波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

81 / 268
トレーニングと女子会

そんなこんなでサバイバル訓練を終えた翌日。

私の怪我は後遺症や傷跡もなく綺麗に治っていた。

体力もばっちり回復して体調も万全だ。

 

そんな感じで私は大丈夫なんだけど、透ちゃんがだいぶ思い詰めている。

自分のせいで私が怪我をしたと思っているんだろう。

私が勝手に助けただけだから気にしないでいいって何回も言ったんだけど、透ちゃんは全然納得してくれていなかった。

 

TDLに向かう道中で、思い詰めていた透ちゃんが話し出した。

 

「よし、決めた!」

 

「何を……決めたの……?」

 

透ちゃんの思考はトレーニング内容に関してだったから大体想像はつくけど確認する。

 

「この前みたいなことがないように、私も体術とか鍛える!」

 

「体術……?」

 

「うん!私がもっとうまく動ければ、瑠璃ちゃんが無理して私を庇う必要なかったんだから!」

 

透ちゃんが決意したような表情でぐっと手を握っている。

 

「もう足手まといになりたくないから!それに透明な私がこっそり近づいて、すぐにヴィランを制圧できるだけの体術を使えれば武器になるし!!」

 

「確かに……見えない何かに……急に襲い掛かられて……動けなくされたら……怖いね……」

 

「そういうこと!よし!!そうと決まれば早速エクトプラズム先生に相談してくる!!うおおおおおお!!」

 

透ちゃんがすごい勢いで走っていってしまった。

まだ悩んではいるけど、さっきよりも前向きな思考になっていた。

トレーニングの方向性も悪くないとは思うし、見守ることにしよう。

 

私も自分のトレーニングに集中しないと。

 

 

 

私はTDLでコンクリートの塊から少し離れた位置に立っていた。

右腕に波動を集中して、さらに同時に肘と拳に波動を圧縮していく。

拳を構えて、パンチの為に腕を動かしだすと同時に肘の波動を噴出する。

 

「真空波……!」

 

風を切りながら凄い勢いで繰り出されるパンチの途中で、さらに拳から波動を噴出する。

すると目の前のコンクリートが波動の衝撃波で穴が開いてひびが入った。

 

理論はよく分かっていないけど、波動は波みたいなものだからそれを素早いパンチで増幅しながら正面に伝播させているっていう感じなのかな。多分。

まぁ衝撃波を飛ばしているようにしか見えないから、もうその認識でいいかとも思っている。

波動を用いた技としては波動弾の方が威力もあるけど、こっちは波動の消費量が少ないのがいい所だ。

技の名前は真空波にした。

飛ばす波っていうことで考えた名前だけど、悪くない名前だと自分では思っている。

完成度はそこそこ。波動弾よりも多用出来そうな波動の消費量でこれなら悪くない。

 

そしてもう一つ。

昨日片手で波動弾を作れたから今日も試してみたら、大きさは両手で作るものには劣るけど片手でしっかりと作り出せた。

そのまま手を向けて正面に飛ばすように意識するとそのまま真っ直ぐ飛んでいく。

片手を向けるだけでいいなら小回りも効いて凄く使いやすい。

威力重視の両手と小回り重視の片手。悪くない使い分けだと思う。

手の甲のクリスタルにも波動を込めること自体には成功したから、あとはここから取り出せるようになれば両手同時に波動弾を作るとかもできるようになるかもしれない。

 

透ちゃんはエクトプラズム先生相手に透明なことを利用した奇襲を意識しながらの組み手をしていた。

あれ、私だからあんまり怖いとは思わないけど、見えてない人だと十分すぎる脅威だよねと漠然と思いながらもスルーした。

 

 

 

そんな感じで私が自分の必殺技に磨きをかけていたら、爆豪くんが砕いた岩がオールマイトの上に落下していった。

緑谷くんが飛び出してるから大丈夫だと思うけど、波動弾を作りつつ私もオールマイトの方に走り寄っておく。

 

蹴り技をある程度完成させたらしい緑谷くんは、フルカウルをしながら強烈な蹴りを放って岩を砕いた。

 

「大丈夫でしたか!?オールマイト!」

 

「ああ!」

 

オールマイトは怪我一つない。

周囲に危険が残っていないことを確認してから、循環させていた波動の流れを止めて波動弾を霧散させる。

それにしても、緑谷くんはもうOFAを使っても怪我をしていない。

緑谷くんもだいぶ成長しているみたいだった。

 

「何、緑谷!?サラッとすげえ破壊力出したな!」

 

「おめーパンチャーだと思ってた」

 

私以外にも近寄ってきていた切島くんと上鳴くんが緑谷くんに声をかける。

緑谷くんたちがコスチュームについて話しているのを尻目に、オールマイトが『もう私、"守られる側"か』なんて考えている。

でもオールマイトは凄く長い間ずっと平和を守り続けてきたんだから、いい加減休んで守られる側になってもいいと思う。

 

 

 

私が自分の訓練に戻ろうとしたら、TDLの入口からB組が入って来た。

まだ時間はあるのに、もう交代を要求しにきたようだ。

物間くんかブラドキング先生の提案かな。

 

「そこまでだA組!!!今日は午後から我々がTDLを使わせてもらう予定だ!」

 

「B組」

 

「まだ……時間内なのに……」

 

「イレイザー。さっさと退くがいい」

 

「まだ10分弱ある。時間の使い方がなってないな」

 

私が思っていることを言うと、相澤先生も同感だったようでブラドキング先生の声掛けに反論していた。

そんな口論を始める先生の後ろから、タキシードのようなコスチュームを着た物間くんがいつもの高笑いをしながら姿を現した。

 

「ねえ知ってる!?仮免試験て半数が落ちるんだって!A組全員落ちてよ!!」

 

なんで彼はこう、A組相手になるとすごくひねくれた感じになるんだろうか。

私に対してしてくれていた気遣いを皆にしてくれるだけでも評価が変わると思う、なんて思ったけど……

私に対する寮の時の対応も青山くんの時も捻じ曲がっていたから、評価はそんなに変わらないかと思い直す。

うん。本当にもったいない捻じ曲がり具合だ。

今も思考は不安なのに「アハハハハ!!どっちが上かはっきりさせようかハハハハハ!!」なんて口では言っている。

これは不安なのを誤魔化すために私たちを煽ってるな。

 

「しかし……もっともだ。同じ試験である以上俺たちは蟲毒……潰し合う運命にある」

 

「だから、A組とB組は別会場で申し込みしてあるぞ」

 

常闇くんが物間くんの意見にある程度の同意を示すと、先生が説明を始めた。

 

「ヒーロー資格試験は毎年6月・9月に全国三か所で一律に行われる。同校生徒での潰し合いを避けるため、どの学校でも時期や場所を分けて受験させるのがセオリーになっている」

 

ブラドキング先生のその説明を聞いて、物間くんはホッと安堵の溜め息を吐いた。

 

「直接手を下せないのが残念だ!!アハハハハ!!」

 

「物間くん……不安みたい……」

 

「だよな、ホッつったし」

 

「病名のある精神状態なんじゃないかな」

 

私が指摘すると、切島くんと上鳴くんも物間くんの態度に物申した。

まぁ私のことも気にしないでこんなこと言っているくらいだし、物間くんもこのくらいは気にしないだろう。

 

「1年の時点で仮免を取るのは全国でも少数派だ。つまり、君たちより訓練期間の長い者、未知の"個性"を持ち洗練した者が集うワケだ。試験内容は不明だが、明確な逆境であるのは間違いない。意識しすぎるのも良くないが、忘れないように」

 

相澤先生はそう言って話を締めた。

そんな話をしているうちに、私たちA組のTDL使用時間は終わってしまった。

 

 

 

それから今日の授業も終わって、寮の共有スペースに女子で集まっていた。

三奈ちゃんが疲れ切った顔でぐでぇっとしながら気の抜けた感じの声を上げる。

 

「フヘエエエ毎日大変だぁ……!」

 

「圧縮訓練の名は伊達じゃないね」

 

「あと一週間もないですわ」

 

「ん……もう時間ない……」

 

夏休みなんてなくて大変な日々ではあるけど、必要なことではある。

1年の内から仮免を取ろうとすると仕方ないのだろう。

私がそんなことを考えていると、透ちゃんが皆のトレーニングの進行具合を聞き出した。

 

「ヤオモモちゃんは必殺技どう?」

 

「うーん……やりたいことはあるのですがまだ身体が追いつかないので、少しでも個性を伸ばしておく必要がありますわ」

 

「梅雨ちゃんは?」

 

「私はよりカエルらしい技が完成しつつあるわ。きっと透ちゃんもびっくりよ」

 

百ちゃんは微妙な感じで梅雨ちゃんは順調みたいだ。

梅雨ちゃんのカエルらしい技っていうのがちょっと気になる。舌で何かしたりするのだろうか。

 

「瑠璃ちゃんは順調そうだよね!」

 

考え込んでいたら私には質問じゃなくて確信しているかのような聞き方をしてきた。

 

「ん……まあ、順調……」

 

「波動はなんか張り手で岩砕いたり青い塊飛ばしたり衝撃波みたいなの飛ばしたり凄いことになってるよね。4月は全く戦えなかったとか信じられないくらい。衝撃波とかはまだ身体強化の延長とかで分かるけど、あの青いのなんなの?」

 

「あれは……波動の塊……循環させながら圧縮すると……何故かああなる……お姉ちゃんの必殺技を参考にした……」

 

私が片手に小さな波動弾を作るとお茶子ちゃん以外の皆が興味深そうに見ていた。

お茶子ちゃんは緑谷くんのことで考え込んでいる。乙女だ。

循環させるのをやめて波動弾を霧散させる。

 

「なるほどねぇ。今なら轟と戦ってもあそこまで一方的な感じにはならないんじゃない?」

 

「……どうだろ……轟くんも……強くなってると思うし……」

 

あの時の轟くんとなら多少は勝負になるかもしれないけど、轟くんだって訓練をしていたんだからあの時と同じような結果になるような気がしないでもない。

それ程轟くんの個性の応用力は半端ないのだ。昔はゴリ押し一辺倒だったけど、最近は変わってきている気もするし。

 

「透ちゃんは……?」

 

「私?私はねー、ほらこの通り!」

 

透ちゃんが昨日みたいに七色に輝く。

相変わらず目が痛い。

 

「そ、それはどういう原理なのですか?」

 

「すごいけど、不思議な光り方ね」

 

「ふふふ、でっしょー?目が眩むくらいの光量にしてフラッシュみたいな感じにもできるよ!名前は、"集光屈折ハイチーズ"!」

 

「ざ、斬新な名前ですわね」

 

透ちゃんの技名に百ちゃんが苦笑して返す。

だいぶ奇抜な名前だ。自分で考えたのだろうか。

それはそれとして私が気になっているのは体術の方だ。

 

「体術……どう……?」

 

「そっちかー。そっちはまだ全然。やり始めた初日だから仕方ないんだけどね。エクトプラズム先生には、せっかく透明なんだから組み手中に声出して居場所を晒すなって怒られちゃった」

 

「先生……正論……」

 

「だよねぇ。そうなんだけど普段と真逆な感じにしないといけないから慣れるまでが大変そう」

 

透ちゃんは普段からオーバーなリアクションを取ったり、ボディランゲージを駆使したり、わざと声を出すように意識していたり周囲に意識してもらえるように行動している。

先生の言っていることは正論でも慣れるまでは時間がかかるだろう。

そんな感じで考えていると透ちゃんがお茶子ちゃんに話を振った。

 

「お茶子ちゃんは?」

 

お茶子ちゃんはまだ緑谷くんのことを考えていて全く気付いていない。

 

「お茶子ちゃん?」

 

「うひゃん!?」

 

そんなお茶子ちゃんに梅雨ちゃんが指でちょんっと触りながら声をかけると、お茶子ちゃんは飲んでいた飲み物を噴き出しながら声を上げた。

 

「お疲れのようね」

 

「いやいやいや!!疲れてなんかいられへん、まだまだこっから!……のハズなんだけど、なんだろうねぇ。最近ムダに心がザワつくんが多くてねぇ」

 

隠すつもりがあるのかすら分からないお茶子ちゃんの態度に、三奈ちゃんがキラリと目を光らせながら口を開いた。

 

「緑谷のことだ」

 

「なっ!!?」

 

お茶子ちゃんが固まった。

少しして再起動したと思ったら、手をシュバババって動かしながら顔を真っ赤に染めて言い訳をし始めた。

 

「なにいって!?ザワつくって言うただけやん!?知らん知らん!!」

 

「ほんとに〜?」

 

「ゲロっちまいな?自白した方が楽になるんだよ」

 

そんなあからさまな態度に響香ちゃんすらも参加し始めた。

 

「……で、そこのところどうだったの瑠璃ちゃん!?お茶子ちゃんの内心は!?」

 

「ちょっ!?瑠璃ちゃんに聞くのはズルやん!?」

 

「……流石にそれを言うのは……かわいそうかなって……」

 

ついに私に聞き出した透ちゃんにお茶子ちゃんが憤慨する。

でも流石にそれを言うのは私もどうかと思うから言うつもりはない。

 

「でもそこでズルって言うってことは考えてたんでしょ!?緑谷くんのこと!!」

 

「んなっ!?」

 

図星を突かれたらしい。お茶子ちゃんが何も言い返せなくなっている。

まあお茶子ちゃんの自爆だから私のせいではない。

 

「それに……私と瑠璃ちゃんは見てたんだよ!発目さんが緑谷くんに抱きついて胸押し付けてた時のお茶子ちゃんを!そのことでしょ!?ザワつくのって!!」

 

「なにそれなにそれ!?葉隠そんなネタ隠してたの!?詳しく教えて!!」

 

「そういえば、麗日エキスポの時に緑谷がメリッサさんと2人で回ってるの見た時も雰囲気違ったよね?」

 

「……ちゃうわ!知らん知らんっ!!チャウワチャウワ!!」

 

どんどん追い詰められていってお茶子ちゃんは、合宿の時と同じように自分の顔を手で隠して違うと主張しながら浮かび出した。

 

「浮いた」

 

「お茶子ちゃん教えてよー!」

 

「無理に聞き出すのは良くないわ」

 

「ええ、それより明日も早いですしもうオヤスミにしましょう?」

 

「えぇーーー!!やだ!!もっと聞きたいーーー!!なんでもない話でも強引に恋愛に結びつけたいーーー!!」

 

三奈ちゃんと透ちゃんはまだ聞きたそうにしているけど、梅雨ちゃんと百ちゃんが仲裁に入った。

流石にこれ以上はかわいそうだと思ったみたいだ。

まあ三奈ちゃんはすごく不満そうにしているから、まだ続きそうな気がしないでもないけど。

 

「本当に私……そんなんじゃ……」

 

固まったお茶子ちゃんがぽーっとした表情で窓の外を見始めた。

お茶子ちゃんの視線の先では案の定緑谷くんがシュートスタイルの練習をしている。

 

「……お茶子ちゃん……隠すつもりある……?」

 

「弁明もやめて窓の外をうっとりした感じで見出しちゃった……瑠璃ちゃんがそう言うってことは……これは、もしかしなくてもそういうこと!?」

 

「……視線の先で……緑谷くんが……蹴り技の練習中……」

 

キャーという三奈ちゃんと透ちゃんの黄色い声が共有スペースに響き渡った。

しばらくお茶子ちゃんへの質問攻めが終わらなかったのは言うまでもない。

今回はお茶子ちゃんに話が集中していて、私の方に飛び火したりしなくて本当に良かったと思った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。