波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

87 / 268
二次試験の説明と確認

翌朝。

ホテルで朝食を済ませて指示通り8時にロビーに集まった。

 

「よし、全員集まったな。会場に移動するぞ。昨日みたいなバカ騒ぎはするなよ」

 

「はい!」

 

相澤先生の引率の下試験会場に移動する。

それにしても全員一次試験を通過していてよかった。

もしこの状況で1人だけ落ちていたとかなっていたら、凄くかわいそうな感じになっていたと思う。

 

そんなことを考えながら移動していたら、先生が私に向けた思考をしだした。

 

『波動。もし少しでも違和感を持つ人物がいたらその場ですぐに俺か公安委員会に教えろ。その場で拘束とまではいかなくても厳重にマークしておく』

 

その思考をした直後に皆が付いてきているかを確認するように先生が振り向く。

そのタイミングで小さく頷いて了承したことを伝えておいた。

 

 

 

会場に着いてコスチュームに着替えてから、公安委員会の指示に従って昨日の控室に移動する。

士傑高校も来てはいるけど、やはり現見さんは来ていないみたいだ。

本人はトガに拘束、監禁されていたんだし、逃走したトガが扮した現見さんも一次試験を通過してないと思うから仕方ないことではあるんだけど。

 

控室の中には目良さんを含めた公安委員会の人たちがいた。

 

「えー、設備の不備で延期となり、ご迷惑をおかけしました。ただいまより二次試験のご説明をさせていただきます。まずはこれをご覧ください」

 

目良さんはそう言って控室の壁にかかっている大きなモニターを示した。

そこにはこの控室の周囲にある昨日一次試験で使ったフィールドが映っていた。

 

「フィールドだ」

 

「なんだろうね……」

 

緑谷くんとお茶子ちゃんがそんな感じで呟いた少しあと、フィールドにあった建物や山、ありとあらゆるものが大爆発を起こした。

控室の周囲では凄まじい轟音が響いていて凄くうるさい。

 

『―――何故!?』

 

あまりの出来事に雄英の生徒だけでなく、他の学校の生徒も困惑している。

そんな学生の様子を気にすることもなく目良さんは話を続ける。

 

「二次試験で試験はラストになります。皆さんにはこれからこの被災現場で、バイスタンダーとして救助演習を行ってもらいます」

 

「「パイスライダー……?」」

 

峰田くんと上鳴くんがまた意味の分からないことを言っている。

というかこんなの授業で習ったじゃないか。峰田くんとかそこそこ成績いいのになぜそうなる。

 

「現場で居合わせた人のことだよ」

 

「一般市民を指す意味でも使われたりしますが……」

 

「ん……授業で習ったでしょ……?」

 

透ちゃんと百ちゃんが2人のすっとぼけた発言に優しく説明してあげていた。本当にこんな時にまで何を言ってるんだこの2人。

 

「ここでは一般市民としてではなく仮免許を取得した者として、どれだけ適切な救助を行えるか試させていただきます」

 

説明に合わせてボロボロになった廃墟がアップで写り、動いている人の姿が映る。

それを見て、周囲の学生がざわついた。

あれは普通に怪我人役だからそこまで心配する必要ないんだけど……

どうせすぐに説明が入るだろうから特に何も言わないけど。

 

「人がいる……」

 

「え……あぁ!?老人に子供!?」

 

「危ねぇ何やってんだ!!」

 

目良さんがざわめきに対して説明を始めた。

 

「彼らはあらゆる訓練において今引っ張りだこの要救助者のプロ!!HELP・US・COMPANY、略してHUCの皆さんです。色んな傷病者に扮したHUCがフィールド全域にスタンバイ中。皆さんにはこれから彼らの救出を行ってもらいます。尚、今回は皆さんの救助活動をポイントで採点していき、演習終了時に基準値を超えていれば合格とします。HUCの準備時間を考え、試験開始は10分後になります」

 

救助演習が試験なのはいい。むしろ私にとっては好都合だ。

だけど要救助者役の人たちを救助することが試験内容なら、質問しておきたいことがある。

とりあえず手を上げてみるか。

 

「質問……いいですか……?」

 

「内容によってはお答えできませんが、それでもよろしければどうぞ」

 

目良さんは特に拒否することもなく質問を促した。

 

「はい……怪我の状況などは……どのように判断しますか……?HUCの方を見たまま……演技などを見て……判断して大丈夫ですか……?それとも……声をかけた段階で……正しい情報をHUCから伝えられる形式ですか……?」

 

「基本的にHUCの皆さんは血糊などを用いて巧妙に怪我人に扮しています。演技を見たままで判断してください」

 

まあここはそうだろう。実際今血糊を自分にかけている人が多数いる。

問題はここから先だ。

 

「脈拍や呼吸などは……演技できないと思いますが……そこに関しては……?」

 

「HUCの皆さんは特殊な訓練を積んでいます。それらも見たまま、測定したままで大丈夫です」

 

「……では、トリアージ黒に該当する要救助者は……配置されていますか……?されているなら……それはHUCの演技ですか……?人形ですか……?」

 

「……そちらもHUCの演技になりますが……」

 

私の個性なら生きているか否か、気絶しているか否かを波動の動きや思考の状況から判断できる。

胸郭の動きも読み取れるし、出血状況とかも読み取れる。

透視すれば心臓の動きも見えるから脈も測れる。

傷の程度も内部まで透視すれば見えるし、体内であっても出血していれば分かる。

まだまだ確認したいことがあるから続けて質問していこうと思ったら、目良さんが遮ってきた。

 

「ちょっと待ってください。この質問の流れ全てがヒントになりかねません。こちらに来てください。個人的な質問として受け付けます」

 

「……分かりました」

 

それをやると他の受験生に反感を持たれると思うけど、そう指示してくるなら従うしかない。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!そいつだけ特別扱いですか!?」

 

案の定不満そうにした他校の生徒から文句が出てくる。

A組の皆はもう私が遠隔からトリアージができることを伝えているから、必要な質問だと理解してくれている。

だけどやはり何も知らない他校の生徒からは不満が出てきてしまう。

特に仮免試験は蹴落とし合いだと思っている人も結構多いからこういうことになる。

この救助演習なんて他校の生徒であってもチームアップしないといけないのに。

もう不満の処理は目良さんに任せて私は素知らぬ顔をしておこう。

 

「特別扱いではなく、彼女の個性の性質上必要な情報です。他の方でも我々が同様に情報を渡す必要があると判断できれば、挙手していただければ質問に答えます。一応、公平性を保つために彼女の質問終了後に周知しておくべき情報があった場合は全員に周知します。他に何か意見がある方はいますか?」

 

目良さんのその言葉で、文句を言った受験生は不満には思いつつも黙ってしまった。

 

「では波動さんはこちらに来てください」

 

「はい……」

 

周囲の嫌な視線を感じながら目良さんの方に歩いていく。

目良さんの隣に着いたところで、私が分かることを声を潜めながら説明してしまう。

目良さんだけが聞くなら、この方がいちいち質問という体にしなくていいし楽だ。

 

「あの……私……範囲内の波動を見れば……生きているかは……分かります……思考を読んで……気絶しているか否かも分かりますし……どの程度の意識を保っているかも分かります……波動の形を見れば……胸郭の動きから呼吸も見れますし……出血状況も傷の深さも見れば分かります……波動の透視をすれば体内でも見えるので……心臓の動きから脈も測れます……体内の出血や骨折も判断できます……移動しなくても範囲内なら……トリアージ出来るんですけど……HUCの方だと実際の怪我人と違いすぎて……困ります……」

 

「……昨日聞いていたのである程度予測していましたが、そこまでですか……分かりました。貴女には1人公安の職員を付けます。正確な位置とHUCの読み取れる負傷状況を言うことが出来れば、それに対応した情報を開示しましょう」

 

「通信機とかじゃなくて……横にいてくれるんですか……?」

 

「貴女にとっては普段から読み取れている情報を演習で読み取るための必要な措置でも、他の学生からは不正や贔屓に見えるのは分かっているでしょう?その不満を軽減するためにやり取りを周囲の学生に開示します。通信機では貴女が情報を聞いているようにしか見えないでしょうしね」

 

凄く合理的だった。

確かにその方がいいかもしれない。

目良さんに頭を下げて元の位置に戻る。

士傑の人たちが轟くんや爆豪くんと話したりしている。轟くんと話している夜嵐くんから憎悪のような感情を感じてしまって気分が悪い。

そんなのに構っていても仕方ないから私は気にしないで透ちゃんの近くに戻った。

 

 

 

 

「大丈夫だった?必要なこと聞けた?」

 

透ちゃんが心配そうな顔で聞いてくる。

 

「私の近くに……公安委員会の人が……待機してくれることになった……HUCの人の読み取った情報とかを伝えれば……対応する本当の情報を教えてくれるって……」

 

「それなら瑠璃ちゃんもいつも通りの活躍出来るね!よかったね!」

 

「ん……安心……透ちゃんも……一緒に頑張ろうね……」

 

「うん!がんばろーね!」

 

「ん……!」

 

透ちゃんはむんっ!て感じで気合を入れ直している。

私も透ちゃんの真似をして気合を入れ直してみる。

その後も少しの間話していたら、周囲に大きな警報音が鳴り響いた。

 

『ヴィランによる大規模破壊(テロ)が発生!』

 

「演習のシナリオね」

 

「え!?じゃあ……」

 

公安委員会の人からの声掛けとかもない唐突なそれに、響香ちゃんが困惑したような声を漏らす。

 

『規模は〇〇市全域。建物倒壊により傷病者多数!道路の損壊が激しく救急先着隊の到着に著しい遅れ!』

 

控室の周囲の壁がまた崩れ始めた。

こういう仕掛け好きなんだろうか。

 

『到着するまでの救助活動はその場にいるヒーローたちが指揮を執り行う。一人でも多くの命を救い出すこと!!!』

 

完全に壁が倒れたと同時に、『START!』というアナウンスが響いて試験が始まった。

私の個性を最大限に生かすには最初が大事だ。

ちょっと苦手なことではあるけど、周囲の説得を頑張らないと。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。