波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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休日(後)

蝋燭の明かりで鹿や人の頭蓋骨が浮かんで見える暗い部屋の中。

私たちはそんな部屋で蝋燭を中心に輪になって座っていた。

 

「真っ暗な居間……開いていた鍵……聞き覚えのある金属音……家の中には誰もいなかったはず……アレ以外は……」

 

今は私が話す番だ。

大分前にネットで見かけた怪談がちょうどいい長さだったと思ってそれを話している。

話も終盤に差し掛かっていて、私も話し方を特にそれっぽく工夫して話している所だ。

 

「少女が玄関先で母を呼んだ時の……家の異常な静けさ……あんな状態で人なんているはずない……でも……もしいるとしたら……?少女が気が付かなかっただけで……アレがいた居間じゃない……どこかの部屋で母が寝ているとしたら……?少女の声に気が付かなかっただけかもしれない……少女はそう思って……確かめるために電話をかけることにしたの……」

 

私が雰囲気を込めて話しつつ、話すタイミングも皆の思考を読んで調整していく。

峰田くんと上鳴くんの思考が特に面白いことになっている。

 

「スーパーの脇にある公衆電話……震える手で受話器を持って……震える指で番号をゆっくり押していく……2回……3回……コール音が響いていく……そして"ガチャ"って誰かが電話を取った……耐えがたい瞬間に……少女は思わず息を呑んだ……」

 

私の話し方の工夫に皆面白いくらい怖がってくれていて、今も上鳴くんがゴクリと唾を飲み込んでいる。

 

「『もしもし、どなたですか?』って……母の声が聞こえて、少女はほっとした……安堵した少女も『もしもし、お母さん?』っていつも通りの声を返した……それに母も……『あら、どうしたの。今日は随分と遅いじゃない。何かあったの?』って心配したように……聞いてきた……でも……少女の手は……また震えだしていた……手だけじゃない……足も震えだして……立っているのがやっとだった……いくら冷静さを失っている少女でも……この異常には気付いた……」

 

「な、なんの異常……?」

 

上鳴くんが震える声で怖がりながら聞き返してくる。

 

「それは……少女の家には……居間にしか電話がなかったから……さっき居間にいたのは……少女の母じゃなくて……あの化け物だったんだよ……?」

 

「う、嘘でしょ、つまり……」

 

三奈ちゃんが信じられないと言った顔で呟く。

私は目を閉じて皆の波動と思考を読みながら囁くような口調を意識して話を続ける。

 

「あの化け物が居間にいたはずなのに……どうしてこの人は平然と電話に出ているんだろう……それに……今日は随分と遅いじゃないなんて……まるで最初から……ずっと家にいたかのような言い方……少女は……電話の向こうで何気なく話している人物が……得体の知れないもののようにしか思えなかった……そして……乾ききった口から……何とか絞り出した……『あなたは、誰なの?』って……そして……電話の女は『え?誰って……』って言ってから……少し間を置いて……さっきまでとは雰囲気が変わった様子で……『あなたのお母さんよ。ふふふ』って―――」

 

「ぎゃあああああああああああ!!」

 

私がさぁオチですよと言わんばかりにおどろおどろしい声でそう言うと同時に、峰田くんが断末魔もかくやと言う叫び声をあげた。

峰田くんは叫び声と同時に隣の障子くんの大きな腕にコアラのように抱き着いている。

……さっき怖がっているのは女子に抱き着こうとしている布石だなんて思っちゃったのは、ちょっとかわいそうだったかもしれない。

普通に女子のことなんて考えずに頼りになりそうな障子くんに抱き着いていた。

そんな峰田くんに対して梅雨ちゃんが冷静に言った。

 

「峰田ちゃん、うるさいわ」

 

「ほんとだよ!波動の話すごく怖かったのに、峰田のせいで怖さ半減!」

 

不満げに口を尖らせる三奈ちゃんに、峰田くんが涙目で反論する。

 

「おっ、お前ら怖くねーのかよ!それでも女子か!」

 

「怖かったのに冷めちゃったって言ってるの!!」

 

「それに悲鳴上げて抱き着くなんて、峰田くんが女子みたいなことしてるじゃん!」

 

冷静に反論する三奈ちゃんと、からかう調子で言う透ちゃん。

それを受けて峰田くんは、キッと私の方を睨んで反論してきた。

 

「波動の怪談が怖すぎんのがいけねーんだろ!これじゃなんのために参加したのかわかんねえじゃねーか!」

 

怖がりながらもついに本音を暴露して憤るブドウ頭。

かわいそうだったかもなんて前言撤回だ。

やっぱりそれが本音じゃないか。

 

「やっぱりそれ……言いがかりって言ってたのに……嘘吐き……」

 

「やっぱり暗がりにまぎれて抱き着こうとしてたんじゃない。さっき瑠璃ちゃんにあんなこと言ってたのに……まったく峰田ちゃんは」

 

一応とはいえ座るときにブドウ頭の両脇を障子くんと上鳴くんで固めておいてもらったのは間違いではなかった。

 

「男はな、ラッキースケベを常に探し続けるトレジャーハンターなんだよ!」

 

図星を突かれたブドウ頭が開き直る。やっぱり最低だこのブドウ頭。

 

「そんな男……峰田くんだけだから……」

 

「ああ。男を一緒くたにするな」

 

私の苦言に、障子くんも同調する。

ブドウ頭は相変わらずのブドウ頭だった。

それでも、今日から少しだけ寮生活でマシになるところがあると思うとだいぶ良い気分だった。

 

「ったくもう!でも今日からお風呂も安心して入れるもんね~」

 

「ええ、本当に良かったわ」

 

「ん……やっと自由に……のんびりできる……」

 

「見張りたてたり大変だったもんね!特に瑠璃ちゃんは見張りの頻度も多かったし!」

 

笑顔で話す私たちに、ブドウ頭が苦々しい顔で思い出したように言った。

 

「くっ、あのサポート科のいいおっぱいしたヤツめっ、余計なことを……!」

 

そう。私たちはブドウ頭の暴挙にいい加減嫌気がさして、コスチュームを相談するついでに発目さんに覗き対策のセキュリティアイテムの相談をしたのだ。

発目さんは意外にも親身になって、というか面白半分で根掘り葉掘り聞きながら相談に乗ってくれて、お風呂場の入口にセキュリティアイテムを取り付けてくれてたのだ。

もちろんお風呂場の外からの侵入対策も万全である。

 

「あっ、そうだ!こういう時のために痴漢対策のアイテムとかも頼んでみよっか!?」

 

「ん……ナイスアイデア……」

 

「そうだね!相談しちゃおっか!」

 

「やめろぉ!!これ以上オイラのラッキースケベの可能性を減らすな!」

 

私たちがわちゃわちゃとブドウ頭対策を話し合って、ブドウ頭が文句を言う。

そんな状況を我関せずと眺めていた常闇くんが口を開いた。

 

「まったく……さっきも言ったが、他の部屋でもいいだろう……」

 

「それはさっきも言ったじゃん!昼間なのに真っ暗になるところなんてここくらいなんだもん!それに骨とかあるしさー、雰囲気満点!」

 

ニッとサムズアップしながら天真爛漫なにっこり笑顔を見せる三奈ちゃんに、常闇くんがさらに顔を顰めた。

 

「お前たちが怪談を楽しむために飾っているわけではない……!」

 

「ちょうどよく蝋燭もあるしさ」

 

「ちょうどよくない……!」

 

「よし、分かった!じゃあ次はアタシが常闇も怖がるような怪談披露しちゃうよ!」

 

常闇くんの不機嫌がすごい勢いで加速しているけど、三奈ちゃんには一切通じていないようだった。

 

 

 

「……で、その部屋を見た霊能力者がビックリしたんだって。押入れの中に、幽霊がいっぱいいるって!超怖くない!?」

 

「ひぃぃ!!」

 

峰田くんがまた障子くんに抱き着く。

だけど他の皆はきょとんとしていたり、何とも言えない反応をしていた。

でもこれは話し方の問題だろう。

三奈ちゃんの普段からの性格もあるけど、すごく陽気でハイテンションな感じで話していて怪談という感じではなかった。

 

「あれ?怖くなかった?」

 

「そうねぇ、お話はよく考えると怖いんだけど、三奈ちゃんの口調が怖くないのよね」

 

「そうだよ!怪談なんだからもっと怪談らしく、おどろおどろしくビックリさせる感じで話さないと!さっきの瑠璃ちゃんみたいに!」

 

透ちゃんが私の話し方を例に挙げて言うと、上鳴くんが震えながら言葉を返した。

 

「確かに、波動の話し方はすっげー怖かったよな」

 

「ん……私は……普段から……こんな話し方だし……ちょっとそれっぽく話すだけで……効果は絶大……」

 

「瑠璃ちゃん、読心で調整もしてたでしょ。明らかにこっちの恐怖心を煽ってくることも結構あったし。流石ね」

 

「……バレちゃってた……そう……ちょっとズルして……恐怖心を煽って……助長した……」

 

「波動もすごいけど、私もめっちゃ怖く話してたつもりなんだけどなー」

 

自分の知っている一番怖い話をしてくれていたらしかった三奈ちゃんがムッとした顔で唇を尖らせる。

だけど、すぐに良いことを思いついたと言わんばかりの明るい表情になって話し始めた。

 

「ねえ、常闇も怪談話してよ!常闇の超怖そう!」

 

「あ、確かに!普通の口調が波動に負けず劣らず怪談向きだよな」

 

「……どういう意味だ」

 

上鳴くんが同意する一方で、常闇くんが不満そうに呟いた。

 

「私も聞いてみたいわ、常闇ちゃんの怖い話」

 

「ん……私も……聞いてみたい……」

 

「私も私もー!」

 

「よっ、怪談王!」

 

「常闇、そんな怖くなくてもいいぞ……?エロ怖な話なら怖くてもいいけどよ……」

 

皆の期待の視線を向けられて、常闇くんは困ったようにしながらも咳ばらいをして満更でもなさそうな様子で話し始めた。

 

 

 

常闇くんは百物語の話をしだした。

いつもは99個までしか怖い話をしてなかったのに、金髪の女が参加した時に無理矢理100個目の話をしだして、終わった瞬間姿を消した。

その後百物語の参加者が1人、また1人と金髪が1本絡まった状態で死んでいくというお話だ

いつもの口調に凄く恐怖心を煽るおどろおどろしい話し方が加えられて、すごく雰囲気が出ていて怖い。

ブドウ頭だけでなく、私たち女子4人も障子くんの近くに移動してしまう程だった。

障子くんの後ろに隠れたり腕に触れそうなくらい近くに寄ったり、ブドウ頭が冷静だったらハーレムだなんて怒りそうな状況になっていた。

そのブドウ頭本人は障子くんがガッチリを確保してくれていたから、私たちにセクハラしたりすることはできなくなっていた。

 

常闇くんの話はじわじわと皆に恐怖心を抱かせるようなもので、話し終わる頃には皆本気で怖がっていた。

ブドウ頭なんか男のプライドを捨ててトイレに着いてきてくれるように障子くんに懇願しているくらいだ。

そんな恐怖心から逃れるためなのか、またブドウ頭が妄言を宣った。

 

「な、なぁ怖いの忘れるために今度はエロ話しようぜ!オイラの部屋でとっておきの動画見ながら!」

 

「「「「却下」」」」

 

必至で私たち女子4人に縋ってくるブドウ頭。当然私たちは即座に拒否した。

 

怪談は常闇くんの話の教訓もあって、もう終わりにしようということになった。

怖かったけど、なんだかんだで楽しい怖い話大会だった。

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