波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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番外7:取材が来た日 Returns

「波動、少しいいか」

 

「……?分かりました……」

 

今日の授業も終わって、寮に帰ったらスコーンでも作ろうかななんて思っていたら、相澤先生に呼び止められた。

思考からして私に確認したいことがあるって感じみたいだし、特に拒否する必要がない。

私が了承すると、そのまま先生に連れられて職員室に移動することになった。

職員室につくと、先生はすぐに口を開いた。

 

「端的に言うと、A組に取材の依頼があったんだ」

 

「取材……ですか……?今までなんだかんだで……全部拒否してませんでした……?」

 

先生に振られたその話は、結構急でびっくりしてしまった。

決戦後、取材の依頼が大量に舞い込んでいたのは知っていた。

だけど、そういうのは全部、皆に存在すら匂わせずに学校がシャットアウトしていたはずだ。

なんで今回だけわざわざ私に言うのか、なんて考えたところで、大体納得出来た。

なるほど、そういうことか。

そんなことを考えたあたりで、相澤先生も私が理解したのが分かったらしい。

小さく頷いて言葉を続けた。

 

「理解したようだが、一応説明しておく。今回取材の依頼があったのが、去年取材に来ていた特田さんなんだ。取材内容に関しては、既に校長が問題ないことを確認してくれている。その取材に関しても、話したくなければその場で終了してくれていいとまで先方から言ってきているらしい。その条件なら受けるのも吝かではないかと思ったんだが、一応、お前の特田さんに対する所感を確認しておきたくてな」

 

「特田さんなら大丈夫だと思います……去年の取材の段階で……緑谷くんがオールマイトの後継者であることを見抜いた上で……黙ってくれていました……悪意も一切感じませんでしたし……治安崩壊後も……情報漏洩をしていた感じもなかったですし……信頼できると思います……」

 

「……はぁ……お前、それを黙ってたのか。俺に言えなかったのは分かってるが……まぁいい。とりあえず、悪徳記者じゃないのは確かだってことだな」

 

「はい……」

 

溜息を吐きながらの先生の確認に、再度頷いておく。

特田さんなら特に問題ないのは間違いないと思う。

緑谷くんがオールマイトの後継者であることを、あの治安が崩壊した状況になっても暴露しなかったのだ。

根が腐ってる記者なら藁にもすがる思いで勝手に暴露していた可能性もあるし、最悪の場合はOFAにつなげて放送された可能性もあったけど、それをしなかったわけだし。

あの時、悪意が無かったのも本当だから、あの人の取材で拒否権もあるなら、取材を受けるのくらいはありな気がする。

これで取材内容と齟齬が出るような記事を書くようなら、学校が全力で守ってくれると思うし。

 

「……一応、俺の方でも内容は校長に聞いてる。波動、お前も特田さんの主目的の1人だ。もし取材に答えたくなければ、先方の申し出通り無理に答える必要はないからな」

 

「はい……ありがとうございます……」

 

まぁ、あの決戦の後で初めての取材だし、AFOと戦った私が取材の目的にならない方が変な気もする。

先生の私を気遣う感じの思考は気になるけど、その時になったら考えることにした。

 

 

 

先生の話があった週の週末。

共有スペースに集められた私たちの前に、朝からやってきた特田さんが立っている。

相澤先生も同席してくれていた。

おかしなことを聞くようだったら即刻締め出すつもりっぽい。

……まぁ、特田さんの思考的に問題はなさそうだけど。

悪意も相変わらず全く感じないし。

 

「久しぶりだね、皆。忘れている人もいるかもしれないけど、記者の特田です。今日は取材を受けてくれてありがとう。出来る限り皆の負担にならないように取材していくから、よろしくお願いします」

 

「取材って聞いて期待してたのに、また女子アナじゃねぇのかよ」

 

「よろしくお願いします!!」

 

前回も言っていたような謎の文句を垂れているブドウ頭を尻目に、飯田くんが大声で返事をしながら大袈裟に頭を下げた。

相変わらずのクソ真面目だ。

ブドウ頭との対比で余計に目立ってる気がする。

ただ、この2人と緑谷くん以外は皆結構警戒気味だった。

もちろん、取材を受けるのが嫌なわけじゃない。

なんだったら上鳴くんとか三奈ちゃんとかは結構楽しみにしてたっぽいし。

ただ、それ以上にマスコミからの治安崩壊時の仕打ちの影響が大きくてこの警戒心を呼んでいるだけな気がする。

 

「今日の取材では、超常解放戦線との決戦で何があったのかとか、君たちが感じたこと、思ったこととかを、言える範囲で教えて欲しいんだ。もちろん、言いたくないこととかは一切答えなくてもいいし、貶めるような記事を書くつもりもないから安心して欲しい」

 

「……ほんとに大丈夫なのか?こいつ前の時から胡散臭かっただろ」

 

「爆豪お前、いくらなんでも直球過ぎるだろ!?」

 

爆豪くんのあまりにも直球過ぎるその言葉に、皆はギョッとした反応を返す。

まあでも、口には出してないけどこれは緑谷くんとかの心配をしてるからこその発言だろうし、そんなに酷い言動でもない気もする。

実際に前回の特田さんは色々探りに来てたし、怪しかったのは間違いないわけだし。

とはいえ、このままだと取材もあんまり乗り気じゃないまま始まっちゃうから、私の所感を皆に伝えておいた方がいいか。

 

「……特田さんなら多分大丈夫……前の時に……緑谷くんがオールマイトの後継者なことも把握したのに……ずっと黙ってた……今も悪意は感じないし……嘘もついてない……」

 

「……あ?」

 

「ああ、そっか。君なら、あの時の私と緑谷くんの会話と思考も知ってるよね」

 

「僕も大丈夫だと思うよ、かっちゃん」

 

「……そうかよ」

 

私と緑谷くんが説得すると、爆豪くんは吐き捨てるようにそう言った。

とはいえ、内心は納得した感じみたいだから大丈夫だろう。

これでも納得しないなら、特田さんが前回緑谷くんと約束していた本のこととかを言おうかと思っていたけど、必要なさそうだ。

そんなことを考えてたら、透ちゃんが明るい感じの声を挙げた。

 

「瑠璃ちゃんのお墨付きがあるなら、安心だよね!」

 

「うんうん!私も取材、受けてみたかったんだ!去年爆豪と轟が取材受けてたの、実は少し羨ましかったし!」

 

皆も俄かにざわめき出していた。

もちろん、ミッドナイト先生のこととか、超常解放戦線のこととかで言いづらいことはあるから、全部に答えられるわけじゃないけど、それでも、言える範囲の内容しか言わないでよくて、取材を受けても大丈夫そうな記者相手になら、取材を受けてみたいというのが本音みたいだった。

そんな私たちの様子を見て小さく笑みを浮かべていた特田さんは、少し落ち着くのを待ってから説明を続けた。

 

「それじゃあ、この場所で、順番に取材をさせて欲しい。もしも中止したい場合とか、取材自体が嫌な場合は、言ってくれれば順番を飛ばす。そうなっても記事の中でも悪く書くつもりはないし、1人だけ答えない場合でも、それが分からないように細心の注意を払って記事を書かせてもらうよ。完成した記事は出版前に雄英の先生方のチェックを通すし、君たちも目を通すことが出来るようにしてもらうからね」

 

「取材を受けていない時は別室で待っていた方がよろしいでしょうか?」

 

「好きに過ごしていてもらって大丈夫だよ。取材を聞いていてもいいし、自室で過ごしていてもいい。寮から出ないでいてくれるなら、順番になったらこちらから声をかけるよ」

 

「……なんというか、至れり尽くせりだね」

 

「君たちには、そうするだけの価値があるってことだよ。世間の多くの人たちが、君たちの生の話を知りたがっているんだ」

 

百ちゃんに対する特田さんの答えを聞いて、尾白くんがポツリと呟いた。

まあ本当にその通りで、すごく至れり尽くせりだ。

多分、特集記事を組むであろう雑誌のスタッフまで連れてきてるから、その本気具合が窺える。

というか、このスタッフたちの思考からして、雑誌1冊丸々特集にするつもりなのか。

確かに、ミルコさんたちプロヒーローと違って、私たちがあの決戦後に直接取材を受けるのは初めてだし、特大スクープ扱いに出来るのは間違いないとは思うけど……

とはいえ、これだけでそんなに書ける程の取材内容になるのかな?なんて思っていたら、特田さんはさらに話を続けた。

……大体の言いたいことは分かった。

そういうことか。だから相澤先生は、拒否してもいいって私に強調したのか。

 

「それと……やましいことがないということを示すために、先に話しておこうと思う。今回は、超常解放戦線とのこと以外にも、2つのことを特集しようと思っている。その内容は……ずばり言うと、異形差別と、特異な個性に対する差別に関して」

 

皆の視線が、障子くんと私に集中したのが分かった。

特田さんはそんな私たちの様子を見ながら、持ってきていたタブレットのようなものを操作し始めていた。

 

「皆も察してくれた通り、障子くんと波動さん。2人に、色々と聞きたいと思ってるんだ。皆はあの決戦の後に、世間、というよりも、一部の専門家の間で、さっき言った2つのことが少しずつ話題として取り上げられているのは知っているかい?」

 

「……いえ、知りません」

 

「うん、そうだろうね。本当に、まだごく一部の中で話題として出されているだけだからね……あった。皆ももう散々見ただろうけど、これを見てもらえるかな」

 

特田さんは、操作していたタブレットをこっちに向けた。

そこには、公表されているあの決戦の時の映像が、写っていた。

 

『俺も迫害を受けてきた!俺たちを傷付けてきた者に、正当性などない!でも、やり方が違うだろうっ!?』

 

『傷につけこまれるな!!今度はおまえたちの子供が標的になるぞ!!復讐者にならないでくれよ!!』

 

『こコデひーローガ、か、勝テバ!!何モ、変ワらナイ!日の下を、あっあ、歩イタだけデ、俺ハ殺虫剤を撒カレた!ヤられタラやり返シテインだ!同志ヨ!声ヲ上ゲロ!俺ニ続ケェ!!』

 

『そうだね……私は……あなたよりは恵まれてた……全部受け入れてくれるお姉ちゃんがいた……お姉ちゃんがいたから、お父さんとお母さんも受け入れてくれた……だから……周囲に化け物扱いされても……耐えることが出来た……』

 

『だけど……それとこれとは話が別だよっ!!大切な人を殺される苦しみが……悲しみが分かったんでしょっ!?それなのに、なんでまだたくさんの人を殺そうとするのっ!?その人にも大切な人がいることが、なんで分からないのっ!?』

 

『そんなのっ、知ったことじゃないっ!!私はあいつらとは構造が違うっ!!人間じゃないって言ったのは、あいつらの方なんだからっ!!あいつらを……私の大切な人を殺したやつを殺してっ!!何が悪いっ!!』

 

その映像は、障子くんとスピナーの戦闘と、私とヒミコちゃんの戦闘が、鮮明に写されていた。

障子くんとスピナー、異形型の個性の者たちのやり取りと、私とヒミコちゃんとのやり取りと、自首するまでの、音声も含めた映像が。

もちろん、散々見て知っていたものではある。

特田さんはその映像を示しながら、改めて話を続けた。

 

「この2つの戦いが、専門家の間で議論を呼んでいる。もちろん、悪い方向になんかじゃない。ヒーローの偶像化や過剰な英雄視以外にも、私たち一般市民にも、省みるべきものがあったんじゃないかって内容だ」

 

「それって……」

 

「そう。異形差別と特異な個性への差別。この根強く蔓延ってしまっている差別が、ヴィランを生み出す原因の1つになって、あそこまで状況を悪化させた一因になったんじゃないかって話だよ。ただ、その話が出ているのは、あくまで専門家の間だけだ。一般市民まで広がっているような話じゃない」

 

そこまで言った特田さんは、表情を曇らせながら小さく首を振った。

もう、何が言いたいのかは分かった。

障子くんも、察したみたいだった。

 

「私は、この芽生えた火を、絶やすべきじゃないと思っている。そのために、もしも協力してもらえるなら、君たち2人が経験してきたことを、想いを、記事にさせてもらいたいと思っているんだ」

 

特田さんがそこまで言ったところで、話が途切れた。

……一応、私自身の過去を話すこと自体はそこまで問題ない。

というか、私の方に関しては、もう元同級生とかいうやつらの主観に満ちたものをぶちまけられちゃってるから、今更だ。

あの決戦の後にその情報をぶちまけたやつが、英雄を虐めてたクズって感じで軽く炎上してたくらいだし。

既に虐められてたのが分かる程度には情報があったんだ。

そこに私の主観の情報が足されるだけでしかない。

ただ……

 

「……異物を排斥しようとする思考が……そんな簡単になくなるなんて思えないんですけど……」

 

「異物って、お前……」

 

「……瑠璃ちゃん……」

 

思ったことを返すと、皆から心配そうな思考が向けられる。

透ちゃんなんて、すぐ隣に来て手を握ってくれたくらいだ。

だけど、これは正直な感想でしかない。

結局人は、怖いと思ったものを排除しようとするんだから、差別しちゃいけません、なんて言ったところで、簡単になくなるものじゃない。

そんな私の返答に対して、特田さんは真剣な表情で口を開いた。

 

「いや、君たちの影響力は、君たち自身が思っているよりも大きい。君たちは、超常解放戦線と直接戦った英雄であり、かつ、差別の被害者でもある。もしも、君や障子くんがスピナーやトガヒミコのようにヴィランになっていたらどうなってしまっていたか……そんな君たちの言葉になら、耳を傾ける人も多い。今、皆が今後について考えているこの時期だからこそ、変わることが、変わろうとすることが出来ると思うんだ。だから―――」

 

「分かりました。俺は受けさせてもらいます」

 

障子くんが、特田さんを遮るようにして承諾した。

そんな障子くんの足元に、心底心配している峰田くんが近づいていっていた。

 

「障子、お前、いいのかよ?」

 

「ああ。いいんだ。去年皆にも言った通り、俺は、しがらみを少しでも減らすために、先人のように紡いでいきたいと思っていたんだ。俺のことを話すだけでその一助となれるなら、こんなに嬉しいことはない」

 

「障子……」

 

障子くんは、本当にすごいと思う。

私は、そこまで前向きな感情で協力しようなんて思えない。

もちろん、協力すること自体は全然いいし、どんなことをされてきたのかを言うこと自体はできる。

だけど、思ったこととなると、話は別だ。

 

「……私も……協力自体はしてもいいです……ですが……想いとかは……あまり聞かないでください……」

 

「理由を聞いても?」

 

「……率直に言います……私は……元同級生や教師、私と関わりがあった人間を……クズとしか思っていません……文句しか出ないので……悪影響を及ぼすと思います……なので……聞かない方がいいです……」

 

私は、お姉ちゃんを虐めてたクズどもを、私を排斥した奴らを、どうやっても好ましく思えない。

こんな状態で思ったこととかを言ったら、文句や罵倒以外出てこなくなる。

そう思って言ったんだけど、力強い目で私を見つめたままだった特田さんは、硬い意志を持って言葉を返してきた。

 

「……もし可能なら、不満も含めた君の思ったことも、教えて欲しいんだ。そういう声こそ、今の世間には必要だ」

 

悪意はない。

私のそういう言葉を切り取って変な悪評を流布しようともしてない。

記事の内容も、なるべく悪影響が及ばないように、考えさせるような内容にする書き方を想定している。

なんだったら、記事を作り終わったら即座に音声データも消去するつもりみたいだ。

……まぁ、そこまで言うならいいか。

 

「……分かりました……それでいいなら……」

 

「ありがとう、2人とも」

 

私が了承すると、特田さんは私と障子くんを順番に見てお礼を言ってきた。

 

それから少しして、準備が終わったところで取材が始まった。

私と障子くんは長くなるから最後に回された。

皆は出席番号順に取材を受けていっていたけど、結構明るく、楽しそうな雰囲気での取材になっていた。

これは特田さんの取材の手腕によるものが大きい気がする。

冗談を織り交ぜたり、気分良く答えられるような内容をメインで聞いてくれたり、とにかくこちらに配慮してくれていた。

私と障子くん以外だと緑谷くんも取材時間が結構長かったけど、それは仕方ないことだろう。

OFAに触れないにしても、死柄木とメインで戦ってたのは緑谷くんなわけだし。

なんかこっそりと緑谷くんがプロになってさらに色々な経験を積んだら、今度は緑谷くん単体の本を書かせてくれって約束までしてたし。

 

私に対する取材も、本当にすごく配慮してくれていた。

透ちゃんが隣に座って手を握り続けていたのも、特に文句を言わずに笑顔で了承してくれたし。

共感、同情、驚愕……とにかく色んな感情が特田さんやスタッフからは読み取れた。

本当に思っていた事とか溜め込んでいたことを色々ぶちまけたけど、特田さんたちからは悪意とかは一切感じなかったから、本当に問題なさそうだ。

というか、問題は透ちゃんの方だったりする。

私が昔思っていたこととかを聞いたあたりから、泣きそうな感じで私に抱き着いたり手を握ったりしてくるのだ。

結局透ちゃんに押し切られて私の部屋にお泊りまでして一緒に寝たりしたし。

だけど透ちゃんが、大事な友達だって、大好きだって、何度も言ってくれたのは、すごく嬉しかった。

 

 

 

取材の日から少し経ってから届いた見本誌は、先生も、皆も、内容を確認した。

もちろん、隅から隅まで。

それを読んで思ったことは、特田さんは記事を書くのがうまいなってことだ。

超常解放戦線との決戦の詳細と、私たちの配置や戦闘の詳細。

個々が思ったこと。感じたこと。なんで参加しようと思ったのかまで、詳細に書かれていた。

これは私たちだけじゃない。参加していたプロヒーローも、士傑の生徒からもインタビューしていたみたいで、雄英生以外の人たちの感じたこととかまで、事細かに書かれていた。

そして、それらが終わった後に、異形差別と、特異な個性への差別に対する問題提起が為されていた。

私が盛大にぶちまけた割には、変に反感を抱かないように書き方を工夫してくれている。

読み終わった後に、あれだけ口汚く罵った内容を、よくここまでオブラートに包めたなと思ったくらいだし。

まあ、ちゃんと私が言いたかった文句とか不満を切り取らない辺り、私に気を遣って書きつつではあっても、本当に世間に変化を促したいんだっていうのがよく伝わってきていた。

 

そして、そんな特集雑誌が販売されれば、当然世間の反応も色々出てくるわけで……

 

「……瑠璃ちゃん?なんでスマホ見ながらニヤニヤしてるの?」

 

ニヤニヤとは失敬な。

これは当然の反応である。こんな反応が増えれば、嬉しくならないわけがない。

透ちゃんにも教えてあげなければ。この世界の偉大な変化を。

 

「ふふふ……透ちゃん……ついに……ついに世間が!お姉ちゃんの偉大さを!優しさを!慈愛を!理解したんだよ!!お姉ちゃんがいかに大天使かを理解してくれたんだよ!!ほらこれ!!」

 

「あ、あ~……そういう感じかぁ」

 

SNSでお姉ちゃんに関する投稿を検索すると、そこにはズラーっとお姉ちゃんを賞賛する投稿が並ぶ。

そう、なんと、私が過去をぶちまけたことで、読心なんていう特異な個性を一切の抵抗なく受け入れるお姉ちゃんの慈愛とか、お姉ちゃんのおかげで私がヴィランにならずに踏みとどまれたこととかが知れ渡ったのだ。

その結果、なんとなんと、私がヒーロー側にいたのはお姉ちゃんのおかげだから、ヒーローが勝てたのはお姉ちゃんの功績だ!とか、そんな感じで賞賛したり、女神と崇めたりするアカウントが増えたのだ。

お姉ちゃんのファンクラブの会員数も断崖絶壁みたいな感じの急上昇を見せている。

やばい、ニヤニヤしてしまう。

お姉ちゃんの妹として、ファンクラブ会員番号1番として、これからも一層布教に励まなければいけない。

 

「前も言ったと思うけど、個人情報とかには気を付けてね」

 

「前も言った!!そんなの当然!!ほら、透ちゃん!!こっちの投稿も見て!!お姉ちゃんすごいんだよ!!」

 

「あはは、これは長くなりそうだなー……どの投稿?」

 

「これ!!」

 

透ちゃんは相変わらず若干渋い感じの反応をしている。

これは……もっともっと透ちゃんにも布教しなければいけない。

透ちゃんには、一番理解しててほしいし。

そう思って、スマホを覗き込んでくれる透ちゃんに、お姉ちゃんを褒めたたえる投稿を順番に見せていった。

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