波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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必殺技

入寮翌日。

私たちは教室に集まっていた。

 

「昨日話した通り、まずは"仮免"取得が当面の目標だ。ヒーロー免許ってのは人命に直接係わる責任重大な資格だ。当然、取得の為の試験はとても厳しい。仮免といえどその合格率は例年5割を切る」

 

「仮免でそんなにキツイのかよ」

 

峰田くんが相澤先生の説明に怖気づいたような反応を返す。

彼は結構こういう反応を返すことが多い。

エッチなことには興味津々で暴走するくせに、結構ビビりみたいだ。

 

「そこで今日から君らには一人最低二つ……必殺技を作ってもらう」

 

「「「学校っぽくてそれでいてヒーローっぽいのキタァア!!」」」

 

相澤先生の合図とともにミッドナイト先生、エクトプラズム先生、セメントス先生が教室に入ってきた。

皆盛り上がってるけど、必殺技って学校ぽいのだろうか。そこはよく分からない。

 

「必殺!コレスナワチ必勝ノ型・技ノコトナリ!」

 

「その身に染みつかせた技・型は他の追随を許さない。戦闘とはいかに自分の得意を押し付けるか!」

 

「技は己を象徴する!今日日必殺技を持たないヒーローなんて絶滅危惧種よ!」

 

先生たちが順番に簡単な説明をしていった。

 

「詳しい話は実演を交え合理的に行いたい。コスチュームに着替え、体育館γへ集合だ」

 

相澤先生のその言葉で皆行動を開始した。

それにしても、体育館γか。

私はお姉ちゃんとのトレーニングでもう使ったけど、確かにあそこなら皆で同時にトレーニングできるだろう。

セメントス先生もいるし、的も地形も自由自在だ。

 

 

 

体育館γ―――

 

「トレーニングの台所ランド、略してTDL!!!」

 

その略称は大分まずくないだろうか。某ネズミが出てきそうだ。

USJもそうだけどそういう何かにかぶれた感じの名前が多いな雄英。

 

「ここは俺考案の施設。生徒一人一人に合わせた地形や物を用意できる。台所ってのはそういうことだよ」

 

「なーる」

 

「前に使った時は……岩山を作ってくれてた……」

 

「使ったことあったっけ?」

 

私のつぶやきに透ちゃんが反応を返してくる。

 

「ん……お姉ちゃんと……波動の特訓した時に……借りた……」

 

「あ、そういうことね。自主トレかー」

 

そんなことを話していると、飯田くんが勢いよく挙手した。

 

「質問をお許しください!!何故仮免許取得に必殺技が必要なのか、意図をお聞かせ願います!!」

 

その質問を受けて相澤先生は説明を再開した。

 

「順を追って話すよ。落ち着け。ヒーローとは事件・事故・天災・人災……あらゆるトラブルから人々を救い出すのが仕事だ。取得試験では当然その適性を見られることになる。情報力・判断力・機動力・戦闘力……他にもコミュニケーション能力・魅力・統率力など、多くの適性を毎年違う試験内容で試される」

 

つらつらと述べる相澤先生の話を、他の先生たちも引き継いでいく。

 

「その中でも戦闘力はこれからのヒーローにとって極めて重要視される項目となります。備えあれば憂いなし!技の有無は合否に大きく影響する」

 

「状況に左右されることなく、安定行動を取れればそれは高い戦闘力を有している事になるんだよ」

 

「技ハ必ズシモ攻撃デアル必要ハ無イ。例エバ……飯田クンノ"レシプロバースト"。一時的ナ超速移動。ソレ自体ガ脅威デアル為、必殺技ト呼ブニ値スル」

 

例としてレシプロバーストが挙げられて飯田くんが感動している。

つまり自分の中での得意な技の型を作れということらしい。

私だと今のところ、あの波動のかたまりと両手の掌底突きとともに波動放出あたりだろうか。

 

そんなことを考えているとセメントス先生が岩山を作り出して、エクトプラズム先生が多数の分身を出した。

 

これから後期の授業が始まるまで、個性を伸ばしつつ必殺技を作るための圧縮授業をするということだった。

 

「尚"個性"の伸びや技の性質に合わせて、コスチュームの改良も考えていくように。プルスウルトラの精神で乗り越えろ。準備はいいか?」

 

こうして必殺技習得のための圧縮授業が始まった。

 

 

 

エクトプラズム先生の分身の1人と一緒に、少し離れた位置に移動する。

 

「サテ、始メルカ。案ガアルナラ見セテクレ」

 

「案なら……いくつか……」

 

私の返答を受けてエクトプラズム先生は見物の姿勢に入った。

いつでもどうぞってことか。

 

あの波動の塊を作るいつものやり方を始める。

林間合宿の最後に限界ギリギリまで波動を放出したせいか、だいぶ波動の総量が増えていた。

あの夜ほどではないけど、以前よりは大きな塊を作れるようになっている。

両手から放出した波動を循環させながら圧縮すると、すんなりこぶし大の波動の塊が出来た。

それを勢いよく前方の岩山に押し出す。

波動の塊は岩山を少し抉って消滅した。

 

「これなんですけど……」

 

「林間合宿ノ最後デ放ッタト報告ガアッタ技カ……必殺技トシテハ申シ分ナイ。名前ハアルノカ?」

 

「名前……ですか……?」

 

「アア。名前ハ重要ダゾ。自分ノ中ノイメージヲ固メルトイウ意味モアル。シカシ必殺技ハ市民ニ強烈ナ印象ヲ与エル。印象ニ強ク残ッテイルヒーローハ、イルダケデ市民ニ安心感ヲ与エラレル」

 

「なるほど……?」

 

確かにそう言う意味では重要かもしれない。オールマイトなんか技名もすごく有名だし印象にも残っている。

この波動の塊に名前を付けるとなると何がいいだろう。

波動の丸い球体。波動の玉。

真っ直ぐ飛んでいく波動の玉。

 

「波動弾……なんて……どうでしょうか……?」

 

「アア、イイジャナイカ。他ニナケレバソレヲ磨イテイコウ」

 

「他にも……あります……」

 

まだ実践で使える自信はあんまりない技だけど、それは今後の練習次第だ。

そのままの流れで人の大きさくらいの飛び出したコンクリートの前に立つ。

両手に波動を圧縮して、両手で同時に掌底突きをして掌底から一気に波動を噴出する。

人に向けるわけじゃないから加減とかはあんまり必要ない。

目の前のコンクリートは衝撃波が出た掌底付近から向こう側が見える程度の穴が開いてひびが入っていた。

 

「……ソレモ十分必殺技ノ域ニ達シテイルナ」

 

「これ……手以外からも出せます……技名って……どうしたらいいですか……?」

 

「別ニ一ツニマトメル必要ハナイ。技ノ型ソレゾレニ名前ヲ付ケルトイイ」

 

蹴りは蹴りで、掌底突きは掌底突きで名前を付けていいらしい。

まあ同じ個性の使い方でも型が違うだけで名前を変えているヒーローはいっぱいいるし当然か。

じゃあこの掌底突きに名前を付けないと。

こういう時にポンポン名前が出てくる爆豪くんは凄いと思う。

本人に言ったらポンポンじゃねぇよとか言いそうだけど。

掌底突きの名前……

掌から波動を放出しているから、波動掌とか?

でもなんか違う気もする。

 

発勁とかどうだろう。

武術を調べる時に中国武術も調べたけど、気とは違う伸筋の力とか伸展の力とか重心移動の力を勁と言って、武術の深奥のようなものらしい。

そんな勁の力を対象に作用させることを発勁というようだ。

武術の深奥を自分で名乗っちゃうのはちょっと恥ずかしいけど、意気込み的にはいいんじゃないかな。

武術の達人でもそうそう使えない波動の力を使って衝撃波を出して相手に与えるんだから、大きく外れた名前ではないはずだ。

技の名前に波動をつけることに拘る必要はないと思う。

エクトプラズム先生に言ってみたら普通に肯定してくれた。

 

そんな感じで悩んでいると、オールマイトの波動が体育館に近づいてきた。

療養していないでいいのかと思ったけど、ムキムキの姿になって吐血したり『必殺技なんてみたいに決まってるじゃないか』とか考えていたりすごい自由だ。

ズボンの後ろのポケットに付箋がいっぱい付いた本を入れている。なんだあれ。

オールマイトはそのまま皆のところを順番に回り始めた。

 

「名前ハ後カラ付ケテモ問題ナイ。訓練ヲ始メヨウ。波動弾主体ノ遠隔カ、格闘技主体ノ近接カ……ドチラガイイ?」

 

エクトプラズム先生はそう言って提案してくる。

波動弾主体で練習しても波動の量の問題で長続きしないし、格闘技主体で波動をガンガン使って体術を鍛えつつ波動の量を増やすのがいいかな。

 

「格闘技主体で……練習したいです……」

 

「ヨシ、ナラ組ミ手ヲシナガラ技ヲ考エテミロ」

 

そんな感じでエクトプラズム先生との技考案組み手が始まった。

エクトプラズム先生の身のこなしが凄すぎてほぼ当てられないっていう問題がありはしたけど、波動の圧縮放出を繰り返す練習にはなる。

組み手を続けているとこっちにオールマイトが近づいてきた。

どうやら私にアドバイスをしてくれるつもりのようだ。

近づいてきた時点で動きを止める。

エクトプラズム先生も特に疑問に思わずに様子見の状態に入ってくれた。

 

「やぁ波動少女!私がアドバイスして回るぞ!」

 

「はい……お願いします……」

 

「波動少女には遠回しに言っても読まれてしまうから、答えを言おうか。職場体験の後から使っているその技術も凄いが、最初から使っていた身体強化も充分凄かったと私は思うぞ。初心を忘れないことだ」

 

「初心……?」

 

「ああ。さっきからエクトプラズムにやっている衝撃波だけでも十分すごいが、身体強化をした状態なら衝撃波の使い道が増えるはずだ。試してみるといい」

 

つまり緑谷くんがOFAでやっているフルカウルみたいなことをやってみろということか。

確かに身体強化を前提にすれば多少無茶な動きもできる。

というよりも波動の圧縮を推進剤に使った蹴りとかが視野に入ってくると思う。

その動きが出来るならミルコさんの真似が出来るかもしれない。

というよりもオールマイトみたいな体格、パワー、個性に物を言わせた無茶苦茶な動きよりも、ミルコさんみたいな跳躍力と鍛えた身体と技術から繰り出す蹴り技の方が私には真似しやすそうだ。

 

「つまり……フルカウルですね……やってみます……」

 

「ああ。期待してるよ」

 

その後は、エクトプラズム先生相手に足や手を波動で強化しながら圧縮、放出を同時に使う訓練に勤しんだ。

なかなかコツが掴めなくて大変だけど、これが出来ればもっと選択肢が増えそうだ。

 

オールマイトも少しの間私を見てから他の子のところに向かっていった。

去って行く背中をチラリとみたらお尻のポケットのところに、「すごいバカでも先生になれる!」とかいう本が入っているのが見えてしまっていた。

それを見て無性に残念な感じがしてしまう。

頑張ってるとは思うし新米教師として努力しているのは認めるけど、せめてそういう本は隠して欲しかった。特に題名にすごいバカでもなんて書いてある本は。

アドバイスはすごく良かったのに相変わらず締まらないオールマイトだった。

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