波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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カレー作り

訓練が終わる頃には午後4時になっていた。

 

「さぁ昨日言ったね"世話を焼くのは今日だけ"って!」

 

「己で食う飯くらい己でつくれ!!カレー!!」

 

そして昨日読心した通り、案の定自分たちで料理させられるらしい。

波動の使い過ぎで脱力感がすごいから正直つらい。

 

「「「イエッサ……」」」

 

訓練の内容は違っても皆も同じ状況みたいだった。

ぐったりとしながら了承の返事をしている。

だけど爆豪くんは本当にすごい。

思考の感じからするとすごく疲れてるはずなのに、それを一切態度に出さずポケットに手を突っ込んでいる。

 

「アハハハハ全員全身ブッチブチ!!だからって雑なネコマンマは作っちゃダメね!」

 

ラグドールさんが煽るように足をバタつかせながら「ハハハハハハハハハハ」とか爆笑している。

さっきまでの理性的な態度はどこに行ってしまったのかと言いたくなるほどの豹変っぷりだ。

……こっちがもともとの性格なのかな。

 

そんなやり取りをしていると、飯田くんがハッとしながら呟いた。

 

「確かに……災害時など避難先で消耗した人々の腹と心を満たすのも、救助の一環……流石雄英無駄がない!!世界一うまいカレーを作ろう、皆!!」

 

飯田くんの呼びかけに皆ぐったりしながらも応える。飯田くんのつぶやきを聞いて多少ではあるけどやる気を出したみたいだった。

相澤先生も『飯田、便利』なんて考えている。

多少そういう考えもあるんだろうけど、先生が最初から説明しなかった辺り単純に人手と時間が足りないのと、思い出作りの側面もありそうな気がする。

 

 

 

そしてカレー作りが始まった。

 

皆自分たちで出来る仕事を取っていって、役割分担も自然と決まっていく。

私は普段から料理をしていることもあって、カレーの味付けと煮込む作業をお願いされた。

梅雨ちゃんも普段から料理とかしてるはずなんだけど、彼女は率先して切る作業の方にいっていた。まあ切る作業も慣れてる人が監督した方が安全か。

私への指名は透ちゃんとお茶子ちゃんによるものだ。

砂藤くんも同じ役割だった。

 

「よろしく……砂藤くん……」

 

「おう、よろしくな。この役割指名されてたってことは、波動も普段から料理すんのか?」

 

「ん……私……お姉ちゃんと二人暮らし……料理は……私がすること多い……砂藤くんは……?」

 

「なるほどなぁ。俺は普段から菓子作りしてるんだ。糖分は買ってると高くてなぁ。節約も兼ねて。料理もある程度してるから、大丈夫だよ」

 

砂藤くんは個性の関係もあってお菓子作りを普段からしているらしい。

砂藤くんが作るお菓子、美味しいんだろうか。

普段から個性のために糖分を取っている砂藤くんが自分で作る納得のお菓子……食べてみたい。

きっとおいしいに違いない。糖分を取らないといけないから甘いものなのは間違いない。

 

「おい、波動?顔が緩みまくってんぞ……?」

 

「砂藤くんが作るお菓子……食べてみたい……」

 

「なっ!?い、いいけどよ。じゃあ、今度作って学校に持ってくるか?」

 

「ん……!ぜひ……!」

 

なんか砂藤くんが少しびっくりしている。

だけどそんなことは今はどうでもいい。

今度甘いお菓子を持ってきてくれるって言った。すごく楽しみ。

 

それはそれとして、カレーを作らなければ。

飯盒炊飯している人たちと一緒に火おこしをする。

まぁこれは轟くんに頼んでしまうのが早いか。

 

「轟くん……火、つけてもらってもいい……?」

 

「ああ、任せろ」

 

そう言って轟くんは粛々と火をつけてくれる。

氷と炎という個性の汎用性の高さは相変わらず凄い。

 

「轟ー!こっちも火ぃちょーだい」

 

三奈ちゃんも轟くんに火起こしを依頼していた。

まあ頼むとしたら他には百ちゃんくらいな気もするから当然か。

そんなことを考えていたら、上鳴くんが爆豪くんに声をかけていた。

 

「爆豪、爆発で火ぃつけれね?」

 

爆豪くんはやめた方がいいのでは……爆発で火を起こすのは力加減がすごく難しいと思うんだけど。

 

「つけれるわクソが!!」

 

そう言って爆豪くんは普通に爆発を起こして、竈を一個完全に破壊してしまった。

何をしているのか。

 

「皆さん!人の手を煩わせてばかりでは、火の起こし方も学べませんよ」

 

「火の……起こし方……?」

 

百ちゃんはそう言いつつチャッカマンを創造して火をつけている。

だけど百ちゃんのそれは火の起こし方を学んでいると言っていいのだろうか。

普通の火のつけ方ではないと思うけど。

 

「いや、いいよ」

 

轟くんも特に拒否することなんかもなく、三奈ちゃんが準備していた竈に火をつけた。

 

「わー!ありがとー!!」

 

「燃えろー--!燃やし尽くせー--!!」

 

「尽くしたらあかんよ」

 

お茶子ちゃんがぴょんぴょん跳びながら喜んで、三奈ちゃんもテンションを上げながら大喜びしている。

その一方で、轟くんは火を眺めながら考え込んでいた。

自分の火を眺めながら色々思うところがあるみたいだけど、悪い感情ではないしきっと大丈夫だろう。

 

とりあえず、百ちゃんとかがいっぱい食べるだろうし、沢山作ろう。

A組の分は私と砂藤くんで一つずつ鍋を担当することにした。

砂藤くんはリンゴジュースとか砂糖とかを準備している。甘めな感じで仕上げるつもりみたいだ。

というか、それどこから出したんだろう。まさかの自前?カレー作りを予想して準備してたとか?まあどうでもいいか。

隠し味にリンゴはよくあるし、ここでリンゴをすり下ろす手間を省いてリンゴジュースで代用するのは合理的ではある。

 

砂藤くんが甘めのカレーを作るなら、私は辛めにしたほうが皆の好みで選べるかな。

ルーは同じものしかないし、辛さを足すなら一味唐辛子とか鷹の爪とかが必要か。タバスコとかもあると酸味も足せて良さそうな気がする。

とりあえず出してくれている材料にはないし、聞いてみるか。

 

「ラグドールさん……いいですか……?」

 

「ん?何かあった?」

 

「ちょっと……隠し味に……使いたい材料があって……キッチンとかに……あるかなって……」

 

「ああ、そういうこと。いいわよ。あちきが案内してあげる」

 

私の申し出を受けて、ラグドールさんは快くキッチンに案内してくれた。

冷蔵庫や調味料の保管棚を漁って一味唐辛子とタバスコを発見した。これを使わせてもらおう。

ラグドールさんに確認して持ち出しを了承してもらってから、竈の方に戻る。

 

「あれ?瑠璃ちゃんどこ行ってたの?いないから心配しちゃったよ~」

 

切り終わった材料を持っている透ちゃんが声かけてきた。黙って持ち場を離れていたから心配させてしまったみたいだった。

 

「これ……借りてきた……」

 

「おおう、赤いね。辛めのカレー作るの?瑠璃ちゃんなら甘いの作るのかと思ってたけど」

 

私がもっている一味唐辛子とタバスコを見せると、透ちゃんは意外と言わんばかりの反応をしてくる。

まあ私が甘いものが好きなのはもう周知の事実だし、そう思われても仕方ないか。

そう思って私は説明のために砂藤くんの方を指さした。

透ちゃんも指さした方を見て、リンゴジュースや砂糖が置かれているのを見て納得したらしい。

 

「砂藤くんが……甘いの作ってくれるみたいだから……私は……辛いのを作って……選べるようにしようかなって……」

 

「なるほどね!確かにシュガーマンが甘いの担当の方が分かりやすいか!」

 

「ん……私も楽しみ……」

 

私たちの会話が聞こえていたのか、砂藤くんがちょっと恥ずかしそうにしている。

とりあえず私も作っちゃわないといけない。

透ちゃんが持ってきてくれた材料を順番に下ごしらえしていく。

 

洗い物を増やしちゃうのもあれだし、お鍋で全部作ろう。

まず玉ねぎを飴色になるまで炒める。電子レンジがあれば時短になるけど、キッチンまで行って使って戻ってくるなんて作業をするくらいならそんなに時間は変わらない。

その間にジャガイモのサイズが問題ないことを確認して透ちゃんに電子レンジで5分くらい加熱してきてもらう。

玉ねぎが出来たら一度玉ねぎをお鍋からだす。

次はお肉だ。お肉を鍋に入れる。

竈だから火加減の調節が細かくできないのが大変だけど、お肉の表面に焼き色が付くまで炒める。ワインがあるとお肉の臭みが消えていいんだけど、残念ながらなかった。

その辺りで透ちゃんがジャガイモを持って戻ってきた。

 

「瑠璃ちゃーん!おまたせー!」

 

「ん……ありがと……」

 

ちゃんと加熱されていることを確認する。問題なさそうだ。

お肉を炒めている鍋に人参を入れて一緒に炒める。

ここで最初の隠し味だ。

 

「砂藤くん……こっちにも砂糖貸して……」

 

「おお、いいぞ」

 

砂藤くんから砂糖を借りて少量入れて、一緒に一味唐辛子も入れて炒める。

 

「砂糖もいれるの?」

 

透ちゃんが不思議そうな顔をしながら聞いてくる。

というか、作業が終わった人が徐々に周りに集まってきててすごい見られている。少し恥ずかしい。

透ちゃんの質問には、砂藤くんが答えてくれた。

 

「ああ、辛さ出すのにもギャップがあると良かったりするんだよ。砂糖と唐辛子入れるのはいいな。最初に甘さと旨味が来て、後味でピリッと締めてくれる感じになるだろ」

 

「ん……そう……砂藤くん……詳しい……」

 

「は~、なるほどね~」

 

そんな感じで話ながら作業を進めていく。

鍋の中の人参にちゃんと火が通ったのを確認して、材料を入れていく。

水、飴色玉ねぎ、ローリエを鍋の中に投入する。

その後鍋を竈の端に移動させなるべく弱火になるようにする。

鍋の蓋を少し開けた状態で乗せて、適宜灰汁を取りつつ煮込む。

20分くらいたったところで一度鍋を火から上げて、カレールーを入れる。

カレールーが溶けたことを確認したらまた竈の端の方でじっくり煮込む。

ここで極少量のタバスコを入れておく。

味見をしてみると、悪くない味だ。

いい感じの辛さになっている。

 

「透ちゃんも味見……する……?」

 

「いいの!?するする!!」

 

私が使ったスプーンにお玉で少し移して食べさせてあげる。

 

「おー!おいしー!瑠璃ちゃん流石だねぇ!」

 

「な、なぁ!俺も味見していいか?」

 

「俺も俺も!」

 

「オイラも!!!!」

 

「ウチもいい?」

 

「ん……いいよ……ただし……男子は男子でスプーン持ってきて……」

 

私がそう言うと味見に立候補した男子がスプーンを取りに行く。

ブドウ頭が私たちが使ったスプーンを見ていたけど、使わせるわけがない。

響香ちゃんには私たちが使ったスプーンで問題ないことを確認してから、すぐに渡してあげた。

砂藤くんの方でも同じような味見イベントが起きているらしい。私も食べたいけど、出来上がるまで我慢しよう。

 

味見も終わって、最後にあらかじめ加熱しておいたジャガイモをいれたら熱々になるまで煮込んで完成だ。

 

 

 

「「「いただきまーす!」」」

 

皆で一斉に食べ始める。

 

「うめぇ!カレー自体もうめぇのにこの状況も相まってさらにうめー--!!」

 

切島くんが嬉しいことをいってくれながらカレーにがっつく。

というよりも、皆すごい勢いでカレーをかきこんでいる。それだけお腹が空いていたんだとは思うけど。

私も砂藤くん作の甘口カレーを食べている。

果物の風味と甘すぎないいい感じの甘い味付け、流石シュガーマン。いい味付けだ。後でレシピを聞いておこうかな。

 

「ヤオモモがっつくねー!」

 

「ええ。私の"個性"は脂質を様々な原子に変換して創造するので、沢山蓄える程沢山出せるのです」

 

三奈ちゃんの言葉に、百ちゃんはなんてことないように返す。

だけど百ちゃんの個性、食べないと使えないのは大変そうだけど、太らなそうなのは羨ましい。

私が太りにくくなるような個性を持っていたら甘いものを食べ続けていたかもしれない。

 

「……太らなそう……羨ましい……」

 

「ふふ、それも良く言われますわね」

 

そんな感じで話していると、緑谷くんが席を外した。

どうやら洸汰くんにカレーを持って行くらしい。

私のじゃなくてちゃんと砂藤くんのを持っていった。

これで私のを持って行こうとしてたら止めないといけなかったから良かった。

 

「波動の手作りカレー、めっちゃうめぇ!!」

 

峰田くんは私が作ったカレーがお気に召したみたいだけど、味よりも私が作ったということに価値を見出していてなんとも言えない気分になってしまう。

彼の場合女子が作っていれば誰の物でも同じような反応をしそうだ。

……峰田くん、響香ちゃんにだけは辛辣だし響香ちゃんだと分からないのかな?

まあどうでもいいか。

 

そして、私が密かに嬉しかったのは爆豪くんだ。

小さく「……うめぇ」とつぶやいたのを私は聞き逃さなかった。

爆豪くんは辛い物が好きみたいだけど、彼にもちゃんと美味しいと思ってもらえたならよかった。

皆に喜んでもらえて、私も砂藤くんの美味しい甘口カレーを食べられて大満足だ。

 

 

 

カレーを食べ終わったころ、マンダレイさんが話を切り出した。

 

「明日の夜は肉じゃがね」

 

「うおー!」

 

その言葉に、男子たちが異様な盛り上がりを見せている。

そんなに肉じゃがが嬉しいんだろうか。

どうせ自分たちで作ることになるの、分かってるのかな。

 

「お肉は豚肉と牛肉だから、A組とB組でどっちがいいか選んどいてね」

 

その言葉に、皆の間にざわめきが起きた。

 

「肉じゃがって豚肉だよな?」

 

「え、牛でしょ」

 

「地域によって変わる……どっちでもおいしいよ……」

 

別にどっちでも大丈夫だ。

地域によって使うお肉が変わるくらいだし。

うちは豚肉だったけど、牛肉のも普通に美味しく作れる。

 

私は傍観してたけど、皆は豚だ!牛だ!なんて感じで意見が分かれて、だんだん収拾がつかなくなってきた。

 

「それでは、今決めてしまおう!いいかい、拳藤くん!」

 

飯田くんが少し離れたところに座っていた拳藤さんに声をかけている。この騒ぎをどうにかしてくれるつもりみたいだ。

 

「あぁいいよ。じゃあ、じゃんけんで勝った方が選ぶってことで」

 

「異論ない。では……」

 

「ちょっと待った!」

 

クラス委員長同士がじゃんけんで決めてしまおうとしたところで、物間くんから待ったがかかった。

 

「ねえ、じゃんけんなんかで決めるのつまらないだろ。ここはきっちり勝負して決めた方がいいんじゃない?」

 

「は?別にじゃんけんでいいだろ」

 

拳藤さんがそう言うと、物間くんがハッと鼻で笑って憎きA組がって感じのいつものが始まってしまった。

相変わらず振る舞いが酷い。

 

「だから、別に憎くはないっつーの」

 

そのやり取りに思うところがあったのか、柳さんが物間くんに声をかけた。

 

「べつに豚でも牛でもどっちでもいい」

 

「ん」

 

「肉食えりゃ、俺もどっちでもいいぜ!」

 

その意見に、小大さんや鉄哲くんも同意する。

鉄哲くんの同意を皮切りに、他の男子も同意しだした。

切島くんなんかはその筆頭だ。今もサムズアップし合っている。

職場体験で男の友情を深めていたらしい。

 

その流れで、透ちゃんも物申した。

 

「ていうかさ、どうせ皆明日も味付けとかは、瑠璃ちゃんとか料理できる子に任せるつもりでしょ?だったら主体で作る人に決めてもらった方がよくない?そっちの方が美味しくできると思うけど」

 

「……一理ある……」

 

透ちゃんの意見は確かにその通りだ。

私はどっちでも作れるけど、B組がどっちかしか作ったことがない可能性もある。

 

「確かに!」

 

「こっちだと、波動と砂藤と梅雨ちゃんか?」

 

砂藤くんも困惑はしているけど、困っている様子はない。彼も肉じゃがは普通に作れるってことだろう。

爆豪くんも今日の感じだと作れると思うけど、名前すらあげられない。まあ喧嘩腰の彼は相談事に不適格だから当然か。

そんな感じで話がまとまりかけたところで、面白くないと思ったらしい物間くんが騒ぎ出した。

 

「ハァ!?肉じゃがには豚肉以外ありえないんだけど!?」

 

……物間くん、A組と勝負して勝ちたいだけだから、とりあえず難癖をつけて争いに持ち込もうとしてるな。

 

「……牛肉の肉じゃがなんて僕には想像もできないけど、今の意見に反論してないってことは、A組はどっちでもいいんだろう?ねぇ、爆豪くん」

 

「あぁ?」

 

物間くんが厭味ったらしい笑みを浮かべながら爆豪くんを煽る。

それを聞いた瞬間、私はすべてを諦めた。

これ、もう理性的な相談はできないよ。

 

「君は牛肉でもいいんだろ?勝負から逃げたA組を差し置いて食べる豚肉はきっとおいしいだろうなぁ!A組は牛肉の肉じゃがでも食べてればいいよ」

 

「……ふざけんな!!こっちだって豚肉だ!!」

 

凄く分かりやすい挑発だけど、こんなに煽られて爆豪くんが乗らないはずがない。

案の定乗せられてしまった爆豪くんも騒ぎ出した。

爆豪くんの"クソB組"発言で他のB組男子も怒り出してしまって、もう収拾がつかなくなった。

先生も止めるつもりはないみたいで、飯田くんの提案で腕相撲で決めることになってしまった。

こんなのに付き合うのも馬鹿らしくて、A組もB組も女子は早々に部屋に戻った。

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