「……アイドルイベントの会場の……警備ですか……?」
「おう。一応同じ依頼受けてるヒーローもいるみたいだから、私たちだけじゃねぇけどな」
「……なるほど……」
例の如く唐突にミルコさんに呼ばれてインターンに行ったら、アイドルイベントをしているらしい会場に連れていかれた。
なんでも、警備の依頼を受けたとかで、何故か私服で来るように指示までされていた。
もうミルコさんの思考から大体分かったけど、あまりにも露骨にヒーローっぽい見た目で会場内の警備をされると雰囲気が壊れるとかいう、普通に我儘に思わなくもない要望の結果、私たちが呼ばれたらしい。
「……でも……アイドルに変装って……本当に必要ですか……?」
「必要かどうかはともかくとして、雰囲気壊れるってのは分からんでもないからな。ごてごて武装したヒーローに守られながらってのは、確かにイベントの雰囲気変わるだろ。それに、私らがパッと見て分かる状態で入ったら、アイドル仕事にしてるやつらがかわいそうだ」
「まぁ……アイドル放置して……いつもの私たちのファンに変貌する可能性は……ありますけど……」
確かに、ミルコさんの言うことも分からなくはない。
私とミルコさんなんて、普通に街を歩いているだけで囲まれてサインを求められるのが日常茶飯事だし。
だから、変装しろっていうのも分からないでもないし、雰囲気を壊さないために女性ヒーローに変装して警備してもらうっていうのも一応納得は出来る。
それに、ヒーローの控室っぽい所に見覚えのある波動があるし、ヒーロー続けてる人の中でも女性ヒーローなんてごく少数の人間を集められるはずもないから、仮免ヒーローを何人か呼んだなこれ。
まあ、出来る範囲で雰囲気を壊さないように奔走してるって思えば、そこまで我儘っていうわけでもないか。
そんなことを考えながらミルコさんと一緒にヒーローの控室に入ると、そこには感じ取っていた通りの雄英生がいた。
「あれ、波動じゃん。あんたも呼ばれてたんだ」
「ん……ミルコさんと一緒に……拳藤さんと小森さんと角取さんもだよね…………3人のインターン先のヒーローは……?」
「外の警備してくれてるノコ!中は私たち以外にもう2人って言われてたけど、波動さんたちのことだったノコね」
……つまり、中の警備はミルコさん以外は仮免ヒーローってことか。
本当にそれでいいのかイベント主催者。
まさか、私たち雄英生をほぼプロヒーローとして数えてる?
「あー、つまり、中は私と雄英のヒヨッ子どもだけってことだな」
「メイビー、そういうことになると思いまぁす」
ミルコさんも若干呆れた感じで確認している。
一応、口ではヒヨッ子なんて言ってるけど、私たちを子供扱いしてるとかじゃなくて、この数の学生に指示を出すのが面倒だって思ってる感じだ。
まあ、ミルコさんはなんだかんだ面倒見はいいし、普通に指示も出してくれるとは思うけど。
とはいえ、イベント会場の警備程度なら私の感知で全域カバーできるから、むしろ私とミルコさんだけでいいまである。
そこまで負担でもないだろう。
「まあいいか。私は合わせるつもりないからな。尻尾引っ張るなよ」
「もちろん!食らいつきますよ!」
「ハッ!その意気だ!」
……なんだ尻尾を引っ張るって。
言いたいことは分かるし、誰もツッコんでないからいいのかな。
とりあえず私はいつも通りやるだけでしかないし。
「……それで……結局警備だけしてればいい感じですか……?それだったら……私が怪しいのを締め出すだけで済みますけど……」
「他所であった事件の警戒も含めてって感じだな。最近アイドルが活動休止する事件が相次いでるんだよ」
「知ってるノコ!イベント中に普段は絶対に言わないようなこと言って大炎上したノコ!」
詳しいな小森さん。
確か小森さんはアイドルヒーローを目指してたはずだし、アイドル全般の情報は追ってる感じか。
小森さんの思考から『なんであんたがセンターなんだ!票操作してんだろぉ!?』とかいうすごい生々しい感じの言い争いが伝わってくるし、どう考えても何らかの個性の影響か。
そんな感じの思考してるアイドルなんて結構いるし、多分内心で思ってることを口に出させるとかそういう個性かな?
そうだった場合、発動条件次第では容易に不和を招くことが出来る凶悪な個性だな。
「んで、リオル。お前今の話だけでもなんか予想付けたな。言ってみろ」
「……ここで言わないとだめですか……?」
流石にアイドルヒーローに憧れててアイドルが大好きな小森さんに、アイドルの醜い一面とか教えたくないんだけど……
そう思っていたら、大体予想が付いたのか小森さんが私に声をかけてきた。
「……私のこと、気にしてるノコよね。大丈夫だから、普通に言って欲しいノコ」
「……それでいいなら……」
小森さんも、その言葉自体が思ってもいないことを言わされたわけじゃないとは思っていたらしい。
多くのアイドルがどんな目的でアイドルになったかとかも、大体察した上で触れないでいた感じかな。
この前の崩壊の影響もあって、ヒーローと同じくキラキラしてるだけじゃないっていうのはちゃんと理解した上で、それでも好きなアイドルを応援していたんだろう。
「恐らく……内心で思ってることを口に出させる個性かなにかではないかと……そういう思考をしてるアイドル……結構いるので……この会場の中でも……色々とアレな感じの思考が感じ取れちゃいますし……条件はその話だけじゃ予想はできませんけど……」
「ま、そんな感じだろうな。ただ、条件は分からねぇにしても、個性でアイドルの人気を落とそうとしてるやつがいるのはほぼ間違いねぇ。アイドルが大勢集まるイベントなんてもんがありゃ、ヴィランが現れる可能性は十分ある。それを踏まえて私らがやることは……ヴィランが出たら蹴っ飛ばせ!!それだけだ!!」
結論がいつも通りのミルコさんでしかなかった。
まぁ、可能なら被害が出る前に確保出来たらそれに越したことはないわけだし。
小森さんたち3人も、ミルコさんの指示をすぐに了承していた。
「……ミルコさん……そのマスクは……」
「ん?ああ、アイドルとして潜入するんだからな。私クラスの知名度があったら必要だろ。それと……今の私はミルコじゃねぇ。タイガーバニーだ!」
「Wow!その衣装もアイドルなのでスね!」
「た、タイガーバニー……なるほど……」
アイドルなのに顔を格闘技のマスクで隠すのが意味が分からなすぎるけど、ミルコさんがノリノリだし、角取さんも納得してるからツッコむのも野暮かな。
ミルコさんは今、虎みたいな模様のマスクをかぶって顔を隠しつつ、学生服みたいな感じの服装になっている。
似合ってはいるし、無理してる感じとかもないから全然いいんだけど、マスクだけが異様な雰囲気を醸し出していた。
ミルコさんの思考的に、昔やったことがある変装みたいだ。
……あれ、というかこの思考からすると、ミルコさん学生の時にこの変装でヴィジランテ紛いのことをしたことがあったのか。
ミルコさんの性格からしておかしなことじゃないけど、ちょっと意外。
とりあえず考えるのはそのくらいにして、私も着替えてしまおう。
拳藤さんたちが着ているアイドル衣装みたいな感じの可愛い衣装が、4人分お揃いで準備してあった。
主催者の人、こんなものまで準備したのか。
ミルコさんのが無いあたり、ミルコさんは自分で準備するとか言って遠慮した感じかな。
そんなことを考えながら、衣装に着替えていると、興奮気味な小森さんの声が聞こえてきた。
「ノコ~~~~!!」
「希乃子嬉しそうだね」
「アイドルヒーロー目指してるから当然ノコ!」
さっき私が言ったこと、気にしてないか少し心配だったけど、杞憂だったらしい。
キラキラ輝く感じの目で鏡を見ていた。
とりあえず、私は私でさらに手を加えないといけないと思うから悩んでしまう。
ミルコさんが変装が必要なのはもちろんなんだけど、私も街を歩いているだけで囲まれるんだから、コスチュームは着ていないとはいっても変装しておいて損はないと思う。
そんな風に鏡とにらめっこして考えていたら、角取さんが声をかけてきた。
「どうかしましたカ?」
「ん……私も……タイガーバニーみたいに……変装が必要かなって……」
「あー、確かに波動は変装必要かもね」
拳藤さんも納得してくれてるし、やっぱり必要だよね。
どうしようかな……髪型を変えてみる……?
でも準備なんて何もしてきてないから、シュシュはおろかヘアゴムすら持ってない。
化粧で誤魔化すにしても限度があるし……
悩んでいると、肩に手を置かれた。
「拳藤さん……?」
「その感じだと、案ないんだよね?ちょっと髪弄らせてもらってもいい?」
「ん……大丈夫だけど……ヘアゴムとか持ってないよ……?」
「私の予備貸してあげるから大丈夫。じゃあ触るよ」
そう言って拳藤さんは、私の髪を櫛で丁寧に梳かし始めた。
そのまま丁寧に結ってくれて、小さなポニーテールが完成した。
「おー……上手……」
「これで話し方とか変えれば他人の空似で誤魔化せるんじゃない?まあ、あくまで希望的観測なんだけどさ」
「ん……大丈夫……ありがと……話し方は……頑張って変えてみる……」
お礼を言うと、拳藤さんは照れくさそうに笑った。
拳藤さん、本当に面倒見がいいな。
このままお言葉に甘えてヘアゴムは借りてしまおう。
そんなこんなで着替え終わって、5人で会場の方に移動した。
「ノコ~~~~!!」
「すごい熱気だな」
「アイドルとファンがメニーいまぁす」
小森さん再び目を輝かせて、盛り上がっている会場を見つめている。
会場は、拳藤さんが若干引き気味になるくらい盛り上がっていた。
とりあえず、私たちもこの熱気の中でアイドルに扮しなければいけないわけだ。
でも、何をすればいいんだろう。
当然持ち歌なんてないわけだし。
そう思っていたら、ミルコさんが動き出した。
「さぁて、やってやるかね」
そういうとミルコさんは、少し開けたあたりに進んで演武のように蹴り技の型を披露し始めた。
あぁ、なるほど。
歌とかじゃなくても、そういうのでいいのか。
拳藤さんたちも納得したみたいだった。
「得意なことをアピールすればいいってことだよね。歌ったり踊ったりするのがアイドルなんだろうけど、私はそういうの柄じゃないし……正拳突きといきますか!!」
拳藤さんはササッとミルコさんの方に近づいていって拳を突き出した。
それを見た瞬間のミルコさんの思考はすごかった。
生意気な行動がお気に召したらしい。
拳藤さんの挑発とも取れる行動に、ミルコさんは獰猛な笑みを浮かべながら応戦し始めた。
「生意気じゃねぇか。いいぞ!!思い出すなぁ!!戦いに明け暮れた青春時代!!」
戦いに明け暮れてたのか、ミルコさんの青春時代。
まぁそんなことは今はいいんだけど、2人の組手が思いのほか激しくてびっくりした。
結構本気で組手してるなこれ。
「オー!!これがアイドル活動というものデスね!!」
「違う気がするノコ……」
「ん……絶対違う……」
角取さんが勘違いをしてしまってるけど、集まってるアイドルファンが結構盛り上がってるから、仕方ないのかもしれない。
というか、ミルコさんが観客に『私に蹴られたいか!?』とか挑発しても、蹴られたいなんていう答えを返すのが謎過ぎる。
アイドルのファンってこういう人たちが多いのかな。
ちょっと理解に苦しむけど、まぁそういうものなのかと納得しておく。
とりあえずそんな感じで盛り上がるファンの人たちを見て、角取さんも気分が高揚してきたみたいだった。
「Wow!!もうあんなに注目されて
「帰国子女かわいい」
「日本文化教えたい……」
角取さんの母国語混じりの話し方も、さっそくアイドルファンの人たちにウケていた。
まあ、角取さんのあの感じは受ける人には受けるだろう。
それで、私もそろそろ何かしないと、棒立ちしてるだけの謎のアイドルになって変に注目を集めかねない。
紛れ込むためには、私だと気付かせないレベルの擬態をするのが重要だ。
拳藤さんのおかげで見た目は最低限は変わってるから、あとは雰囲気をガラっと変えればいいだろう。
とりあえず、パッと思いつくのがアレしかないのがなんとも言えないんだけど……
一番擬態しやすいのが結局それでしかないから、やるか。
もう何年振りかも分からないけど、多分大丈夫なはず。
今までの思考とか戦闘訓練から読めてる情報でも、知らない体で行けば話の種もある。
そう思って、角取さんに近づいていった。
「ポニーちゃんポニーちゃん!なんでポニーちゃんは英語混じりで話してるの!?どこの国出身!?それに角!それって取れたら生えてくるの!?ね!?」
「Oh!?」
角取さんが凄くびっくりした感じで見返してきてるし、小森さんも『波動さん!?』なんて感じで驚愕してるのが伝わってくる。
今これをやるのはすごく、すごく恥ずかしいけど、擬態のためだ。
これが一番雰囲気変わるし、イメージしやすいんだから仕方ない。
昔の自分に擬態するのが一番やりやすいのだ。
まぁ、昔の自分って言っても、結局お姉ちゃんみたいな感じでしかない。
あの頃はまだ私もスレてなくて明るい性格だった上に、幼かったから身近なお姉ちゃんを真似したりしていて、こんな感じだったのだ。
それが原因でわざわざ読心したことまで聞いたり言ったりしちゃってああなっちゃったんだけど……まあ今はいいか。
「
角取さんが驚きのあまり完全に英語に戻ってしまった。
とりあえず、私も若干英語混じりで答えるかな。
そう思って、意識して明るい笑顔を浮かべながら口を開いた。
「
「Oh!ソーリー!分かりました!私はアメリカ出身デス!ホーンも取れたら生えマスヨ!」
「へー、なるほどねぇー。それにしても、ねぇねぇしかし、ポニーちゃんの角ってなんの動物の角?水牛?山羊じゃないよね?」
私が英語で手早く理由を説明すると角取さんも納得してくれたみたいで、いつもの感じに戻って質問に答えてくれた。
なんか周囲の人たちが「天然っぽい!」とか「無邪気可愛い」とか色々考えてるのは知らない。
気にしたら恥ずかしすぎるし。
小森さんも、服にキノコのアクセサリーとかを付けてアレンジすることで個性を出すことにしたみたいで、うまい具合にアイドルに擬態できてると思う。
そんな感じで各々の方針でアイドルに紛れ込んでいった。
しばらくアイドルファンの人たちとやり取りをしていると、そいつが会場の近くにやってきた。
感知範囲に入ってすぐに分かる程度には悪意がある。
目的も、ただの復讐でしかない。
条件が触ることみたいだし、そこまで凶悪でもない。
取り押さえたらそれでおしまいだ。
今の会場の中だと、ビジネス仲良しとか、自分の楽な生活のためにファンに貢がせるとか、グループ1可愛いのは私!とか考えている人が沢山いるし、個性を使われたらかわいそうだ。
凄く人間らしい思考だし、特におかしいとも思わないけど、アイドルに幻想を抱いている人からしたら違うだろうし、触られたらアイドル生命が終わってしまう可能性が高い。
被害が出る前にさっさと捕まえるか。
『角取さん……小森さん……ヴィランが来た……協力してもらっても大丈夫……?』
『
『ノコ!』
小森さんと角取さんにヴィランがどこにいるのか伝えて、近くにいたアイドルファンの人たちに笑顔で手を振ってから一緒に移動して来てもらう。
ミルコさんと拳藤さんだとどうしても荒事にしかならないからイベントの雰囲気を壊しちゃうし、この2人が最適解だ。
私も視認できる量の波動を使うと身バレする未来しか見えないから、波動弾とかは使えない。
発勁と真空波なら問題ないとは思うけど、そもそも角取さんと小森さんでどうとでもなるレベルのヴィランでしかない。
私すらいらないだろう。
そう思って、そのまま会場の入り口まで移動して、ヴィランたちが来るのを3人で待った。
ミルコさんと拳藤さんにはテレパスで事情を説明済みで、一応会場内の警備は2人に任せる形になっている。
少ししたところで、そいつらはやってきた。
「この3人!」
「ノコ!!」
「
「うわっ!!?ごほっ!?なにっ、なんだっ!!?」
対処自体は、一瞬で済んだ。
小森さんが胞子を散布して、角取さんが
咳き込んで動けなくなった1人を、私が真空波で吹き飛ばした。
私はそのまま、吹き飛ばした男を取り押さえに行く。
男に馬乗りになって拘束していくと、男がわざわざ腕を触ってきた。
……私の本性を暴こうとしてるのか。
まぁ、無駄でしかないんだけど。
「もう逃げられない……個性なんか使ったところで無駄……」
「ハッ!どうせもう捕まるんだろ!?なら、せめて、テメェの本性だけでも!!」
「……そう……」
本当に、くだらない。
そんなことをして何の意味があるんだ。
「ほら……早く使えばいいでしょ……あなたのその醜い願望の為に……」
「な、なんで、使ってるのに、それだけしか」
「私……嘘吐くの嫌いだから……他人の大事な隠し事以外は……全部正直に話してる……その個性……私に対して使うなら……不意を突かないと意味ないよ……」
コイツの個性は表層に浮かんでいるような思考しか喋らせることはできないみたいだ。
不意を突かれれば、他人の秘密とか思考を話しちゃう可能性はあるけど、1対1で向き合ってる時にわざわざそんなことを表層に浮かぶレベルで考えているはずがない。
そして、そんなのは私以外にも言えることだし、不意打ちありきの個性だ。
私の本性を暴けなかったと勘違いしてがっくりしてるこの男に気を遣う必要なんか皆無だし、さっさと警察に引き渡そう。
それに、アイドルの本性を暴いたところでどうなるって話だ。
もちろん、全てのアイドルが清廉潔白なわけじゃないし、他人が受け入れがたい思考をしてる人もいるだろう。
だけど、一般市民だって、あの崩壊を経験して変わってきている。
アイドルにだって、偶像を押し付けすぎるのは良くないって言うのは理解できてきている。
……この人は、分からなかったみたいだけど。
とりあえず、そんな感じでヴィランは確保して、アイドルに扮して警備をする作業に戻った。
入口で確保するところを見ていた人が少しいて、私が誰かもわかっちゃったみたいだけど、お願いして黙っていてもらった。
サインくださいって言われたから要望通りしてあげたら、喜んで黙っていてくれるって言ってたし、悪意も感じなかったから大丈夫だろうって判断だ。
小森さんも、見られちゃった人の中に会場の中でファンになってくれた人がいたみたいだけど、改めてアイドルヒーローシーメイジのファンになってくれていたみたいで一件落着って感じだ。
それ以降は特にトラブルもなく、無事にアイドルイベントは終了した。
そんな数日後。
夕食を食べ終わったあたりで透ちゃんが笑顔で話しかけてきた。
「ねぇ瑠璃ちゃん!」
「……嫌な予感がするんだけど……何……?」
透ちゃんの思考が嫌な感じ、というか、私の擬態に関して考えてるのが凄く嫌な予感がするんだけど……
「瑠璃ちゃんがねじれ先輩みたいに話してたって聞いたんだよ!!私も明るく話す瑠璃ちゃん見てみたい!!」
「誰から…………小森さんか……やだ……恥ずかしいし……」
案の定過ぎる要望をされた。
どうやら小森さんがバラしてしまったらしい。
まあ、小森さんはあれが昔の私の話し方だなんて知らないから、お姉ちゃんの話し方を真似してるようにしか見えないだろうし、仕方ないんだけど……
「えー?いいでしょ、少しだけだから!ね!ね!」
「や……」
透ちゃんがしつこく言ってくるけど、つれない態度を貫き通す。
これはしばらく続きそうだなぁなんて思いながら、どう誤魔化すかを思考を巡らせた。