波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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番外9:ご褒美ショッピング

今日は教師寮に呼び出されていた。

エリちゃん関連で頼みたいことがあるらしい。

思考からして服に関してみたいだったから楽観視していた。

していたんだけど……

 

「これ……誰が選んだ服なんですか……」

 

目の前に置かれたセンスがアレな服を見て、思わず呟いてしまう。

その服は、とにかくダサかった。

確か……眼力猫とかいうキャラだっただろうか。

目が大きすぎる猫が、でかでかと描かれているのだ。

色も緑を下地にところどころ刺し色として蛍光ピンクなんて感じで、小さい女の子が好むものでもない。

さらには謎につけられている大量のフリル。しかもそのフリルの色もちぐはぐもいいところだ。

こういうデザインの服ばっかりデザインしている、結構有名なデザイナーがいたと思うから、その人の作品かな。

だけど……これは、流石に……

エリちゃんが拒否した服みたいだけど、こんなの私だって着たくない。

 

「あ~、それは……」

 

私を呼んだ13号先生が凄く歯切れ悪く言い淀む。

その思考には、『先輩』という単語が確かに浮かんでいた。

……13号先生が先輩って呼んでるのって、確か、相澤先生だったはずじゃ……

そう思って、部屋の端で若干不機嫌になっている相澤先生の思考をちょっと深く見てみたら、案の定不満に満ちていた。

退院の時も拒否されたなんて感じのことまで読み取れるけど、あの赤い可愛い服相澤先生が用意したものじゃなかったのか。

……とりあえず、今はそれはいいか。

 

「それで……用件はエリちゃんと服を買いに行くことで……いいですか……?」

 

「そうなりますね。波動さんならエリちゃんと仲がいいですし、同性な上に護衛も最低限でいいので。もちろん、強制ではないですよ」

 

「まぁ……それはいいんですけど……今まではどうしてたんですか……?」

 

行くの自体は全然問題ない。

今のエリちゃんに護衛が必要だっていうのも理解できるし、私が付き添いなら先生側の護衛を最低限に出来るっていうのも分かる。

だけど、ほぼ親代わりの相澤先生がこのセンスとなると、誰が服の準備をしていたのか。

今まで困ってる様子はなかったのに。

そう思って聞いてみたら、13号先生の感情がマイナスの方向に振れた。

……そういうことか。それなら、仕方ないのかな。

 

「……その、今まではミッドナイトさんが揃えてくれていたんですよ。ですが、それもサイズが合わなくなってしまったので……」

 

「……いえ……すいません……そうですよね……ミッドナイト先生なら……そうしてますよね……」

 

「いいんです……それと、申し訳ありません。本来なら僕が一緒に買いに行こうと思っていたんですが、仕事が立て込んでしまっていて……それで、波動さんにお願いしようと思ったんです」

 

「分かりました……じゃあ……明日がちょうど休みなので……一緒に買い物に行きますね……」

 

「助かります。では明日、エリちゃんに寮の方に行ってもらいますね」

 

先生の思考の感じからして、朝から来そうな気がする。

こっちはこっちで準備しておくかな。

服を買いに行くなら、ついでに買えそうなものとかも確認しておいて……

あ、そうだ。

 

「先生……他に来れそうな子がいたら……付き添いを増やしてもいいですか……?」

 

「ええ、もちろんです。皆さんならもとより、波動さんが大丈夫だと判断した人なら、こちらとしても特に異論はないので」

 

……そこまで信頼されるのもむず痒いな。

まあ、今更先生に疑われてもなんとも言えない気分になるけど。

とりあえずこの相談自体はそれだけで終わった。

その後は、普通にエリちゃんや先生とお茶を飲んだりして過ごした。

相澤先生が終始若干不機嫌な感じだったけど。

 

 

 

「それじゃあ!ショッピングにしゅっぱーつ!!」

 

「しゅ、しゅっぱーつ……!」

 

「楽しそうだね……透ちゃん……」

 

「瑠璃ちゃんテンション低いよっ!!エリちゃんだってこんなにワクワクしてるのに!!」

 

……別にテンションが低いわけじゃなくて、平常運転なだけだ。

透ちゃんのその言葉を受けて一応エリちゃんの方を見てみると、手をぎゅっと握りしめて若干興奮している感じになっていた。

そんなエリちゃんの様子を、お茶子ちゃんと梅雨ちゃんも微笑ましそうに眺めていた。

結局ついてきてくれるのは、透ちゃんとお茶子ちゃん、梅雨ちゃんの3人になった。

この3人は、ちょうどインターンがなかったのだ。

響香ちゃんや百ちゃんはちょっと残念そうにしていたけど、インターンなんだから仕方ない。三奈ちゃんは……補習だ。

男子の方は、エリちゃんの服を下着も含めて物色予定だから流石に遠慮してもらった。

護衛も本当に一応って感じで、エクトプラズム先生の分身が1人だけ離れた位置を付かず離れずでついてきてくれている。

確か分身体は距離が離れると本体との意思の疎通が通信機頼りになっちゃうんだったかな。

まぁエクトプラズム先生は分身でも十分すぎる程強いし、万が一強いヴィランが出ても分身のエクトプラズム先生が囮になって私たちを逃がしてくれると思う。

最悪私とエリちゃんだけでも逃げ出せば皆も先生も守りに入る必要性もなくなるし、私だったらエリちゃんを抱えて無限鬼ごっこで逃げ続けることが出来るから、どんな相手に襲われたってどうとでもなる。

そんなことを考えながら歩いていると、あっという間に木椰区ショッピングモールに辿り着いた。

ここに来るのも結構久しぶりな気がする。

 

「エリちゃんは……どんな服が欲しい……?」

 

「うーん……」

 

「漠然と聞かれても分かりづらいかしら。それなら、いろんなのを見て選びましょうか」

 

「じゃあまずはかわいい感じのとか見てく?お金は先生たち持ちだよね?どのくらい預かってきたん?」

 

「……これくらい……」

 

お茶子ちゃんにお金について聞かれたから、13号先生に渡されていたお金が入っている封筒の中身を見せる。

ちゃんと私個人のお金とは分けてるから、これは全部渡されたお金だ。

休みを潰して同行してくれた私たちへのお礼も兼ねてるらしく、エリちゃんの洋服一式以外にも好きに使っていいと言われていた。

先生たちで出し合った結果集まった金額らしい。

普通に分厚い札束になってて困る。

お財布に入らないんだけど。

 

「さ、札束……?これ、全部一万円札やし、ぶ、ブルジョワや……」

 

「お茶子ちゃん、しっかり」

 

お茶子ちゃんが久しぶりの卒倒芸を披露していた。

エリちゃんもお茶子ちゃんの反応にびっくりしてアワアワしてしまっている。

まぁ数十万円はあるから仕方ないとは思う。

絶対こんなにいらないんだけど……好きに使っていいって言われても、エリちゃんの服以外でそんなに使うと思えないし……

決戦の時に頑張ってくれたエリちゃんへのご褒美的な意味合いが含まれているのも分かるけど、それでもいくら何でも大盤振る舞いが過ぎる。

 

「これは……お金の心配がいらないのはいいけど、先生たちも過保護だね……」

 

「ん……まぁ……こんなに使えるわけもないし……余ったら返すよ……」

 

「そ、そうだね。そうしよう、うん」

 

透ちゃんも先生たちの気前の良さにドン引きしている。

いつまでも気にしてても仕方ないし、余ったら返すことにしてさっさと周り始めちゃおう。

エリちゃんが初めてのお買い物への期待で待ちきれない感じになってきてる。

 

「じゃあエリちゃん……まずはお洋服を見ていこっか……」

 

「好きなのをえらんでいいの……?」

 

「ん……いいよ……頑張ったエリちゃんにご褒美だって……一緒に可愛いのを選ぼうね……」

 

「……うん!」

 

満面の笑みで頷いたエリちゃんに手を掴まれて、少しだけ遠慮気味に引っ張られる。

少しずつだけど自己主張するようになってくれてるのはいい傾向かな。

そう思いつつ、手を引っ張るエリちゃんに誘導されるようにして、女の子用の洋服売り場まで移動した。

 

 

 

「これはどうかしら?」

 

「ん……エリちゃんが気に入ったら……試着してもらお……あとは……これとか……?」

 

「おー!それも似合いそうだね!」

 

「あ、エリちゃん。試着出来たかな?」

 

「うん……どう、かな……?」

 

私たちが次の服を物色していると、試着を済ませたエリちゃんが試着室から遠慮がちに顔を覗かせていた。

買い物を始めて数時間。

あれから、色んな種類の服を物色していった。

お茶子ちゃんおすすめの可愛くてかつ動きやすい服装とか、透ちゃんおすすめの可愛い系のパーカーとか、梅雨ちゃんおすすめの可愛い水玉模様のワンピースとか、私がおすすめしたシンプルなフリル付きの白いワンピースとかを、ファッションショーみたいにどんどん試着していっていた。

エリちゃんも最初はどんなのを選んだらいいのか分からなそうだったけど、少しずつ自分の意見を出してくれるようになってきていた。

4人で響香ちゃんが好きなパンク系のファッションとか三奈ちゃんが好んでいるレオパード柄だったりコンビネゾンだったり肩を大きく露出する服だったりも見せたりしたけど、ちょっとしっくりきてない感じの反応をしてたし。

百ちゃんが好みそうな落ち着きのあるお洒落な系統の服は不思議そうにくるくる回ってみてたから及第点なんだろうけど、やっぱり可愛い系の服の時だけ明らかに反応がいい。

喜びとか、そういうプラスの感情で満たされて、顔を紅潮させながら嬉しそうに鏡を見ているのだ。

そんな様子を見て、私たち4人全員エリちゃんがどんな服を着たがっているかを把握していた。

だからこそ、私たちは自分の好みの可愛い系の服とか、純粋にエリちゃんに似合いそうな服とかを順番におすすめしていたのだ。

 

「似合ってるよ!エリちゃん!」

 

「ん……とってもかわいい……これも買おうね……」

 

「で、でも、もうたくさんカゴに入れたよ?まだいいの?」

 

「良いと思うわよ。お洋服、全部サイズを大きくしなきゃいけないって聞いてるもの。これくらいあっても大丈夫よ」

 

「うんうん!」

 

「……そっか」

 

ちょっと遠慮がちだったエリちゃんも、私たちの返答を聞いて満更でもなさそうな表情で頷いた。

ちょうどそのタイミングでエリちゃんのお腹が控えめな音を鳴らした。

 

「お腹空いちゃった……?」

 

「……う、うん……」

 

「じゃあ選んだ洋服買ったらご飯食べよっか!フードコートでいいかな?」

 

「ふーどこーと?」

 

「お店屋さんがたくさん集まってて、色んな食べ物が売ってるレストランみたいなところだよ」

 

「ご飯のほかにも……リンゴを使ったスイーツも売ってるみたい……」

 

「りんごのスイーツ……」

 

フードコートの方の波動をざっと見て、エリちゃんの興味が惹かれそうなものがあることを教えてあげる。

それを聞いた途端、エリちゃんの目が期待で輝き始めた。

涎まで垂らしそうになってしまっている。

これはフードコートでよさそうだ。

皆も特に異論はないみたいだし、フードコートで食事をすることになった。

 

 

 

フードコートでニコニコしながらデザートを食べているエリちゃんを眺めつつ、午後の予定を話し合う。

エリちゃんの服はもう揃ったし、他の予定は何も決まっていないのだ。

 

「おもちゃとか見に行ってみる?エリちゃんあんまりそういうの持ってないよね?」

 

「あとは……絵本とか……?先生たちが頻繁に買ってるみたいだけど……エリちゃんが好きなの選んでもいいし……」

 

「どっちもいいわね。エリちゃんは何か欲しいものあるかしら?」

 

「ほしいもの……ほしいもの……?」

 

「うん!なんでも言っていいよ!」

 

透ちゃんがそういうと、エリちゃんは考え込んでしまった。

やっぱりエリちゃん、物欲があんまりないよね。

まぁ、今までの環境が環境だったから仕方ないんだけど。

そんな感じで考え込んでいたエリちゃんだったけど、少ししてから思いついたみたいな感じで口を開いた。

 

「したいことでもいいの……?」

 

「ん……いいよ……言ってみて……」

 

思考からしてもう分かったけど、一応自分の口で言ってもらえるように促す。

その案なら特に問題ないし、エリちゃんの趣味になるかもしれないし、私たちで教えてあげることも出来る。

いい案ではあるだろう。

なんか、私の料理とかお菓子の影響を多大に受けてる気がしないでもないけど、エリちゃんがやりたいって思えたことは尊重してあげたい。

私の促しを受けて、エリちゃんは遠慮がちに言葉を続けた。

 

「お、おりょうりとか……してみたい……おかし、作ってみたりとか」

 

「お料理、いいわね」

 

「うんうん!」

 

「大丈夫だよ……一緒にお菓子作り、してみよっか……作り方も……教えてあげるね……最初に渡すのは……緑谷くんと相澤先生で大丈夫……?」

 

「そ、それだけじゃなくて、ルリさんたちにも食べてほしい!」

 

プロとして忙しそうにしている通形さんを除いてエリちゃんの思考に強く浮かんでいた2人の名前を挙げると、エリちゃんが珍しく強く主張してきた。

お茶子ちゃんたちもちょっとびっくりしてる。

 

「ありがと……すごく嬉しい……じゃあ……とびっきりおいしいの、作ろっか……」

 

「うん!」

 

エリちゃんが満面の笑みを浮かべて大きく頷いた。

となると、必要なものは……

子供用のエプロンに、エリちゃんが好きな形の型抜き、クッキーの材料辺りは買うとして……今後を見据えて小さい子が使える包丁とかピーラーとかのお料理セットも必要かな。

今日はいらないにしても、お料理も見据えるならどうせその内必要になるし。

 

「じゃあ……エプロンとか型抜きとか……クッキーの材料とか……買いにいこっか……」

 

「そうね」

 

「クッキーなら私も作れるよ!」

 

透ちゃんも珍しく乗り気になっている。

最近は透ちゃんも簡単なお菓子作りに手を出したりしてたから、ここにいる4人全員クッキーは作れる。

これは、材料を買って帰ってそのまま皆でクッキー作りでいいかな。

……となると、ついでに色々買い足した方がいいかもしれない。

もちろん、先生たちのお金を使わずに。

そう思いながら、皆でどんな味のクッキーを作るか話し合いながら移動を始めた。

 

エリちゃんがエプロンを選んでいるのを見守りながら、さっき考えたことを伝えるためにこっそりお茶子ちゃんに近づいていく。

 

「ね……お茶子ちゃん……」

 

「どうしたの瑠璃ちゃん?」

 

「クッキー……お茶子ちゃんも……メインで何個か作ってみよ……」

 

「私も?まあもともとエリちゃんと作るつもりではあったけど」

 

お茶子ちゃんが不思議そうにしながら聞き返してくる。

だけど、私が言いたいのはそういうことじゃない。

お茶子ちゃんのために、対緑谷くんを想定した至高のクッキーの作り方を教えてあげるって話だ。

そのことを伝えるために、私は声を潜めながら言葉を続けた。

 

「そういうことじゃなくて……緑谷くんが好みの味付けのクッキーの作り方……教えてあげる……だから……お茶子ちゃんがメインで作ったの、プレゼントしたらどうかな……?」

 

「んなっ!?なんっ、えぇ!?」

 

お茶子ちゃんが固まった。

相変わらずすぎる。

 

「緑谷くんの胃袋を掴んじゃおう……今後、クッキー以外にも……色々教えてあげるよ……?お菓子に料理に……なんでもござれ……全部緑谷くん好みで調整出来るよ……」

 

私が追撃するようにさらに言葉を続けると、お茶子ちゃんは顔を真っ赤にしながらしばらく考え込んで、か細い声で返事をしてきた。

 

「ぅ、うぅ……じゃ、じゃあ、お願いしても、いい?」

 

「ん……任せて……!A組の皆の好み……私程知ってる人はいないんだから……!」

 

「……それは、信頼してるけど……み、皆には、内緒にしてね?」

 

……内緒にするのはいいけど、今のお茶子ちゃんの様子を透ちゃんがすごくいい笑顔で見てることには気付いてないんだろうか。

表情は見えなくても服が完全にこっち向いてるから気付けるはずではあるんだけど……

さっきまでエリちゃんの隣で一緒にエプロンを見てたけど、お茶子ちゃんが真っ赤になったあたりでこっちに気が付いて、ニヤニヤしながら観察してた。

多分、今直接的なことは言ってこなくても、その内突っつかれるだろうな。

まぁ、言わぬが花か。

とりあえずお茶子ちゃんには頷いておいて、その場はそこまでにしておいた。

お茶子ちゃんも承諾してくれたし、緑谷くん好みの隠し味もこの後の購入リストに追加だ。

そんな感じで、必要な道具や材料を買い揃えていった。

 

 

 

袋詰めしてラッピングもしたクッキーを、大事そうに抱えたエリちゃんと一緒に教師寮に向かう。

クッキー作りは大成功。

エリちゃんが初めて作るからってことでプレーンにしたけど、味も香りも申し分ない美味しいクッキーが完成した。

出来上がったクッキーを、エリちゃんは1番に私にくれた。

味見とかじゃなくて、ラッピングが済んだ第一号を。

すぐ近くで手伝っていたからっていうのもあるんだろうけど、それが凄く嬉しかった。

私も私でエリちゃんの為に作っていたリンゴ風味クッキーをラッピングしてあったから、それをお礼として渡したらすごく喜んでくれた。

そんなクッキー交換もそこそこに、今は相澤先生にクッキーを渡すために教師寮に向かっていたのだ。

他の先生たちの分も作ってあるけどひとまず後回しにして、相澤先生にすぐにでも渡したかったらしい。

そんな目的で教師寮に入ったところで、それに気付いた。

……相澤先生、懲りてなかったのか。

プレゼントを渡す前に不機嫌にならないといいんだけど……

そんなことを考えながら、共有スペースで仕事をしながらエリちゃんを待っていたらしい相澤先生に声をかけた。

 

「先生……」

 

「ああ、帰ってきたか。ちょうどよかった。この買い物の話が決まる前に注文してたエリちゃんの服がちょうどさっき届いてな。これなんだが……」

 

「おようふく?」

 

エリちゃんがちょっと期待しながら不思議そうに見てるけど、その袋の中身が、見覚えがありすぎた。

先生が袋から取り出したのは、あの眼力猫がでかでかとプリントされた服の、色違いだった。

それを見た瞬間、エリちゃんが固まった。

……言葉にはしなくても、やっぱりあの服は嫌らしい。

流石にこれを自分で言わせるのはかわいそうかな。

 

「……先生……ちょっと……」

 

「……どうした?」

 

……この際、もうはっきりと言うか。

 

「その服……女の子が着るにはちょっときついです……エリちゃんもちょっと嫌がってますし……私でもその服は嫌です……服は今日沢山買ってきましたし……それは……」

 

「なっ!?……嫌、なのか?」

 

先生が縋るような感じでエリちゃんに確認する。

エリちゃんもはっきりと嫌とは言いたくないけど、その服を着たくないっていう意思は曲げたくなかったらしい。

小さく頷いた。

それを見た瞬間、先生が凄まじいショックを受けていた。

 

「そう、なのか……嫌か……そうか……」

 

独特なヤバイセンスの眼力猫の服を広げて、それを見つめながら先生が呟く。

その背中も思考も、悲壮感に満ちていた。

そんな先生を見かねたのか、プレゼントを渡すのが待ちきれなくなったのか、エリちゃんがおずおずと先生に近づいていった。

 

「あ、あの……い、いつも、ありがとう!」

 

「……ん……?これは?」

 

「エリちゃんが焼いたクッキーです……私が教えながらですけど……エリちゃんが自分で作りました……先生へのプレゼントだそうです……」

 

「そう、なのか?」

 

「う、うん」

 

先生の思考からは、完全にさっきのショックはなくなっていた。

代わりに、エリちゃんからのプレゼントに対する驚き、エリちゃんの成長に対する喜びとか、色々な感情や思考が浮かんでいる。

少しすると、先生はエリちゃんの正面で膝をついて、視線を合わせてからクッキーを受け取った。

 

「嬉しいよ、ありがとう」

 

「……うん!あのね!ルリさんに教えてもらってね!すごくおいしく作れたの!だからね!―――」

 

先生がお礼を言って笑顔を浮かべたのを確認したところで、エリちゃんが嬉しそうに話し出した。

その2人の姿は、普通の親子に見えるような微笑ましい光景だった。

 

……それはそれとして、今のうちにこの眼力猫の服は回収してしまおう。

13号先生あたりに託せば穏便に処分してくれるだろうか。

そんなことを考えながら、先生にバレないように動き始めた。

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