波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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対峰田防衛戦線

昨日のブドウ頭の覗き未遂が問題になって、今日から男子と女子の入浴時間はずらされることになった。

男子が先で、その後に女子だ。

男子、女子の中での順番はA組が先でB組が後になっている。

男子たちは時間ギリギリまで騒いでいたけど、入浴時間を思い出したのかあがってから腕相撲大会をすることにしたらしい。

時間自体は女子の入浴時間を長めに取ってくれている。それは嬉しいけど、なんだか男子に申し訳ない。

一部男子、というか爆豪くんが面倒くさい決まりが出来てしまったことにキレてたけど、その矛先はブドウ頭に向いていた。

 

だけど、そんな決まりだけでは安心できない私たちは、男子にブドウ頭の厳重警戒を依頼してから入った。

飯田くんが代表して快く引き受けてくれた。

だけど、飯田くんは昨日もそうだったけど言い包められやすい。

私たちも男子に任せきりというわけじゃなくて、私たち自身でブドウ頭を親の敵かのように警戒して入浴した。

私と響香ちゃんが寝室にしたのと同じような対策を取ったのだ。

他の女子も隠しカメラとか、そういう類のものが隠されたりしていないか探すのに協力してくれた。

とりあえず安心だということを確認してから服を脱いで入浴を始めた。

私と響香ちゃんは適宜個性で周囲の警戒をしつつではあるけど。

 

「これだけ対策したんだもん。きっと大丈夫だよね」

 

「流石にもう大丈夫だと思いたいですわ」

 

「本当にね」

 

温泉に浸かりながら透ちゃんと百ちゃんと三奈ちゃんが揃って溜め息を漏らす。

三奈ちゃんとか結構ムッとしているし、せっかくの温泉を邪魔されていい加減イライラしてきているようだった。

 

「あのブドウ頭……合宿前に色々道具買ってた……どこかで使おうとするはず……」

 

「ブドウ頭て……間違うてはあらへんけど……」

 

私の発言にお茶子ちゃんも苦笑いをしながら突っ込んでくる。

 

「ブドウ頭は……ブドウ頭……それ以上でも以下でもない……」

 

「よっぽど怒ってるのね、瑠璃ちゃん」

 

「まああれだけやらかしてるんだから、被害者側のウチらから何言われても文句言えないでしょあいつ」

 

私のブドウ頭の呼称についてツッコミはあるけど、擁護はない。

皆もいい加減腹に据えかねるものがあるのだろう。

 

「バスに乗る前の感じからして……絶対にB組も覗こうとする……むしろ、本命はそっちかも……昨日、道具使ってなかったし……」

 

「……確かに」

 

「……あり得ますわね」

 

「うわ、じゃあ警戒してる私たちよりもB組の方が危ないんじゃない?」

 

というよりも、今のブドウ頭の思考がB組を覗くことに関してだから、今日が決行日だろう。

 

 

 

結局、私たちの入浴中はブドウ頭が行動を起こすこともなかった。

私たちが部屋に戻ってのんびりし始めた頃。

つまりB組の入浴時間になった頃、奴は行動を起こした。

どうやら腕相撲で飯田くん含めた他の男子の気が逸れたタイミングで抜け出したらしい。

飯田くん……こんなところで空回りを発揮しないでほしい……

 

「……はぁ」

 

「あー、もしかしなくても……」

 

透ちゃんが私の様子で全てを察したらしい。

溜め息だけで全てを察してくる透ちゃんはやっぱりおかしい。

 

「ん……あのブドウ頭……動き出した……拳藤さんたちに伝えに行く……」

 

「私も行く」

 

「流石にA組の恥はA組でどうにかしないといけませんわね……」

 

「……ウチも行くよ」

 

結局皆ついてきてくれることになった。

百ちゃんの言う通り、A組の恥はA組でなんとかしないと駄目だ。

こんなのでワイプシを頼るのも申し訳ないし、相澤先生たちも疲れてる上にこれから補習の監督もしないといけないのに申し訳なさすぎる。

 

拳藤さんたちは今、ちょうど温泉に向かっている。

私が先導して皆を拳藤さんたちのところまで案内する。

脱衣所に入ったところで、B組女子に追いついた。

皆まだ服を着ている。

 

「あれ、A組じゃん。どうしたの?忘れ物?」

 

拳藤さんが不思議そうに聞いてきた。

 

「警告……しにきた……」

 

「警告?」

 

「ん……あのブドウ頭……峰田くんが……覗きをしようとしてる……昨日私たち相手に失敗して……B組にターゲットを変えたみたい……」

 

「あぁ~、そういうこと……」

 

拳藤さんが頭痛を耐えるかのように頭を抑える。

 

「ありがとね、教えてくれて。で、その本人は今どこに?」

 

「女湯と男湯の間の壁の中……少しだけスペースがある……そこの鍵を……ピッキングして忍び込んでる……」

 

「うわ、ガチなやつじゃんそれ」

 

拳藤さん、というよりもB組女子全員がドン引きしている。

小大さんも何も口には出してないけど、嫌悪感がありありと伝わってくる。

 

「私たちで捕まえてきますわ。拳藤さんたちはここで少し待っていてくださいまし」

 

「ん……速やかに回収するから……任せて待ってて……」

 

私たちの提案はB組も特に異論はなかったみたいで、提案通り私たちで捕獲することになった。

さて、どう捕まえるかだけど、やはり挟み撃ちだろうか。

逃がさないために、女湯の壁側から何人か、壁の間の入り口に何人か、男湯の入り口に何人かが理想的かな。

そんなことを考えていると拳藤さんが声をかけてきた。

 

「ねぇ、どうせならさ、合宿中二度と同じことが出来ないくらい痛い目を見せた方が良くない?私たちも合宿中ずっと覗きに怯えたくないし、波動だってずっと警戒してるのは疲れるでしょ?」

 

「……一理ある」

 

確かに拳藤さんの言う通りかもしれない。

 

「よし!じゃあ協力するから、確実に確保して先生に引き渡そう!」

 

そんな感じで、B組と協力してブドウ頭を確保して先生に引き渡す方針になった。

話し合った結果、作戦は囮を使って釘付けにして油断したところを一気に確保することにした。

私が既にブドウ頭とドリルを使って開けた覗き穴の位置を把握しているから、A組は覗き穴から見えない所から穴に近づいておく。

B組は囮役として服を着たまま温泉に入っているかのような会話をすることになった。

もちろん服を着たままだったらすぐに気付かれてしまう。

だから、百ちゃんにドライアイスを出してもらって穴を煙で覆ってもらうことにした。温泉だし、興奮したブドウ頭なら容易く騙せるだろう。

そして油断して穴に張り付いてきたブドウ頭を皆で制裁する予定だ。

初手はもちろん響香ちゃんに任せる。

穴からの直接攻撃を受ければすぐ逃げることは難しくなるだろうし。

あとは流れで制裁だ。

 

 

 

あのブドウ頭、何が『最善の状態で最高のものを見るため』だ。地獄を見せてやる。

私がそう心に決めていると、百ちゃんがドライアイスを作って穴を煙で覆い、囮である拳藤さんたちが行動を始めた。

 

カラカラと扉が開く音に反応して、ブドウ頭は凄まじい速さで穴に張り付いた。

 

『このクソ湯気め……!!』

 

ブドウ頭のその思考に気づかれていないことを確信する。

地獄に堕ちろと言わんばかりに、ブドウ頭が湯気に対して呪詛を吐いている。

お前が地獄に堕ちろとしか思えない私は悪くないはずだ。

 

「あー、やっぱ露天っていいな」

 

「疲れが取れますわね」

 

「ん」

 

拳藤さん、塩崎さん、小大さんの声に反応して、ブドウ頭が興奮した顔をし始めていた。

 

「あれ?唯、背中に傷あるよ。ちょこっと」

 

「ん?」

 

「もしかして私のツルが当たってしまったから……申し訳ありません!」

 

「んーん」

 

「大丈夫だってさ」

 

小大さんは相変わらず「ん」しか言わない。

私も結構「ん」って言うけど、あそこまで徹底はしてない。

私も人のことは言えないけど、コミュニケーションとか大丈夫なんだろうか。

……拳藤さんが普通に意図を読み取れているあたり問題ないのか。

 

「茨って意外と胸あるよね」

 

「そうですか?」

 

「ん」

 

「揉むと大きくなるって本当かなー?よし、試しに揉んでみよ」

 

「あ、ちょっ……」

 

ブドウ頭を釘付けにするためだろうけど、内容が過激過ぎるんじゃないだろうか。

さっきからブドウ頭の思考が気持ち悪すぎてすごいことになってるんだけど。

『天国だ!パラダイスだ!』とか、『自分が女になって素知らぬ顔で加わりたい』なんて思考を皮切りに、すごい勢いで過ぎていく下劣な思考を感じ取ってしまってドン引きしか出来ない。

目の前に女体があるという理由で裸の妄想を我慢しているのも普通に気持ち悪い。

さらに言うとブドウ頭の表情がやばい。

血走った目を限界まで開いて、凄まじい量の涎を垂らしながら、荒い息遣いで壁に張り付いているのだ。

さらに煙をどけようとしているのか、顔を真っ赤にしながら何度も大きく息を吹きかけている。

生理的な嫌悪感しか感じない。

気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!

 

「波動も限界っぽいし、もういいでしょ」

 

私の顔色を同情したような表情で見ていた響香ちゃんがそう呟いて、穴にイヤホンジャックを突き刺した。

 

「うぎゃあああ!!」

 

爆音の心音を響かせられたはずなのに、ブドウ頭はふらふらとしながら逃げようとし始めた。

だけどそんなの予想の範疇だ。

三奈ちゃんも逃げようとした気配を感じたのか、すぐに穴に向けて酸を注入している。

 

穴から注入された酸は、壁を溶かしながらブドウ頭に降りかかった。

 

「ぎゃあああ!?」

 

壁が溶けたことでこちらが見えて、ようやくブドウ頭は状況を飲み込めたらしい。

 

「本当に、なぜこのような低俗なことを……」

 

「峰田くん、覗きはあかん!」

 

「……変態……気持ち悪い……最低……」

 

「いつか捕まるわよ、峰田ちゃん」

 

「あっ、ドリルとか持ってきてるよ!用意周到すぎっ!」

 

口々に文句を言いながら詰め寄る私たちに、ブドウ頭の顔がゆっくりと歪んでいって、あっという間に憤怒の表情になった。

 

「風呂場で服着てるなんざ、ルール違反だろうが!!!」

 

「……はぁ!?」

 

「……は?」

 

「オイラは旅番組の温泉で、バスタオルを使うタレントは認めねぇ派なんだよー!!!」

 

こんな状況になっても性欲を爆発させて宣う戯言に、皆の怒りに火が付いた。

 

「さいっ……てー!!」

 

「ルール違反はお前だ!!」

 

「あぁ!?なんならオイラが脱いで見本を見せてや―――」

 

その言葉を聞いて、私と拳藤さんが動き出したのは同時だった。

私は足で波動を圧縮放出して一気に距離を詰めつつ背後に周り、ブドウ頭に向かって両手で掌底突きしながら、手に圧縮していた波動を掌底から噴出する。

同時に拳藤さんは手を巨大化して、フルスイングでブドウ頭を打ちぬいた。

私と拳藤さんによる前後からの凄まじい衝撃に襲われたブドウ頭は、「ぶごっ!!」なんていう情けない声を漏らしながらあっさり気絶した。

 

 

 

百ちゃんに材料を出してもらって溶かした壁を補修してから、B組女子の皆には安心して温泉を楽しむように伝えて別れた。

ブドウ頭は簀巻きにして引きずって、相澤先生に引き渡した。

完全にキレた相澤先生も徹底的な制裁を約束してくれたから安心だ。

これでブドウ頭が懲りて覗きをしなくなると楽なんだけどななんて思いながら、皆で部屋に戻った。

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