波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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家庭訪問

世間はオールマイト引退の話題で持ちきりになっている。

私はお姉ちゃんと波動の細かい操作の練習とかをしながら過ごしていた。

 

そして実家に帰って来てからそんなに期間を置かずに、雄英高校から手紙が来た。

私とお姉ちゃんそれぞれに送られてきたその封筒。

中身は全寮制導入検討のお知らせだった。

 

「全寮制……」

 

「まあうちからしてみれば、ねじれと瑠璃が2人で暮らしてたのから寮に移るだけの話だもんねぇ。プロヒーローが近くにいてくれる全寮制の方が安心ね」

 

お母さんはあっけらかんと言い放つ。

お父さんもそこまで気にしていないみたいだ。

 

「じゃあこのまま雄英に通い続けるってことでいいよね!?」

 

お姉ちゃんはウキウキした表情を隠そうともせずにお父さんとお母さんに問いかける。寮で皆と共同生活という部分にワクワクしているらしい。お姉ちゃんかわいい。

 

「ああ。どうせ2人とももう通うつもりだろうし、止めても無駄だろう?それに、瑠璃がヴィラン連合に狙われる可能性があるなら、他所のヒーロー科に行くよりも雄英の寮で守ってもらうほうが安全だ」

 

「やったー!寮だよね!寮!どんなところなのかなー!?楽しみー!!」

 

お父さんの返答に、お姉ちゃんがぴょんぴょん飛び跳ねながら喜んでいる。なんだ天使か。

そしてお父さんの言うことも尤もだ。

お姉ちゃんがヒーローを目指し続けるなら、私もヒーローを目指す。

お姉ちゃんがやめるとは思えないし、そこは結局変わらないだろう。

私も、サブターゲットとはいっても一度ターゲットにされたのだ。また狙われる可能性はゼロじゃない。

それなら、プロヒーローが数多くいて、今回の件で徹底的に対策するであろう雄英の方が安全だっていう考えだろう。

 

「この手紙……家庭訪問して詳細を話すって……書いてあるけど……」

 

「そうみたいね。ちょっと気合入れてお掃除しとかないと!」

 

お母さんはそう言って気合を入れなおしている。

今回の家庭訪問の目的は、多分反発する家族の説得だろう。

私なんかはターゲットにされた上に気絶して入院までしてたから、クラスの中でも大変だと思われてそうな気がしないでもない。

……これでお父さんとお母さんがこの調子だと拍子抜けされるかもしれない。

 

 

 

数日後。

午前中にお姉ちゃんの担任の先生が家庭訪問に来た。

お姉ちゃんの家庭訪問は本当にあっさり終わった。

私は自分の部屋にいたけど、思考を見てたから分かる。

先生たちがすごく拍子抜けしていて面白かった。

やっぱりターゲットにされた生徒の家族ということで警戒していたらしい。

 

そして午後。

相澤先生とガリガリの姿のオールマイトが来た。

リビングに先生たちを通してお茶とお茶菓子を出す。

その正面に、私とお父さん、お母さんが座った。

お姉ちゃんは先生たちが座っている関係上席がないから机の方には座ってないけど、リビングのソファに座っている。

お姉ちゃんも話を聞くつもりなのは正直意外だった。私みたいに自室にいるものだと思ってたんだけど。

思考を深く読んでも、オールマイトのガリガリの姿を不思議がっていたり、相澤先生の髪の毛を気にしていたりといつもの調子で真意が分からない。

 

「事前にお話がいっているとは思いますが、全寮制についての説明に伺わせていただきました」

 

そう言って相澤先生は話を始めた。

 

「まず謝罪させていただきます。我々の警戒が足りず、瑠璃さんを危険な目にあわせてしまいました。それどころかヴィランの襲撃を防ぎきれず、結果として瑠璃さんが入院しなければならないような事態に陥ってしまいました。申し訳ございませんでした」

 

相澤先生とオールマイトが頭を下げる。

それと同時にお母さんが慌て始める。

 

「あ、頭を上げてください!」

 

お母さんのその言葉に2人はゆっくりと頭を上げた。

 

「確かに娘が被害にあったことや狙われた件については、思うところはあります。ですが、それを受けて、雄英はセキュリティを強化してくださるんでしょう?」

 

お父さんが質問すると、相澤先生が迷うことなく答え始めた。

 

「はい。我々も知らず知らず芽生えていた慢心・怠慢を見直し、やれることを考えています。寮に関しても―――……」

 

そして寮の説明が続いた。

既にお姉ちゃんの家庭訪問で聞いた話ではあるけど、それでもお父さんとお母さんは黙って聞いていた。

 

部屋や寮の構造から始まって、防犯システムに話が進んでいく。

雄英の敷地内へは登録、あるいは許可されていない人間が侵入することが出来ないように防壁が設けられていること。

これは以前の記者の件で作動した雄英バリアのことだろう。

だけどそれだけでは安心できない。あのワープの個性を持つ黒いモヤのヴィラン。

あのヴィランがいる限り、それで安全とは言えない。

それは先生たちも分かっているんだろう。

それに加えて、内容を口外はできないけど、今後寮の改修を検討していること。

24時間複数のプロヒーローがパトロールを行うこと。

異常を検知した場合は、即座に生徒を敷地内のシェルターに避難させること。

シェルターはワープに対しても対策をしていることとかを説明していった。

 

「他にもありますが、生徒の安全を第一に、厳戒態勢で当たらせていただきます。どうか今一度、任せてはいただけないでしょうか。必ず瑠璃さんを立派なヒーローに育て上げてみせますので……」

 

再度頭を下げる相澤先生。

お父さんとお母さんも娘が危険な目にあって怒るのは分かるけど、もういいだろう。

 

「……お父さん……お母さんも……もういいでしょ……結論……決まってるくせに……」

 

私が溜め息を吐きながら言うと、お父さんは苦笑してから口を開いた。

 

「……そうだな。先生、頭を上げてください。私たちの答えはもう決まっています。また、娘をよろしくお願いします」

 

「……よろしいのでしょうか?」

 

あっさりと了承するお父さんに、相澤先生が問いかけてくる。

 

「はい。瑠璃はねじれの後を追うためにヒーローを志しました。ねじれはヒーローを目指すことをやめるつもりはないようですし、瑠璃もやめないでしょう。瑠璃個人が狙われる可能性もあるようですし、他所のヒーロー科に行くよりも、今回の件で警戒を強化し、対策してくれる雄英の方が安心だというのが私たちの結論です」

 

「……そうですか」

 

警戒していただけに若干拍子抜けしている相澤先生とオールマイト。

そこで話が終わるかと思ったけど、お母さんが話し出した。

 

「一つだけ、よろしいですか?」

 

「はい。なんでも仰って下さい」

 

相澤先生も嫌な顔一つせずに応じている。

私はお母さんの思考から何を話そうとしているのか分かって、驚いていた。お母さん、知ってたのか。

 

「瑠璃のことです。瑠璃が入院した原因に、心当たりがあります。瑠璃は今回の件で気絶した後、身体が薄くなって消えそうになったりしませんでしたか?」

 

「それは……確かに、そのような現象があったことは確認しています」

 

相澤先生もここでそれを言われると思っていなかったのか、少し驚いている。

 

「それ、小さい頃にもあったんです。瑠璃が波動を放出できるようになったばかりの頃に……」

 

お母さんはその時の様子を話し始めた。

私が小さいころ、というよりも私が初めて波動を放出した時のことみたいだ。

私は気絶しただけだと思っていたけど、それだけではなかったらしい。

お姉ちゃんの真似をして波動を手から出したことまでは覚えている。

その後、今回の件と同じように身体が透けて揺らいだり、光の粒子のようなものまで見えたらしい。

正直実感が一切ない。

私はその時のことをほぼ覚えてないし。

小さかったからだろうけど、気絶したことと目が覚めたら病院だったことくらいしか覚えていないのだ。

その後は記憶が曖昧だけど、また気絶するかもしれないし危ないから放出はしないようにって言われたんだったかな。

そして、私もそれで危機感を持って放出しないようにしていた。

だからこそ身体の中で動かすだけみたいな使い方をしていたのだ。それなら疲労感を感じることや短時間気絶することはあっても入院するようなことにはならなかったから。

 

「あれは、波動が枯渇したせいだと思うんです。瑠璃から今回の件のことは大体聞きました。加減が分からずに放出して空っぽに近くなってしまっただろう昔と、お友達を助けるために波動を絞り出して攻撃した今回。どちらも限界まで波動を放出していて、その時だけ、あの現象が起きているんです」

 

お母さんの言葉に、否定の言葉が出せない。

確かに、小さい頃に同じことがあったなら、その考えは否定できない。

そして、今お母さんが考えていることが起きる可能性も。

 

「だからもし瑠璃が、本当に空っぽになるまで波動を出し切ってしまったら、あの時の光の粒子のようになって、消えてしまうんじゃないかって、思うんです……」

 

「……確かに、その可能性はゼロとは言えませんね……それだけあの時の状態は異常と言わざるを得ませんでした」

 

「そーそー!だから私が一緒の時は無理してたら止めるようにしてたんだけど、今回みたいなこともあるから!」

 

黙って聞いていたお姉ちゃんが話に入ってくる。

そこでようやく思い至った。

波動の訓練の時に、お姉ちゃんが私の腕を掴んで無理に休憩を取らせたりしていたのは、その可能性を考えてのことだったのか。

というか、お父さんもお母さんもお姉ちゃんも、どうやってこれを私に隠してたんだ。思考を見ていてもそんなことは全然読めなかった。

私が寝ている間に相談したり、話したりしていたんだろうか。

それにしても私が気が付けない程、私が起きている間は一切考えないってどうなっているんだろう。謎だ。

 

「ねじれも、このように気を付けてくれてはいるんです。ですが常に近くにいることが出来るわけではありませんし、ねじれが雄英にいるのも今年度まで……それ以降は、先生方だけが頼りなので……」

 

「……そういうことなら、承りました。瑠璃さんが無理をしすぎないように、我々の方からも注意をするようにしておきます」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

今度はお母さんとお父さんが頭を下げた。

 

その後も少し話し続けて、先生たちが帰り支度を始めた。

どうやら数日以内にA組全員の家庭訪問をしなければいけないらしくて、時間がないようだ。

先生たちが帰るのを見送るために玄関に出る。

そのタイミングで、相澤先生が私に向けた思考を思い浮かべていた。

 

『波動、青山の件は入寮の前日に行う。入寮予定日の前日、9時に学校に来るように。実際に面談するのは夕方になるが、それまでにやることがある』

 

その相澤先生の思考に対して、小さく頷いて返答する。

それで相澤先生にも伝わったみたいだ。

 

こうして家庭訪問は終わった。

それにしても、オールマイトは家に入ってから挨拶以外で一切喋らなかったけど、あの人何のために来たんだろう。

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