波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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要塞探索

「デクくん、デクくん……」

 

お茶子ちゃんが気絶している緑谷くんを揺すっている。

近くにいた私たち3班の6人は、皆ほぼ同じ場所に取り込まれていた。

とりあえず緑谷くんが目を覚ましたら行動開始するとして、どうしたものか。

この要塞、範囲が広すぎて私の感知範囲よりも全然広いのだ。

上も下も横も、全体を見通すことができない。

下に伸びるよくわからない穴があるから、別階層があるのは分かる。

部屋自体も、だまし絵みたいになってる壁があるところとかはわかる。

だけど、それだけだ。

別階層が見えるわけでもなければ、この階層に何部屋あるのか、どこにどうつながっているのかの全域が見えるわけでもない。

どこまで広大か分からない。

 

一応、考えがないわけでもない。

外と連絡を取る方法があるにはあるのだ。

電波はダメそうだけど、端末がダメなら私のテレパスを使える範囲まで移動してしまえばいいだけの話ではあるから。

 

「ん、んん……麗日さん……」

 

「うん、よかった。目ぇ覚めて」

 

「緑谷くん……平気……?波動見た限りだと……まずい怪我はなさそうだと思ったけど……」

 

緑谷くんは確かめるように首や腕を回している。

……多分大丈夫そうかな。

 

「……大丈夫そう。ここは……?あの光の中?なんで、ジャングル……?」

 

「気付いたらここにいたんだよ」

 

「一応、光の中で間違いない……ここはあのクルーザーが個性の力で巨大化した要塞の中……」

 

「なる、ほど……?つまりこのジャングルも取り込んで……?」

 

「それは違う……触ってみればわかる……」

 

私からしたら一目瞭然だ。

これは木でもなんでもない。

だって、波動が全然違う。

すごく無機質なのだ。少なくとも、植物ではない。

多分なんらかの力で無機物を創造したんだろう。

 

「この木……イミテーション?」

 

木の幹を叩いた緑谷くんが、コンコンという乾いた音を聞いて私の方に確認してきた。

素直に頷いておく。

 

「……よく見ると、動物や昆虫の姿もない。八百万さんのように無機物を想像する個性?けど、こんなに巨大なものを作り出すなんて……」

 

「あ、そういえばさっき瑠璃ちゃんが言ってたのってこれの報告?オールマイトに報告してたよね?」

 

「ん……そう……途中までしかできなかったけど……」

 

私がそういうと、透ちゃん、響香ちゃん、お茶子ちゃん、緑谷くん、尾白くんの視線が一気に集中した。

とりあえず分かる範囲で説明するか。

分かるのはオールマイト擬き、あの女の人、機械だらけの人と……あとはあのスローモーションにする人だけだ。

 

「まず一番鍵になる攫われた女の人から……あの人はアンナ・シェルビーノ……個性は”過剰変容”……適合する確率は低いけど……適合した人に対しては……個性に対して莫大な強化・増幅を施す……」

 

「それって……」

 

「ん……対象者の意識もそのままに効果を発揮する……効果量を異常なレベルまで引き上げたブースト……」

 

「……僕、もしかして不適合だったってこと?さっき触っちゃった時に激痛が走ったけど……」

 

「そういうことだと思う……」

 

ギンジが何かできたとは思えないから、おそらくそうだろう。

 

「オールマイト擬きは……バルド・ゴリーニっていう……ゴリーニファミリーのボス……」

 

「ゴリーニファミリー……?」

 

「どこかのヴィラン組織だと思う……」

 

「あ、ウチ聞いたことあるよ。ヨーロッパのヴィラン組織だったと思う」

 

そうなのか。

私はそこまで知らなかった。そこまでは思考にも浮かばなかったし。

 

「それで……バルド・ゴリーニの個性が……錬金……」

 

「錬金?」

 

「そう……多分だけど……もともとは等価交換が必要な……変質させたりする個性だったんだと思う……それがブーストされた結果……」

 

「こんなことになってると……」

 

透ちゃんの言葉に頷いて肯定する。

クルーザーを基礎にしつつあのコインでこの要塞を作り上げたと考えると、如何にあの男の個性がおかしなことになっているかが分かる。

 

「あと分かるのは……右腕が機械だった男の人のことくらい……」

 

「右腕が機械って……誰の事?」

 

「緑谷くんが止めてた……赤髪の人だけど……」

 

「銃でアンナさん?を撃ってた人こと?」

 

「ん……そう……」

 

腕が機械だったんだ……とか緑谷くんが呟いている。

だけど、あの人に関して分かることはそんなに多くない。

 

「この人に関しては……そんなに分かることは多くない……あの人……身体の中は機械だらけのサイボーグ……」

 

「さ、サイボーグ?」

 

「サイボーグなんてほんとにいるのか……」

 

「ん……なんか目輝いてない……?」

 

サイボーグと聞いた緑谷くんと尾白くんの目が心なしかキラキラしている気が……

……思考を見て分かった。

男心がくすぐられてるだけか。

無視しよう。というか、尾白くんもなのか。

緑谷くんはこういうロマンありそうなのは好きだとは思うけど。

……いや、まぁ筋トレに妙にこだわりがあったか、尾白くん。

その傾向からして彼もこういう男のロマン的なのは普通に好きか。普通に。

 

「続ける……少なくとも右腕、左足、右目は機械……細かく言うと他にもあるからとりあえずだけど……」

 

「そ、それで……?」

 

「万が一戦闘になったら……右腕の中から銃出してくるかも……足の中にも……バーニアっていうの……?そういう飛びそうな機能が仕込まれてる……要注意……」

 

「お、おお!」

 

……本当に心なしか興奮気味に反応してくるな。まぁいいけど。

女子との温度差が凄い。

 

「まぁ……こっちの立ち回り次第で戦闘は避けられる……あの人の目的は……分かってるし……」

 

「ほんと?目的って?」

 

「アンナ・シェルビーノとの約束を……守ること……端的に言えば……アンナ・シェルビーノを殺すこと……」

 

「えっ」

 

「約束って……?」

 

響香ちゃんはそれを聞いて固まって、お茶子ちゃんは確認するように聞き返してきた。

 

「私も詳しくは……知らない……あくまで銃を向けてた時に……アンナさんとあのサイボーグさんが……約束してた時の声が思考から聞こえただけだから……」

 

「そんなの……」

 

『私が、私でいられるうちに……殺して』って懇願するあのアンナさんのものと思われる声が、確かに彼の思考から聞こえたのだ。

多分、彼が相当強くそのことを思い出しながら引き金を引こうとしたんだろう。

そこまで踏まえると、彼がどれだけこのことを重く見ているかが伝わってきた。

つまり、殺すために自分にそう言い聞かせなければならないほど、彼が彼女を大切に思っていたということ。

対話さえできれば、多分共闘はできると思う。

 

「……うん、分かった。とりあえず皆も覚えておこう。波動さん、他に共有しておく情報はある?」

 

「ん……あとはあのスローモーションにする……個性のことだけ……」

 

そこからは本当に個性の情報を端的に伝えて情報共有は終わった。

 

 

 

共有は終わってすぐに、緑谷くんは立ち上がりながら声をかけてきた。

 

「よし、ありがとう波動さん!……そうだ!この辺りに避難民の人たちがいるかって分かる?」

 

「ごめん……あんまり……この要塞……広すぎて全貌が分からなくて……避難民の人たちの姿も見えない……」

 

「そっか……」

 

「あ……でも、次の階層につながりそうな穴は分かるよ……」

 

「ほんと!?」

 

お茶子ちゃんたちを含めて皆からキラキラした期待の眼差しを向けられる。

特に隠す理由もないし、さっさとそっちに行くべきだ。

 

「案内する……こっち……」

 

「さっすが瑠璃ちゃん!探索ならお手のものだね!」

 

「いいすぎ……」

 

「別に言い過ぎではないでしょ」

 

透ちゃんに反論したら、響香ちゃんに言い返された。

……癇に障っただろうか。

そう思って思考を見たけど特に負の感情はない。

本当に思ったことをそのまま言っただけだった。よかったよかった。

 

 

 

「あ……緑谷くん……」

 

「あいたっ!?」

 

「遅かった……」

 

先頭を走っていた緑谷くんにそこ壁だよって言おうとしたけど、言うのが遅くて盛大に頭をぶつけてしまった。

まぁ、ジャングルの中にすごくきれいなジャングルの絵が描かれた壁だから、そうなってしまうのも分かる。

 

「そこ壁……」

 

「瑠璃ちゃん……」

 

「あはは……」

 

お茶子ちゃんと透ちゃんから苦笑を伴う視線を向けられてしまった。

まぁ次から気を付けよう。

緑谷くんもすぐに復帰してるし。セーフセーフ。

 

「穴ここ……」

 

気を取り直して地面にあるマンホール状の蓋を指さした。

皆もすぐに周りに集まってくる。

マンホールには、円状に並んだ花の模様の中にあのオールマイト擬きが描かれていた。

緑谷くんがその蓋を躊躇なく外してくれる。警戒とかしないんだろうか。

設置式の罠には危機感知反応しないと思うけど。

……まぁ罠らしき怪しい機械があったら私が注意するから平気ではあるんだけどさ。

 

「この穴……範囲内ギリギリの下のフロアの天井に……続いてる……多分雪?があるから……最悪落ちてもクッションにはなると思うけど……注意は必要……」

 

「これなら、私とデクくんの出番だ!調べるしかないもんね!ゼログラビティ!」

 

お茶子ちゃんが両手の指を合わせながら意気揚々と告げた。

まぁこの2人が適任か。

皆も特に反論してないし。

 

「罠があるかもしれない。麗日さん、少し離れてからついてきて」

 

「了解!」

 

緑谷くんはそのまま上に張り出していた太い枝につかまってから自分を押し出して、穴に下降し始めた。

お茶子ちゃんもそれに続いていく。

こうなったら私たちは待っているしかない。

 

 

 

「あ、落ちた……」

 

「落ちたぁ!?」

 

「ちょ、大丈夫なの2人は!?」

 

緑谷くんが途中で穴の下に向かって落下していった。

お茶子ちゃんは落ちてない。

浮遊が唐突に途切れた感じだったから、多分お茶子ちゃんも同じくらいまで行くと落ちるかな。

 

「多分個性が使えなくなる仕掛け……先に行ってた緑谷くんだけ落ちた……一応咄嗟に手足をつっかえ棒みたいにして……なんとか踏みとどまった……そのままゆっくり降りていったから平気……お茶子ちゃんは……」

 

「皆!」

 

「この通り……たった今戻ってきた……」

 

「あ、そっか。瑠璃ちゃんがいたんだもんね。事情は伝わってるよね。どうしよっか!?」

 

「……ゆっくり降りるしかないんじゃない……?」

 

「このフロアは何もないんだもんね?」

 

「ん……」

 

「それにデクくんも心配だから、行かないわけにはいかないよ」

 

どうするか……

まぁ、一応方法はあるか。

 

「私が先頭で……降りるよ……境界を探りつつ……下の様子を観察して……読心できる人がいたら……読心で対策を立てる……」

 

「それしかないかぁ……」

 

「あんまり遅くなりすぎても緑谷が心配だし……」

 

「とにかく、降りてみよっか」

 

リスクがないわけじゃないけど、他に方法もない。

だからこそお茶子ちゃんたちも同意してくれた。

 

 

 

それからしばらく探り探りに穴を下り続けた。

それはいいんだけど……結局、何も見つかりはしなかった。

穴の直下が雪山になっていて、結構な高さがあったみたいなのだ。

緑谷くんも見当たらない。

一応、雪山から転がり落ちていった?っぽいような跡がありはしたから何があったかは想像がつく。

……滑落したって感じの跡ではなかったから、多分、きっと、おそらく、大丈夫。

 

「結局、個性が使えなくなる仕掛けなかったね」

 

透ちゃんが手を目のあたりに掲げながら周囲を見渡していた。

そう。その仕掛けもなかったのだ。

 

「緑谷がなんとかしたのかも」

 

「そのデクくんはどこに……」

 

「……えっと……皆、あっちの方に……滑り落ちた跡が……」

 

皆に緑谷くんが落ちたであろう方向を指さそうとした。

次の瞬間、足元に穴が開いた。

 

「へ?」

 

「うわぁぁっっっっ!?」

 

周囲の雪と一緒に猛スピードで穴を滑り落ちていく。

咄嗟に反応も出来なかった。

いつものコントロールしている落下と違って、嫌な浮遊感が続く。

一応受け身を取るための波動の準備だけしておこう……

 

 

 

「ふぎゃっ!?」

 

しばらく落下した後に、突然どこかに投げ出された。

落下死させるような仕掛けではなかったらしい。

そう安心した瞬間、嫌な波動を感じ取った。

すぐさま起き上がってそっちを振り返る。

その先には、目に妖しい光を灯しながら笑顔を浮かべた女がいた。

 

「ようこそ」

 

「まずっ!!?」

 

そう思った時には、もう遅かった。





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