波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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入寮とお話

雄英の敷地内、校舎から徒歩5分の場所に私たちは集まっていた。

青山くんもしっかり来ている。

目の前にある築3日らしい建物、"ハイツアライアンス"。

正面に大きく1-Aと書いてあって大分センスがあれな感じだけど、大きくて豪華そうな建物だった。

 

「でけー!」

 

「恵まれし子らのー!!」

 

砂藤くんと三奈ちゃんが嬉しそうに感想を漏らしている。

三奈ちゃんの方の感想の意味はよく分からないけど、何か元ネタがあるんだろうか。

 

 

 

「とりあえず1年A組、無事にまた集まれて何よりだ」

 

皆の前に立った相澤先生が、私たちを一通り見渡してから話し始めた。

 

「皆許可下りたんだね!」

 

「ウチの親はオールマイトのおかげですぐに認めてくれたよ。波動は親に反対されたりしなかった?」

 

「ん……別に……普通に認めてくれた……」

 

「入院までしてたのにあっさりっていうのもすごいね」

 

透ちゃんの発言に皆少し賑やかになって、各々の家族がどう言う反応だったか話し出す。やっぱり皆の家族がどういう反応だったか気になるらしい。

 

「無事集まれたのは先生もよ。会見を見た時はいなくなってしまうのかと思って悲しかったの」

 

「うん」

 

梅雨ちゃんの先生を心配する発言にお茶子ちゃんも同調した。まあ、あんな謝罪会見までしてたし、普通なら責任とかそういうことを考えるタイミングかもしれない。

 

「俺もびっくりさ……まぁ、色々あんだよ」

 

先生は青山くんの監視のこととかを考えている。

理由があるとしたらこれくらいしかないだろうし、むしろ事情を一番把握してるのが相澤先生なんだから、担任を外すなんていうのはあり得ないか。

 

「さて……これから寮について軽く説明するが、その前に一つ」

 

そこまで言うと、先生は手を叩いて話を切り替えた。

 

「当面は合宿で取る予定だった、"仮免"取得に向けて動いていく」

 

その言葉に対して皆ポツポツと反応を返したけど、先生はすぐに黙らせて話を続けた。

 

「大事な話だ。いいか……轟、切島、緑谷、八百万、飯田……この5人はあの晩、あの場所へ、爆豪救出に赴いた」

 

皆の雰囲気が変わった。

透ちゃんの病院での話だと、私と爆豪くん以外は密談に参加していたはず。

全員もともと知っていたはずだ。

 

「その様子だと、行く素振りは皆も把握していたワケだ。色々棚上げした上で言わせて貰うよ。オールマイトの引退がなけりゃ俺は、爆豪、波動以外の全員除籍処分にしている」

 

真剣な目で見据えながらの先生の宣告に、爆豪くんと私以外の皆は息を呑んだ。

 

「彼の引退によってしばらく混乱は続く……ヴィラン連合の出方が読めない以上、今雄英から人を追い出すわけにはいかないんだ。行った5人はもちろん、把握しながら止められなかった13人も……理由はどうあれ俺たちの信頼を裏切ったことには変わりない。正規の手続きを踏み、正規の活躍をして、信頼を取り戻してくれるとありがたい。以上!さっ!中に入るぞ、元気に行こう」

 

先生は一気に言い切ると、くるりと振り返って寮の方に歩いていく。

皆のテンションはさっきまでのウキウキした感じのものから、どん底まで崩れ落ちていた。

思い詰めているせいか誰も歩き出そうとしない。

私もどうしたものかと考えていると、先に爆豪くんが動き出した。

 

「来い」

 

「え?何やだ」

 

爆豪くんは上鳴くんを掴むと、草陰のほうに引きずって行った。

……やろうとしていることは悪くないんだけど、引きずられる上鳴くんは少しかわいそうだ。

というか、何のために上鳴くんを連れていくんだろう。

 

少しすると草陰から電気が迸った。

電気が止むと、草陰からショート状態の上鳴くんが飛び出してきた。

 

「うぇ~~~い……」

 

それを見た瞬間に響香ちゃんが吹き出す。

響香ちゃんの上鳴くんのツボ具合は相変わらずみたいだ。

 

その後に続いて草陰から出てきた爆豪くんは、切島くんの方に近づいていく。

 

「切島」

 

「んあ?」

 

なんとも言えない反応の切島くんに、爆豪くんはお金を差し出た。

 

「え、怖っ、何!?カツアゲ!?」

 

あの流れの後にこれじゃあ勘違いされても仕方ない。

私も読心と感知がなければ同じ感じで勘違いしただろうし。

 

「違ぇ、俺が下ろした金だ!いつまでもシミったれられっと、こっちも気分悪ィんだ!」

 

「あ……え!?おめーどこで聞い「いつもみてーに馬鹿晒せや!」

 

切島くんが言い切る前に爆豪くんは切島くんの胸元にお金を押し付けた。

 

青山くんが自分が原因で起きたこの事態に、お金だけでも爆豪くんに返せないかみたいな馬鹿なことを考え始めている。

とりあえずそれを止めるために、彼の腕を掴んで首を横に振って諦めさせる。

青山くん自身もバレるようなリスクある行動は慎むべきだというのは分かっているのか、すぐにその考えを引っ込めた。

 

その裏で上鳴くんがうぇいうぇい言って、響香ちゃんが大爆笑し始めていた。

爆豪くんのおかげで、雰囲気は元の明るい感じに戻っていた。

 

「皆!すまねぇ……!!詫びにもなんねぇけど……今夜はこの金で焼肉だ!!」

 

「マジか!?」

「ウェーーーい!」

 

「買い物とか行けるかな?」

 

「というよりも……ホットプレートとか……あるのかな……」

 

焼き肉はまあいい。新築をいきなり焼き肉の匂いにするのも、まあ仕方ない。

問題はそれをするための道具が寮にあるかだ。

実家にならあるけど、2人暮らしでは必要なかったから私も持ってきてない。

道具、あるといいけど……

 

そんな感じでワイワイしながら、相澤先生を追って寮に入った。

 

 

 

「1棟1クラス。右が女子棟で左が男子棟と分かれてる。ただし1階は共有スペースだ」

 

先生が説明しているけど、正直皆耳に入ってないと思う。

目の前に広がる豪邸と言っても過言ではない共有スペースに、皆大興奮だった。

 

「豪邸やないかい」

 

「麗日くん!?」

 

お茶子ちゃんがいつもの卒倒芸を見せつけている。

うん。それくらいすごい豪邸ではある。

 

「広キレー!!そふぁああ!!!」

 

「おおおお!!」

 

「三奈ちゃんも……透ちゃんも……テンション高いね……」

 

それにしてもテンションの上がり方がおかしなことになっている。

2人して腕を上下に振っていて、いくらなんでも興奮しすぎてるんじゃないだろうか。

 

「こんなの見たらテンション上がるでしょー!!」

 

「瑠璃ちゃんはなんでそんなに落ち着いてられるの!?」

 

「その……掃除……大変そうだなって……思って……」

 

2人暮らしの限られたスペースでも、雄英の勉強をこなしながら掃除して清潔さを保っておくのは大変だった。

この規模の掃除とか正直考えたくない。

 

「……こんな時に現実的なことを言うなー!!」

 

「そうだそうだー!!」

 

「……ん……ごめん……」

 

2人に揉みくちゃにされて私の発言は有耶無耶にされた。

 

「食堂や風呂、洗濯はここでやってもらう」

 

続いていた相澤先生の説明に、今度はブドウ頭が食いついた。

 

「聞き間違いかな……?風呂、洗濯が共同スペース?夢か?」

 

「男女別だ。お前いい加減にしとけよ」

 

「はい」

 

そうだった……ブドウ頭がいる寮の中にあるお風呂に入らなければいけないということは、それだけ覗き対策に気を割かなければいけないということだった。

それを考えると今からちょっと憂鬱である。

 

「部屋は二階から、1フロア男女各4部屋の5階建て。1人1部屋。エアコン、トイレ、冷蔵庫にクローゼット付きの贅沢空間だ」

 

こういう寮で部屋にトイレが付いているのは素直にすごいと思う。

安い寮だと共有トイレでもおかしくない。

 

「我が家のクローゼットと同じくらいの広さですわね……」

 

「豪邸やないかい」

 

百ちゃんの相変わらずのセレブ発言に、お茶子ちゃんがまた卒倒している。

お茶子ちゃん、百ちゃんと一緒に生活していて身体が保つんだろうか。少し心配だ。

 

「部屋割りはこちらで決めた通り。各自事前に送ってもらった荷物が部屋に入っているから、とりあえず今日は部屋作ってろ。明日また今後の動きを説明する。以上解散!」

 

それで今日は解散ということになった。

 

 

 

……打ち明けるなら、このタイミングだろう。

受け入れて貰えなかったら出て行った方がいいし、荷解きをする前の方がいい。

早々に部屋に向かおうとする皆を呼び止める。

 

「……皆……少し、いい……?」

 

「瑠璃ちゃん?」

 

「波動さん?」

 

そんなに大きな声じゃなかったのに皆立ち止まってくれる。

 

「……話が……ある……」

 

この時点で、透ちゃんは察してくれたみたいだった。

 

「話って?」

 

「今じゃなきゃだめな感じ?」

 

「ん……今じゃなきゃ……ダメ……」

 

「大方伝言なんて言って急に伝えてた件だろ。もう察しついてるわ」

 

爆豪くんが吐き捨てるように言う。

本当に流石という他ない。上鳴くんがたまに才能マンなんていうだけある。

本人が察しがついていると言っているとおり、読心に関しても思い至っているみたいだし。

 

「あぁ、そういえばあったな。色々ありすぎて完全に忘れてた」

 

「伝言?ってなんのこと?」

 

あの時近くにいなかった三奈ちゃんが不思議そうに聞いている。

そんな三奈ちゃんたち補習組に、お茶子ちゃんが説明してくれる。

 

「えっと、合宿でヴィランに襲撃された時にマンダレイさんから戦闘許可のテレパスが来たのは覚えとる?」

 

「ああ、イレイザーヘッドの名に於いてって言ってたやつだよな?」

 

切島くんが思い出したような表情をして、テレパスで伝えられた言葉を口にしながら聞き返した。

 

「そうそれ。それ、瑠璃ちゃんがいつもみたいに感知してくれてると思ったら、急にマンダレイさんに伝言しとったんや。相澤先生から伝言ですって言うて」

 

「急に?」

 

「うん」

 

「相澤先生が近くにいないのに?」

 

「そういうことですわね」

 

そこまで言われて赤点組もどういうことなのか訝しみ始めた。

青山くんにはもう明かしているし、彼だけは納得している。

 

「その件で呼び止めたということは、どうやって感知出来たのか教えてもらえるということでよろしいですか?」

 

「ん……そう……」

 

皆の視線が集中している。

ここまでは冷静でいられた。

 

でも打ち明けようと思うと、やっぱり駄目だった。

胸が早鐘を打っていて、だんだん息が荒くなって苦しくなってくる。

皆なら大丈夫。頭ではそう思っているはずなのに、不安でどうにかなりそうになってしまう。

 

 

 

私が話せないでいると、透ちゃんが隣に来て手を握ってくれた。

 

「瑠璃ちゃん、皆なら大丈夫だから。ゆっくりでいいから、落ち着いて話して」

 

透ちゃんが手を握ってくれて穏やかに話してくれるだけで、自然と心が落ち着いてきていた。

私も透ちゃんの手を握り返して、ゆっくりと話し始める。

 

「私……皆に隠してたことが……あって……」

 

皆も静かに私が話すのを待ってくれている。

あの爆豪くんすらも、黙って待っていてくれた。

 

「私の個性の……こと……これから……寮で……一緒に暮らすなら……教えといた方が……いいから……」

 

透ちゃんの手を一層強く握る。

透ちゃんも握り返してくれて、それだけで勇気がもらえた気がした。

 

「私の個性……感知範囲内にいる人の……考えてることと……感情が……分かるの……これで……合宿の時に……相澤先生の伝言を……伝えてて……」

 

「それって読心が出来るってこと!?」

 

「す、すごいよ波動さん!読心なんて……!だから轟くんの攻撃を避け続けたりできてたんだね!!」

 

皆純粋に驚いている。

でも、そこは本題じゃない。

 

「でも……これ……制御できなくて……読まないっていうことが……できなくて……無差別に読み続けちゃうから……」

 

話しているうちに中学までのことを思い出してしまって、感情が高ぶってきてぽろぽろ涙が零れ始めてしまった。

皆もここでようやく意味が分かったようで、盛り上がっていたのも一気に静まってしまう。

 

「私がいると……隠したいことも……全部……分かっちゃうから……皆に……嫌な思い……させちゃうかもしれなくて……」

 

透ちゃんが背中を摩ってくれている。

 

「もし……気持ち悪いとか……怖いって……思う人がいるなら……私は……寮に……いない方がいいから……だから……」

 

もう涙は止まらなかった。

皆の反応が怖い。これで出ていけとか言われたら、きっともう立ち直れない。

皆の思考が怖くて透ちゃんの波動を注視して、わざわざ聞こえにくいようにしてしまっている。

透ちゃんは受け入れてくれたし、青山くんは何も言わなかったけど、それでもまだ皆を信じ切れない自分がいた。

 

「怖いなんて、思うはずないよ!」

 

お茶子ちゃんが強い言葉で否定してくれる。

だけど中学までは、皆私を無視して、心の中で悪口を言い続けて―――

 

「でも、中学までは……皆……そう言って……」

 

皆の顔が歪んだのが、涙で歪んだ視界でもはっきり分かった。

 

「俺たちの危険を減らすために隠していたことを明かしてくれた波動くんを、気持ち悪いなんて思うはずがない!そうだろう、皆!!」

 

「おう!もちろんだ!」

 

「いない方がいいなんて、そんな酷いこと思うはずないわ!」

 

飯田くんの呼びかけを皮切りに、皆が口々に優しい言葉をかけてくれた。

それだけじゃなくて、皆近くまで来て、背中を摩ったり、頭を撫でたり、女子は抱きしめたりしてくれ始めた。

 

 

 

「ね?大丈夫だって言ったでしょ?」

 

透ちゃんにダメ押しのように言われて、私は恐る恐る透ちゃんの思考を深く読むのをやめてみる。

それと同時に、皆の思考がはっきりと伝わってくる。

誰一人、嘘を吐いていなかった。

皆受け入れてくれていた。

それを認識したところで、感情の制御が出来なくなって、子供のように泣き出してしまっていた。

 

 

 

しばらくして、感情の昂りも涙もようやく落ち着いてきた。

 

「ん……ごめん……もう大丈夫……」

 

「もうちょっと甘えてくれててもよかったけどね!瑠璃ちゃん大分抱え込もうとするし!」

 

途中から透ちゃんに縋り付くようにして泣いていたことを茶化される。

さっきまでとは別の理由で顔が熱くなってきてしまう。

 

「それにしても、透ちゃんは事前に知ってたのね」

 

「ふっふっふ、これでも瑠璃ちゃんの一番の友達ですから!」

 

梅雨ちゃんの発言に対して、透ちゃんがドヤ顔で返した。

 

「透ちゃん……恥ずかしいから……やめて……」

 

「ふふ、もう本当に落ち着いたようですわね」

 

百ちゃんにも少しおかしそうに笑われる。

というか、今の私の顔大分酷いことになっている気がする。

ちょっと恥ずかしい。

 

「よーし!林間合宿のバスでも言ったけど、悲しい思い出なんか忘れちゃうくらい楽しい思い出を作ろうよ!瑠璃ちゃんがこんなことで悩まなくても良くなるくらい!皆とならできるでしょ!」

 

「いいねそれ!」

 

「そーだそーだ!これからいっぱい思い出作ろう!!」

 

透ちゃんのその言葉に、爆豪くん以外は頷いてくれている。

爆豪くんも反対って訳ではないけど、単純に自分が関わろうと思ってないだけだ。

 

皆そんな感じで、私の周りでしばらく騒ぎ続けていた。

皆、いい人ばっかりだ。

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