波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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温泉

ご飯を食べ終わって皆で一通り食器を片付けたら、お風呂の時間になった。

先に着いていたA組が先で、B組が後だ。

 

「わぁ~~!!」

 

「温泉だぁ~!」

 

案内されたお風呂は、なんと露天風呂の温泉だった。

合宿所にされているだけあって7人で入るには明らかに大きすぎる温泉。

これならわざわざB組と分けなくても一緒に入れそうな広さだ。

というか同じくらいの大きさの露天風呂に、13人の男子の方は一度に入れているんだから、B組と合わせても14人しかいない女子なら間違いなく一緒に入れるだろう。

 

ただ一つ心配なことは、男子と女子の露天風呂を隔てているのが厚めの壁1枚しかないことだ。

しかも男子と女子で入浴の時間がずらされていない。うちのクラスに性欲の権化がいることを考えると、非常に危険だと言わざるを得ない。

 

マンダレイの思考からして相澤先生が事前にブドウ頭の存在を知らせてくれていたっぽいから、対策してくれていることに期待するしかない。

 

とりあえずブドウ頭も今は変な行動をしていないから、普通に入浴することにする。

 

「はふぅ……」

 

「気持ちいいねぇ……」

 

身体と髪をしっかりと洗い終わってから透ちゃんと一緒に温泉に浸かる。

疲れていた身体に染みるような熱めのお湯の気持ちよさに、思わずため息を吐いてしまう。

だけど透ちゃん、こうなるとは思っていたけど身体のラインに沿って温泉のお湯が無くなっている。

スタイルまるわかりだし、胸の形もはっきりと分かってしまう。

やっぱりブドウ頭の覗きをどうにかして、透ちゃんを覗きの被害から守らないと……

 

「まさか合宿で温泉に入れるなんて思とらんかった……」

 

「ね~」

 

皆も温泉に浸かりながら気持ちよさに目を蕩けさせている。

響香ちゃんもリラックスはしているけど、若干暗い波動を背負っている。

相変わらずコンプレックスを刺激されているみたいだ。

私に対しても暗い感情が向いていることがある。

だけどそういう意味では私も、日々皆を見上げているせいでコンプレックスを刺激され続けているんだけど、隣の芝生は青く見えるということなんだろう。

 

お風呂で伸びていると、三奈ちゃんがぼんやりとしながら話を振ってきた。

 

「それにしても、今日は大変だったねぇ……」

 

「ん……まさか……6時間も戦いながら歩かされるなんて……思わなかった……」

 

「6時間で済んだのも、波動さんや耳郎さんたち索敵班のおかげですわ。索敵班がいなかったら1日かけても到着出来ていたか分かりません」

 

「確かにねぇ」

 

百ちゃんが私たち索敵班を持ち上げて褒めてくれる。

魔獣を追い払い続けてくれた皆のおかげで感知に集中できたんだから、皆の努力の成果だと思う。

 

「皆が感知に……集中させてくれたおかげ……」

 

「そうそう。ウチらだけじゃ魔獣に襲われながら感知なんてできないし」

 

「ん……適材適所……」

 

響香ちゃんも同じ考えだったようで、皆のおかげだと言葉を返す。

お互いに褒め合う和やかな空気になって皆で笑いながら話を続ける。

 

「私たちも大変だったけど、B組の方も大変だったらしいね」

 

「ケロ、確か虎さんに襲われながら森を抜けたって言ってたかしら」

 

私たちの方が数による暴力だとしたら、B組の方は質による暴力だったらしい。

私たちの方にいなかったプッシーキャッツの残りの2人、ラグドールと虎による連携プレーでスパルタ指導をされていたらしい。

なんでも、森を抜けるまでの間、常に虎さんに襲われ続けていたとかなんとか。

あの巨体で筋肉ムキムキのプロヒーローに襲われ続ける。

考えただけでも大変なことがよく分かる。

 

 

 

そんな感じで話していると、ついにその時が来てしまった。

今、あのブドウ頭が、女子と男子の露天風呂の間の壁の前で仁王立ちしている。

壁の中は空洞になっていて、その中に洸汰くんが待機しているみたいだ。

洸汰くんがマンダレイの用意したブドウ頭対策なんだろう。

 

「……あー、瑠璃ちゃん、もしかして……」

 

私の表情の変化から、透ちゃんも何があったのか気が付いたらしく表情を曇らせる。

 

「ん……もう時間の問題……小さな騎士様が……待機してるけど……成功するか分からない……お湯につかったまま……身体を隠しておいた方がいい……」

 

「小さな騎士様?」

 

皆も私の発言でこれから起こることを察して、またかといった感じで表情を曇らせた。

洸汰くんのことをちょっとぼかして伝えたせいで皆疑問符を浮かべてしまっているけど、身体は隠してくれた。

本当に何なんだあのブドウ頭。楽しかったのに台無しだ。

女子皆が静かになって備え始めたことで、隣の男湯の方の声が聞こえてくる。

 

「飯とかはね……ぶっちゃけどうでもいいんスよ。求められてんのってそこじゃないんスよ。その辺、分かってるんスよオイラぁ……求められてんのはこの壁の向こうなんスよ……」

 

「一人で何言ってんの峰田くん……」

 

緑谷くんがブドウ頭の異変に気が付いたみたいだ。そのまま全力で止めてもらいたい。

 

「ホラ……いるんスよ……今日日男女の入浴時間ズラさないなんて事故……そう、もうこれは事故なんスよ……」

 

大体の男子はそのブドウ頭の発言に驚きつつも恥ずかしがるような反応を示している。

嬉しそうにブドウ頭に同調しかけている上鳴くんの私の中での株は、もともと低かったのにさらに急降下していく。

というか、このブドウ頭の存在そのものが私たちにとって交通事故のようなものだ。何言ってんだこいつという感想しか湧いてこない。

 

「峰田くんやめたまえ!君のしていることは己も女性陣も貶める恥ずべき行為だ!」

 

「やかましいんスよ……」

 

飯田くんも口と動きだけじゃなくて強引にでも止めて欲しい。

だけどそんな私の願いも空しく、飯田くんがブドウ頭に近づいて行くと彼は個性を使って一気に壁を登り始めた。

 

「壁とは超える為にある!!"Plus Ultra"!!」

 

「速っ!!」

 

「校訓を汚すんじゃないよ!!」

 

後一歩で覗かれてしまうというところで、洸汰くんがブドウ頭の目の前に顔を出した。

 

「ヒーロー以前に人としてのあれこれから学び直せ」

 

「くそガキィイイィイ!!?」

 

洸汰くんに突き落とされたブドウ頭は、飯田くんの顔面にお尻から落ちていった。

洸汰くんとマンダレイさんグッジョブだ。

覗きを未然に防いでくれたことに安心して身体を隠していた手を元の位置に戻す。

というか、ブドウ頭はヴィランになる一歩手前だったことに気が付いていないんだろうか。

覗きという立派な犯罪行為を個性を使って行うというのは、ヴィランになるということだ。覗きでヴィランになるなんて末代までの恥だと思うんだけど。

 

「やっぱり峰田ちゃんサイテーね」

 

「あれ……やってることは……完全にヴィラン……」

 

「小さな騎士様って洸汰くんのことかぁ」

 

「ありがと、洸汰くーん!」

 

三奈ちゃんの声掛けに洸汰くんがこちらを振り向く。

 

「わっ……!?あっ……」

 

それで、洸汰くんは私たちの裸をばっちり見てしまった。

正直小さい男の子に裸を見られたところで、少し恥ずかしいくらいでそこまで不快感はない。

だけど洸汰くんにとっては刺激が強すぎたらしい。

そのままぐらついてバランスを崩してしまった洸汰くんは、男湯の方に転落した。

 

「ちょっ!?洸汰くん!?」

 

「洸汰くん!?大丈夫!?」

 

転落した洸汰くんに皆驚いて声を上げる。

だけど洸汰くんは緑谷くんが速やかにキャッチして、救助してくれた。

 

「ん……洸汰くん……緑谷くんがキャッチした……怪我もなさそう……」

 

「よかったぁ」

 

「覗きを防いでくれたのに、そのせいで大怪我とかしたら申し訳なさすぎるもんね」

 

洸汰くんの無事を伝えると皆も安堵のため息を吐く。

だけどその後の行動が……緑谷くん、洸汰くんのために焦っていたのは分かるけど流石に全裸で女性の前に姿を現すのは……

 

「……緑谷くん……裸のまま洸汰くん抱えて……脱衣所出て……マンダレイさんの所に走っていった……凄い大胆……」

 

「マジ!?緑谷大胆すぎるでしょ!?」

 

「デクくんなんしとるんや……」

 

「流石にそれは……」

 

私が伝えた緑谷くんのあまりにも大胆すぎる行動に、三奈ちゃんは笑い飛ばし、他の女子は顔を真っ赤にして困惑してしまっている。

お茶子ちゃんなんか特に顕著で、緑谷くんの裸を想像してしまったのか耳まで真っ赤に染め上げていた。

 

 

 

その後、ブドウ頭が再起動して覗こうとするなんてこともなく、私たちは時間いっぱいまで温泉で温まってから部屋に戻った。

戻ってすぐに、自分の荷物から持ってきていた未開封のお菓子を取り出す。

 

「あれ、瑠璃ちゃんまた食べるの?」

 

「違う……これ、洸汰くんに……お礼としてあげようと思って……怖い思いもさせちゃったし……」

 

透ちゃんの質問に素直に答える。

 

「あぁ!そういうこと!じゃあこれもあげよ!」

 

「ケロ、いいわね。私のも持って行って」

 

「私飴しかないけど、それでも良ければ」

 

「私のもぜひ!」

 

透ちゃんも手持ちのお菓子の一部を提供してれる。

私たちのやり取りで気が付いた皆も少しずつお菓子を提供してくれて、結構な量になった。

小さなメッセージカードのようなものを作って簡単なお礼を書いて添えておく。

早速渡しに行こうと部屋を出ると、透ちゃんもついてきてくれた。

 

プッシーキャッツの事務所で気絶してしまっている洸汰くんの様子を見ていたマンダレイさんに声をかける。

 

「マンダレイさん……いいですか……?」

 

「あら、どうしたの?」

 

「これ……洸汰くんに……さっきのお礼です……」

 

渡された沢山のお菓子に、マンダレイさんも少し驚いたみたいだった。

 

「いいの?」

 

「はい!ぜひ貰ってください!」

 

「怖い思いも……させちゃったので……お詫びもかねて……」

 

「ふふ、ありがとう。洸汰にも伝えておくわね」

 

マンダレイさんは微笑んで受け取ってくれた。

私たちもそれで満足して部屋に戻る。明日は5:30に集合と言われているし、早く寝た方がいいだろう。

部屋に戻ってからしばらくして、洸汰くんが目を覚ましてマンダレイさんにお菓子を渡されたみたいだ。

洸汰くんからはちょっとの気恥ずかしさとヒーロー候補生にお菓子を貰う少しの嫌悪感、それに隠しきれない嬉しさをごちゃまぜにしたようななんとも言えない感情が読み取れた。

少なくとも嫌がっているだけじゃないみたいだし、嬉しさも感じてくれたみたいだからあげて良かったと思えた。

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