波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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I・エキスポ(前)

7月末。

林間合宿も近づいてきたこの日に、私たちA組女子は皆で飛行機に乗ってI・アイランドにやってきていた。

I・エキスポプレオープンの招待状は5人分しかない。

だから三奈ちゃんと梅雨ちゃんには申し訳ないけど、プレオープンの日は2人でホテルとかで過ごしてもらうことになっていた。

だけど、プレオープン翌日、一般公開日には女子皆で回ることになっている。

クラスの女子だけで旅行というのもできる機会はなかなかないし、5人も同じ場所に行くならもう今回の機会にやってしまおうということになったのだ。

 

I・アイランド。

1万人以上の科学者たちが住む、学術人工移動都市。

海に浮かぶ人工島であり、簡単に言ってしまうと大きな船のような都市だ。

ここは科学者たちが"個性"の研究やサポートアイテムの発明とかを行う場所だ。

その関係上、非常に強固な警備システムが敷かれていて、あのタルタロスに相当する能力を備えているとすら言われている。

この警備システムのおかげもあって、長期の外出自粛を求められているにも関わらず、学校側から特別に許可が出るほどの場所だった。

 

そんなI・アイランドにやってきた私たちは、動く歩道に乗って入国審査を受けていた。

身体をスキャンするような光が通されたと思った途端、空中に大きく私たちのプロフィールが表示される。

 

「おー!ハイテクだー!!」

 

「……すごい……」

 

「なんか、ちょっと恥ずかしいね」

 

「聞いていた通り、素晴らしいセキュリティですわね」

 

全身スキャンだけじゃなくて、そのままパスポートの確認とかも一気に行われた。

 

『入国審査が完了しました。現在、I・アイランドではさまざまな研究、開発の成果を展示した博覧会、I・エキスポのプレオープン中です。招待状をお持ちであれば、ぜひお立ち寄りください』

 

一通り審査が終わると、アナウンスとともに目の前のゲートが開いた。

 

「「「わぁ~!!!」」」

 

開いたゲートの先には、広大なエキスポ会場が広がっていた。

ウォーターアトラクションのような建物から噴き出した水が文字になったり、楽器モチーフのパビリオンでは音楽に合わせて音符が出現したりしている。

空飛ぶ球状の乗り物が飛んだりもしていて、まさしく最先端科学の集合によってつくられた未来のような世界が広がっていた。

 

人の入り具合もなかなかのもので、一般公開前のプレオープンにも関わらず多くの人々がエキスポの中に入っていっていた。

 

「ケロ。来場者、多いわね」

 

「一般公開前なのにすごくない?」

 

「ホテルどっちか分かる?」

 

「えっと……あっち……」

 

とにもかくにもまずはホテルにチェックインだ。

事前に見ておいた地図と波動で感じ取れる地形を照らし合わせて皆を案内する。

 

 

 

チェックインは凄くあっさり終わった。

皆でホテルに入って荷ほどきする。

エキスポに行く5人はここでコスチュームに着替えてしまう。

なんとエキスポ内はコスチューム着用可になっているのだ。学生でも着てていいらしい。

まぁヒーローコスチュームを着て歩いてもらうことで犯罪抑止効果を期待しているんだろう。

だから学校に申請してコスチュームを持ちだしてきていたのだ。

 

着替えが終わったところで三奈ちゃん、梅雨ちゃんと別れる。

 

「ケロ、じゃあ楽しんできてね」

 

「明日は一緒に周ろうね~!」

 

梅雨ちゃんは寂しそうに、三奈ちゃんには涙ながらに手を振られる。

2人は今日はエキスポ以外のところを周ってみるらしい。寂しくはあるけど、招待状が足りないものは仕方がない。

 

 

 

私たち5人は予定通りエキスポに入った。

どこに行くか皆で相談して、まずサポートアイテムが展示されているパビリオンを見てみることになった。

 

サポートアイテムのパビリオンは、飛行機型の乗り物である多目的ビークルや潜水スーツ、多数のセンサーが搭載されたゴーグルとか、多くの興味を惹かれるものが置かれていた。

 

「お?ねーねー瑠璃ちゃーん!こっちこっち!」

 

透ちゃんが手をぶんぶん振って私を呼んでくる。

近くにいた皆と一緒に近づくと、そこにはいくつかのゴーグルが展示されていた。

 

「波動が見えるようになるゴーグルだって!」

 

「おぉ!てことは、波動が見てる視界が見えるようになるゴーグルってこと?」

 

「こんなゴーグル……あるんだ……」

 

説明を見てみると、どうやら気や波動の研究の過程で作られたゴーグルらしい。

今後の武術の発展のために、みたいな感じの目的のようだ。

 

ちょっと興味を持ったから試しに着けてみる。

すると、普段見えている波動に重なって、一回り小さくぼんやり薄い波動っぽいなにかが見えた。

私の個性よりも大分不鮮明だけど、確かに波動が見えているみたいだ。

波動が被って見づらいから、私は早々に外してしまう。

皆も試しに着けてみているようだった。

 

「わぁ!これ着けてると透ちゃんどこにいるかすぐ分かるね!」

 

「本当!?どーだぁ!!」

 

お茶子ちゃんがゴーグルをつけて透ちゃんを見ている。

まあ今の透ちゃんは透明のボディスーツを着てるから、肉眼では手袋とブーツにしか見えないし、見たくなるのも当然か。

透ちゃんもノリノリでポーズを決めてるし。

普段波動が見えない人が、ぼんやりとはいえ波動が見えると楽しいのかもしれない。

透ちゃんも見られているという状況に楽しそうにしている。

 

「これが波動さんには常に見えているんですね」

 

「ん……でもこれ……だいぶぼんやりしてるし……ちっちゃく見える……私には……もっと鮮明に見えてるよ……」

 

「あ、やっぱりそうなんだ。流石にこのぼんやりじゃいつもの予測とかできないよね」

 

このゴーグルだと、多分透ちゃんもぼんやりと輪郭が見える程度でしかないと思う。

でもこのゴーグルがあれば透明人間を看破できるし、そういう目的の為なら凄いゴーグルなのかもしれない。

私には必要がないものだけど。

 

「ていうかこれで見てるとよく分かるけど、波動だけ周りの波動が多いよね。なんか纏ってるぼんやりが多い」

 

「それは……私が小さいころから……自分の波動を使ってるから……増えたんだ思う……」

 

「なるほど。鍛錬の賜物というわけですね」

 

そんな感じで一通り皆で波動を見るのを楽しんでから、ゴーグルを元の場所に戻した。

 

そのまま皆で物色しながら見物していく。

そんな風に周っている最中に、お茶子ちゃんが呟いた。

 

「そういえばプロヒーロー、すごく多いよね」

 

確かにヒーローがすごく多い。

ミルコさんにも招待状を出してたくらいだし、多くのヒーローを招待していたんだろう。

 

「ミルコにも招待出してるくらいだし、色んな人に招待状出してるんじゃない?」

 

「見ただけだと誰か分からないヒーローも居ますわね……」

 

「デクくんがいたら解説してくれそうなんだけどなぁ」

 

「あはは、緑谷がいたらずっといつものアレやってそうだよね」

 

お茶子ちゃんが笑顔で緑谷くんのことを話題に出し始めた。

というよりも……

 

「緑谷くん……いるよ……?」

 

「へ?」

 

「何?緑谷も来てるの?」

 

「ん……範囲内だと……緑谷くん以外にも……飯田くん、上鳴くん、峰田くん、爆豪くん、切島くん、轟くんがいる……他の男子も……エキスポの外にならいる……」

 

私の返答に皆がぎょっとする。

 

「皆来てるじゃん!」

 

「そんなに来てたの!?」

 

「合流……してみる……?一番近いの……緑谷くんだけど……」

 

提案してすぐに、透ちゃんとお茶子ちゃんがすごい乗り気な感じになった。

私含めた他の皆も特に嫌なわけじゃないし、ひとまず近くにいる緑谷くんと合流してみることにして、そっちに向かい始めた。

 

 

 

皆を誘導して、緑谷くんがいる建物に入る。

そして視界に緑谷くんが入った瞬間、お茶子ちゃんが固まった。

 

「え!?ちょっ、緑谷くん、すっごい美人さんと一緒なんだけど!?」

 

声を抑えながら透ちゃんが驚きを露わにする。

透ちゃんは手袋とブーツを投げ捨てて、そのまま気配を消しながら凄い勢いで緑谷くんに近づいていった。

透ちゃんの言葉通り、緑谷くんは背が高く胸も大きい金髪の美人さんと一緒に居たのだ。

どこで知り合ったんだろう。

響香ちゃんなんて気になったのか地面にイヤホンジャックを刺して盗み聞きしてるし。

 

少しして再起動したお茶子ちゃんは、ゆっくりと緑谷くんの方に近寄っていった。

私たちもそれに続いて、静かに近づいていく。

 

「デクくん、本当にマイトおじさまが大好きなのね。さっきはすごい勢いでびっくりしちゃった」

 

「あっ!すいません、つい、その……クセで……」

 

金髪の美人さんの言葉に、緑谷くんが照れている。

なんだこれは。カップルにしか見えないんだけど。

それに、わざわざ"デクくん"って呼ばせてるのか。

耐えきれなくなったのか、お茶子ちゃんが平坦な笑顔で声をかけた。

 

「楽しそうやね、デクくん」

 

「う、麗日さん!?どうしてここに?」

 

飛び上がる程驚いた緑谷くんが、気まずそうな表情でお茶子ちゃんに声をかけた。

浮気がバレた夫みたいな状況になっている。

 

「楽しそうやね」

 

『2回言った!?』

 

そこで百ちゃんが「コホン」と咳払いをしたことで、緑谷くんは私たちに気が付いた。

 

「八百万さん!」

 

「とっても楽しそうでしたわ」

 

「緑谷、聞いちゃった」

 

「私も……感知しちゃった……」

 

「耳郎さんに波動さん!?」

 

驚きっぱなしの緑谷くんの背後に、さらに透ちゃんが近づいていく。

 

「わっ!!!」

 

「ひぃっ!?」

 

緑谷くんが比喩ではなく飛び上がって驚いた。

というか相変わらず驚かせるの好きだね透ちゃん……

 

「私も見ちゃった!!」

 

「葉隠さんまで!?」

 

私以外の4人は詮索するような視線を緑谷くんに向け続けている。

 

「お友達?」

 

「学校のクラスメイトで……何か誤解しているみたいで」

 

私はもう大体納得したから問題ないけど、さっきのは誤解されても仕方ないと思う。

その実態は相変わらず贔屓全開のオールマイトに付き添ってきた緑谷くんを、オールマイトの親友の娘さんが案内しているなんていう状況みたいだった。

 

「あ、あの、僕はメリッサさんに会場の案内をしてもらってるだけで……」

 

誤解を解きたいのか、緑谷くんは必死で説明しようとしている。

そんな緑谷くんに、隣にいるメリッサさんが助け舟を出した。

 

「そうなの。私のパパとマイトおじさまが……」

 

「わ~~~~!」

 

緑谷くんが慌ててメリッサさんの言葉を遮る。

そのままコソコソ隠れて話し始めた。

そんなに隠したいんだろうか。

オールマイトに贔屓されていることはもう周知の事実なんだから、今更だと思うんだけど。

 

……それにしても、お茶子ちゃんがちょっと怖い。

2人でひそひそ話している緑谷くんの後姿をじーっと見つめている。

まあ見てるのは皆もなんだけど、お茶子ちゃんだけ雰囲気が違う。

どんどん誤解が深まっていってる。

 

「良かったら、カフェでお茶しません?」

 

そんな感じで待っていたら、内緒話が終わったメリッサさんが振り返って、そう提案してきた。

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