波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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会合の後

青山くんが手を取ってくれた。

彼の思考は、覚悟を決めたものに変わっていた。

 

「青山くん……!」

 

「僕が、クズなことに変わりはないよ……今でも怖いと思ってる……だけど、それでも、必要だって言ってくれるなら……」

 

嘘は、一切なかった。

怖いのは仕方ない。

それだけ強大なヴィランの脅迫を受けていたんだ。

それでも危ない橋を渡る決断をしてくれた。それが嬉しかった。

私も自然と笑顔になっていた。

 

「それは了承と受け取るよ、青山くん」

 

「……はい」

 

塚内警部の言葉に、青山くんが静かに頷く。

それに対して、塚内警部も頷いて話を続けた。

 

「よし。じゃあまずは知っている情報を全て話してもらおう。イレイザーヘッド、真、波動さん。頼めるかい?」

 

「もう、人使い荒いんだから……」

 

「言われるまでもなくやり続けてますよ」

 

「はい……大丈夫です……」

 

相澤先生の抹消で青山くんの個性を消して突然の反乱の可能性を無くしつつ、青山くんの自白を真さんの"嘘発見器(ポリグラフ)"と私の"波動"で確認する。

合理的な手段だと思う。

物間くんはいい加減限界そうだし、自白に対して二通りの確認が取れる状態だから声を掛けなかったようだ。

青山くんには椅子に座ってもらって、真さんが手を触れておく。

私は青山くんの波動を注視し続けた。

 

「AFOについて知っていることは何かあるかい?」

 

「……知っていることは、何も……僕たちは、ただ頼まれたことを実行していただけです……」

 

最初だからかすごく漠然とした質問だった。

知らないというのは私が読んだ思考とも一致しているし、真さんも頷いている。

 

「神野の強襲はなぜ報告しなかった?」

 

「……こちらからの連絡は、できません……向こうが求めた時にだけ……連絡が来ます……」

 

これも嘘じゃない。静かに頷く。

それを確認した塚内警部は話し続ける。

 

「内通者が捕まっても辿られないようにか……相変わらずの慎重さだな……」

 

 

 

その後もしばらく確認作業は続いた。

青山くんは一切の嘘や隠し事なく正直に話し続けてくれた。

 

「とりあえず今聞けるのはこれくらいか」

 

塚内警部の質問の区切りがついたころ、自白が始まってから一時的に席を外していたパワーローダー先生が戻ってきた。

 

「持ってきたよ。これでいいんだろう?」

 

「ありがとうございます」

 

塚内警部がパワーローダー先生から受け取ったのは、腕輪のような何か。

それに加えて多くの小さなリングだった。こっちは指輪くらいの大きさだろうか。

一つだけ少し色合いが違う。

どうやらさっき言っていた装置は事前にパワーローダー先生に作ってもらっていたようだ。

まあ外注なんてしたらどこから情報が漏れるか分からないし、これも合理的な判断か。

塚内警部は腕輪の方を持ったまま青山くんの方に近づいて、そのまま青山くんの腕に着けてロックをかけていた。

 

「これがさっき言った装置だ。この色が違う指輪から1km以上離れると、指輪の方で警報が鳴って腕輪の現在地が表示されるようになっている。くれぐれも迂闊な行動は取らないでくれよ。怪しい行動を取られると疑わざるを得なくなる」

 

「はい」

 

青山くんは静かに腕輪を眺めている。

塚内警部は色違いの指輪を私に渡しながら話を続けた。

 

「波動さんはこれを必ず持ち歩くようにしてくれ」

 

「はい……分かりました……」

 

私がしげしげと指輪を眺めていると、塚内警部の思考が私に向けたものになった。

どうやら事前に相澤先生に密談をする方法を聞いていたらしい。

 

『さっきはああいったが、青山くんの行動はこの腕輪を通して常に監視している。波動さんは、起きている時に青山くんの思考を気にかけておいてくれるだけでいい。離れざるを得ない時だけは事前に教師に伝えて欲しいが、それだけだ。君の行動を制限するつもりはない。青山くんに常に監視されている、思考を見られていると思わせることが重要なんだ』

 

小さく頷いて了承した旨を伝える。

元々入寮後に学外に出る時は外出申請をする必要があると聞いているし、それほど大きな変化もない。

離れざるを得ない時に先生たちの誰かに伝えればいいだけみたいだし、きっと先生たちや監視している側で警報をオフにしたりするんだろう。

私の方は特に問題はない。

指輪を指に着けておくと特訓とかの時に邪魔だし、とりあえずチェーンを通して首に掛けたりしておこうかな。

 

その後、塚内警部は指輪を先生たち皆に配り始めた。

なんだか先生皆でお揃いの指輪を付けているような状況になりそうで少し面白い。

まあ特定の2人とかじゃないし変な噂になることはないだろうけど。

 

「使い方は後程パワーローダーから聞いてください。この装置の起動は明日、入寮後を予定しています。それまでは監視を付けて対応させていただきます」

 

塚内警部の声掛けに先生たちは頷く。

 

「それとここで知り得たことはここにいる者のみの秘密とし、他言厳禁でお願いします」

 

これも当然の指示でしかない。二重スパイなんてしてもらう関係上、知っている人は少ない方がいい。

問題は青山くんだ。罪を認めたことで、皆に謝りたそうにしている。

このまま放っておくと爆豪くんに土下座しに行きかねない感じだ。

でも、我慢してもらうしかない。流石にクラス皆に伝えてしまうと、情報が漏れるリスクが跳ね上がってしまう。

 

「波動さん、青山くん、物間くん。当然のことだが、クラスメイトにも、両親にも言ってはいけない。どこから情報が漏れるか分からないからね。漏れた時点で青山くんがトラップとして機能しなくなってしまう。特に物間くんは、ここで知り得た情報……個性を奪い、与える個性のことも、全てだ。いいね?」

 

「はい……」

 

「「はい」」

 

青山くんと物間くんも特に質問もなく了承した。

いつもの青山くんなら「ウィ」って言いそうなのにそれを言わない辺り、流石にまだいつも通りとはいかないみたいだ。

 

「よし。あとは調書を作らせてもらうくらいか。しかし警察署に来てもらうわけにもいかない。この後ここで事情聴取をして作ってしまうが、構わないね?」

 

塚内警部の問いかけに、青山くんも頷いた。

まあこんなの拒否できないし当然ではあるけど。

だけど、この感じだと警察署の中も確実に無害とは言い切れない状態なのか。

AFOが狡猾だっていうのもあるけど、それ以上に青山くんの状況を聞いて、どこに内通者が紛れ込んでいるか分からなくなってしまっているのだろう。

 

 

 

物間くんは話すべきことは既に隣の部屋で読心をしながら全部話してくれていて、その様子も読心結果の記録と映像での記録の2通りで取ってあるらしい。

校長先生あたりが取り計らったんだろうか。流石に抜かりがない。

そのおかげもあって、物間くんはもう帰っていいことになった。

先生たちも特に関わっていた人以外は解散になっていた。

 

疲れ果てた様子で帰ろうとする物間くんに声をかける。

 

「物間くん……ありがとね……」

 

「ハッ、こんなことで僕を使おうとするのは、金輪際やめて欲しいね」

 

物間くんはいつものA組を馬鹿にするときみたいな見下す感じで言い返してきた。

強がりみたいだけど、突っ込むのも野暮だろう。

 

「ん……それでも……助かった……」

 

「……そうかい」

 

物間くんはそう言って背を向けた。

そのまま歩いていくのかと思ったけど、少し間を置いていつもの高笑いを始めた。

 

「まあ!?今回で君の個性のことは丸裸に出来たからね!!正体不明の感知個性の秘密を暴いたんだ!!これでB組がA組を打倒する日も近いよ!!アハハハハ!!」

 

「ん……そうだね……楽しみにしてる……」

 

私が返答すると、物間くんはそれ以上会話することもなく、高笑いしながら去っていった。

言動はあんなだけど、思考は私の個性のことを言いふらしたりするつもりはなさそうな感じだ。

性格も誤魔化し方も何もかも捻じ曲がってるけど、物間くんは話してみると意外といい人だった。

 

 

 

その後は私の事情聴取が始まった。順番は私、青山くん、教師陣の順番で始めるみたいだった。

まあ事情聴取なんていっても、さっきの確認や青山くんとの会話で話したこと、私が読心で把握した内容を調書に起こすだけだ。

そんなに時間はかからなかった。

 

事情聴取が終わってやることもなくなったから、私も帰ることにする。

もう結構遅い時間だし、お姉ちゃんが首を長くして待ってると思うし。

教室を出ようとしたところで、後ろから声を掛けられた。

 

「波動さん!」

 

「青山くん……?」

 

振り向くと青山くんが微かに震えながらではあるけど、しっかりとこちらに真剣な眼差しを向けていた。

 

「僕、パパンとママンの為にも!皆の為にも!自分の為にも!戦うから!だから君も!僕が輝くところを、輝けるように努力するところを!見ていて欲しい!」

 

「ん……お互い……頑張ろうね……ちゃんと見てるから……」

 

私が笑顔を向けると、青山くんは真剣な表情のまま鼻息荒く頷いた。

震えてるのがちょっと格好悪いけど、本心からのその言葉に、私も応援しようと思えた。

 

 

 

外はもう真っ暗になっていた。

そのまま家に帰宅してお姉ちゃんとご飯を食べた。

お姉ちゃんがご飯を用意してくれていて、2人暮らしの最後の夕食を楽しんだ。

楽しかったお姉ちゃんとの2人暮らしも今日でおしまい。

凄く名残惜しいけど、仕方ない。これも色々な事情が重なった結果だ。

明日から、A組の皆との共同生活が始まる。

それはそれで楽しそうだけど、その前にちゃんとしておかないといけないことがある。

……明日、皆にちゃんと話そう。

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