しばらくして私が落ち着いた後、とりあえず部屋を片付けてしまおうということになった。
皆指定された部屋に移動していく。
私も一緒にエレベーターに乗った。
向かうのは2階だからわざわざ乗らなくてもいいけど、皆でワイワイ移動するのが楽しかった。
そんな中、百ちゃんだけ相澤先生に声をかけられていた。
思考を読んだら納得しかなかったけど。
百ちゃん、この寮に大量の荷物を持ってきたらしい。
1階の隅に山積みになっていた段ボールは部屋に入りきらなかった荷物だったようだ。
流石お嬢様。自分の部屋の整理が終わったら手伝いに行こうかな。
「あれ?ヤオモモは?」
「なんか先生に呼ばれてたよね」
「ん……百ちゃん……荷物の持ってきすぎ……1階の隅の段ボールの山……百ちゃんの荷物……」
「な、なるほど……あれ、だいぶ凄い量だったよね……」
「ブルジョワや……」
私の説明に納得した様子を見せる皆。
読心で把握した内容を伝えても、誰も気味悪がったりしてない。
自然な感じで話してくれる。そんな普通のことがすごく嬉しかった。
ハイツアライアンスは地上5階、地下1階建ての建物だ。
1階は先生が言っていた通り共有エリア。
食堂、談話スペースの他にも、男女別のお風呂、洗濯室とかがある。
2~5階は居住区だ。男子棟と女子棟は分かれていて、基本的に1階で行き来するしかない。
私の部屋は2階だった。
2階の人は男子が峰田くん、緑谷くん、青山くん、常闇くんで、女子は私だけだ。
先生たちなりに部屋割りは考えてくれてはいるんだろう。
暴走する峰田くんの近くには仲のいい緑谷くん。
個性が暴走する可能性がある常闇くん対策なのかは分からないけど光り輝く青山くん。
青山くんの監視に同じ高さの位置に私。
逆に女子が私だけなのはブドウ頭対策だろうか。
同じ高さの部屋は覗きとかもしやすいだろうし。
私なら思考も読めるし、早々に被害に遭わないだろうから信頼しての配置かな。
ちゃんと配置の理由がありそうな感じだった。
きっと他の階もそんな感じなんだろう。
ちなみに透ちゃんは3階だ。近くが良かったからちょっと残念。
まあ私は青山くんの近くに配置しておいた方がいいだろうし、仕方ないと諦める。
皆と分かれて2階でエレベーターを降りる。
女子棟のこの階が私だけだと思うとちょっと寂しい。
部屋に入って制服を脱いでジャージとTシャツに着替えてから片付けを始めた。
既に運び込まれていたいくつかの段ボールの中身を広げる。
カーテンは家で使っていた青のパステルカラーのやつを付けてしまう。
この作業は嫌いだ。自分の背の低さを再確認させられる上に椅子に乗って必死で背伸びしてつけないといけないからすごく疲れるのだ。
カーテンが終わったらベッドも完成させて、上にお気に入りのぬいぐるみをいくつか並べる。
服やエプロンはタンスとクローゼットにしまった。
部屋の中央にちょっとかわいい感じの小さい絨毯を敷いて、その上にミニテーブルと座椅子を置く。
その正面あたりにテレビを設置してしまう。
一番大切な荷物は大きなコルクボードだ。
今まではお姉ちゃんと撮った写真を中心に家族写真を貼っていただけだった。
そこに最近撮った透ちゃんとの写真がいくつか貼ってある。
これからは皆との写真も増やしていけると思うと、すごくワクワクしてしまう。
コルクボードを机の上の所に引っ掛けておく。ここなら良く見えるだろう。
あとは写真立てとか本を置いたりとか、小物をいくつか置いたりして部屋は完成だ。
正直、お姉ちゃんのポスターとかを作って貼りたい気持ちはあるけどお姉ちゃんに気持ち悪がられたりしたら私の心が折れてしまう。
コルクボードと写真立ての写真で我慢だ。
調理道具も持ってきてるけど、部屋に置いても意味がない。
1階のキッチンに置かせてもらおう。
そう思って、調理道具を持って移動し始めた。
緑谷くんがオールマイトフィギュアの並び順で悩んでいたり、轟くんが何故か外にいたり、飯田くんが本の並び順で悩んでいたり、爆豪くんの部屋で切島くんが荷物整理を手伝っていたり……轟くんはよく分からないけどそれ以外の皆はそれぞれ部屋造りに励んでいるのが思考からよく分かった。
ブドウ頭はブドウ頭だった。なんだあの部屋。絶対に近寄らないことを心に決めた。
1階に着くとちょうど百ちゃんが荷物の選別を終えたらしかった。
「百ちゃん……選別終わった……?」
「あら、波動さん。ちょうど今終わったところですわ。波動さんはもうお部屋を作り終わったのですか?」
「ん……あとは……調理道具とか……ジャスミンとかを……キッチンに置かせてもらえれば……終わり……」
「早いですわね……私はこれからお部屋の片付けですわ」
百ちゃんが苦笑しながら言う。
これからだと大変そうだし、百ちゃんの部屋は天蓋付きのベッドっぽいのが置かれていて整理も大変そうだ。
やっぱり手伝おう。
「片付け……手伝おうか……?」
「え?いえいえ、大丈夫ですわ。悪いですし」
「部屋の中の荷物もいっぱいだし……大変そう……気にしないでいいから……嫌じゃなければ……手伝うよ……」
「……そうですか?では、お願いしてもよろしいですか?」
「ん……任せて……」
手早く調理道具をキッチンにしまって、百ちゃんと一緒に百ちゃんの部屋に向かった。
百ちゃんの部屋の片付けが終わる頃にはもう日が暮れ始めていた。
途中で響香ちゃんや透ちゃんも合流して手伝ってくれたおかげで早く終わったと思う。
そのまま三奈ちゃんやお茶子ちゃんとも合流して女子で集まって話したりしながら共有スペースに向かう。
私含めた女子皆ジャージにTシャツくらいのラフな格好をしていた。
梅雨ちゃんはお茶子ちゃん曰く気分が優れないってことだったけど、私は理由が分かっていたから何も言わなかった。
そんな感じで共有スペースに向かう途中で三奈ちゃんと透ちゃんが盛り上がり出した。
「ねぇねぇ!皆のお部屋がどうなってるか、気にならない!?」
「確かに!見てみたい!お部屋披露大会とかしてみるのもいいかも!」
「じゃあ男子に提案してみよ!!」
皆も特に反論していない。
というか皆私たち女子の部屋を見られるのを想定していない。
お部屋披露大会とか提案すると絶対私たちの部屋も見せろって言われると思うんだけど。
私は大丈夫だから別にいいけど、響香ちゃんとかは嫌がりそうな気もする。
でもまあ本人も今は乗り気だしいいのかな。
共有スペースに着くと男子たちもラフな格好でソファに座ってくつろいでいた。
そこに三奈ちゃんが、躊躇せずにすすっと近づいていく。
「男子部屋できたー?」
「うん。今くつろぎ中」
「あのね!今話しててね!提案なんだけど!お部屋披露大会しませんか!?」
男子たちの時が止まった。
その隙にもう言ったからいいよねとばかりに、三奈ちゃんと透ちゃんが男子棟のエレベーターの方に駆け出した。
私たちも慌てて追いかける。
男子もまずいと思ったのか急いで追いかけてきた。
まず最初に餌食になったのは緑谷くんだった。
「わああダメダメちょっと待―――!!!」
必死で止めようとする緑谷くんだったけど、努力の甲斐なく扉は開かれた。
そして見えたのは、分かりきっていたことだけどオールマイトだらけの部屋だった。
「オールマイトだらけだ、オタク部屋だ!!」
「憧れなんで……恥ずかしい……」
お茶子ちゃんはこういうオタク部屋も抵抗はないらしい。
若干頬を赤らめながら部屋を眺めている。恋心、隠す気あるんだろうか。
そんな様子を見て男子たちは戦々恐々としたり楽しそうと期待しだしたりと千差万別な反応をしていた。
次の部屋に行こうとしたところで、自分の部屋の扉を守るように立っていた常闇くんが目に入った。
「フン、下らん……」
目を閉じてそう言う常闇くんに、三奈ちゃんと透ちゃんは一層興味を惹かれたみたいだった。
二人で常闇くんを押しのけて部屋に入っていく。
私も入ったら凄い真っ暗でびっくりした。
波動を見ているだけじゃ明るさは分からないし。
「このキーホルダー俺中学ん時買ってたわぁ」
「男子ってこういうの好きなんね」
「暗い……流石にこれは分からなかった……」
「剣だ……カッコイイ……」
「出ていけ!!」
流石にここまで怒っている常闇くんを無視もできなくて、皆急いで部屋を出た。
隣の青山くんはキラキラし過ぎてて目によろしくなさそうな部屋だった。
「まぶしい!!」
「ノンノンまぶしいじゃなくて、ま・ば・ゆ・い!」
肉眼で見ると目がちかちかする。
目を閉じておこう。見なくても波動で分かるし。
「思ってた通りだ……」
「想定の範疇を出ない」
「あれ、瑠璃ちゃんなんで目ぇ閉じとるん?」
「まぶしくて……」
青山くんが私たちが部屋から出ていくのを釈然としない顔で見ている。
流石にちょっとかわいそうだったかな。でもまぶしいのは本当だからちょっと困る。
あと2階で残ってる男子の部屋はブドウ頭だけだ。
さっさと3階に行こう。期待して扉の隙間からこっちを見ているブドウ頭がいるけど、あんな部屋入るわけない。
そう思っているとお茶子ちゃんがワクワクした感じで残りの部屋の方を向く。
「楽しくなってきたぞ!あと2階の人は……」
「入れよ……すげぇの……見せてやんよ」
ブドウ頭が荒い息でだいぶアレな感じの顔で誘ってきた。
そんなブドウ頭を無視して、背を向けてエレベーターに向かう。
「3階行こ」
「あんな部屋……入るわけない……」
「あ、やっぱりそういう部屋なんだ」
「入れよ……なぁ……」
3階は尾白くん、飯田くん、上鳴くん、口田くんだ。
尾白くんの部屋は普通な感じ。
飯田くんの部屋は本とメガネが沢山ある部屋。
上鳴くんはなんかゴチャっとしてて落ち着かない感じの部屋だった。
そして次は口田くんの部屋だ。
部屋の整理をしている時から気になっていた子がこの中にいる。
私はちょっと期待しながら口田くんに声をかけた。
「口田くん……中の子……撫でてもいい……?」
口田くんは頷いて許可してくれた。
部屋が開くとともにウサギに近寄る。
名前は
この子はプライドが高い性格みたいだけど、口田くんに懐いていて尊重しているのがよく分かる。
「ウサギいるー!!可愛いいい!!」
「結ちゃん……かわいい……」
結ちゃんを優しく撫でていると他の女子も近づいてきて撫で始めた。
「結ちゃんって名前なの?」
「ん……プライド高めの男の子……口田くんのこと……好きみたい……尊重し合ってるのがよく分かる……」
「すごーい!そういうのも分かるんだ!?」
私が結ちゃんの思考を読んで伝えると、口田くんが嬉しそうに顔を赤らめた。
普段の様子から懐かれているだろうとは漠然と思っていても、思考を読んだ私にお墨付きをもらったのが嬉しかったみたいだ。
しばらく撫でた後、名残惜しいけど結ちゃんにまたねって手を振って部屋を出た。
口田くんの部屋を出ると、今まで部屋を好き放題言われていた男子たちが話し合っていた。
まぁこんな大会提案していればそうもなるだろうとしか思わない。
「釈然としねえ」
「ああ……奇遇だね。俺もしないんだ、釈然……」
「そうだな」
「僕も☆」
「男子だけが言われっぱなしてのはぁ変だよなぁ?"大会"っつったよな?なら当然!女子の部屋も見て決めるべきじゃねぇのか?誰がクラス一のインテリアセンスか、全員で決めるべきなんじゃねぇのかあ!!?」
ブドウ頭だけは物色が目的で提案してきているけど、これは拒否できない。
眠そうな轟くんを除いて他の男子も皆そう思っている。
「いいじゃん」
「え」
三奈ちゃんはにこやかに賛同して、それに響香ちゃんが顔を赤らめて驚きの声を上げる。
やっぱりこういう反応が返ってくるのは予想していなかったらしい。
「えっと、じゃあ部屋王を決めるってことで!!」
「部屋王」
「別に決めなくてもいいけどさ……」
案の定そういうことになった。
こうして、女子も含めて部屋王決定戦をすることになった。