波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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取材が来た日

お姉ちゃんたちと模擬戦をした翌日の放課後、私は相澤先生に呼び出されていた。

 

「実は、明日お前たちA組に新聞社の取材が入ることになった。取材内容は寮生活を始めた生徒たちの暮らしぶりをレポートする、だそうだ」

 

「……この時期に……部外者を入れるんですか……?トガの警戒とかで……先生たちも大変そうなのに……」

 

職員室に入るなり先生はそう切り出した。

先生自身の気が進んでいないのは思考を見れば分かる。

実際私もこんな時期に取材を入れる必要があるのかと考えてしまう。

トガの侵入対策であれだけ監視カメラを増やしたり警備ロボットを配備したりしていたのに、わざわざ部外者を入れて盗聴器とかを仕掛ける隙を与えるつもりなのか。

 

「俺も正直受ける必要はないと思っている。だがお前たちが元気に生活していることを保護者の方々に知ってもらおうと考えた校長が、特別に許可したそうだ」

 

「……一理ありますけど……」

 

「だが警戒していないわけではない。当日は俺も監視するようにする。それに先方からの希望があったのもあるが、A組だから許可を出したという部分が大きい」

 

「……そういうことですか……」

 

つまり、私にその記者の監視をしろということか。

確かに私なら多分トガを見破れると思うし、よからぬ目的で取材を申し出ていた場合それを見抜くこともできる。

A組だから取材を受けたというのも理解できない話ではない。

 

「そういうことだ。悪意はもちろん、少しでも気になることがあればすぐに教員に教えてくれ」

 

「まあ……それはいいですけど……」

 

「毎度こんなことを頼んで悪いが、これが一番合理的なんだ。すまんな」

 

「いえ……気にしてないので……何かあれば……言っていただければ……」

 

用件はこれだけかと思ったら、まだ先生の話は続いた。

というよりも、夜間出歩いた件のお小言の思考が読み取れてしまってなんとも言えない表情になってしまう。

 

「でだ……もう話は分かったかもしれんが、お前仮免試験の日の夜に出歩いてただろ」

 

「……すみませんでした……」

 

「波動は喧嘩をオールマイトに伝えただけだと聞いている。その後の行動も万が一に備えてのことだろう。その件を怒るつもりも罰則を科すつもりもない。だが、問題はそこじゃない」

 

先生の言いたいことがすぐには分からなかった。

でも、思考を読んで分かった。確かにこれは小言を言われても仕方ない。

私の認識不足だった。

 

「オールマイトがなぜ監視ロボットの報告を受けた俺よりも早く喧嘩に気が付いていたかを考えて、ようやくお前が密告していたことに気が付いた。オールマイトを問い詰めて、やっとお前もグラウンド・βまで出歩いていたことが発覚したんだぞ。なぜちゃんと報告しない。ヴィラン連合対策で校内に監視網を張り巡らせていることくらい、お前なら分かっているだろう。監視カメラに一切映らず、監視ロボットにも一切見つからずに校内を出歩けると言うのは明確なセキュリティの穴だ。ここまで言えばもう分かるだろう」

 

「……はい……すみません……認識が……甘かったです……」

 

「ああ。以後万が一同じようなポイントがあったら必ず報告しろ。お前の感知で隠れられるということは、他の感知系個性でも搔い潜ることができる可能性があるということだ。その認識をしっかり持っておけ」

 

先生はそう言いながら頭に手を当てた。

どうやら私のこの行動を受けて監視カメラの配置を全て洗い直していたらしい。

もともとのカメラの配置に穴があるのが悪いというのはあるけど、それでも報告をしていないのは私の怠慢だった。

自分も罰則を科されるかもしれないと思って自己保身に走ってしまっていた。次から気を付けよう。

オールマイトもこの件でだいぶ詰められていそうな感じだった。相澤先生、オールマイトにも遠慮しないで言うことは言っているみたいだし。

 

 

 

翌日、私たちは朝から寮の1階に集められていた。

今日の取材のために相澤先生から皆に注意を促すためみたいだ。

 

「取材!?」

 

「ああ。お前たちに新聞社の取材が入る」

 

先生のその言葉を聞いた途端、皆が盛り上がり始めた。

透ちゃんも凄くはしゃいでいる。

 

「瑠璃ちゃん!取材だよ取材!おめかししなきゃ!」

 

「おめかし……なるほど……写真写り……大事だね……」

 

「波動はともかく、葉隠はする必要ないんじゃ」

 

響香ちゃんが苦笑しながらツッコんでくるけど、透ちゃんだっておめかしは大事だ。

服に気合を入れたりとかできることはいっぱいある。

 

「浮かれるな。取材内容は寮生活を始めた生徒たちの暮らしぶりをレポートする、だそうだ。―――……」

 

先生が私にしたのと同じ説明をし続けるなか、ブドウ頭が相変わらずの妄想を近くの上鳴くんにぶちまけ始める。

それはそれとして記者の人が勝手に寮に入って来ているのが気になる。

一応悪意は感じないけど、こういう勝手な行動をするタイプの人ならちょっと注意しておく必要があるかな。

 

「取材に来るの女かな!?女かな!?女子アナ!?よくよく考えたら女子アナってすげーネーミングだよな!女子のあ「だからそう言う真似を絶対にするな」

 

雄英の恥を外部に晒さないように相澤先生が注意を促していると、記者の人が口を挟んだ。

 

「そういうのやめましょう相澤先生。私は、寮生活をしている雄英生の生の生活を取材したいんです」

 

「特田さん。まだ入っていいとは」

 

「取材は午前8時から午後6時まで。もう始まってますよ」

 

特田というらしいその記者の人は時計を示して先生にアピールしながら説得する。

黙った先生を見た特田さんはこちらに向き直って自己紹介を始めた。

 

「皆さん、記者の特田です。今日は1日、よろしくお願いします。特別何かをしていただく必要はありません。皆さんがいつも送っている生活の様子を、カメラに収めさせてください。たまに質問するかもしれませんが、その時はよろしく」

 

「わぁ!爽やかイケメンだ!」

 

「女じゃねぇのかよ」

 

「困っちゃうね。僕は常日頃から輝いてるから、恰好の被写体になっちゃうよね」

 

「すげぇな青山」

 

特田さんに対して好き勝手に感想を述べていく皆を尻目に、先生がこそこそと特田さんと話している。

先生の思考は結論としては『この記者なにか考えてるようだが、犯罪の匂いはしない。まぁ好きにさせるか』というものだった。

少なくとも特田さんが今言っていた目的は嘘のようだ。何かを探りに来たみたいだし、実際に何かを企んではいるんだろう。

ただ悪意を感じない。青山くんの時のような恐怖で縛られている感じもない。思考と感情を見る限り根は悪い人ではなさそうだ。

波動は普通だし、トガの波動も混ざってないと思う。

思考が唐突に読めなくなったりもしないし、深く読んでも狂った思考をしているわけでもない。トガが変身しているということもなさそうだ。

私もとりあえず様子見でいいかな。先生と一緒に注意を払っておこうという程度の結論だった。

先生相手に小さく頷いておく。先生も意図を読み取ってくれたみたいだった。

 

 

 

そこから取材が始まった。

 

「1枚いいかな?」

 

透ちゃんと並んでご飯を食べていると、特田さんに声をかけられた。

ラフな格好で食事しているところを撮られるのは少し恥ずかしいけど、寮生活の写真となると仕方ない部分もある。

拒否はしないでおこう。ヒーローになるなら写真を撮られるのにも慣れておかないと駄目だと思うし。

透ちゃんはむしろはしゃいで撮ってもらおうとしている。

というよりも私に思いっきり抱き着いてきてポーズまで決め始めた。

 

「ほらほら瑠璃ちゃんも!ピースピース!!」

 

「ぴ……ぴーす……」

 

恥ずかしいけど、とりあえず透ちゃんに合わせてピースをしておく。

それと同時にシャッターを切られた。

これ、写真にすると私だけポーズを決めてるように見えるから余計に恥ずかしいんだよね。

 

特田さんはそのまま何枚か三奈ちゃんや響香ちゃん、百ちゃんたちも含んだ写真を撮った後、別のテーブルに移っていった。

青山くんが盛大にポーズを決めたり爆豪くんがぶちぎれていたり、だいぶ個性的な写真を大量に撮られていた気がする。

 

 

 

その後も特田さんは登校や授業風景の写真を撮っていった。

梅雨ちゃんが登校中に猫を見ている写真だったり、授業中にカメラをガン見してドヤ顔している青山くんの写真とか、本当に色々な写真を撮っていた。

 

その中で、ようやく特田さんの目的が分かった。

『最初から目星はつけている』とか『体育祭2位の轟焦凍も除外対象』とか、『彼の後釜』とか分かりやすすぎる思考が大量に読み取れた。

つまりこの人は寮生活の取材なんかじゃなくて、オールマイトの後継者がA組にいると睨んで探りを入れに来たのだ。

 

緑谷くん、駄目そうな気がするなぁ。

この間謹慎中の緑谷くんに虚を突かれた時の表情や態度を改めるように助言したのだ。

その時にも『や、やっぱり知ってたんだね!?』とか『ぼ、僕のせいだよね!?僕の思考を読んだから分かっちゃったんだよね!?』とかあたふたして問いかけてくるばかりだった。

オールマイトも緑谷くんも思考から駄々漏れだけど、それがなくても虚を突かれると表情や態度に出すぎているから何かあることが分かってしまうことも伝えたけど、愕然としたあとに呆然としてしまっていた。

緑谷くんの本質は何も変わっていないし、多少は気にかけてくれるだろうけど揺さぶりを掛けられたら絶対に挙動不審になると思う。

後継者であることがバレたら、ОFAの存在を知っている人には継承者であることは即バレだろう。

可能なら隠した方がいいんだけど……

今から緑谷くんに注意を促しに行ってもあまり結果は変わらないと思うし、私が監視しておいて世間に公表するつもりがあると判断したところで拘束が正解かな。

 

緑谷くんは今雨の中寮の玄関の辺りで蹴り技の練習をしている。

ちょうどそこにオールマイトが声をかけて、コンビニでオールマイトファンに押し付けられた肉まんを差し入れとしてくれていたところだった。

その後オールマイトは『次は君の……いや、君たちの番だ』と言って緑谷くんの肩に手を置いている。

その場面を特田さんの個性で身体から生やしたレンズでばっちり写真を撮られていた。ついでにオールマイトが肉まんを食べている写真も撮ってるっぽい。

これ、もう確信した上で証拠集めしている段階だよね。

これだけ周到に証拠を集めていっているのを考えると、もともと緑谷くんに当たりを付けていたんだろう。

今更隠したところで飛ばし記事のようなものを書こうと思えば書けてしまう。

やっぱりさっきの方針で間違ってはいないと思う。このまま見守ろう。

 

特田さんはそのまま緑谷くんに近寄って行って、話し込み始めた。

話している最中の特田さんの思考を読み続けていたけど、これなら多分大丈夫じゃないだろうか。

緑谷くんは案の定特田さんの理路整然とした推論による指摘で挙動不審になってほぼ自白していたけど、特田さんから悪意は変わらず感じなかった。

彼から感じ取れるのは、純粋なオールマイトへの憧れ、尊敬、羨望……とにかくそんな感じのプラスの感情ばかりだった。

思考からも『希望が失われていないことをどうしても知りたかった』、『希望は失われていないんだって胸を張って報道出来る』、『この写真、私の身体の中で大切にしまっておくよ。君の本を出版するときまで』というものが読み取れた。

これだけ純粋な波動の人なら、きっと大丈夫だと思う。後は彼の良心を信じよう。

新聞社にはさっき盗撮したオールマイトの買い食い写真で誤魔化すつもりみたいで、保身もばっちりのようだ。ある程度は信用出来ると思う。

 

緑谷くんには厳重注意が必要だろうけど。どれだけ他人に情報を漏らせば気が済むんだ。

 

 

 

「瑠璃ちゃん?さっきから目ぇ閉じて、何かあったの?」

 

透ちゃんがずっと目を閉じて波動の感知に集中していた私に声をかけてきた。

まあ誤魔化してもいいけど一部なら本当のことを伝えてもいいかもしれない。

ちょうど透ちゃんが食いつきそうなネタもあるし。

 

「ん……お茶子ちゃんも……大変だなと思って……」

 

「お茶子ちゃん?……はっ!?これは恋の匂いがするよ!!そうだよね!!」

 

私の返答に、透ちゃんは少し考え込んでから目を輝かせて聞いてきた。

 

「恋の匂い!?なになに!?何があったの!?」

 

三奈ちゃんまで透ちゃんの発した単語に反応して詰め寄ってくる。

 

「……今、特田さんが……緑谷くんに単独取材してた……お茶子ちゃんがやきもきしながら覗き見してたんだけど……特田さんが緑谷くんを引き寄せて自撮りツーショットを撮った瞬間……顔を紅潮させて……『なんなん!?』って……」

 

「これはお茶子ちゃんを問い詰めないと……!」

 

「今日はきゅんきゅんさせてもらえるんじゃないのこれは!?」

 

2人が黄色い声を上げつつそう言ったその時、お茶子ちゃんの声が玄関から響いてきた。

 

「皆肉まーん!!オールマイトからの差し入れだって!!」

 

その声に2人の目がキラリと妖しく輝いた。

2人はそのまま玄関に向かって走っていく。

 

「麗日ー!!ちょっとお話しよー!!」

 

「お茶子ちゃんお茶子ちゃん!肉まん食べながらでいいからじっくりと話を聞かせてよ!!」

 

「な、なに!?急にどうしたの!?なんなん!?」

 

玄関の方からお茶子ちゃんの困惑した声が響いてきた。

そのままお茶子ちゃんは共有スペースの方に連行されて2人に根掘り葉掘り聞かれていた。

私もその話を横で聞いていたけど、お茶子ちゃんはあわあわしたりちゃうわ!って言ったりと忙しそうだった。

2人による恋バナという名の尋問は、梅雨ちゃんが夕食が冷めるって呼びに来てくれるまで続いた。

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