波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

275 / 279
避難誘導

「こっち……ついてきて……」

 

皆の先頭に立って、外郭の方向に向かって走りだす。

とにかく外側までしっかり範囲内に収められる状況にしないと、脱出経路もクソもない。

まずは安全な場所を通って外壁近くに向かわないと。

 

「なぁ波動。さっきあの偽物に言ってたのってどういうことだ?」

 

「……上鳴くん……今避難誘導中……まぁいいけど……」

 

百ちゃんは理解してたみたいだけど、他にも気になってた人は結構いたみたいだし、とりあえず皆にだけさっきの意図を共有するか。

一般人に余計な不安を抱かせないようにテレパスにすればいいし。

周囲への警戒をしつつだから若干テレパスに乱れが出るけど、それも仕方ない。

 

『まず前提として……AFOはOFAを欲しがっている……これを忘れちゃいけない……その状況で……私たちを攻撃して……万が一緑谷くんが死にかねない状況になった時……これだけド派手に目立ちまくってるやつ相手に……AFOはどういう行動を取ると思う……?』

 

「え、それは……殺される前に奪いに『わざわざテレパスにしてるのに声に出さないで……』……ごめん」

 

『つまりそういうこと……これで私たちヒーローを殲滅しても……そこからAFO率いる超常解放戦線との戦闘になる……死柄木がいないとしても……あの偽物がどうやって勝つの……?』

 

『でもOFAだけ譲って協力する可能性くらいはあるんじゃないか?』

 

『ない……あの偽物……バルド・ゴリーニは承認欲求の塊……誰かの下につくわけがない……』

 

そう。

あいつの欲求は、つまるところこの一言に集約されてしまうのだ。

力による支配というのも、それによる恐怖政治も、結局は自分が多くのものから認められたいという承認欲求でしかない。

そんなやつが、誰かの下につくなんて絶対にできない。

協力してきたら洒落にならなかったから、この点に関しては私たちも助かるけど。

 

ん……?

 

「ちょっと止まって……」

 

「……?どうかしたのかい?みなさん!一度立ち止まってください!」

 

私が足を止めて声を掛けたら、飯田くんがついてきている皆を止めてくれた。

範囲の端の方に高速で飛来した人型の波動を注視する。

……見覚えのある波動でしかなかった。

通形さんじゃないか。

凄い速さだと思ったら例のバグみたいな動きで吹っ飛んできたらしい。

今も地面に沈んで弾き出されてっていうのを繰り返して周囲の把握に努めている。

 

『ルミリオン……聞こえますか……』

 

『おー!聞こえるよ!悪いね、遅くなった!パトロールしてた場所が遠くてさ!」

 

『合流しましょう……場所は……そこの直上にある街中みたいな空間に出られますか……私たちもそこに向かうので……事情は移動しながら……』

 

『了解!』

 

通形さんの思考的に、ホークスが通形さんを派遣したっぽいし、私たちや脱出させるべき避難民の人たちを探してたっぽい。

まぁそれはそれとして、これは助かった。

プロヒーローも外に集まっているらしいし、再生はするらしいけど外壁を一時的に破壊することもできるっぽい。

それなら、破壊地点まで誘導するだけだ。

 

「皆……!こっち……!脱出の目途立ったから……!」

 

「ほんとか!?」

 

「ありがとうございます!皆さん!こちらへ!慌てないで落ち着いて行動してください!」

 

百ちゃんが率先して動いてくれる。

正直とても助かる。

梅雨ちゃんとかもそれに続いて誘導し始めてくれていた。

それを見てから先頭を走り始める私の横に、響香ちゃんが並走してきた。

 

「脱出の目途って、さっき遠くであった爆発音と関係ある?」

 

「多分……通形さんが来てて……外壁の外にプロヒーローもいるみたい……爆発音は破壊しようとした音かな……」

 

「なるほど納得。それならウチも大体の方角は分かるよ。ルミリオンとの合流地点は?」

 

「結構遠いけど……今向かってる方向の……800mくらい先の……外壁近くの市街地内……」

 

「おっけ。爆発音したのもちょうどのその直下辺りだと思う。急ごう」

 

「ん……!」

 

響香ちゃんはやっぱり頼りになる。

直下辺りに爆発音ってことは、もしかしてこの要塞飛んでるのか。

まぁ外壁近くまで行けば分かるか。

 

 

 

『皆……ちょっと相談……私が全員分の会話仲介するから意見が欲しい……全員思考内で意見出して……避難民の人たちを無駄に怖がらせたくない……』

 

『……なにかあったのかい?』

 

飯田くんが即座に返事をしてくれた。

誰が言ったのかと内容も併せて皆に伝わるように、私がさらにテレパスを飛ばす。

……これ結構忙しいな。

 

『周辺の草原に……錬金で作られたと思われる怪物多数……明らかに私たちの場所が分かってる出現の仕方してる……』

 

『まずいわね。こんな大所帯で襲われたらひとたまりもないわ』

 

『そこを相談したい……一応、避けて合流地点まで行くこと自体は……できると思う……ただ……』

 

『ただ?』

 

『敵の中に要塞内部を監視している者がいる……実際私たちも足元の地面を急に消されたりした……』

 

『そう!あれ酷かったよね!急に足元の地面がなくなって真っ逆さまだったもん!』

 

……え、このハイテンションな透ちゃんの思考を私が仲介……?

私の声でこのハイテンションな言動が頭に響くよね多分。

……やるしかないか、うん。

 

『だから……そうなると私たちの逃走先に……こいつらが大挙する可能性が高いと思う……そうなった場合の相談……』

 

『それならば、殿軍を残すしかないのではないでしょうか?私たちの中である程度戦闘力に期待できるものを殿軍として残し、外との連絡を調整してきているであろうルミリオンに誘導してもらうとか……』

 

『ん……私もそんな感じかなとは思ってた……』

 

すごいしっかりした返答をしてくれた百ちゃんの方を見ると、口の方では避難民に指示を出していた。

並行して思考してるの……?すごいな……

 

『それで……残る人員と救助の補助をする人員を決めたいんだけど……』

 

 

 

「通形さん……!」

 

「お!来たね!」

 

「はい……!この後の誘導はお任せできますか……!」

 

情報共有は既に移動中に終わってる。

プロヒーロー総出で要塞外壁を壊して救出する作戦だったらしい。

響香ちゃんが聞いた音はこれだったみたいだ。

今は外壁近辺に来ているからある程度外の状況も分かるけど、外壁は傷すらついてない。

実際今も下の方で何らかの個性による攻撃を加えてくれているみたいだけど、傷ついても即座に修復されている。

これで大丈夫なのか不安になったけど、通形さんはホークスに最悪エンデヴァーが一人でも外壁を破壊してくれると言われてこっちに来たらしい。

ホークス、相変わらずというかエンデヴァーへの信頼が厚いな。

まぁそう言ってくれるならこっちはそれ前提で動くだけだ。

 

「……任せるって、リオルはどうするつもりだい?」

 

「周辺に……錬金で作られた生物がいます……ここまでは……障子くんや口田くんとも協力して……どうにか避けてきましたが……」

 

「が?」

 

「化け物が出てくる位置が的確過ぎるんです……おそらく……敵の中に内部を監視している者がいます……実際私も足元の地面を急に消されたりしましたし……これはほぼ確実です……」

 

「つまり、防衛する必要があるって?それなら、リオルがここまでと同じように送り届けるって方法も——」

 

「移動しながら皆で考えた方法です……私たちA組がここに残って戦います……残りの移動中の護衛と……脱出時の救助に役立つであろう人員はこのまま同行してもらいます……」

 

「残るのは?」

 

「私たち4人はルミリオンに同行します!それ以外は全員残ります!」

 

透ちゃんが一歩前に出て、口田くん、梅雨ちゃん、お茶子ちゃんがそれに続いた。

恐らく救助は落下なり飛び降りなりが必要になると判断しての人選だ。

お茶子ちゃんとかは最後までどっちにするか悩まれてたけど、落下の可能性を考えたら外せなかった。

あとは避難誘導時の個性の有用性と本人の戦闘能力を総合的に勘案して皆で相談した結果だった。

 

「殿は俺たちA組にお任せください!いいな、皆!」

 

「「おう!」」

 

皆も意気揚々と返している。

通形さんも少し考えこんだ後に頷いた。

 

「分かった。気を付けてくれよ」

 

「そちらも……監視されている以上……万が一があり得ます……ルミリオンを信頼してお任せする側面が大きいので……」

 

「はは!正直だね。でも、悪くない。任せてくれ」

 

「ルートの補助は……私からもできますが……」

 

「いや、基本的には大丈夫。先にこの辺りは確認しておいたから。ヘルプミー!って言った時だけ助けてくれればね」

 

「ふふ、冗談を言えるなら……大丈夫そうですね……それでは、お願いします……」

 

実際、通形さんがいなかったらここまで全面的に任せられるかは分からなかった。

それこそ、不意の襲撃に備えて戦力を完全に分散させる必要があっただろう。

でも、それすら必要ないと思えるのは託す先が通形さんだからだ。

 

 

 

「さて……」

 

通形さんたちは既に外壁近くの下層に向かった。

私たちA組の眼前には、草原が広がっている。

その草原には、スーツを着た怪物が無数に湧いてきていた。

三奈ちゃんが冷や汗を流しながら

 

「あはは……これ、何匹いるの?」

 

「数える意味……ないかも……多分無限に増え続けるよ……」

 

「無限!?」

 

「錬金ですものね。それもブースト紛いの強化がされた。納得でしかありませんわ」

 

「無限に何でも生み出せるって感じ?洒落にならね~……」

 

思い思いのことを言いながらも、誰一人として視線を怪物から逸らしていない。

私も、自分の身体から波動が立ち上り始めるのを感じた。

 

「……波動くん、それは……」

 

「ん……多分……今ならだいぶ戦える……」

 

私だって、ここのやつらの数々の所業には結構怒ってるんだ。

……もちろん、お姉ちゃんの偽物を作られたことが一番腹立たしいけど、他にも、本当にたくさん。

飯田くんが呆然としながら私の方を見てくる。

心配そうな目をしてるのが気になるけど、そこまで心配する必要はない。

 

「……あの時の様子を見ていた俺からしたら不安しかないが……無理はするなよ」

 

「当然……そこは大丈夫……爆豪くんのおかげで……結構踏ん切りはついてるから……」

 

「……そうか。そうだったな」

 

飯田くんが小さく笑みを浮かべて前を向く。

 

「A組総員!一匹たりとも後ろに通すな!行くぞ!!」

 

「「おう!!」」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。