波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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一次試験(前)

受験者全員にボールとターゲットを配り終わって、一次試験開始まで1分を切った。

私は雄英潰しのことを共有するために緑谷くんの方に駆け寄る。

 

「緑谷くん……多分気づいてると思うけど……」

 

「うん。波動さんがそう言ってくれるってことは、間違いないってことだよね。皆!あまり離れず、一塊になって動こう!」

 

緑谷くんはすぐに理解して皆に声をかけてくれた。

だけどそれに反発する人もいた。

 

「フザけろ。遠足じゃねぇんだよ!」

 

「バッカ待て待て!」

 

すぐに爆豪くんが緑谷くんに反発して離れていってしまった。

……私が言ったら残ってくれたりしたんだろうか。無理か。無理だろうな。

切島くんも爆豪くんの後を追いかけていく。

爆豪くんのことはもう切島くんに任せよう。

 

「俺も大所帯じゃ却って力発揮出来ねぇ」

 

轟くんも早々に離れていってしまった。

轟くんならまぁその通りではあるんだけど、林間合宿とかで小回りの利く技を使っていたと思うんだけどなと思ってしまう。

まあ爆豪くんと轟くんなら難なく対処するだろうし、切島くんも爆豪くんと一緒なら大丈夫だろう。

今はそれよりも自分たちのことだ。

 

「緑谷時間ねぇよ!行こう!!」

 

「ん……峰田くんの言う通り……」

 

峰田くんの呼びかけに答えて、残りの17人で固まって移動し始めた。

移動しながら緑谷くんが皆に説明してくれる。

 

「先着で合格だと同校同士の潰し合いはないから、むしろ手の内を知った仲でチームアップが勝ち筋……つまり、学校単位での対抗戦になる……!」

 

「ん……ほとんどの人の狙いは……共通してる……」

 

「つ、つまり……?」

 

峰田くんも薄々察したのか怖気づきながら聞いてくる。

 

「学校単位ならどこを狙うのかって話になるんだよ。つまり……全国の高校の中で唯一個性不明っていうアドバンテージが無くなっている僕たちが、真っ先に集中攻撃される可能性が高い……!そうでしょ!波動さん!」

 

「正解……来るよ……!!」

 

 

 

『START!!』

 

 

 

開始の合図が響いた瞬間に、私たち雄英に対して全方位から他校の生徒たちによる集中攻撃が始まった。

大量のボールが四方八方から投げつけられる。

 

皆各々出来る方法で迎撃に動き出している。

幸い固まって動いているから背後はお互いに任せられる。

私は正面から大量に飛んでくるボール目掛けて、右手で思いっきり真空波を放った。

飛んで行く衝撃波が容赦なくボールを弾き飛ばしていく。

少なくとも私の正面はこれで十分だった。

次どこから投げられてきてもいいように左手に波動弾を作っておく。

 

皆も問題なく各々の正面のボールを防いでいるようで、全方位防ぎきれていた。

緑谷くんも蹴りでボールを弾き飛ばしながら皆に気合を入れるように叫んだ。

 

「締まって行こう!!」

 

それに答える余裕は皆にもないけど、内心で気合を入れ直していた。

 

「ほぼ弾くかぁ―――」

 

「こんなものでは雄英の人はやられないな」

 

「けどまぁ……見えてきた」

 

傑物高校の異形型の人と真堂さんが話しているのが聞こえる。

異形型の人の方の思考は『硬質化……ボールを硬く!!コンクリ以上に硬くする!』というのものだ。

 

「任せた」

 

「任された。これうっかり僕から一抜けすることになるかもだけど、そこは敵が減るってことで大目に見てもらえるとありがたいかな」

 

硬質化したボールを受け取った男の思考は、『ブーメラン、軌道、弦月』とかいうよく分からないものだけど、大体想像はつく。

クラスの皆が受け入れてくれたこともあって、私はもう隠す必要はないと思っていた。

不特定多数の他人にどう思われたっていい。どんなに嫌われたって、皆がいてくれるなら怖くない。

 

「皆……!!コンクリート並みに硬くなったボール……!!曲がる軌道で投げてくるよ……!!」

 

そこまで言ったところで周囲の思考は驚愕に染まった。

まあ読心を知らなければそういう反応にもなるだろう。

読心は頑張れば対策することが出来なくはない。この前の13号先生の違うことを考え続けるなんていうのも対策の一つだ。

私がその人の思考を深く読んでいなければそれで対策できる。

だけど、読心っていう種が分からなければ、個性不明のアドバンテージなんて私がいれば存在しないも同然だ。

今もボールを持っている男の思考は続いている。驚愕しているけど、『投げるのが分かっても地中で軌道を隠せば……』という思考だ。

行動を変えられても面倒だから、男が投げる体勢に入ったところで皆にさらに警告する。

 

「地中に投げるつもりみたい……!!」

 

「なっ!?」

 

そこまで読まれるとは思っていなかったのか、男はボールを投げ切ってからさらに驚愕した表情になる。

私の行動予測を聞いて準備していた響香ちゃんが前に飛び出した。

響香ちゃんは地中に隠れるボールを地面を割って見えるようにしてくれるつもりみたいだ。

 

「皆下がって!!ウチがやる!!」

 

響香ちゃんが内心で『音響増幅ジャック、ハートビートファズ』なんていうかっこいい技名を思い浮かべながら地面を音波の振動で砕いた。

地面に投げ込まれてすぐに姿を晒されたボールは峰田くんの方向に向かって行っている。

峰田くん自身もそれが分かっているのか、いくつかのもぎもぎを繋げて鞭みたいな形状にしている武器を構えた。

 

「これオイラに来てるよな!?そうだよな!?」

 

「そうだよ!見れば分かるでしょ!手伝うから、自分でも叩き落とす準備しといて!」

 

「お、おう!」

 

「粘度溶解度MAX!!アシッドベール!!」

 

三奈ちゃんが峰田くんの左側から粘度の高い酸の防壁を峰田くんの前に作った。

投げられたボールは三奈ちゃんの防壁が難なく防いだ。

慌てた峰田くんを見て側面から追加で投げられたボールもあって、それは峰田くん自身が自分の武器で防いだ。

 

「助かった!イイ技だな!」

 

「ドロッドロにして壁を張る防御技だよー!」

 

ここで他校の攻撃が少しやんだ。

その隙に左手に作っていた波動弾に右手も添えて、さらに大きくしていく。

 

「隙が生じた、深淵闇駆(ブラックアンク)!」

 

「言いやすくかっこよくなってる」

 

緑谷くんも常闇くんに突っ込む余裕が出来始めている。

それだけ周囲の攻撃に綻びが出来てきているということだ。

ここで一気に畳みかけて包囲を抜けるべきだろう。

 

「"宵闇よりし穿つ爪"!!」

 

「一気に畳みかける……波動弾……!!」

 

常闇くんの反撃に合わせて正面の傑物高校の方に波動弾を射出する。

 

だけど傑物高校は常闇くんの攻撃をいなしつつ、私の波動弾も飛び込んで避けた。

どうやら彼らも素直な攻撃でやられてくれる程ぬるくなかったみたいだ。

 

『えー現在まだどこも膠着状態……通過0人です……あ、情報が入り次第私がこちらの放送席から逐一アナウンスさせられます』

 

まだ誰も通過していないらしい。爆豪くんも轟くんも瞬殺とはいかなかったみたいだ。

そんな私たちの様子を見て、事前情報と大きく変わっているのを察知した真堂さんが地面に手を当てた。

 

「体育祭で見てたA組じゃないや。成長の幅が大きいんだね。離れろ!彼ら防御が固そうだ!割る!!」

 

これは言葉通りの意味だ。

仕切り直しの意味もあるけど分断も狙っているっぽい。

 

「地面を割られるよ……備えて……!!」

 

「割る!?マジか!?」

 

私の警告に皆すぐに理解を示してくれて、地面の崩落を警戒しつつ近くの人からはぐれないように意識を回し始めた。

私も透ちゃんの方に近づいておく。

 

「さっきからその手の内読んでくるのはなんなんだ!?……まぁいい!最大威力!振伝動地!!」

 

周囲を大きく振動させるその必殺技で、ここら辺一帯は一気に崩落した。

 

 

 

「透ちゃん……!」

 

透ちゃんの方に波動の噴出で跳びながら近づいたけど、透ちゃんは透ちゃんでサバイバル訓練の時みたいなことはなくちゃんと受け身を取っていた。

着地も問題なくこなしている。

 

「流石にそう何度も同じ失敗で迷惑かけないよ!大丈夫!」

 

「ん……良かった……!とりあえず離脱するよ……!」

 

「うん!」

 

完全に分断されてしまったから、私のすぐ近くにいるのは透ちゃんだけだ。

囲まれたら困るから、透ちゃんの手を引いて一気にこの場所を離脱する。

目指すのはとりあえず周囲に誰もいない物陰だ。

 

私が感知に意識を割きながら走ったのもあって、特に誰にも遭遇せずに安全地帯と思われる場所に避難は出来た。

あとはこの後どう行動して試験を通過するかが問題だ。

 

「ここなら安全……作戦会議しよ……」

 

「そうだね。この後は皆と合流する?まずそこからだよね」

 

「ん……ただ結構バラバラになってる……全員と合流は時間がかかるし……見つかるリスクも大きい……」

 

「やっぱりそうだよね……そうするとそれぞれでクリアするのが一番かな」

 

「ん……皆も各々で……動き出してる……信じよう……」

 

合流するまでに絶対に他の学校の集団に見つかるし、囲まれたら脱落のリスクがある。

一度こうなってしまったら合流するために迂闊な行動を取るのは悪手だと思う。

 

「じゃあ私たち2人の方針を決める感じだよね。でも、私たちだと奇襲が一番じゃない?」

 

「……まあ……そうなんだけど……」

 

透ちゃんの言う通りで、私たちが取る作戦となると結局奇襲が一番なのだ。

私が感知で少人数のグループとか孤立している人を探して、透ちゃんの奇襲と私の波動で速やかに制圧するのが手っ取り早い。

 

「……ふふ、なんかこれ、初めての戦闘訓練の時みたいだね」

 

透ちゃんが笑い出した。

まあ確かにそうかも。透ちゃんと2人で奇襲の話し合いをしているこの感じは、あの時みたいだ。

私も懐かしくなって小さく笑いながら返答する。

 

「確かに……そうかもね……」

 

「まあでも、あの時よりは取れる手段は多いよ!私も必殺技作ったんだから!」

 

「ん……期待してる……透ちゃんの光るやつ……私と相性いいと思うし……作戦に組み込みたい……」

 

そんな感じで作戦会議をしていたら、嫌な波動を感じ取った。

というよりも、試験開始前に感じた違和感がなんだったのか、ようやく気が付いた。

今まで緑谷くんに襲い掛かっていた、あの士傑高校の少しの悪意を感じた違和感のある波動だった人。

緑谷くんとの戦闘中も急に思考が読めなくなったりして、とにかく違和感しかなかった人。

その人の波動が、急にお茶子ちゃんに似た波動に変わった。

お茶子ちゃんではない。そんなのは普段からお茶子ちゃんの波動を見続けているからすぐに分かる。

お茶子ちゃんはこんな波動をしていない。何かが混ざっている。

そして、このお茶子ちゃんの波動に混ざっている波動は見覚えがある。

あの林間合宿の夜に、柳さんの波動に混ざっていたのと、同じ波動だ……!

 

「トガ……ヒミコ……!」

 

「えっ!?急にどうしたの!?」

 

「ごめん透ちゃん……!行くよ……!」

 

私は透ちゃんを抱き上げて走り出した。

目的地は、お茶子ちゃんに変身して今まさに緑谷くんを騙そうとしているトガの所だ。

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