波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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女子会(前)

私たちはあれから部屋に戻って来てのんびりくつろいでいた。

 

「うぇ~補習やだよ~」

 

三奈ちゃんが自分の布団でゴロゴロしながらそう零す。

三奈ちゃんはこれから補習があるし、考えたくないんだろう。

というか、朝5時30分集合でさらに夜中まで補習とかおかしなことをしている。

三奈ちゃんたち補習組はまともに寝れないんじゃないだろうか。

これが常識的な時間で終わるなら三奈ちゃんが戻ってくるまで起きて待っててもいいんだけど、2時終了予定とか言われると流石に待てそうにない。

絶対に寝てしまう。それくらい疲れている。

三奈ちゃんも待たなくていいとはっきりと遠慮していた。

 

「……ん?今、なんか聞こえた?」

 

布団に寝転がっている透ちゃんがそう切り出した。

 

「……男子の声っぽかったけど」

 

窓際で涼んでいた響香ちゃんが答える。

まぁ、今のは多分ブドウ頭だろう。

今彼は元女湯、現男湯で虎さんに地獄を見せられている。

どうやら制裁を中断して入浴していたワイプシが、ブドウ頭対策で男湯と女湯を入れ替えていたようだ。

案の定拘束を抜け出して覗きに行ったブドウ頭は、トラップに引っかかって虎さんに制裁されているというわけだ。

相澤先生の思考的に制裁はこれだけじゃないっぽいし、明日からは多分安心だろう。

 

「あ~、ご飯のとき、揉めてたもんね!B組と!」

 

「男ってアホだよなー……あ、でもさっきの、峰田の声っぽかったかも」

 

「ん……私も……そう思う……」

 

響香ちゃんもブドウ頭の声だと思ったらしい。

普段から声や音を聞いて感知している響香ちゃんが言うんだから、間違いないだろう。

 

峰田という単語を聞いて、三奈ちゃんがムッとしながら顔を上げた。

 

「おしおきでもされてんのかなっ?されちゃえばいいんだー!」

 

その表情は未だに怒りに染まっている。私も気持ちは分かる。

 

「ほんまやね!」

 

「一度痛い目に遭わないとわからないかもしれませんわね」

 

いつも基本的に制裁はしないで、困った表情をしたりちょっと嫌そうな顔をする程度に収めているお茶子ちゃんにすら言われるってよっぽどだ。

まぁあんな暴挙に出たらそう言われても仕方ないんだけど。

 

「もっと深く刺しときゃよかった」

 

「もっと酸の濃度、濃くしとけばよかった!」

 

「もっと強く……殴っとけばよかった……」

 

あんな性犯罪者、ただのヴィランなんだから制裁はされてしかるべきだ。

もっと痛い目にあわせるべきだった。

そうしたら私ももっとすっきりしたかもしれない。

 

「でも峰田ちゃんのことだから、そうそう変わらないと思うわ。今までだって痛い目に遭ったけど相変わらずだったもの」

 

「それは……そうかも……」

 

梅雨ちゃんの言葉に皆今までのブドウ頭の所業を思い浮かべる。

私も含めてその通りかもと思ってしまって、皆げんなりしてしまった。

 

「それでも、今回は他のクラスの女子にまで被害が及ぶところでしたわ……同じA組として恥ずかしい……」

 

ちょっと良くない雰囲気になってしまった。

皆の溜飲を下げるためにも、ブドウ頭の末路を教えておくか。

 

「ちなみに……ブドウ頭……今……痛い目にあってる……ワイプシの罠にかかって……虎さんのお風呂を覗いた……絶賛シバかれ中……さっきの悲鳴は……多分それ……」

 

「マジ!?」

 

「虎さんのお風呂覗くってどういう状況なんや……」

 

困惑したり盛り上がったりと方向性は違うけど、とりあえず暗い雰囲気ではなくなって一安心だ。

 

 

 

そのタイミングで、ドアをノックする音が部屋に響いた。

 

「拳藤だけど、ちょっといいかな」

 

波動的に、拳藤さん以外にも塩崎さんと小大さん、柳さんもいる。

寝転がっていた子も起き上がって、皆で顔を見合わせた。

代表して百ちゃんが対応を始める。

 

「ええ、もちろんですわ」

 

百ちゃんがドアを開けた。

その先には波動で感知したとおりの人たちがいた。

 

「さっきはありがとね、これお礼」

 

「お礼?」

 

「えーなになに?」

 

三奈ちゃんが興味をひかれたのか袋を覗き込む。

私以外は皆それに続いて覗きに行った。

私は見るまでもない。あれはお菓子だ。

クッキーとかチョコレートとかの色々なお菓子が詰まっている。

 

「お菓子だーっ!」

 

中身を確認した三奈ちゃんが嬉しそうに声を上げた。

 

「持ってきたお菓子の詰め合わせで悪いんだけどさ」

 

「でも何の……もしかして峰田さんの件ですか?それならばそんな必要ありませんわ!むしろ、ウチの峰田さんが大変なご迷惑をかけるところだったんですもの……!」

 

不思議そうにしていた百ちゃんがハッとして、母親みたいな言動で遠慮し始める。

まぁ確かにブドウ頭のせいだから、少し気が引ける。

私たちが洸汰くんにあげたお菓子の詰め合わせとは、ちょっと意味合いが変わってきてしまう。

 

「そんな気にすんなよ。結果的に大丈夫だったんだから」

 

「それに教えてくれたからこそ未然に防げたんだし」

 

「ん」

 

拳藤さん、柳さん、小大さんが順番に返答してくる。

小大さんも「ん」しか言ってないけど、言いたいことは同じみたいだ。

 

「これは私たちの感謝の気持ちです。ここに来られなかった取蔭さん、小森さん、角取さんも直接お礼を言いたかったと申しておりました。ですが、ブラド先生から今日の訓練の注意点があると呼び出されてしまいまして……」

 

「だからさ、これもらってよ。ほんの気持ち」

 

ブドウ頭のせいだから本当に気が引けるけど、B組女子は心から感謝してお礼としてお菓子をくれようとしている。

流石に遠慮し続けるのも失礼か。

 

「でも……」

 

百ちゃんも気が咎めるのか変わらず遠慮しようとし続けている。

だけど、そんな百ちゃんの代わりに、三奈ちゃんが袋を受け取った。

 

「それじゃ、ありがたく!」

 

「芦戸さんっ!?」

 

急な行動に、百ちゃんが戸惑ってしまっている。

 

「まーまー、ヤオモモ。せっかく持ってきてくれたんだし」

 

「そうよ、八百万ちゃん。気持ちを無下にするのはよくないわ」

 

「ん……このままだと堂々巡り……好意は受け取るべき……」

 

「でも、私たちは当たり前のことをしただけですし……」

 

私たちの説得を受けても、百ちゃんはためらい続けていた。

そんな百ちゃんに対して、透ちゃんが以前のように名案!とばかりに明るい表情で提案する。

 

「それじゃ、みんなで食べようよ!」

 

「えっ?」

 

皆が透ちゃんの顔があるであろう所に顔を向けた。

透ちゃん、すごくいい笑顔をしている。

 

「女子会しよー!女子会!せっかくだし!」

 

その提案に、皆も笑顔を浮かべた。

 

「さんせー!こういう機会もなかなかないしね!」

 

「まぁ……女子会……」

 

「え、ほんとにいいの?」

 

急に決まりつつある話の流れに、拳藤さんが困惑気味に聞いてくる。

拳藤さんは困惑してるけど、私は期待でワクワクしていた。

女子会。漫画や本、ゲームとかでは見たことがあるけど、実際にはやったことがない楽しそうな集まり。

私もやってみたい。

 

「もちろんよ。それに、男子たちも男子たちで集まってるみたいだし」

 

「ん……男子たち……まだ腕相撲大会してる……お肉、まだ決まってないみたい……」

 

「……じゃ、やっちゃう?女子会」

 

「ん」

 

「やっちゃうー!!」

 

そういうことで、女子会をすることになった。

 

 

 

乗りに乗って盛り上がった私たちは、自動販売機でジュースを買って、私たちA組もお菓子を提供して車座になってお菓子を囲んだ。

既に敷かれている布団がクッションのかわりだ。

 

準備が終わって乾杯をすると、百ちゃんが話を切り出した。

 

「……実は私、女子会初めてなんですけど……どういうことをするのが女子会なんでしょうか?」

 

「私も……初めて……本とかで読んだ知識しかない……実際は……どんな話するの……?」

 

私と百ちゃんは本当に初めての女子会だったから、2人で皆に聞いてみる。

 

「女子が集まって、なんか食べながら話すのが女子会なんじゃないの?」

 

なんてことないように三奈ちゃんが答えてくれたけど、それに対して透ちゃんがチッチッチッと指を振る。

 

「女子会といえば……恋バナでしょうがー!」

 

「そうだ、恋バナだ!女子会っぽい!」

 

「うわぁ〜」

 

「恋ねぇ」

 

「恋バナ……新鮮……」

 

恋バナの流れになって、皆のテンションが一気に上がった。

お茶子ちゃんや梅雨ちゃんも顔をほんのり赤らめている。

私もお茶子ちゃんと緑谷くんの話とかが気になる。すごく聞いてみたい。

 

「えー……」

 

「あー、そういうノリか」

 

乗り気じゃないのは響香ちゃんと拳藤さんくらいだ。

 

「こ、恋!?そんなっ、結婚前ですのに……!」

 

百ちゃんがずれた硬派な感じの感想を漏らす。内心は満更でもなさそうだけど。

 

「その通りですわ。そもそも結婚というのは神の御前での約束で……」

 

塩崎さんはシスターか何かなのだろうか。そんな感じの雰囲気だ。こっちもすごくお堅いことを言っている。

 

「鯉バナナ?」

 

「んーん」

 

柳さんと小大さんも特に反対しているわけでもないみたいで、結局話題は恋バナになった。

言い出しっぺの透ちゃんがそのまま仕切り始めた。

 

「それじゃ、付き合ってる人がいる人ー!」

 

皆ワクワクしたような目で周囲を見るけど、誰も手を上げない。

思考からして隠そうとしてる人もいないし、本当に誰も付き合ってる人はいないみたいだ。

そんな感じの沈黙が続いて、透ちゃんは愕然とした様子で言葉を続けた。

 

「……えっ、誰もいないの!?」

 

皆もワクワクした顔を引っ込めて周囲を確認するように見渡す。

何人かの子は危機感すら覚えているみたいだ。

どうやら世間一般では、女子高生というものは恋という青春を楽しむものらしい。

雄英にいるとそんな余裕は微塵もないけど。

 

「中学のときは受験勉強でそれどころじゃなかったけど、雄英に入ったら入ったで、それどころじゃないもんなー」

 

拳藤さんの言う通り、雄英ヒーロー科のカリキュラム的に単純に時間がないのだ。

週6日びっしり授業だし宿題も多いし演習もある。

そんな忙しい毎日の中で恋愛をする余裕がある人は早々いない。

 

「うわー、でも恋バナしたい!キュンキュンしたいよー!ね、もう片想いとかそういう雰囲気とかの話でもいいよね!」

 

三奈ちゃんが身を乗り出して皆を見回す。

どうやら一度そういう流れになったからには恋バナで盛り上がりたいらしい。

皆も異論はないみたいで、特に反論とかもなく周囲を見渡し始める。

そんな中、透ちゃんと三奈ちゃんが目をキラリと光らせながら私の方を見てきた。

あ、まずい、忘れてた。

 

透ちゃんと三奈ちゃんがキラキラした目で問いかけてくる。

 

「さぁ波動!キリキリ話そうか!!」

 

「瑠璃ちゃん!昨日は聞く余裕なかったけど今日こそ教えてもらうよ!」

 

2人のその発言で、全員の視線が私に向く。

やっぱり昨日の発言は迂闊だった。夜聞こうなんて考えていた2人が昨日何も聞いてこなかったから、安心してしまっていたのもある。

でも、申し訳ないけど、特に面白い話があるわけでもない。

 

「別に……話すこと……ない……」

 

私は否定するけど、火がついた2人がそんなことで納得するわけがなかった。

質問攻めにするつもりなのか、すごい勢いで詰め寄ってきた。

 

「何もないことはないでしょ!轟と普段から電話してるんでしょ!?」

 

「そうだよ!バスの中で言ってたよね!?」

 

透ちゃんも三奈ちゃんも、過去に類を見ないほどぐいぐい迫ってくる。

その内容に対して、皆まで反応し始めてしまっていた。

 

「電話かぁ」

 

「バスで何言ってたの?」

 

「瑠璃ちゃんがね!轟くんがハンドクラッシャーって言ってた時に、電話でも言ってたよねって言ってたの!普段から電話してないとこんな話にはならないでしょ!」

 

「それは確かにそうかも」

 

完全にヒートアップしていて、止め方が分からない。

好奇の視線に晒されて困ってしまう。

 

「別に……普段から電話してるわけじゃ……ない……」

 

「大丈夫だって!女の子だけの秘密だから!ね!言っちゃお!!」

 

「普段からしてないなら、いつ電話したの?」

 

響香ちゃんが聞いてくる。

いつ電話したかくらいは話してもいいかな。

飯田くんのこととか3人がステインとがっつり戦ったことを話さなければ大丈夫だよね。

 

「電話したのは……職場体験の時……ヒーロー殺しのことがあった……次の日……」

 

私がそれを言った途端、皆が色めき立った。

透ちゃんと三奈ちゃん以外の子も目をキラキラさせ始めた。なぜ……

思考に納得したけど、してしまった発言はもう取り消せない。これは私の回答が悪かった。確かに恋愛方面にこじつけようとしていたなら、こういう考え方にもなってしまうのかもしれない。

 

「なになに?怪我した轟が心配で電話しちゃったの!?」

 

「違う……あれ、違わない……?でも違う……!キャパオーバーで動けなくなって……!暇だったからかけただけ……!」

 

昨日から墓穴を掘り過ぎている。

今の答えも私が轟くんを心配して電話したこと自体は間違ってないから余計に勘繰られてしまっていた。

 

「手持ち無沙汰になって考える余裕が出来たら、いてもたってもいられなくなったってこと?」

 

「ち、違う……!そういう感情……ない……!」

 

私が強く否定しても、納得してくれる気配が全くない。

どうすればいいんだこんなの。今までこんな話を振られた経験なんてないから困ってしまう。

そんな時に、お茶子ちゃんが思い出したように呟いた。

 

「そう言えば、瑠璃ちゃん体育祭で轟くんにお姫様抱っこされとらんかった?」

 

その言葉で、私は録画で見た自分が轟くんにお姫様抱っこされている光景を思い出してちゃって、顔が一気に熱くなった。

そんな私の反応を見てさらに皆が盛り上がり始めた。

あれは轟くんがおかしいだけだ。あんな大衆の面前でお姫様抱っこされたなんて事実だけで恥ずかしくなって当然だ。

 

「うわ、波動顔真っ赤」

 

ちょっと笑ってる拳藤さんに指摘される。自分でも真っ赤になってる自覚はあるけど、これは恥ずかしいからであって恋愛感情とかではない。

 

「これはもしかしなくても、もしかするんじゃない!?瑠璃ちゃん、轟くんのこと好きになっちゃったの!?」

 

「だから……違うって言ってる……!!」

 

「いやぁ、そこまで真っ赤になっておいて違うことはないでしょ」

 

「大丈夫よ瑠璃ちゃん。さっき透ちゃんも言ってたけど、女の子だけの秘密にするわ」

 

梅雨ちゃんすらも微笑ましそうな表情で言ってくる。

もう修正できないレベルまで勘違いが進んじゃってる気がする。どうにか話題を逸らさないとダメだ。

この空気で話題を逸らすには、別の恋バナで話題を塗り替えるしか思いつかない。

……これだ!!さっき勘違いに進める致命的な一言を言ってくれたし、私からも燃料を投下しよう!!

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