「なんで……なんでこんなことを……!?」
緑谷くんが絞り出すように黒尽くめのオールマイトに問いかける。
『僕は、雄英に落ちた。雄英に入って、ヒーローになるのが、僕の全てだったのに。優秀な僕が落ちるなんて、世の中間違っている。世間では、僕はただの落ちこぼれ。なのに、君たちは、明るい未来しか待ってない。だから―――』
「要するに八つ当たりだろうが、クソ黒マントが!!」
オールマイトが説明する設定に凝ってるなあなんて思っていたら、爆豪くんが叫んだ。
「かっちゃん!?」
「めんどくせえ、今すぐブッ倒してやるよ……!」
もう我慢の限界らしい爆豪くんが、手で爆破を起こそうとしていた。でも、今の状況でそれはないだろう。
「爆豪くん……ダメだよ……爆破しちゃ……下のがガソリンだったら……大変なことになる……」
そう思って制止したんだけど、私の声が聞こえていないらしい彼は、淵の方に駆け出そうとし始めていた。
『おっと、人質がいるのを忘れるな』
「キャア!」
黒尽くめのオールマイトは一番近くにいた爆豪くんの母親らしき人を引き寄せる。
それを見た途端、爆豪くんは舌打ちをして立ち止まった。というか、この行動って子供と親を結びつけられる程度には知ってる人ってことになるからバレるリスクが……
そう思ったんだけど、彼の頭には怒りとかの他に焦りの感情が見える。どうやら彼なりに母親を心配して焦っているみたいで、そこまで考えが及ばなかったらしい。
「勝手につかまってんじゃねぇよ、クソババア!」
そんな爆豪くんの怒りの言葉に、オールマイトに掴まれていた爆豪くんのお母さんの思考が怒りに染まった。
「クソババアって言うなっていつも言ってるでしょうが!!」
人質に相応しくない怒号が響いて、皆きょとんとして爆豪くんのお母さんを見つめてしまう。
爆豪くんもすごいけど、その母親もすごかったらしい。というか、人質の態度じゃないよこれ。
「……すげー、流石爆豪の母ちゃん」
「変な感心してんじゃねえ、クソ髪!!」
切島くんも私と同じ感想を抱いたみたいで、唖然としたように呟く。
爆豪くんのお母さんの方は緑谷くんのお母さんらしき人が宥めて大人しくなった。
緑谷くん的には、爆豪くんのお母さんの姿はいつも通りだったらしい。
落ち着きを取り戻した緑谷くんはオールマイトに目的を聞きだした。
「……それで、あなたの目的はなんですか?」
『……目的は、一つ。輝かしい君たちの、明るい未来を壊すこと。そのために大事な家族を、君たちの目の前で壊してしまおうと思ってね』
「……それだけのためにかっ?」
尾白くんが怒りに尻尾を震わせながら呟く。
その後も何人かが説得を試みるけど、当然ヴィラン役のオールマイトが意見を変えるはずがない。
『僕には失うものは何もないんだ。だから、君たちの苦しむ顔を最後に見ておこうと思ったんだ。君たちも大事な家族の最後の顔を、よく見ておくんだ。―――さぁ、誰からにしようか……?』
そう言ってオールマイトは人質の保護者に向かって手を伸ばした。
保護者は怯えて隅に寄って行く。
「やめて!!」
お茶子ちゃんが必死の形相で叫ぶ。
その陰で、緑谷くんがブツブツと対応策を考え始めた。
やっぱりこういうところは緑谷くんは頼りになる。
他の皆もオールマイトに話しかけて時間稼ぎをしているようだ。
そんなことを考えていたら、透ちゃんがチラチラこっちを見ていることに気が付いた。
透ちゃんはそのまま静かに私の方に近寄ってくると、小声で耳打ちしてきた。
「ねぇ、これってもしかして……そういうこと?」
……透ちゃんとは普段からずっと一緒に居るから、私の様子から気付かれてしまったようだ。
表情には出してなかったはずだけど、必死さが足りなかったかもしれない。
ほぼ確信していると言っていいレベルで質問してきている。
ここまでだと否定しても意味はなさそうだ。ここまでバレてるなら、透ちゃんには言ってもいいかな。
「……ん……そう……」
「やっぱり!瑠璃ちゃん、本当にピンチな時はいつも必死になってたのに今はそういう感じじゃなかったし、そうじゃないかと思ったんだ!」
「……そんなに分かりやすかった……?」
「分かりやすかったのもあるけど、瑠璃ちゃんが相澤先生に呼び出されるところ見てるからねぇ。この状況になってて、今の瑠璃ちゃんの様子とあの呼び出しは流石に気づくよ」
……私のせいではあるけど、相澤先生のせいでもあるな、これ。
流石にこれで怒られることはないと信じたい。
そんなことを考えていると、透ちゃんが小さくニヤッと笑った。
「それに……瑠璃ちゃん、ちょっと笑いそうになってたでしょ」
「……なんで分かるの……?」
「そりゃあ、一番の友達ですから!」
どうやら透ちゃんにはお見通しだったらしい。
確かにさっき『あれ?』なんて思考をしていたからおかしいとは思ったけど、ここまで見抜かれているとは思わなかった。
少し顔が熱くなっている気がする。
「……そっか……でも……皆には……まだ内緒……」
「うん!」
そこまで話したところで、緑谷くんから声がかかった。
「葉隠さん、波動さん、ちょっとこっちに」
言われた通りに近寄る。
どうやら百ちゃんとお茶子ちゃんも呼んでいたらしい。
ブドウ頭だったらハーレムが云々とか喚き出しそうな状況だ。
「スタンガン?」
「うん、なるべく目立たないように小型で威力のあるものを作って欲しいんだ」
スタンガンとなると、一つ確認は必要だと思う。
「……爆発とかは大丈夫そう……?」
「うん、さっきかっちゃんが手で小規模な爆発を起こしてたのに爆発してなかったから、多分」
「……それが最善ですわね。分かりました」
どうやら爆豪くんは、あの後普通に爆破をしていたらしい。
聞こえていなかったのか、聞こえていたのに無視したのか……どっちだとしてもちょっと酷いな爆豪くん。
まあ、もう過ぎたことだし仕方ないか。
そんなことを考えている間に、手のひらからポケットサイズのスタンガンを作った百ちゃんは、それをお茶子ちゃんに手渡した。
お茶子ちゃんも頷いてからスタンガンを受け取って、手早く個性を使っている。
「塗装は目立たぬように土色にしてみましたわ」
「私はこれと透ちゃんを浮かせばええんやね?」
「うん、これが出来るのは葉隠さんしかいないから」
「ちょっと待ってね!今全部脱ぐからっ!」
そういうと透ちゃんは、いつもの調子でぽいぽいと制服を脱いでいった。
というかこの調子で脱いでいくと下着が見られてしまう。
緑谷くんはすぐに「わっ!?」なんて言いながらすぐに後ろを向いてくれた。
だけど周りの男子、というよりもブドウ頭が問題だ。
「ひょー……!!JKの生脱ぎ……!!身体は脳内補完!!」
案の定、オールマイトの注意を引き付けていたはずのブドウ頭がにじり寄ってきた。
私がブドウ頭と透ちゃんの間に身体を入れて見えないようにすると同時に、梅雨ちゃんの舌が伸びてきてブドウ頭を地面に叩きつけた。
「非常事態でもブレないわね、峰田ちゃん」
「……変態……」
「ふごぉっ!」
透ちゃんが脱ぎ終わったのを確認して、緑谷くんの肩を叩く。
「準備万端だよっ!」
「気を付けて、透ちゃん……!」
「任せて!」
準備が終わった透ちゃんに声を掛けながら、お茶子ちゃんがタッチする。
そして、スタンガンを持ってふわふわ浮いている透ちゃんが檻へと向かっていった。
それに気が付いた注意を引き付けている皆が、ヴィランに気づかせないようにより一層大きな声を上げ始めた。
「それで波動さんには、ヴィランに隙が出来たらあっちに飛んでいって欲しくて」
「それはいいけど……私だけ……?」
「飯田くんとかっちゃんは少しの時間があれば自発的に移動してくれると思うんだ。ただ、やっぱり人手が多いに越したことはないと思うから……波動さんがまだ空中での跳躍に不安があるのは分かるんだけど、お願いしたくて」
……どうやら私は声をかけておかないと自発的に飛ばないと思われていたらしい。
まあ確かにまだ空中での再跳躍には不安が残るし、コントロールできる自信があんまりない。
これだけの距離がある上に着地地点の足場が小さいこの状況だと、自発的には動かなかっただろうなとは思う。
「ん……分かった……ただ、確実を期すなら……お茶子ちゃんに浮かせてもらった方がいい……浮かせてもらっておけば……波動の推進力で一気に近づけると思う……」
「そういうことなら私に任せて!」
そんなやり取りをしている間に、透ちゃんは檻の周りまでついたみたいだ。
低い姿勢を保って移動した透ちゃんは、檻の中で歩き回っているオールマイトの近くで待機し始めた。
思考的にタイミングを計っている感じっぽい。
『だから、黙ってくれと何度言えば分かる……?一番うるさい生徒の親を始末すれば、大人しくなるかな……』
オールマイトが親を見定めようと足を止めた。
透ちゃんはスタンガンをそーっとオールマイトの足元へと近づける。
だけどバチバチと青白い光を放ったその瞬間、オールマイトがスタンガンを蹴り飛ばした。
「あっ……!」
『どうやら、見えないコバエが紛れ込んでいたな……!』
オールマイトは怒っている演技をしながら、乱暴に鍵を開けて檻の外に出てきた。
そのままの流れでマントからライターを取り出して、皆に見せつけてくる。
『一人一人、じっくり苦しめたかったが、やめた。皆仲良く、地獄に行こう』
そういうとオールマイトは、ライターを穴に放り込んだ。
その瞬間、穴から勢いよく炎が立ち上がってきた。
「僕のせいだ……」
緑谷くんが失敗した絶望に崩れ落ちそうになってるけど、そんな背中に爆豪くんが後ろから蹴りを入れた。
「わっ……?」
「アホか、テメーは。今が絶好のチャンスだろうがよ!」
爆豪くんがお茶子ちゃんに声をかけていく。
「おい、丸顔!俺を浮かせろ!」
「う、うん……!」
丸顔って……相変わらず酷いあだ名だ。だけど、お茶子ちゃんは気にしてないみたいで、さっと爆豪くんにタッチした。爆豪くんは浮かび上がってすぐに爆破を連発してオールマイトの方へと飛んでいった。
檻から出ているオールマイトを狙いに行ったみたいだ。
それをサポートするかのように、轟くんがオールマイト目掛けて氷結を使っていく。
氷はそのままオールマイトの足を凍り付かせていた。
『くっ……!』
「この黒尽くめ野郎が!!」
爆豪くんは動けなくなったオールマイトに馬乗りになって、爆発で威嚇する。
「僕たちも行こう!」
飯田くんの促しに緑谷くんが立ち上がって、お茶子ちゃんとタッチした。
「ありがと!」
「父ちゃんをお願い……!」
お茶子ちゃんの必死のお願いに、緑谷くんは柔らかい笑みを浮かべて頷いた。
緑谷くんと飯田くんは一緒に飛び上がって、檻に向かって飛んでいった。
轟くんと常闇くんもそれに続いている。
その瞬間、中央の足場の下の方で爆発音が響いた。
中央の足場が今にも崩れそうなくらい揺らいでいる。
その様子を見て、百ちゃんがすぐに消火器を作り出してくれた。
「おい!下が崩れそうだ!早く避難しろ!!」
尾白くんが緑谷くんたちに呼びかける。
その周りで手の空いてる人で消火器で燃え上がる火を消せないか試みるけど、弱まる様子すらない。焼け石に水だ。
「あかん!こんなんじゃ間に合わへん……!」
「猛烈な炎を消すより、もっと合理的な……そうですわ……!」
百ちゃんはハッとしたように防火シートを作り出した。
どうやら氷の上を防火シートで滑って脱出を図るつもりみたいだ。
中央の足場の方にいる緑谷くんたちも同じ結論に至ったらしい。
「そうか!つまりこの氷の橋を滑って避難するということだな!」
「もう時間がないよ、八百万さんになにか大きなシートを作ってもらって「もうそろそろできますわ……!」
今まさに防火シートを作り終えようとしていた百ちゃんが声を張り上げた。
「防火シートですわ。さっきから作っていましたの。麗日さん、波動さんお願いします!」
「はいっ」
「んっ……!」
シートを受け取ったお茶子ちゃんが、タッチして無重力にしたシートを手渡してくる。
手渡す瞬間、私にもタッチして私も無重力にしてくれた。
足とシートを持っていない手に波動を圧縮させていく。
まず足に圧縮した波動を噴出させて斜め上に飛び上がる。
無重力だったせいか予想以上の速度で弾きだされる。
炎の頂点を超えたあたりで、手を後ろ上方に向けて波動を噴出する。
そのまま中央の足場に向かって結構な速度で一直線に落ちていった。
やっぱり山なりの軌道になってしまう通常時よりも、無重力になっている時の真っ直ぐ吹き飛ぶ軌道の方が読みやすい。
上手く着地できるように意識を集中しておく。
「ダークシャドウ!」
「アイヨ!」
着地に備えて身構えていた私を、常闇くんのダークシャドウが受け止めてくれた。
私は持っていたシートを、サッと緑谷くんに手渡してしまう。
「ありがとう波動さん!防火シートも、さすが八百万さんだ……!」
そう言いながらシートを広げる緑谷くん。
「皆さん!これの上に乗ってください!」
グラグラと足元が揺れる中で、保護者の人たちが防火シートの上に乗る。
「葉隠さん乗った!?」
「乗ってる!」
「波動さんも乗っておいて!」
「ん……分かった……」
透ちゃんがちゃんと乗ったか確認するあたり緑谷くんは流石だと思う。
私に関してもそんなに多くの回数をまだ跳べないし、私の跳び方だと足並みを揃えるのが難しい。
まだ無重力だから押したりすることも難しいし、保護者と一緒にシートに乗っておくように促すのは妥当な判断だ。
「飯田くんの"エンジン"で引っ張って、僕たちが後ろから押すのが良いと思う。轟くんはギリギリまで氷結していて欲しい」
「分かった」
緑谷くんの指示に、轟くんは氷をどんどん増量していく。
「犯人はどうする」
氷を眺めながらの常闇くんの言葉に、緑谷くんが一瞬考え込んだ。
「置いていくわけにいかないけど「変な真似したら、俺が爆破する」
緑谷くんが考えて対応を伝えようとした途端、抵抗しなくなったオールマイトをシートに引っ張り上げていた爆豪くんが遮って答えた。
「行こう!緑谷くん!」
「うん……!!」
緑谷くんの返答を聞いた飯田くんのエンジンが、唸るような音を出し始める。
「最初から全開だ……トルクオーバー……レシプロバースト……!!」
その瞬間、防火シートがすごい勢いで引っ張られた。
後ろから緑谷くん、常闇くん、爆豪くんが押して、後ろのシートの両端はダークシャドウが持ち上げている。
ギリギリまで氷結を使い続けた轟くんも無事にシートに転がり込んでいる。
飯田くんは凄まじい速さで氷の橋を走り抜け、あっという間に穴の向こう岸の地面を踏んだ。
その瞬間、中央の足場が大きな音を立てて崩れ落ちた。
その崩落は氷の橋にも伝わって、シートが通り過ぎるのを待たずに崩れ落ち始めている。
足場を無くした緑谷くんたちも、何とかシートを掴んでいる。
それを認識した飯田くんがなんとか踏ん張りながら引っ張って、向こう岸にいる他の皆がシートを引っ張り上げ始めた。
「せーの……!!」
立ち上る炎に飲まれそうになった瞬間、シートは引き上げられた。
『あっ……!?』
だけど、その時、シートの端にいた緑谷くんのお母さんが弾かれるように宙に浮いた。
思考からすぐにその状況を察知できた私は、急いでシートを蹴る。
無重力の状態を維持されていた私は炎の方に飛び上がって、緑谷くんのお母さんを追い抜く。
そのまま急いで波動を圧縮して炎の方に向けて噴出し、緑谷くんのお母さんの背中に体当たりをした。
緑谷くんのお母さんはそれでシートに戻れたけど、私が押した衝撃で炎の方に流されてしまう。
そのまま流されてしまいそうになったところで、シートに乗っていたオールマイトが私の手を掴んで引っ張り上げてくれた。
その直後、全員を乗せたシートは無事に地面にたどり着いていた。
「大丈夫!?出久……!」
「お母さんこそ……!」
感動の再開のように涙をこぼしながら緑谷くんのお母さんが緑谷くんの背中を摩る。
とりあえずなんともなくて良かったと思いつつオールマイトの方に目を移す。
『おめでとう。これで、授業はおしまいだ』
「は?何言って……」
「捕まえとけ、とりあえず学校に知らせねぇと……!」
「それに相澤先生を「はい、先生はここです」
そこまで来て、ようやく相澤先生は姿を現した。
「「「……は?」」」
皆の状況を飲み込めていない声が、空しく響き渡っていた。
「皆さん、お疲れさまでした。なかなか、真に迫っていましたよ」
先生の保護者への声掛けに、お茶子ちゃん、百ちゃん、梅雨ちゃん、爆豪くんの家族が順に和気藹々と話し出した。
他の保護者の人もさっきまでの怯えたような表情じゃくて、明るい表情で感想を言い合っていた。
私と透ちゃんを除く皆はポカンとした顔で呆然としている。
「まだ分からねえか?分かりやすく言うとドッキリってやつだな」
「「「はー!?」」」
「は、犯人も……!?」
「えー……この人は劇団の人です。頼んできてもらいました」
相澤先生は一瞬考えて、オールマイトであることを隠して、ただのヴィラン役であることを伝えた。まあ、私にも隠したくらいだし、オールマイトだなんて言えるわけがない。
『あ、はい。驚かせてごめんね』
オールマイトは黒尽くめのまま首を傾げながら謝罪の言葉を述べた。
そこまで言われてハッとした表情になった爆豪くんが、こちらに詰め寄ってきた。
「ってことはてめぇ……!またクソサプライズの共犯か!?」
爆豪くんの言葉に、当然のように皆の視線が一気に私に集まる。まあ、言い訳はもう考えてある。
「ん……すべては先生の要請……私は黙ってただけ……」
「あっ!?」
私の素っ気ない返事に爆豪くんがキレそうになるけど、切島くんが爆豪くんを抑えてくれた。
「ま、まあまあ爆豪。波動だって好きでそういう役回りしてる訳じゃねえだろうからさ」
爆豪くんも先生が話している途中だったことを思い出したようで、この場でのこれ以上の追及はしないことにしたようだ。
その後もいくつか生徒から先生に質問がしていたけど、悉く言い負かされていた。
「いいか、人を救けるには力、技術、知識そして判断力が不可欠だ。しかし、判断力は感情に左右される。お前たちが将来ヒーローになれたとして、自分の大切な家族が危険な目にあっていても変に取り乱さず、救けることが出来るか。それを学ぶ授業だったんだよ。授業参観にかこつけた、な。それともう一つ、冷静なだけじゃヒーローは務まらない。救けようとする誰かは、ただの命じゃない。大切な家族が待っている誰かなんだ。それも肝に銘じておけ」
先生のその言葉に、皆静かに頷いた。
その後は救助のための行動のダメだし、改善点の指摘をされたけど、ギリギリ合格点という評価を貰えた。
まあ反省点をまとめて明日提出なんていう課題まで渡されてしまったわけだけど。
授業が終わって、お母さんのところに向かう。
その直前で緑谷くんのお母さんに丁重にお礼を言われたけど、特に恩に着せるようなことでもないから、普通に感謝の言葉を受け取って離れた。
お母さんのところに着いたけど、なにやらニコニコとしている。
感情も歓喜で満たされている。
思考は……深く読むまでもない。
私が透ちゃんと仲良く話していたのがよっぽど嬉しかったらしい。
友達がいないことでお母さんにも想像以上に心配をかけていたみたいだった。
お母さんが透ちゃんに挨拶したいなんて言い出してるし、余計なことを言われないかが心配だ。
その後は、少しの間保護者間での交流とかもしてから教室に戻った。
教室に戻る途中で校門の方にエンデヴァーの波動を感じた気がしたけど、もう授業は終わってるし今更何をしに来たんだろう。
轟くんに言っても不機嫌になるだけだろうし、余計なことは言わないことにした。