波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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「ジュリオさん!大丈夫ですか?」

 

「え、ええ……何か所か骨が折れてそうですが……」

 

緑谷くんが、ジュリオさんを助け起こそうとしていた。

ジュリオさんはそのままアンナさんの下へ向かおうとしている。

とりあえずあっちは2人に任せるか。

 

「爆豪くん……轟くん……大丈夫だった……?」

 

「ああ、問題ない」

 

「この程度屁でもねぇわ」

 

「そっか……ならよかった……」

 

2人とも本当に問題なさそうだ。

爆豪くんなんかいつもの調子で睨んで吐き捨ててきたし。

怪我自体はたくさんしているけど、これだけ強がれるなら問題ない。

 

そう安心したタイミング、アンナさんの方から嫌な感じがした。

 

「うっ、うううっ……!」

 

「なんだこりゃ……!?」

 

「アンナさんの個性が、暴走して!?」

 

「あっ……あああ、ああああっ……!」

 

周囲に棘のついた太い蔓が大量に伸び始める。

それらが四方八方に鞭のようにしなりながら絡まっていき、向かおうとしていたジュリオさんにも襲い掛かっていた。

 

「俺をお嬢様のところへ!」

 

「でも……」

 

「頼む!」

 

緑谷くんは少しして頷くと、ジュリオさんを抱えて浮遊で飛び始めた。

大量の蔓の乱舞に、アンナさんの個性の波動っぽいものまで飛んでいる。

周囲にはバラの花が咲き乱れ、その花びらが異様なほど飛び散っていた。

 

 

 

そこで、嫌な気配を感じた。

 

「爆豪くん!!轟くん!!バルド・ゴリーニが意識を取り戻してる!!そっちを対処して!!私は緑谷くんと代わる!!」

 

「っ!ああ!!」

 

「クソったれが!!」

 

私が飛ぶのと同時に、爆豪くんと轟くんも動き出した。

嫌な気配の元凶であるバルド・ゴリーニは、アンナさんの個性の影響からか目を覚ましていた。

しかも、個性の力で無理やり動こうとしている。

この状態の過剰変容の力を利用できるとなると厄介極まりない。

こうなると私ではパワー不足だ。

轟くんと爆豪くんに先に行ってもらって、私が緑谷くんと交代することで、私たちの最高戦力であるデクにバルド・ゴリーニの対処をしてもらう。

そうすれば、バルド・ゴリーニと過剰変容の源であるアンナさん、両方に対処ができる。

 

 

 

痛い。痛い痛い痛い。

なんなのこの個性の波動っぽい何か。

これが不適合の激痛?

ダメだ。こんなので緑谷くんを消耗させられない。

 

「デクっ!!」

 

「波動さん!?」

 

叫ぶと同時に、ジュリオさんを抱えている緑谷くんから無理やりジュリオさんをひったくる。

波動で身体強化をかけてどうにか強引に。

 

「バルド・ゴリーニが起きてる!!デクはそっちに行って!!ジュリオさんは私が!!」

 

「っ!!——分かった!!」

 

緑谷くんは顔を歪めながら個性の波動っぽいものから逃れるように外に出ていった。

 

「ジュリオさんっ……ごめんなさい、ここからは私が……!」

 

「あ、ああ!すまない!」

 

あまりの激痛で顔が歪む。

彼の体格に対して私の腕の長さがそもそも足りてないから、抱き抱えるにしてもジュリオさんをしっかりと抱きしめないといけない。

そもそも飛びながらの輸送が不安定だから、密着具合を気にしないで抱きしめないと最悪落下する。

 

バルド・ゴリーニが作ってると思われる大量に飛び出してくる光の柱も邪魔過ぎる。

どうにか感知で避けるけど、それに合わせて個性の波動っぽいのが飛んでくると激痛でジュリオさんを落としそうになる。

近づけば近づくほど苦痛が増していく。

というか、ジュリオさんも痛そうにはしてるけど私よりも顔の歪め方がだいぶ軽い。

なんで?なにかこの波動っぽいなにかの避け方がある?

 

 

 

波動っぽい何か?

そこまで考えて、ようやくまともに思考が回った。

そもそも、この波動っぽい何かはなんだ。

ピンク色の波や衝撃波のようなものが飛んでくるたびに痛みが強くなる。

つまり、これに溢れ出している個性因子が含まれている?

というか、薄く散布もされてるのか。

じゃないと近づくにつれて痛みが強くなるのもおかしい。

波動みたいな感じで波として表れているなら、個性因子のこの波に対しては、対処できるかもしれない。

直接触ることは無理でも、この波にだけは。

 

「ジュリオさん……しっかり掴まっててくださいね……!」

 

「あ、ああ」

 

意識を集中させる。

テレパスと同じだ。

私のテレパスは、私の波動と相手の波動を共鳴させることで行っている。

だけど、波動が見えるほど濃くなっている今なら。

この状態でなら、溢れ出る波動だけでも外に最低限の干渉ができる。

この状態の波動を私とジュリオさんを覆いつくすように少し広げる。

そのうえで、この個性の波と全く同じ動き、振動、広がり方になるように、波動を調整する。

つまり、共鳴させるのだ。

全く同じ強さの波動同士が衝突する。

そうすることによって、同じ速度、動きの波同士をぶつけて勢いを殺すことで、対消滅紛いのことを起こせるんじゃないか。

 

意識を集中させる。

周囲に広がる私の波動を少しずつ変えて、調整して、ぶつかってくる波との違いをさらに精査して、調整を加えていく。

そして、ある一点に達したところで、波が完全に波動と溶け込んで周囲に拡散するところを見つけた。

 

「これは……!?」

 

「よかった……これなら……なんとか……」

 

飛んできた因子が消えたわけじゃない。

だけど、その勢いを殺し動かなくなった因子は、私の身体から発せられ続けている可視化できる状態の波動で弾き飛ばす。

 

「じゃあ……アンナさんのところまで行きましょう……」

 

「ああ!」

 

 

 

飛んでいるだけで発生し悪化する激痛がないだけで、だいぶマシだった。

その後は、すぐにアンナさんの近くまで飛んでいくことができた。

ジュリオさんを彼女のすぐ近くに下ろして、後の対応を任せる。

私が彼女に触ることができない以上、今この場で私にできることはもうない。

せめてジュリオさんの身体を波動で覆って、最低限の痛みを軽減するくらいだ。

私から離れられると微細な波動の調整も難しいから、あんまり離れることもできないのもあって、近くで見守るしかない。

 

「ダメだ……やっぱり個性が使えねぇ……」

 

義手で彼女の手を触ったジュリオさんがそう呆然と呟いた。

 

「頼む……頼むよ……頼むから使わせてくれよ……俺に個性を使わせてくれよぉ……!」

 

個性因子がわずかにでも残っていれば、アンナさんの個性と適合できればという淡い望みがあったみたいだ。

だけど、じゃあ、どうすれば——

……右手……義手とはいえこの距離で掴んでいるのに、彼は痛がってない?

いや、全く痛がってないわけじゃない。

だけど、それにしては痛がり方があまりにも軽い……

 

「……ちょっと、ごめんなさい……っ!!?」

 

ジュリオさんの義手を掴むと、そこから伝って波動内に因子が侵入してきたのか、激痛が走った。

……やっぱり、これ。

 

「まさか——」

 

ジュリオさんも気づいたみたいだった。

私を見つめてそう呟くと、彼は悩むことなく、アンナさんを強く抱きしめた。

その瞬間、周囲に青い光と花びらが広がった。

 

……もう野暮だろう。

そう判断して、少し距離を取ることにした。

もう補助なんて必要ない。

あとは彼がうまくやってくれる。

そう確信できた。

 

 

 

ジュリオさんは、アンナさんを無事救けることができた。

過剰変容を受けてブーストされた個性で個性因子を全て相殺することで、アンナさんを無個性にする。

これによってこんなつらいことに、二度と関わらなくてよくなる。

そういう感じだ。

バルド・ゴリーニも緑谷くんたちがうまいこと倒してくれていたのか、笑顔で抱き合っているジュリオさんとアンナさんを遠巻きに見守っていた。

緑谷くんなんか『ジュリオさん、気づいてます?笑ってますよ』なんて考えながら満足そうに笑っている。

 

「やったね……」

 

「うん!本当に!」

 

遠くに皆の波動も感じる。

皆も無事だったらしい。

あっち側からも2人が抱き合っているのは見えているみたいで、安堵の笑みを浮かべている人がほとんどだった。

 

 

 

……は?

ふ、ふふふ……そういえばそうだった……ふーん、そう。

逃げようとするんだ。

そっかぁ。

そういえばこの部屋にいたんだもんね。

ジュリオさんに気絶させられてたみたいだけど。

這いずりながらこっそり逃げようとしているそいつに、波動を噴出して一気に近づく。

 

「どこにいくの……?デボラ・ゴリーニ……」

 

こいつは処さなきゃ。

お姉ちゃんを騙った最低最悪のヴィラン。

この世の癌。

こいつを野放しにしておくと、今後も不幸になる人が増える。

 

「ひっ!?」

 

反応して振り返るデボラ・ゴリーニの動きにあわせて背後に回る。

案の定目が赤く光っていた。

個性、使ってたねぇ。

なるほど、ブーストされてないと触らないと使えないんだ。

そっかそっか。じゃあ隠れなくていっか。

わざと分かりやすく正面に回って、その赤く光る目に私を映してあげる。

 

「言ったはず……地の果てまで追いかけてでも……消し炭にするって……」

 

「な、なによ、なんで、私の個性が怖くないの!?」

 

「怖くないよ……触らないと使えない……使用上限一人の幻覚による精神操作なんて……もう過剰変容……解けてるみたいだね……デボラ・ゴリーニ……」

 

あの時の怒りがぶり返して波動がガンガン溢れ出していくのを感じる。

デボラ・ゴリーニからもそれは見えているのだろう。

分かりやすいくらい震えて怯え始めていた。

 

「あ、謝る、謝るから、だから、だから——」

 

「お姉ちゃんを騙った罪!償ってもらうんだから!!」

 

波動を練りに練って、巨大な波動弾を形成する。

それを即座にデボラ・ゴリーニに叩きつけた。

轟音が辺りに響き渡る。

煙が晴れる頃にはデボラ・ゴリーニはボロボロになって気絶していた。

 

「る、瑠璃ちゃん……?」

 

「なに……?透ちゃん……」

 

「いや、そんなすっきりした笑顔で振り返られても……その人って……」

 

「幻覚精神操作ヴィラン……お姉ちゃんを騙った罪を償わせた……ヴィラン確保……」

 

「あ、あー……あはは……まぁ、自業自得かぁ……」

 

やり遂げましたと表現するようにピースを返す。

それを見た透ちゃんは、小さく呟きながら乾いた笑みを浮かべていた。

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