波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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始業式

翌朝。

皆が準備を終わらせて制服で共有スペースに降りてくる中、緑谷くんと爆豪くんはラフな格好のまま掃除機で掃除をしていた。

当然皆不思議に思っている。

そんな中三奈ちゃんが代表して確認を始めた。

 

「爆豪と緑谷何してんの?早くしないと遅刻しちゃうよ?」

 

「……その……」

 

それに対して緑谷くんが言いづらそうに説明し始めた。

まあ説明なんて言っても昨日の夜に喧嘩して罰則で謹慎になったってことだけだけど。

爆豪くんの感じからして他の日にずらすことはできなかったんだろうけど、緑谷くんはトガの成り替わりを知っていたのに何を考えているんだろうという感想しか出てこない。

 

「ケンカして」

 

「謹慎~~~~~~~~!?」

 

三奈ちゃんと透ちゃんのその声を皮切りに、皆も当然のように騒ぎ出した。

 

「馬鹿じゃん!!」

 

「ナンセンス!」

 

「馬鹿かよ!」

 

「骨頂―――」

 

緑谷くんもその数々の罵声に対して言い返せることがないのか「ぐぬぬ……」なんて反応しか返せていない。

そんな中お茶子ちゃんは罵声を浴びせたりはせずに少し心配そうに質問する。

 

「えええ、それ仲直りしたの?」

 

「仲直り……っていうものでも……うーん……言語化が難い……」

 

「……仲直りっていうより……納得して……矛を収めただけ……」

 

「チッ……やっぱ見てんじゃねぇかよ……」

 

私が口を挟むと爆豪くんがボソッと吐き捨てる。

まあ見てはいたけど、私に隠すつもりがあるなら私が寝てからにしてくれないと困るんだけど。

 

「隠すつもりがあるなら……私が寝てから誘えばいいのに……」

 

私がそう言い返しても、爆豪くんはそれ以上何も言い返してこなかった。

緑谷くんも私にはОFAのことも含めて色々思うところがあるらしく、何かを言いたそうにしている。

この場で話せる内容ではないし、実際に聞くことはできないけど。

そんな緑谷くんに対して飯田くんがさらに追い打ちをかけていく。

 

「よく謹慎で済んだものだ……!!ではこれからの始業式は君ら欠席だな!」

 

お茶子ちゃんにすら白い目で見られてしまっている。

まあ今回の件は自業自得だろう。

その後も皆で弄ったり小言を言ったりしてから、私たちは寮を出た。

 

 

 

今日は入学式の時のようなことはなくちゃんと始業式に出られるらしい。

それもあってか飯田くんがいつものように張り切って列を整理している。

列は出席番号順だ。

爆豪くんがいないから透ちゃんが私の前にいる。

透ちゃんが近くなのは嬉しいけど、問題は後ろだ。

後ろは緑谷くんがいないから峰田くんなんだけど……

このブドウ頭、さっきから私のお尻をガン見している。

身長差の問題があっても私とブドウ頭なら背中くらいに視線が来るはずにも関わらず、気持ち悪い表情で相変わらずのピンク思考をしている。

普通にドン引きである。もうちょっと隠すとかできないんだろうか。

思考だけならスルーしやすいんだけど……

そう考えるといつもは緑谷くんがいい感じの盾になっていたようだ。

どうせ文句を言っても聞かないだろうし無視するしかないか。

 

「皆いいか!?列は乱さずそれでいて迅速に!!グラウンドへ向かうんだ!!」

 

そういう飯田くんは列から外れて横でシュバババって手を動かしている

相変わらず言動と行動がなんかずれている。

 

「……そういう飯田くんが……列から外れてる……」

 

「委員長のジレンマ!!」

 

「あはは、飯田くんは相変わらずだねぇ」

 

別に委員長だからといって列から外れずに、列を作った後は先頭で先導すればいいだけだと思うんだけど。

 

そんな感じで進んでいると、先に教室を出ていたらしいB組に昇降口の辺りで追いついた。

物間くんが下駄箱に肘で体重をかけて待ち受けていたと言った方が正しいかもしれない。

思考からして物間くんはいつも通りとしか言いようがない感じだ。

 

「聞いたよ―――A組ィィ!2名!!そちら仮免落ちが2名も出たんだってええ!!?」

 

「B組物間!相変わらず気が触れてやがる!」

 

「さてはまたオメーだけ落ちたな」

 

凄い勢いで煽ってくる物間くんに、上鳴くんが辛辣なことを言っている。

切島くんなんかは期末テストの補習組だったことからそう予想している。だけど物間くんは昨日普通に喜んでいたし、今も私たちを煽ることを考えているから普通に合格していると思う。

 

「ハッハッハッハッハッ!!」

 

煽るように爆笑した物間くんはそのままスッと静かになった。

 

「いやどっちだよ!」

 

「……昨日……B組は誰も……暗い思考の人……いなかったよ……そういうこと……」

 

問い詰める切島くんに私が補足すると、物間くんはゆっくりとドヤ顔をしながら決めポーズみたいな感じでこちらを振り返った。

 

「その通り。こちとら全員合格だよ。水があいたねA組」

 

拳藤さんが呆れた表情で物間くんを見ているけど、これはいつものチョップが飛んでくるのではないだろうか。

 

「ブラドティーチャーによるぅと、後期ぃはクラストゥゲザージュギョーあるデスミタイ。楽シミしテマス!」

 

「へぇ!そりゃ腕が鳴るぜ!」

 

「つか外国人さんなのね」

 

精一杯片言で思いを伝えてくる角取さんに、物間くんが近寄って耳打ちをする。

角取さんまで利用するのか物間くん。

捻じ曲がりすぎではないだろうか。

 

「ボコボコォに、ウチノメシテヤァ……ンヨ?」

 

「角取さん……それ……覚えなくていいから……」

 

物間くんは意図通りの言葉を言い放った角取さんを尻目に高笑いしている。

そんな物間くんは当然のように拳藤さんの制裁を受けていた。

今日はチョップじゃなくて目つぶしらしい。普通に痛そうだ。

 

私たちが完全に足を止めて話し込んでいると、後ろから来たC組の心操くんが注意してきた。

寮に入ってから心操くんが相澤先生とちょくちょく秘密特訓している所を感知していたけど、その成果はちゃんと出始めているようだった。

以前見た時よりも全体的にがっしりしていた。

 

 

 

グラウンドに整列すると始業式が始まった。

校長先生のどうでもいい話がとても長くて眠くなってきてしまう。

校長先生は5分くらいぺらぺら話した後に、ようやく本題に入った。

 

「―――ライフスタイルが乱れたのは皆もご存じの通り、この夏休みで起きた"事件"に起因しているのさ。柱の喪失。あの事件の影響は予想を超えた速度で現れ始めている。これから社会には大きな困難が待ち受けているだろう。特にヒーロー科諸君にとっては顕著に表れる。2・3年生の多くが取り組んでいる"郊外活動(ヒーローインターン)"もこれまで以上に危機意識を持って考える必要がある」

 

……この感じだと私たちはまだインターンはできない感じなんだろうか。

まあそのうち相澤先生から話があるかな。

 

「暗い話はどうしたって空気が重くなるね。大人たちは今、その重い空気をどうにかしようと頑張っているんだ。君たちにはぜひともその頑張りを受け継ぎ、発展させられる人材となって欲しい。経営科も普通科もサポート科もヒーロー科も、皆社会の後継者であることを忘れないでくれたまえ」

 

校長先生はそう言って話を締め括った。

校長先生、ブラドキング先生に『短くまとめただろ?』なんて言っているけど、それなら最初の無駄話はいらなかったと思う。

 

そんな感じで始業式は進んで―――

 

「それでは最後にいくつか注意事項を、生活指導のハウンドドッグ先生から―――……」

 

ブラドキング先生の言葉で朝礼台に登ったハウンドドッグ先生は、もう意味が分からなかった。

いや、言いたいことは分かる。だけどそうなるならもう出なくてもいいのではといった感じだ。

 

「グル゛ル゛ル゛……昨日う゛う゛、ル゛ル゛ル゛ル゛ル゛ル゛、寮のバウッ!!バウッバウッ!!慣れバウバウ!!グル゛ル゛生活バウ!!アオーーーーン!!!」

 

皆意味が分からなくてドン引きしてしまっている。どうしてくれるんだこの空気。

 

「……瑠璃ちゃん、通訳」

 

「……昨日喧嘩をした生徒がいました……慣れない寮生活ですが……節度を持って生活しましょう……」

 

「な、なるほど……」

 

透ちゃんなんか困惑して私に通訳まで求めてきた。

ブラドキング先生が私が言ったのと全く同じ内容を補足しているけど、それをするなら本当にハウンドドッグ先生はいらなかったのではないだろうか。

 

「キレると人語忘れちまうのかよ……雄英ってまだ知らねーことたくさんあるぜ……」

 

「緑谷さんと爆豪さん、立派な問題児扱いですわね……」

 

「個性を使った喧嘩なんて……普通に問題児……」

 

困惑した空気に包まれたまま、始業式は終わった。

 

 

 

教室に戻ったらホームルームだ。

相澤先生が後期の授業の話に軽く触れていると、三奈ちゃんが梅雨ちゃんにコソコソ話しかけ始めた。

それに対して先生はすかさず髪の毛を逆立たせて睨みを利かせる。

 

「何だ芦戸?」

 

「ピッ!久々の感覚!」

 

三奈ちゃんが触角をゾワっと反応させている。その触角、危機察知能力とかあるんだろうか。

気配に敏感とか?よく分からない。

そんな三奈ちゃんを尻目に梅雨ちゃんが先生にインターンに関して質問した。

皆も疑問に思っていたようで質問も重なって、先生も説明する気になったみたいだ。

 

「―――平たく言うと"校外でのヒーロー活動"。以前行ったプロヒーローの下での職場体験……その本格版だ」

 

「はあ~そんな制度あるのか…………体育祭の頑張りは何だったんですか!!?」

 

先生の説明に対して一瞬考え込んだお茶子ちゃんが麗日じゃない様子でガバッと立ち上がって質問する。

砂藤くんにツッコまれていても「しかしぃ!」なんて言ってて全然麗日じゃない。

 

「ヒーローインターンは体育祭で得た指名をコネクションとして使うんだ。これは授業の一環ではなく、生徒の任意で行う活動だ。むしろ体育祭で指名を頂けなかった者は活動自体難しいんだよ。もともとは各事務所が募集する形だったが、雄英生徒引き入れのためイザコザが多発し、このような形になったそうだ。分かったら座れ」

 

そこまでの先生の説明でお茶子ちゃんも納得できたのか席に着いた。

体育祭の指名となると私は結構あったけど、やっぱり行くならミルコさんの所がいい。

受け入れてくれるかが問題だけど。インターンの学生って職場体験よりも新人サイドキックみたいな感じで世間には扱われるし。

ミルコさん、サイドキックいないしなぁ。

そんなことを考えていたら先生が後日体験談なども含めてちゃんとした説明をすると言って話は終わった。

その体験談の部分でビッグ3の3人、つまりお姉ちゃんが先生の思考にちらついた。

これはお姉ちゃんの武勇伝を聞ける機会が出来たということだろうか。期待しかない。

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