波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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サバイバル訓練(中)

「瑠璃ちゃん!瑠璃ちゃん!」

 

身体中が激痛に襲われていて、動かすことすらできない。

なんとか意識は保っているけど、油断するとすぐに意識が飛んでしまいそうになる。

透ちゃんが呼びかけてくれているけど、私は反応することもできずにいた。

 

「葉隠!波動!無事か!?」

 

少し離れた位置から障子くんの声が聞こえてきた。

 

「ここにいるよ!でも瑠璃ちゃんが私を庇って!反応がないの!」

 

「っ!?葉隠、落ち着け!詳細な位置を知りたい!さっきの光は出せるか!?」

 

「う、うん!」

 

この崩落で非常電源が壊れてしまったらしく、周囲は真っ暗のようだった。

障子くんの指示に従ってすぐ近くにいる透ちゃんが光る。

それと同時に私の状態が透ちゃんには見えたらしくて、明らかに動揺し始めた。

 

「る、瑠璃ちゃん……!?こ、こんなの、こんなっ……私のせいで……!?瑠璃ちゃん!?瑠璃ちゃん!?」

 

「……っ……ぅっ……」

 

錯乱した透ちゃんが、私の身体を揺すってくる。

でも揺すらないで欲しい。揺すられる度に激痛が走って意識が飛びそうになる。

明らかに異常な透ちゃんの声に、障子くんが再び声をかけてくる。

 

「葉隠!?落ち着け!今そちらに合流する!波動の息があるかだけを確認したら、波動にはもう触れるな!今荒々しく触れると命取りになる可能性すらある!峰田!そっちの尾白と砂藤は無事だったんだろう!?こっちに来てくれ!!ここの瓦礫にもぎもぎを付けて無理矢理退けられるか!?」

 

「な、なんだよ障子!?どういうことだよ!?」

 

「いいからやってくれ!一刻を争う!」

 

峰田くんはまだ状況が飲み込めていないようで、荒々しく怒鳴る障子くんに困惑している声が聞こえてくる。

峰田くんのもぎもぎをくっつけて取っ手代わりにして瓦礫を引っ張って無理矢理退けたり、障子くんの複製腕で退けていって少しずつ近づいてくる。

透ちゃんは自分でも冷静になれていないことが分かったのか、泣きながらではあったけど障子くんの助言通り揺するのをやめてくれていた。

 

そしてようやく近くの瓦礫が取り除かれて障子くんと峰田くんが顔を出した。

 

「葉隠!波動!ここか!」

 

障子くんと峰田くんが駆け寄ってきて息を呑んだのが伝わってきた。

 

「っ!?」

 

「お、おい、これ!?」

 

障子くんが駆け寄ってきて首に手を当てられる。

脈を測られている。その動きだ。

 

「波動、分かるか。分かるなら何かしらの反応を示してくれ」

 

障子くんの声かけに、声で返答できなくて小さく頷くことで返答する。

 

「意識はあるな。頸動脈も触れる。脈拍も多少早いがそこまでではない。呼吸も異常な仕方ではない。すまん波動、顔に触れるぞ。葉隠、光が欲しい。そのまま光った状態で手を貸してくれ」

 

「う、うん……」

 

障子くんに閉じていた瞼を開かれて光が当てられる。それを両目にやられた。

 

「反射にも異常はなし……問題は外傷か。頭部からの出血に、明らかに折れている腕。全身打撲に加えて、動けない様子を見るに他にも骨折している可能性が高い。今すぐどうというわけではないが、一刻を争うのは変わらないか」

 

「しょ、障子、どうしてそんなに冷静でいられるんだよ!?」

 

峰田くんの困惑した声が聞こえてくる。

そんな彼を尻目に、障子くんはテキパキと傷の位置を確認し、手慣れた様子で応急処置を始めた。

 

「応急処置には多少の心得がある。それにここで取り乱すと、助かるものも助からなくなる。峰田、すまないがそのマントを借りても良いか?応急処置で使いたい」

 

「そ、それはいいけどよ……」

 

峰田くんは躊躇なくマントを障子くんに渡した。

障子くんはマントを何度か折って鉢巻状にすると、私の頭の出血している箇所に巻いて圧迫止血のような感じにしてくれた。

 

「これでこの場で出来ることは全てか……葉隠、この後は早急に脱出して波動を地上に送り届ける必要がある。そのためには全員の協力が不可欠だ。当然、葉隠の協力も。動揺するのは分かる。だが、波動のためだ。協力してくれ、頼む」

 

障子くんにそこまで言われて、透ちゃんもようやく冷静さを取り戻したようだった。

 

「う、うん……!私のせいでこうなったんだもん……!するよっ!協力っ!」

 

「よし。峰田、まずは尾白と砂藤と合流したい。さっき声がした方に案内してもらえるか。葉隠は強く光ったまま俺たちが2人を連れてくるまでここで波動と待っていてくれ。異常があったらすぐに教えて欲しい」

 

「分かった!!」

 

「こっちだ!ついてきてくれ!」

 

峰田くんが障子くんを連れて来た道を戻っていった。

透ちゃんは障子くんたちが離れた段階で遠くまで照らせるように強い光を放ち始めた。

私は目を閉じているからその影響は特にない。

 

「砂藤!尾白!波動が負傷した!早急に脱出するためにまずは合流したい!」

 

遠くで障子くんが尾白くんたちに呼びかける声が聞こえる。

すぐに瓦礫を崩すような音がしだしたし、合流するために急いで作業を始めたようだった。

 

透ちゃんが心配そうに私を見つめているのが分かる。

私も動かないでいれば多少痛みが引いてきたのもあって、ようやく話せそうな感じになってきた。

 

「透ちゃん……」

 

「瑠璃ちゃん!?大丈夫!?」

 

「全身痛くて……動けないけど……最初よりは……まし……」

 

大丈夫ではないけど、透ちゃんを安心させるために強がって見せる。

 

「ごめんね、ごめんね……!私を庇ったから……!」

 

「だい……じょうぶ……私が……やりたくて……やったことだから……」

 

透ちゃんが顔を歪ませながら懺悔のように謝罪してくる。

でも透ちゃんがあんな崩落に巻き込まれたら、対応の方法なんてない。

仕方なかったのだ。

そのことを伝えても透ちゃんはひたすら謝り続ける感じで変わらなかった。

 

 

 

少しして障子くんたちが戻って来た。

尾白くんが訓練の要救助者役だった人形を抱えている。

どうやら落下地点の近くに落ちていたらしい。

でも持ってくるのは正解だ。

多分この負傷者が増えたり、突然のアクシデントも含めての訓練なんだと思う。

尾白くんと砂藤くんが絶句しているけど、時間がない。

早く脱出しないとまた崩落が起きるかもしれない。

 

「っ!?おいおいっ!?波動、大丈夫か!?」

 

「ここまでの怪我なんて思ってなかったんだけど!?」

 

驚愕している尾白くんと砂藤くんの2人を放置して障子くんが近づいてくる。

 

「待たせたな。波動は変わりないか」

 

「……ん……多少は……ましになった……」

 

「話せるようになったのか!」

 

私が障子くんに返答すると、峰田くんが涙目で声をかけてきた。

いつもみたいな邪な感情とか視線とかを一切感じない純粋な心配と喜びを向けられて、ちょっと困ってしまう。

 

「……迷惑かけて……ごめんね……動けなくて……」

 

「いや、波動が庇わなければ葉隠が取り返しのつかない状態になっていた可能性もある。迷惑なんてことはない」

 

「そうだよ!迷惑なんてことないよっ!!」

 

透ちゃんにも激しく抗議される。

そんなこと話をしていたら、周囲からまたパラパラと嫌な音がしだした。

 

「っ!?ダメだ!早くここを出るぞ!周囲の壁が脆くなっている上に、水の音がする!ここが沈むかもしれない!」

 

「沈むって、マジで言ってんのかよ!?どうすりゃいいんだよそんなのおおお!?」

 

「周囲に貯水槽か地下水か分からないけど、とにかく水があるってことだろ!?こんな地下で水没なんてしたら助からないよ!急いで脱出しよう!」

 

尾白くんが障子くんの説明をかみ砕いて方針を示してくれる。

峰田くんが慌てているけど、障子くんと尾白くんの言う通りだ。

 

「波動は俺が運ぶ!葉隠はそのまま周囲を照らし続けてくれ!皆は進行ルートの確保を!」

 

障子くんのその指示に反対する人はいなかった。

そのまま障子くんは私の側に来る。

 

「波動、持ち上げるぞ。痛いかもしれないが、耐えてくれ」

 

「……ん……ごめんね……っ……」

 

障子くんはゆっくりと静かに持ち上げてくれたけど、それでも全身に耐えがたい激痛が走った。

脂汗が滲んでいるのが分かるし、顔も歪んでしまう。

そんな私に、障子くんは申し訳なさそうな表情で声をかけてきた。

 

「波動。辛い所すまないが、俺が指示する方向が間違っていたらどんな手段でもいいから俺に教えてくれ。音や視覚だけでは正確なルートを指示し続けられるとは思えない」

 

「……ん……わかっ……た……」

 

「すまん……!皆!こっちだ!」

 

そこまで言って、障子くんは私を抱えながら皆を先導し始めた。

今向かっているのは、階段の方向だ。

途中に瓦礫の山が結構あって着くまでが大変だけど、階段は無事みたいだし辿り着ければひとまず上の階に逃げて水没の危機は免れることができる。

地下4階に残っていた三奈ちゃんたち4人も行動を開始していて、私たちと合流するために下の階に向かい始めてくれていた。

三奈ちゃんたちは、口田くんが虫で、響香ちゃんが音で周囲の確認をして、青山くんが照明、三奈ちゃんが酸で瓦礫を溶かして進んでいるようだった。

 

「ここを通りたい。砂藤、頼めるか」

 

「おう!任せろ!」

 

砂藤くんがシュガードープで身体能力を向上したパンチで、一気に瓦礫を砕いた。

力加減を間違えると崩れるリスクがある方法だけど、その辺りは本人的には一応気を付けてくれているみたいだ。

 

「よし!どーだ!」

 

「ああ!上出来だ!」

 

「やるじゃねぇかよ砂藤!」

 

移動を続けながら力瘤を見せて皆にアピールする砂藤くんに、皆が称賛の言葉をかけていく。

その後も、そんな感じの作業を何度か続けた。

透ちゃんが光りながら手作業で瓦礫をどけたり、峰田くんがさっきみたいにもぎもぎを取っ手のようにつけて瓦礫をどけたりと協力していたし、尾白くんの尻尾で砕いたりといった活躍も何度かあった。

だけど砂藤くんのパワーが特に重宝されていたのは言うまでもない。

瓦礫の山の大きさによっては一撃で粉砕できるし、当たり前ではあるんだけど。

 

障子くんも私を運びながら耳や目を作って周囲を観察し続けてくれていた。

それでもやっぱりこの瓦礫の状況だと最短ルートを指示し続けるのは本人も言っていた通り困難で、私も時々障子くんに声をかけて方向だけ伝えたりしていた。

そんな感じで進んでいって、なんとか地下6階から地下5階に上がる階段に辿り着いた。

階段に辿り着く頃には地下6階の壁には亀裂が大量に出来ていて、そこから水が漏れ出してきていた。

 

 

 

 

「なんとか水没するまでに階段に辿り着けたか」

 

「……ん……障子くんの……指示のおかげ……」

 

「波動、無理に話さなくていい。ただの独り言だ。すまん」

 

私が顔を歪めながら声を出して障子くんのつぶやきに反応すると、障子くんが申し訳なさそうな顔で謝って来た。

私も独り言なのは承知で声をかけたんだけど……

 

皆で階段を上っていく。

階段はどうしても揺れてしまうのもあって、また身体に激痛が走る。

階段を上りきったあたりで、ちょうど正面にあった瓦礫の山が溶けた。

三奈ちゃんたちとも、なんとか合流出来たみたいだった。

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