波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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3日目

3日目。

私は皆から離れた穴倉の中で、相変わらず波動の放出と個性を伸ばす訓練をしていた。

何回も動けなくなるまで波動の放出を繰り返すのはやっぱり成長率が良いみたいで、昨日よりも波動が増えている気がする。

波動の塊を作るのも慣れてきた。

波動の量の問題で相変わらず練り上げるのには時間がかかるけど、それでも最初よりはマシになってきていた。

感知勝負の方は、正直ラグドールさんに勝つ方法が全然思いつかない。

7日間で勝てるようになるだろうか。正直厳しい気もする。

 

「向こうでも教えてると思うから教えるけど、今日の晩はクラス対抗肝試しを開催するわよ!訓練した後にはしっかり楽しいことがあるから頑張りなさい!アメと鞭ってやつね!」

 

「ん……はい……頑張ります……」

 

『ブラドキング』

 

脱力していた私の頭の中にマンダレイさんの声が響く。

大急ぎで皆の方の波動を意識してどれがブラドキング先生かを確認していく。

 

「仮設トイレのすぐ近くね!」

 

「……また……ラグドールさん……早すぎ……」

 

「ふっふっふ……鍛錬あるのみよ!励みにゃさい!」

 

訓練の時間はそんな感じの繰り返しで過ぎていった。

今日も今日とて波動の使い過ぎによる脱力感と、細かい感知に集中し続けたことによる精神的な疲労に苛まれながら訓練は終わった。

 

 

 

訓練が終わって、昨日カレーを作った場所に着く頃には、すっかり夕方になっていた。

今日は昨日言われていた通り肉じゃがだ。

なにやら男子は昨日、私たちが女子会をしている間に個性を使ってまで争っていたようで、先生たちに怒られてお肉抜きになってしまったらしい。

私たちはお肉を食べていいらしいけど、男子はただのじゃがだ。

ちょっとかわいそうだけど、自業自得だ。

男子側は砂藤くんを筆頭に数人でじゃがを作ることにしたらしい。

男子がお肉を使えない影響でお肉が余っているらしくて、牛肉と豚肉どっちも好きなだけ使っていいなんていう贅沢な状況になっていた。

……肉じゃが、多めに作っておこう。

そう思った私は、自分が作ると言ってくれた梅雨ちゃんにお願いして、今日も私が作らせてもらうことにした。

 

「爆豪くん包丁使うのウマ!?意外やわ……!!」

 

「意外ってなんだコラ包丁に上手い下手なんざねぇだろ!!」

 

「出た!久々に才能マン」

 

お茶子ちゃんの言葉に、爆豪くんが怒りを爆発させながらトトトトトと凄まじい速さで人参を切っていく。

昨日から思ってたけど、やっぱり爆豪くんは料理もできる。上鳴くんの言う通り、爆豪くんは相変わらず器用だ。

そして切島くんがすごい萎えている感じになっている。

2時に補習が終わって、5時30分集合だ。寝る準備や起床後の準備を考えると、睡眠時間は3時間あるかも怪しい。

そんな状態でこの訓練だ。流石に堪えているみたいだった。

 

「男子は……肉抜きじゃが……だよね……」

 

「あぁ、ちょっと昨日色々あってな。仕方ねぇよ」

 

隣で鍋とにらめっこしていた砂藤くんに話しかけると、諦めたように苦笑しながら返事をしてくれた。

 

「量……ちょっと少な目で……作っておいて……」

 

「ん?なんでだ?」

 

「……こっち……多めに作っておくから……一杯目で……肉抜きじゃがを男子皆が食べれば……私が間違えて……多めに作っちゃった肉じゃがをおかわりしても……相澤先生も文句言わないと思うから……捨てるよりはマシだろうし……」

 

「……いいのか?」

 

「ん……大丈夫……だから……少な目にしておいて……」

 

「ああ、分かった。ありがとな」

 

砂藤くんに笑顔でお礼を言われる。

自業自得とはいえ、流石にこれだけ疲れている中お肉無しはかわいそうだからこうすることにした。

そういうわけで、私はこれから凄い量の肉じゃがを作る必要がある。

少なくとも百ちゃんが大量に食べても男子分が余る程度の量を作らないと……

女子は私が尋常じゃない量の食材を要求した辺りで察してくれたみたいだった。

梅雨ちゃんとお茶子ちゃんを筆頭に、大量の野菜を切るのを頑張ってくれた。

 

 

 

私は大量の肉じゃがを作り終わったところで、相澤先生に肉じゃがを作りすぎてしまった旨を説明した。

百ちゃんがおかわりをたくさんしたとしても到底食べきれる量ではない。

男子におかわりしてもらって消費してもらってもいいかのお願いをしにきたのだ。

説明が終わると、相澤先生は呆れながら私を見てきた。

 

「それじゃ罰にならんだろうが」

 

第一声がそれだったから駄目かと思ったけど、流石に捨てるのは先生も気が咎めたらしい。

 

「今回だけだ。次からはこんなことするなよ。次同じ状況で同じことをしたら問答無用で捨てさせる」

 

「ん……はい……ありがとうございます……」

 

許可を得られたし、そのままの流れでA組男子に事情を説明しにいった。

 

「肉じゃが……作りすぎちゃったから……男子もこっちの……おかわりしていいよ……」

 

「いいの!?」

 

「マジか波動!?」

 

「女神だ!女神がここにいるぞ!!」

 

男子が異様な盛り上がりを見せている。そんなに肉抜きじゃがは嫌だったのか。

まぁ当然か。訓練で頑張った日はお肉食べたいよね。

 

「しかし波動くん、これは先生が俺たちに課した罰だ。それをこんな方法で破るのは……」

 

「うわぁ水差す飯田くん」

 

食べたそうにしているのに相変わらずクソ真面目な飯田くんに、お茶子ちゃんが以前のように水差しを指摘する。

まぁ、飯田くんは絶対そう言うと思ったから、ちゃんと先生の許可をもらってきたのだ。

先生は多分こっそりやってる分には指摘しなかっただろうけど、飯田くんにも食べてもらうにはちゃんとした許可が必要だった。

 

「その辺は……抜かりない……相澤先生の許可も……貰ってる……」

 

「……そういうことならば、喜んで食べさせてもらおう!俺たちの不始末なのに、すまない波動くん!」

 

飯田くんがガバッと大げさに謝意を述べてくる。本当に、相変わらずのクソ真面目だ。

 

食べながらB組の方の様子を伺ってみる。

鍋の大きさの関係上、流石にA組男子の分しか余分に作れなかったからちょっと心配していたけど、B組はB組で鍋に入れすぎたお肉をこっそりお裾分けしたりしている。

向こうも拳藤さんたちが考えてあげたんだろう。どちらかだけが食べられないという状況にならなくて良かった。

 

 

 

そして洗い物も終わった後。

ついに肝試しの時間になった。

私たちは宿舎近くに待機している。コースと思われるところがギリギリ感知範囲外な辺り、明らかに私対策だ。

ラグドールさんは私が思考を読めることを知っているし、彼女発案で私が少しでも楽しめるようにしてくれたようだ。

確かに準備している時の思考さえ読まなければ、場所は分かっても楽しめる仕掛けはあるかもしれない。わざわざ気を使ってもらって申し訳ない限りだ。

 

「腹も膨れた、皿も洗った!お次は……」

 

「肝を試す時間だーーー!!」

 

ピクシーボブさんの振りに、三奈ちゃんがテンションを上げて楽しそうにしている。

でも、すごく残念だけど、そのテンションはきっとすぐに急降下してしまう。

 

「その前に大変心苦しいが、補習連中は……これから俺と補習授業だ」

 

「ウソだろ!!?」

 

三奈ちゃんが目が飛び出そうなくらいの勢いで叫ぶ。

でも、相澤先生の思考からして嘘でもなんでもない。本当に補習授業のようだ。

 

「すまんな。日中の訓練が思ったよりも疎かになってたのでこっちを削る」

 

「うわああ!!堪忍してくれぇ!!試させてくれぇ!!」

 

相澤先生は補習組5人を宿舎の中に引きずっていった。

それを見届けてからピクシーボブさんが説明を始めた。

 

「はい、というわけで脅かす側先攻はB組。A組は2人一組で3分置きに出発。ルートの真ん中に名前を書いたお札があるからそれを持って帰ること!」

 

その説明に、皆は特に応えずに静まり返っていた。

反応があったのは常闇くんの「闇の饗宴……」っていう発言だけだ。

緑谷くんが考えている通り、いつも騒いでる賑やかしメンバーである上鳴くんと三奈ちゃんがいないせいだろう。

 

「脅かす側は直接接触禁止で、"個性"を使った驚かしネタを披露してくるよ」

 

「創意工夫でより多くの人数を失禁させたクラスが勝者だ!」

 

「やめてください汚い……」

 

ルール説明に響香ちゃんがツッコミを入れる。というか、普通に下品だ。

 

「なるほど!競争させることでアイデアを推敲させ、その結果"個性"に更なる幅が生まれるというワケか!流石雄英!!」

 

飯田くんがいつも通り勝手に納得している。

確かに個性の使い道とか個性の組み合わせとかを考えるっていう意味合いもありそうだけど、普通にレクリエーションの意味合いが強いっぽいんだけど。

 

説明も終わって、くじ引きでペアを決めていく。

その結果、私は百ちゃんとペアになった。

 

「二人一組……あれ?20人で5人補習だから……一人余る……!」

 

「くじ引きだから必ず誰かがこうなる運命だから……」

 

緑谷くんはようやく自分が余りの一人であることを認識したらしい。

寂しそうにしている緑谷くんやキレてペア変更を要求している爆豪くんを尻目に、私たちはスタート地点に向かって出発した。

 

 

 

コースが近づいてくるにつれて、違和感が激しくなる。

波動が、明らかに多い……それどころか、この悪意……

私は広範囲の波動の感知を意識しながら、近くにいたマンダレイさんに確認するように声をかける。

 

「マンダレイさん……今、私たちとB組以外の人間は……この合宿所に来てますか……?」

 

「え?いや、来てないと思うけど……待ちなさい、それを聞くってことは……!?」

 

私の質問で全てを察したらしい。

ヴィランだ。数は11人。

宿舎側に1人。この波動には少し違和感を感じる。

スタート地点の広場の近くに向かっているのが2人。

崖の方に向かっているのが1人。

ごちゃまぜで思考が薄弱な気持ち悪い波動のヴィラン1人を含めて森の中に7人。

 

「ヴィランです……!宿舎に1、スタート地点付近に2、崖の方に向かっているのが1、森の中に散らばってるのが7……!今すぐ先生たちにも伝えてください……!B組の生徒にも、今すぐに隠れて戻ってくるように指示を……!」

 

「っ!?分かったわ!」

 

マンダレイさんがすぐにテレパスで連絡を取ってくれる。

 

『皆!!!ヴィラン11人襲来!!宿舎に1、スタート地点付近に2、崖の方向に向かっているのが1、森の中に散らばってるのが7!!動けるものは直ちに施設へ!!会敵しても決して交戦せず撤退を!!』

 

だけど、そんな私たちのやり取りを聞いて、爆豪くんを除いて皆驚いている。

数人はパニックのような状態になってしまっていた。

爆豪くんは好戦的な感じだ。

 

「ヴィラン!?」

 

「なんで!!万全を期したハズじゃあ!?」

 

そんな声を無視して、私はヴィランたちの目的の把握のために思考をなるべく深く読むことを意識しつつ、感知していく。

 

 

 

『は……!?なんでヴィランが―――……』

 

『さぁ、始まりだ。地に堕とせ』

 

『なんか、変な臭いが……?』

 

『飼い猫は邪魔ね』

 

『考えたくないな……!内通者なんてものは……!』

 

 

 

ない……つうしゃ……?

 

 

 

『また……また、僕は……!!』

 

 

 

青山くん……?

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