波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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I・エキスポ(後)

私たちはメリッサさんの誘いに乗って、エキスポ内のオープンスペースのカフェで話していた。

 

「へぇ~!お茶子さんたち、プロヒーローと一緒にヒーロー活動したことあるんだ!」

 

「訓練やパトロールくらいですけど」

 

お茶子ちゃんが感心した様子のメリッサさんに答える。

 

「ウチは事件に関わったけど、避難誘導したくらいで……」

 

「私もパトロールに着いていかせてもらったくらいだったな~」

 

「それでも凄いわ!」

 

「私も……パトロールに着いていったくらい……あとは……ひったくりを捕まえた……」

 

「すごい!事件の解決もしたのね!」

 

「私はなぜかテレビCMに出演する羽目に……」

 

「普通じゃできない事ね。素敵!」

 

シュンと落ち込む百ちゃんも含めて、メリッサさんは全員に笑顔を向けてコメントしていた。

メリッサさん、聞き上手だ。

 

私たちが話している隣のテーブルで、緑谷くんがぐったりしている。

どうやら誤解を解けたことに安堵しているようだった。

 

「明日、アカデミーの作品展示してるパビリオンにも行く予定なんです」

 

「すごい楽しみ!」

 

「ん……楽しみ……」

 

「メリッサさんの作品も?」

 

「ええ、もちろん」

 

「わー!見てみたいです!」

 

私たちがメリッサさんと話していると、上鳴くんと峰田くんの波動が近づいてきた。

 

「お待たせしました」

 

「その声……か、上鳴くん!と、峰田くん!」

 

そちらに目を向けると、ウェイター姿の上鳴くんと峰田くんがいた。

 

「あんたら何してんの?」

 

響香ちゃんが驚いて質問する。

だけどこの2人の目的なんて、お金といつものしか思い浮かばない。

というか、ブドウ頭の思考が実際にそれだし。

 

「エキスポの間だけ臨時バイトを募集してたから応募したんだよ。な」

 

「休み時間にエキスポ見学できるし、給料もらえるし、来場した可愛い女の子とステキな出会いがあるかもしれないしな!」

 

いつもの邪な妄想をしながらの視線は、私たちを順番に見た後、メリッサさんで止まった。

メリッサさんはきょとんとしてしまっているけど、ロックオンされてしまったようだ。

ブドウ頭と上鳴くん、バイト中の癖に下心丸出しで本当に何をしに来たんだ。

 

「おい緑谷、あんな美人とどこで知り合ったんだよ!?」

 

「紹介しろ、紹介!」

 

「いや、あの……」

 

緑谷くんは困惑して特に答えたりしていない。

メリッサさんも彼らの危険性を理解しきれていないのか、「彼らも雄英生?」なんて呑気にこっちに質問してきている。

その質問を耳聡く聞きつけた2人が、素早い動きでこっちに来た。

 

「そうです!」

 

「ヒーロー志望です!」

 

バッとかっこつけているけど、鼻息荒いし目が血走っている。

それにここまでがっつかれると正直恐怖と嫌悪感しかない。

そう思っていたら、飯田くんが凄まじい速度で走ってきた。

 

「なにを油を売っているんだ!?バイトを引き受けた以上、労働に励みたまえ!!」

 

その姿を確認した2人は、プールの時の恐怖が残っているのか「ぎゃ~!!」なんて情けない悲鳴を上げていた。

自業自得だ。

どうやら飯田くんはあの2人を監視していたようだった。

委員長としての使命感からの行動みたいだけど、流石飯田くんと言わざるを得ない。

 

「い、飯田くん!」

 

「瑠璃ちゃんも言ってたけど、来てたんだね!」

 

「うちはヒーロー一家だからね。I・エキスポから招待状を頂いたんだ。家族は予定があって、来たのは俺一人だが……」

 

「飯田さんもですの?私も父がI・エキスポのスポンサー企業の株を持っているものですから、招待状を頂きましたの」

 

百ちゃんが奇遇だと言わんばかりに説明する。

お茶子ちゃんも流石にもう聞いているネタでいつもの卒倒はしないらしい。普通に流していた。

 

「で、ヤオモモの招待状が2枚余ってて、波動がミルコからもらった招待状でも同伴者ОKだったから……」

 

「真剣勝負の結果、私たちが一緒に行くことになったんだよ!」

 

響香ちゃんがお茶子ちゃんと透ちゃんの肩に腕を乗せてニッと笑う。

透ちゃんもそれに合わせてにんまり笑っている。

私以外には分からないだろうけど。

 

「波動さん、ミルコに招待状もらったんだ」

 

「ん……ミルコさん……興味ないからいらないって……私がもらわないなら捨てるって言ってた……」

 

「な、なるほど」

 

緑谷くんに確かめるように聞かれて、女子にしていたのと同じような説明を返す。

緑谷くんの中のミルコ像とも大きなずれはなかったんだろう。すぐに納得してもらえた。

 

「でも、他の女子もこの島には来てるんよ」

 

「そうなんだ」

 

「ん……明日からの一般公開で……皆で見学する……」

 

私のその言葉に、メリッサさんが反応した。

 

「よければ、私が案内しましょうか?」

 

「いいんですか……?」

 

「うん!」

 

「「やったー!」」

 

透ちゃんとお茶子ちゃんが大喜びしている。

なんか便乗して「俺たちも」とか言おうとしているブドウ頭と上鳴くんがいるけど、バイトをしているのを忘れているんだろうか。

 

 

 

その後、爆音を聞きつけた私たちはお茶会を中止して、音がしたアトラクションのようなところに向かった。

 

アトラクションで爆音を立てていたのは切島くんだったらしい。

その後も、爆豪くんが続けて挑戦しているようだ。

いつも通り「死ねぇ!」と叫びながら行われる爆破で、爆豪くんは1位に輝いた。

 

爆豪くんの挑戦が終わって、切島くんが周囲を見たことで私たちが来ていることに気が付いたようだった。

 

「あれ?あそこにいるの緑谷じゃね?」

 

切島くんのその声を聞いた瞬間、引きつった笑いをする緑谷くんの目の前の手すりまで爆豪くんが吹き飛んできた。

 

「なんでテメーがここにいるんだぁ!?」

 

「や、やめようよ、かっちゃん。人が見てるから」

 

「だからなんだっつーんだ!」

 

爆豪くんがいつも通り緑谷くんにガンを飛ばす。

飯田くんが止めに入っても騒ぎ続けている爆豪くんを見て、メリッサさんが声をかけてきた。

 

「あの子、どうして怒ってるの?」

 

「いつものことです……」

 

「男の因縁ってヤツです」

 

「お茶子ちゃん……そういうの好きだよね……」

 

呆れたように答える響香ちゃんを尻目に、お茶子ちゃんが真剣な表情で返す。

お茶子ちゃんは相変わらずみたいだ。

 

そんな騒動を尻目に、百ちゃんが切島くんに声をかけた。

 

「切島さんたちもエキスポへ招待受けたんですの?」

 

「いや、招待されたのは体育祭で優勝した爆豪。俺はその付き添い。なに、これから皆でアレ挑戦すんの?」

 

そんな切島くんの言葉を聞いて、また爆豪くんに火が付いた。

 

「やるだけ無駄だ!俺の方が上に決まってんだからな!」

 

「うん、そうだね、うん」

 

……緑谷くん、明らかに受け流そうとしてるな。

 

「でも、やってみなきゃ分からないんじゃないかな」

 

「ん……緑谷くんなら……どうなるか分からない……」

 

「うん、そうだね……って」

 

私とお茶子ちゃんの言葉に、緑谷くんが無意識で同意した。

爆豪くんはそれを聞いて大爆発してしまった。

 

「だったら早よ出て、ミジメな結果だしてこいや!!クソナードがぁ!!」

 

「は、はいっ!」

 

 

 

あの後、緑谷くんもアトラクションに挑戦して、爆豪くんに1秒負けという結果だった。

もう緑谷くんは戻ってきていて、お茶子ちゃんと飯田くんと話している。

 

「緑谷くんすごかったね!」

 

「ん……でもこの後……もっとすごいの見れる……」

 

「え?どういうこと?」

 

透ちゃんが疑問の声を上げた瞬間、アトラクションが凍り付いた。

MCの女の人も大盛り上がりだ。

 

「あー、なるほど。轟くんかぁ」

 

「ん……結局こういうのは……大規模攻撃できる人が強い……」

 

「まぁ確かにそうかもね。私じゃどう足掻いても勝ち目ないや!」

 

透ちゃんがあっけらかんと言い切る。

まあ透明化の個性でこのアトラクションを速攻でクリアするのはどう考えても困難だから、納得ではあるけど。

 

 

 

あれ?

今、メイン通りの脇にある埠頭の倉庫の方に……確かに強い悪意を感じたけど……

自分の感覚を信じてそのあたりの波動を注視してみる。

やっぱりそうだ。これ、ごろつきとかが持つレベルの悪意じゃない。ヴィランだ。

しかも、ボスっぽい男の足元に警備員と思われる人が倒れて気絶している。

ボスのような男の思考は『この島にオールマイトが……』なんていう物になっていて、明らかにオールマイトを警戒している。

これ、もう事件が起きている。

 

「……あの……メリッサさん……」

 

「あら、何かしら?」

 

「えっと……I・アイランドに……ヴィランが入りこむ余地って……ありますか……?」

 

「え?それは、無理だと思うけど……入国審査はあなたたちも受けたでしょ?」

 

「……そう……ですね……」

 

メリッサさんは困惑した様子で質問に答えてくれる。

そんな私の様子に違和感を持ったのか透ちゃんが質問してきた。

 

「瑠璃ちゃん、何か見たの?」

 

ここで騒ぎを起こしてヴィランが自棄になっても面倒だ。

小さな声で透ちゃんの質問に答える。

 

「ん……多分……ヴィランだと思う……足元に警備員も倒れてる……倉庫を制圧したみたいだけど……それ以外の行動はまだ……」

 

「それ本当!?」

 

「結構な人数だと思う……どうやって入ったのか分からない……」

 

「そ、そうだよね。あのセキュリティを突破するなんて……」

 

私たちがコソコソ話していると、メリッサさんが訝し気にしている。

だけど、今思考を読んで分かった。

メリッサさんは今、ヴィランが侵入できる可能性を思い浮かべていた。

『内通者がいれば不可能ではないかもしれない』という考えを。

 

この状況で頼るべき人は、オールマイト以外いないだろう。

オールマイトは今感知範囲外だ。どこにいるのか教えてもらう必要がある。

 

「緑谷くん……ちょっといい……?」

 

「波動さん?どうしたの?」

 

「ん……ちょっと聞きたいことがあって……オールマイト……今どこにいるの……?」

 

「うえ!?きゅ、急にどうしたの!?なんで僕にオールマイトのことを聞くのかな!?」

 

緑谷くんはおどおどしながら誤魔化した。

だけど、メリッサさんとのあんなやり取りを目の前で見せているのに、なんで気づかれていないと思えるんだろう。

 

「オールマイトと来てるの……見てれば分かる……良いから教えて……」

 

「……えっと、オールマイトとはセントラルタワーで別れたけど……」

 

「ん……ありがと……」

 

「え!?それだけ!?波動さん!?」

 

緑谷くんが何か言ってるけど時間がない。

早々に行動を開始するべきだ。

 

「透ちゃん……一緒に来てもらっても……いい……?」

 

「それはもちろんだけど……どうするつもり……?」

 

透ちゃんが不安そうな顔で聞いてくる。だけど、やることなんて1つだけだ。

 

「オールマイトに……伝える……」

 

「あ、なるほど!オールマイトが来てるならそれが一番だね!」

 

「ん……それで……無駄な混乱を起こしたくないから……一緒に遊びに行く体で……抜け出したい……」

 

「うん!もちろん!」

 

透ちゃんも同意してくれて方針が決まったから、百ちゃんに声をかける。

 

「百ちゃん……ちょっといい……?」

 

「あら、どうかしましたか?」

 

「透ちゃんと……ちょっとあっちの方を……見に行きたくて……」

 

「そうそう!少し見たら戻ってくるから!ちょっと抜けるよって声掛けにきた!」

 

「ああ、そういうことですの。もちろん大丈夫ですよ。合流は……波動さんがいるなら大丈夫ですね」

 

「ん……満足したら……合流するね……」

 

特に疑問とかもなく、あっさりと送り出してくれた。

私と透ちゃんはそのままセントラルタワーに向かう。

まだヴィランたちに動きはない。

思考を読む限り、行動開始は夜、レセプションパーティーの時のようだ。

私はヴィランの監視をしつつ、内通者の可能性がある人間を探しながら進んだ。




I・アイランドは直径14km。
各ブロックが大体直径の1/3~4程度の直径。
つまり1ブロック直径4km程度ですね。
で、瑠璃の感知範囲は半径1km、直径2kmです。これがエキスポのあるブロックを感知しながら歩き回っているわけです。
小説にてヴィランが潜伏していた場所は"エキスポのメイン通りから外れた埠頭にある倉庫"と描写されています。エキスポと書かれるということは、同じブロックにあるということですね。
この状況で瑠璃がいてヴィランを察知できないのはおかしくないか……?ということで早期発見ルートになりました。
セントラルタワーはブロックが違うので流石に範囲外になります。
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