side 狭間玄乃
クウガに変身した五代さんが、俺が出現させたオーロラをくぐり抜けて行く姿を見て、そのオーロラと俺を見てくるキャプテンアメリカは、その顔をエージェント・ロマノフにも見せていた。
「私は行かないわよ。」
「ふう、しょうがない、行くぞ!」
と、キャプテンアメリカがオーロラをくぐり、そして俺はオーロラを消した。
「あなたってそんな便利な力を持ってたのね。
それよりも、あなたは行かないの?」
「行きますよ。彼らとは少し離れた場所に行きますので、一度消しただけですよ。」
そう言って、俺は再びオーロラを呼び出し、それをくぐり抜けた。
そこには、石に腰掛け、アイアンマンと、ソーの戦いを見ていたロキの姿があった。
「便利な力だな。どうだ?私の部下にならないか?」
「残念ながら、その気は無い。
だが、積極的にあんたと敵対する気もない。」
「…ほう。」
そして、俺とロキは、崖下の戦いを静観するのだった。
side 五代雄介
俺が先にゲートをくぐったはずなのに、なぜだかスティーブさんの方が先にスタークさんと先ほどの男性の戦いに割って入っていた。
「この俺に、ハンマーを置けだと!!」
と、激昂して飛び掛かりながら、ハンマーを振りかぶるその男性と、スティーブさんの間に入り込み、ハンマーをクウガの力で金の力を帯びた紫の剣で受け止めた。
その瞬間、強烈な光と、稲妻と衝撃波が周囲の木々を弾き飛ばし、盾を構えていたスティーブさんも、クウガである自分も、ハンマーを持った男性も、受け止めた地点から弾かれてしまった。
「紫の金のクウガでも、弾き飛ばされるなんて、なんてパワーだ。」
「俺のムジョルニアで破壊できない武器だと!?
紫の剣士!貴様も邪魔をするのか!?」
「まずは、話し合いを求めます。
俺はクウガ。
あなたの名前と、ロキとの関係を教えてください。」
「俺は、アスガルドの王、オーディンの息子、ソーだ。
ロキは、俺の弟だ。
あいつは、アスガルドに連れて帰り、アスガルドの法で裁く。」
「それは困る。ロキは地球で仲間を洗脳して、犯罪を犯している。
そのまま連れ帰られてしまうと、彼らを解放できない。」
「少なくとも、ロキはこちらに従う意志があるみたいです。
このままロキを護送した先で、話し合いをすることはできないですか?」
「…いいだろう。」
side狭間玄乃
「蟻と、象だ。」
ロキを護送し、フューリー長官と、ロキの話を彼らの近くで聞いている。
「ハハハハハハ。よくできた檻だな。
だが、私用ではないだろう?」
「お前より、もっと強い者のために作った。」
「ああ、あれか。あの獣。
人間の振りをしている。あんたも必死だなぁ。
あんな化け物どもをかき集めて身を守るとは。」
確かに、キャプテンマーベルを知っているだろうフューリーならば、宇宙の恐ろしさも身に染みて知っているだろうから、必死にならざるを得んのだろうが、この男も、ロキも所詮は周囲を駒としか見えていない節が見てとれる。
他人を信用しないのも、嘘偽りで、周囲を騙し通そうとする二人は、案外似ているのかもしれないと思った。
「…(俺も同じか。)」
「ふっ、ではその王とやらが、雑誌でも読みたくなったら教えてくれ。」
そう言い残して、フューリーはその場を去って行く。
そして、今度は俺にロキが話かけてきた。
「お前は、何を考えている?」
「何も、あんたを見ているだけだ。」
「では、私は何に見える?」
「檻の中で王と名乗る男だ。」
「そう、私は王だ。
お前の力があれば、こんな檻、抜け出すことは容易い。
私をこの檻から出してくれるならば、お前を私の国の宰相にしてやろう。どうだ?」
「実にテンプレートな勧誘だな。
だが、俺がいる国では、そういう勧誘をしてくる奴は、容易く裏切り、見殺しにしようとしてくる奴だと相場が決まっている。
檻の中で、自分が王だと駄々をこねる男を、俺は王だとは思わない。
真の王は、全ての事象を掌握し、過去からも、未来からも恐れられる存在だ。(…オーマジオウのように。
駄目だな、今の俺は、なんかナイーブになっている。)」
「いいだろう。私がこの檻から出た時は、真っ先にお前を殺しに行こう。
楽しみに待っているがいい。私に仕えることができたはずの未来を想像しながら死に行く貴様をな。」
俺は、その言葉に答えることもなく、その場を離れるのだった。
そして、五代さんらがいる場所に行くと、ちょうどフューリー長官が合流したところのようで、ロキの杖は四次元キューブから力を得ていると考えているようだった。
「その話は、我々の考えとは違いますね。」
「何?」
「ロキの杖と、四次元キューブは、似てはいるが、実際は別の力に由来する力ではないかというのが、我々SPIRITSの見解です。」
「…その辺も、探って見るか。
行こうか博士。」
俺の言葉に、とっととその場を離れたいようなトニー・スタークと、ブルース・バナーは研究所に向かって行った。
「ロキの標的にされたそうだな。」
「聞いていたんですか?」
「真の王とやらのことを知っているような口振りだったが。」
「さて、何のことでしょうか?」
俺とロキの会話を盗み聞きしていたらしいフューリー長官が聞いてくるが、五代さんが声をかけてきたので、俺から離れて行った。
「狭間さん!ロキは、チタウリという別の世界から軍隊を呼び寄せるつもりみたいです。
SPIRITSに連絡して、協力をお願いできませんか?」
「すでに、ニューヨークにいるSPIRITSのメンバーに連絡を入れてあります。
どこが戦場になるにしろ、駆けつけられる用意はしてあるようです。」
「そうですか。
それと、いつの間に、ロキの杖と四次元キューブのことを調べていたんですか?」
「カマー・タージの書物に、似たような文献があったのです。
直接調べてみないことにはわかりませんがね。
ですから、我々もスタークさん達のところに行きましょうか?」
そして、俺と五代さんが、ラボに足を踏み入れると、トニー・スタークとスティーブ・ロジャースが言い争っているようだった。
「キューブを見つけろ。」
そう言い残して、俺達とは入れ違いで出て行ってしまった。
「スタークさん。」
「ああ、君たちか。クウガと、その付き人。」
「クウガ?ユウスケだろう?」
「俺が変身した姿がクウガといいます。
本名は、五代雄介です。」
「ユウスケね…君のあの装甲や、剣の材質なんかを見せてもらいたい。
ソーのハンマーを受け止めて罅一つないように見えたから、僕のスーツに是非とも利用したいね。」
「あれは、日本の一般の警察官が使用している警棒ですよ。
見るならば、現物がありますよ。」
五代さんの自己紹介に、図々しい要求をするので、俺が言うと
「付き人君、口を挟まないでくれないか?
それと、君の過去、2007年以前からの存在を確認できなかったんだが、日本もきな臭い世の中になっているみたいだな。」
「付き人君ではありません。
俺は、狭間玄乃。ちゃんと名前で呼んでください。」
「ゲンナイ・ハザマ、呼びにくいな。
後で、あだ名を考えておくよ。
それと、ただの警棒ってのは本当か?」
「本当です。五代さんがクウガに変身すると、周囲にある物を武器に変換できるモーフィングパワーを使うことができるんです。」
「そりゃすごい。ぬいぐるみを銃にでもできるのか?」
「確かに、変換前と後の構造の変化には興味があるね。」
トニー・スタークのお得意なおふざけに、ブルース・バナーは真面目に答えていた。
「狭間さん、むきにならないでいいですよ。
俺は、気にしていないので。
スタークさんも、バナー博士も、調査を引き続きお願いします。
俺達は、俺達でできる事をしますので。」
と五代さんが言い、俺を引っ張って行くように退出したのだった。
side五代雄介
どうやら、狭間さんとスタークさんの相性は悪いみたいで、狭間さんから、焦りのようなものが見てとれていた。
フューリーさんとも、なにやら険悪みたいだったし、ひとまず一人にしてあげたほうがいいと思って、俺のバイクと、ゴウラムをクインジェットに積む手続きをしてもらう事にした。
その間、手待ちになった俺は、先ほどまでいた艦橋に行くと、ソーさんが窓の外を眺めていた。
「クウガか。」
「改めて、自己紹介を。
俺は五代雄介。クウガは俺が変身した姿の名前なので、元の姿では雄介と呼んでください。」
「ユウスケか、わかった。
一つ聞いても、いいか?」
「いいですよ。俺に答えられる物なら。」
「お前はどうしてその力を制御できている?」
「制御、といえるようなことをしているつもりはありません。
俺はこの力で、守りたい物、守りたい人達、守りたい笑顔があるから、今まで戦い続けてこられたんです。
そして、そんな俺を支えてくれるたくさんの人達がいて、一緒に戦ってくれる仲間がいる。
だから、この力をきちんと使うことができるんだと思います。」
「お前は、いいやつだな。
ユウスケ。よろしく頼む。」
「はい!」
多少は、ソーさんの悩みの解決になったのかなと考えていると、急に慌ただしくなってきた。
「どうかしたんですか?」
俺は、近くにいたスタッフに話を聞くと
「システムにハッキングを受けた。
フューリー長官は、真っ先にラボに向かって行ったよ。」
「わかりました。俺も行きます。」
「俺も行こう。」
ソーさんと一緒にラボに行くと、狭間さんとナターシャさんもラボに入って来ていた。
「教えてくれ、どうしてSHIELD はキューブを使って、大量破壊兵器を作ろうとしている?」
声色で、バナー博士がイラついているのがわかった。