波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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二次試験(後)

ビルボードチャートJP10位、ヴィランっぽい見た目のヒーローランキング3位のギャングオルカが姿を現した。

その周囲にはギャングオルカのサイドキックたちが大量に出てきている。

 

「対敵、全てを並行処理……出来るかな?」

 

「ギャングオルカ!」

 

緑谷くんがギャングオルカを見て驚愕の声を上げる。

そんな状況で、アナウンスがなった。

 

『ヴィランが姿を現し追撃を開始!現場のヒーロー候補生はヴィランを制圧しつつ、救助を続行してください!』

 

「どう動く!?ヒーロー!」

 

ギャングオルカが実物のヴィランも真っ青なくらいの威容を示しながら、部下が散って襲撃を開始した。

どう見ても狙いは救護所。

ここに負傷者を集めているから当然ではあるんだけど。

この状況でトリアージ赤と黄の人を動かして逃げる暇はない。

緑の人だけ数人で移動させて、他は救護所の護衛に当たりつつ残った負傷者を保護していくしかない。

 

「デク……救護所の護衛……お願いできる……?」

 

「もちろん!」

 

緑谷くんはすぐに飛び出して四方八方から襲い掛かってくるサイドキックの対応に当たり始めた。

避難の指示は、百ちゃんに頼めばきっと仕切ってくれる。

通信機で百ちゃんに呼びかけよう。

 

「クリエティ……トリアージ緑で動ける人を……避難させよう……守る範囲を最小限にしたい……」

 

『ちょうど数人に避難誘導を依頼したところですわ!こちらは私たちでどうにかしますから、波動さんはそのまま残った要救助者の救助の指示を続けてください!』

 

「流石百ちゃん……ありがと……」

 

既に百ちゃんが避難指示をしてくれていたようだった。

次は無差別にヴィラン対応に来られたら救助のための人員がいなくなって困るから、対応に当たる人を指示するかな。

これだけの数を少人数で対応するとなると、制圧能力の高い人を集めるのが効率的だ。

そうなると、氷と炎の轟くん、風の夜嵐くん、振動による地割れの真堂さんが本命か。

ただ轟くんと夜嵐くんの不仲が心配ではある。

夜嵐くんはエンデヴァーを憎んでいて、その面影が見える轟くんにも憎悪を燃やしている。

轟くんもエンデヴァーのことに触れられると憎悪に囚われるリスクがある。

対多数の戦闘においてこれ以上の適任はいないから、不安は残るけど2人とも呼ぶつもりではある。

ヴィランに襲撃されているこんなタイミングで喧嘩なんてしないと信じよう。

 

あとは爆豪くんが性格的にも能力的にも適任なんだけど、爆豪くんは通信機を持っていないから呼ぶことが出来ない。

夜嵐くんは毛原さんの近くにいるからそこに通信すれば呼べるけど、爆豪くんは近くにいる切島くんと上鳴くんすら通信機を持っていない。

近くに通信機を持っている誰かが近づいたら伝えてもらうくらいしか手がないか。

 

「ショート……救護所に戻って来て……ギャングオルカの対応に当たって……チューイー……近くにいるレップウにも……同じ指示を伝えてください……」

 

『レップウはもうそちらに飛んでいった』

 

『おう、俺もちょうど向かってる』

 

「ありがとうございます……グランドも……そのまま対応に当たってください……」

 

既に2人とも向かってくれていた。言うまでもなかったか。

真堂さんは救護所の近くにいたのもあって、すぐに救護所の護衛に当たってくれていた。

救助の指示を出しつつ、次の手を考える。

 

「ウラビティ……そのまま4階へ……左の角部屋に……1人残ってる……トリアージ黄……」

 

『了解!』

 

「フロッピー……その池の近く……今のフロッピーの視点で見て左手側の建物……その近くに……瓦礫に足を潰されてる人がいる……トリアージ黄……」

 

『分かったわ』

 

ヴィランにされたら困るのは、救護所の襲撃だ。これを防ぐ必要がある。

ギャングオルカ本人はともかく、サイドキックの襲撃を防ぐには硬い壁でも作ってしまうのが手っ取り早いか。

なら……

 

「クリエティ……救護所に壁って……作れる……?」

 

『一部なら可能ですが……流石に全周を覆うような規模は無理です』

 

「ん……だよね……だから……中はスカスカな素材でも良い……それなら可能……?」

 

『……可能だと思いますわ』

 

「ならお願い……今その壁を補強できる人に……そっちに向かってもらうから……」

 

『分かりました!』

 

硬質化する個性の人は心当たりがある。

一次試験でボールを硬くした人。傑物高校の人だ。二次試験にも通過してきている。

協力してくれる人の思考は読んで大体の個性の把握に努めていたけど、彼は手で擦ったりこねたりすれば硬質化させられるみたいだ。

スカスカな壁でも硬質化してもらえればある程度は防いでくれるだろう。

 

「Mr.スミス……救護所の壁を硬くしてもらいたいです……救護所に向かってください……」

 

『俺か!?……いや、分かった。急いで向かう!』

 

 

 

私が色々と指示を出している間に、轟くんも夜嵐くんももうこちらに到着している。

だけど考えたくなかった最悪の事態に陥っていた。

なんで喧嘩してるんだあの2人。状況を分かっているんだろうか。

いくら嫌いな相手であってもヴィランを目の前にしたヒーローとして、その行動だけはあり得ない。

自分たちの後ろには負傷している民間人が集まっている救護所があることが分からないのか。

オールマイト嫌いで有名なエンデヴァーですら、そこまで馬鹿げたことはしていない。

2人ともエンデヴァー嫌いは共通しているくせに、自分たちがエンデヴァー以下の行動を取っていることが分かっていないんだろうか。

 

「あんたが手柄渡さないように合わせたんだ!」

 

「は?誰がそんなことするかよ」

 

「するね!だってあんたはあの―――エンデヴァーの息子だ!」

 

そこまで言われて、轟くんまでキレてしまった。

 

「さっきから、何なんだよ、おまえ。親父は関係ねえ、っ!?」

 

喧嘩をして完全にヴィラン集団から意識を外した轟くんに、サイドキックからセメントガンが飛んできた。

いつもの轟くんならこんなの避けるか氷で難なく対処しているのに……

その体たらくはギャングオルカにすら「ヴィランを前になにをしているのやら」とか煽られているほどだ。

私は指示を続けないといけないから、状況を考えない2人を止めに行く余裕がない。

緑谷くんにどうにかしてもらうしかないか。

救護所を守りながらだと大変だと思うけど。

 

「ごめん……デク……そこの状況を考えない2人……任せてもいい……?」

 

『うん。流石にこれはダメだ』

 

緑谷くんが2人に向かって移動を始めた瞬間、轟くんと夜嵐くんが同時に攻撃を放った。

それも最悪な組み合わせを。

よりにもよって炎と風が同時に放たれたのだ。

轟くんもなんで氷の方にしなかったのか。

案の定風に煽られた炎はあらぬ方向にも飛んでいって、真堂さんまで巻き込まれそうになってしまった。

 

「何を、してんだよ!!!」

 

その真堂さんを凄い速さで回収して、緑谷くんが叫んだ。

……多分、この状況を考えない2人はもう不合格だと思う。

この調子だと頼りにもできないし、早く救助を終わらせて他の人にも来てもらうしかないか。

そう結論付けて救助の指示を急いだ。

 

 

 

「ウラビティ……そのビルを出て……反対側に回って……そこから20mくらい進んだところに……負傷者がいる……歩けそうだから……トリアージは緑……」

 

『うん!』

 

「テイルマン、フロッピー……その辺りの負傷者はその人で最後……一人をその人の搬送に回して……後は対ヴィランの救援に……」

 

『ええ!』

 

『了解!』

 

「インビジブルガール……近くにバクゴーがいると思う……周囲に負傷者はもういないから……搬送はチャージズマと烈怒頼雄斗(レッドライオット)に任せて……バクゴーはヴィラン対応に来るように伝えて……」

 

『分かった!爆豪くん大喜びしそうだね!』

 

「ピンキー、ツクヨミも……その人で最後……一人は搬送……後はヴィラン対応に……」

 

『うん!ほら、常闇も援護に行くよ!』

 

やっと終わりが見えてきた。

今爆豪くんたちが救助した2人と、お茶子ちゃんに救助に向かってもらった人と梅雨ちゃんたち、三奈ちゃんたちがそれぞれ救助した人。

この5人を安全なエリアに運べば試験終了になると思う。

 

「今救助している人たちを避難させれば……救助活動は終了です……もうひと頑張り、頑張りましょう……!」

 

通信機へそう呼びかけると、元気のいい返事が大量に返って来た。

 

このタイミングになってようやく轟くんたちの目が覚めたらしい。

しっかりとコントロールされた炎と風の合わせ技で炎の渦を作って、その中にギャングオルカを閉じ込めた。

最初からそれをやって欲しかった。

 

「もう……遅いよ……」

 

とりあえずギャングオルカの拘束はそのまま轟くんたちに任せよう。

周囲のサイドキックは今大量に救援を呼んだし、もう大丈夫だろう。

既に尾白くんと梅雨ちゃん、三奈ちゃん、常闇くん、士傑高校の人たちと続々と集まってきている。

 

さっきの指示が終わったあたりで私が指示出来ることはもうない。

ここで私もヴィラン対応に行ってもいいけど、もう対応には十分な戦力が集まっている。

少ししたらギャングオルカが炎の渦を抜けると思うけど、獰猛な笑みを浮かべた爆豪くんが飛んできているし、緑谷くんもいる。

もう戦力は必要ないだろう。

それよりも私にしかできないことをするべきだ。

そう思って救護所の方に移動する。

 

 

 

「クリエティ……救助の指示終わった……赤エリアの人の対応……手伝う……」

 

「まあ!ありがとうございます!流石ですね!」

 

「百ちゃんも……ここまでの救護所が出来ると思ってなかった……凄い……」

 

簡易救護所は今やしっかりと壁に囲まれ、内部には明かりも灯されている。

様々な医療機器や道具、寝具と災害現場でこれ以上は望めないというレベルの小さな病院になっていた。

お互いに褒め合ってから私は赤エリアの対応に困っている人の所に向かった。

そのまま体内の透視で疑似的なレントゲンの診察のようなことをして、私の感知と読心と透視をフル活用して公安委員会の人に情報をもらって出血部位や骨折部位を考えた応急処置に努めた。

 

そのまま少しの間応急処置と診断を続けていると、辺りに大きなブザーの音が響き渡った。

 

『えー、只今を持ちまして、配置された全てのHUCが危険区域より救助されました。まことに勝手ではございますが、これにて仮免試験全行程、終了となります!!!』

 

なんとか無事試験終了となった。

 

『集計の後、この場で合否の発表を行います。怪我をされた方は医務室へ……他の方々は着替えてしばし待機でお願いします』

 

まあ私の試験官の思考も読めているから称賛する思考も確実に合格だという思考も全て伝わってきている。

他の皆の結果ももう大体分かった。

全部感知して見ていた私としては当然の結果でしかないんだけど、皆は少しざわつきそうだなと思った。




マイナーヒーロー名注釈
チューイー:士傑のもじゃもじゃの人。毛原さん
グランド:一次試験で地面割った傑物高校の人。真堂さん
Mr.スミス:一次試験でボールをコンクリ以上に硬くした傑物高校の人。真壁さん
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