に2年の力量を遥かに超えてる。固定観念を取っ払って考えるのにも便利そうだしな。ただ、波動や轟をはじめ、テレビには抵抗がある者もいるだろう。参加したくない者は言ってくれれば、別途課題を与えて参加を免除する」

 

「……まぁ……抵抗がないわけじゃないですけど……私は別に……もう決戦の時の動画とかも散々流布されてますし……」

 

「俺も特には」

 

確かにあの時の悪評の流布に思うところがないわけではないし、変なバラエティとかに出ろって言われる感じなら全力で拒否するけど、ただの授業風景の撮影なら好きにすればいいと思う。

既にあの最終決戦の動画は散々拡散されまくってるわけだし、もう今更だ。

羽目を外し過ぎないようにする必要があるくらいで、やることは特に変わらない。

轟くんも素っ気なく返してるし、同じ考えみたいだった。

拒否する可能性のある筆頭の私たち2人が同意したのを確認して、先生は皆を見渡す。

皆も特に拒否しようとは思っていないみたいだった。

 

「よし。それなら、全員参加ということでいいな。撮影はテレビ局側で勝手にやるからお前らは気にしないでいい。全員参加だから、10人と11人でチーム分けして全員参加するように調整しろ。公平性に関しては―――」

 

その後は先生からルールを簡単に説明されて、チーム分けや人数の割り振りをどうするのかを指示された。

控えに回したら控えになった生徒だけ考える機会が減るから、強制的に全員参加。

心操くんがA組に入った影響で片方だけ人数が多くなってしまうのは、チーム分けで公平性をどうにかする。

HLBのルールでの野球経験者で、共通して感知系の個性を持っている響香ちゃんと障子くんがチームリーダーになって、1人ずつ指名していく形式でチームを決めるらしい。

それで、先に選び始めた方が10人、後に選ぶ方が11人という割り振りで交互に選んでいって、公平性を担保するって感じみたいだ。

どっちが先に選ぶかは2人に任せて、チーム分け時点から作戦や連携を考えたりするっていうのも授業の一環らしい。

 

「ウチがリーダーとか大丈夫かな……前の時のが結構トラウマになってるんだけど……」

 

「……まあ、前のようなプロヒーローの争いに巻き込まれるわけではないし、大丈夫だと思うしかないな」

 

……響香ちゃん、前にやった時は気絶したフリなんかしたのか。

まあ、ギャングオルカとシシドの仲の悪さは有名だし、その争いに巻き込まれたと考えれば仕方ないのかな。

そんなことを考えている内に、響香ちゃんと障子くんが動き出した。

どうやらじゃんけんでどっちが先に選ぶかを決めるつもりらしい。

 

「「じゃんけん―――ポンっ!」」

 

響香ちゃんがチョキ、障子くんがパーで響香ちゃんが勝った。

つまり、響香ちゃんが先に選んでいくってことだ。

響香ちゃんは少し考え込んでから口を開いた。

 

「……それじゃあ、波動!ウチのチームね!」

 

「……私でいいの……?」

 

「うん。作戦筒抜けに出来るのはそれだけで強いし、波動が1番かなって。それに……」

 

「ああ、俺も先に選ぶなら波動を選んだな。そして、そうなると後攻側が絶対に選ばないといけない人員は―――心操!お前は俺のチームだ」

 

「なるほど。そういうことね」

 

ああ、なるほど。

私と心操くんを絶対に同じチームにしないために、こうせざるを得ないって感じかな。

心操くんに対して事前の確実な対抗手段を取ることができるのが私しかいない以上、同じチームになってしまった瞬間に相手チームは話すことすらできなくなるわけだし、連携なんて一切できなくなる。

それを防ぐためには、どちらかが私か心操くんを選んだ瞬間に、相手は残った方を選ばなければいけない。

それなら、先に私と心操くんを比べて欲しい方を選んでしまった方がいいって考えか。

まあ、響香ちゃんは純粋に作戦筒抜け+読心テレパスでの連携とかを考えてたみたいだけど。

実際、相手ピッチャーがしようとしていることを読心して、バッターにテレパスで密告出来るわけだし。

私、波動の噴出ありきでも身体能力はクラスの中だとそこそこ止まりだし、身体能力はそこまで考慮されてなさそうだ。

 

「ん……そういうことならよろしく……」

 

「うん、よろしく。それで、2人目の相談なんだけどさ……」

 

「……緑谷くんか轟くんか爆豪くんの三択……」

 

「だよね、やっぱり……」

 

残ってる人たちの中だと、やっぱりこの3人が最上位だ。

超パワーに黒鞭に浮遊にと大暴れ出来るOFAの緑谷くん、特大の氷と炎をブッパできる轟くん、性格に難があるとは言っても個性の汎用性が非常に高い爆豪くん。

それに続くようにして百ちゃん、上鳴くん、飯田くんが来ると思う。

この競技、相手をKOさせるのがありな以上、純粋な野球の実力だけじゃなくて、制圧力と破壊力も評価項目になる。

そう考えると3人が圧倒的なのだ。

百ちゃんは道具を量産できるけど、身体能力は鍛えてる普通の女の子程度でしかないし、上鳴くんは百ちゃんで対策出来る上に連発不能。

飯田くんの足を考えると簡単なヒットでもランニングホームランに出来るかもしれないけど、他者への攻撃性は低くて野球面でも走るの以外は普通に打たなきゃいけないとか、とにかく何かしらの欠点が目立つ。

まあ、百ちゃんか上鳴くんを選んだら相手が残った方を取るのは私と心操くんの時と同じではあるけど。

とりあえず、そんな感じなのだ。

だから、この後選ぶなら、百ちゃんか上鳴くんで特別選びたい方が決まってないなら、あの3人から欲しい人を先に取ってしまうのがいいと思う。

響香ちゃんもそれは分かっているようだった。

 

「……じゃあ、緑谷で!」

 

「まあ……そうなるよね……私でもそうする……分析で構成を踏まえた作戦も考えてくれそうだし……早めに選ぶのは間違ってない……」

 

「だよね!」

 

実際あの3人の中なら緑谷くんが一番だと私も思う。

そんなことを話しているうちに、緑谷くんが恐縮そうな感じで近づいてきていた。

なんか、私と心操くん、百ちゃんと上鳴くんみたいなメタの張り合いみたいな選択肢以外で一番に選ばれたのが意外だったらしい。

……OFA持ってるんだから、誰が選択する状態でも緑谷くんは最上位だと思うんだけど……

まあいいか。

私たちが緑谷くんと話していると、障子くんは轟くんを選んだ。

そうなると、次に私たちがどうするかが問題だ。

爆豪くん、緑谷くんと致命的なほどに相性悪いし。

 

「……こうなると、他に入れたい人員話し合ってから次の指名考えた方がいいよね?」

 

「……ん……まずは爆豪くんを取るかどうかだけど……」

 

「かっちゃんか……指名してもいいとは思うんだけど……さっきから僕のこと睨みつけてきてるんだよね。選ぶなよって感じで」

 

「……まぁ、思考もそんな感じだよ……丸くなったとはいっても……緑谷くんと進んで同じチームにはなりたくないみたい……同じチームになってもそれなりにやってくれるとは思うけど……喧嘩しないとは言い切れないし……」

 

「喧嘩して連携取れなくなるくらいなら、最初から選ばないほうがいいかな……」

 

私と緑谷くんの意見に、響香ちゃんが渋い顔をしてそう言った。

爆豪くんは3人の中だと一番優先度低いかなと思ってたし、別にそれでもいいかなと思った。

その後は、3人で意見を出し合って欲しい人を話し合った。

私が透ちゃんを推薦して、緑谷くんが飯田くんを推薦、響香ちゃんは百ちゃんを推薦した感じだ。

私は透ちゃんと私のシナジーを考えて、緑谷くんは飯田くんの足を評価して、響香ちゃんは百ちゃんの万能性と上鳴くんとの2択を先に選んでおきたくてって感じで選んだみたいだ。

……なんか、意図せず皆一番仲がいい友達を選んでるな。

まあいいか。

とりあえず、この3人の中ならまずは百ちゃんを取るべきだ。

そうなったら障子くんは上鳴くんを取るはずだし。

その後もう1人確実にこっちが選べる。

 

 

 

そんな感じでメンバー決めの話し合いは進んで最終的には……

 

耳郎チーム     障子チーム

耳郎        障子

波動        心操

緑谷        轟

八百万       上鳴

飯田        爆豪

葉隠        峰田

常闇        切島

蛙吹        砂藤

麗日        青山

芦戸        尾白

          口田

 

って感じになった。

……嫌な予感がするなぁと思ってちらっとブドウ頭を見ると、案の定過ぎる状態になっていた。

 

「……なんだよこのチーム分けぇ!!なんで女子が全員そっちなんだよ!?」

 

「わざとじゃないし……」

 

「作戦を考えた結果だから」

 

「わざとじゃなきゃこうはならねーだろ!!?これじゃラッキースケベもやりにくいじゃぶへっ!!?」

 

「峰田ちゃんうるさいわ。これ全部撮影されてるのよ」

 

「ラッキースケベ狙い……最低……」

 

騒ぎ続けるブドウ頭を、梅雨ちゃんが舌で制裁してくれた。

本当にわざとじゃないし、撮影されてるの忘れてるんじゃないだろうか。

相澤先生が恥をさらすブドウ頭にガチギレ寸前だし、梅雨ちゃんが制裁しなければ先生が制裁していただろう。

そんなタイミングで、威勢のいい声がグラウンドに響いた。

 

「準備終わったなら位置につけぇ!実況はこの俺、プレゼントマイク!YEAHHHH!!」

 

いつの間にか合流していたマイク先生が実況し始めていた。

……さっきまで同じ感じでサッカーやってるB組の方に行ってたと思うんだけど、実況向きなこっちを実況することにしたらしい。

特に逆らう理由もないし、試合を始めるために皆粛々とグラウンドの中央に集まった。

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