仮面ライダーになった男は戦いたくない   作:岩鋼玄武

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間章
通りすがりの男


side狭間玄乃

 

ニューヨークの戦いから1ヶ月、俺はSPIRITSの本部に軟禁状態になっていた。

 

俺だけではない。五代さん、沢木哲也さん、日高仁志さん、紅渡さん、野上良太郎さんの計6名。

つまり、ニューヨークの戦いに参加した人員は、行動が制限され、本部内の施設で寝泊まりしていた。

 

こうなった理由は、いくつかある。

 

まず、噂レベルの存在だった仮面ライダーが実在して、アメリカのヒーローと一緒に宇宙人を打ち倒したということが、街頭インタビューと一緒に、ネットワークで広がってしまった。

 

日本にとっては仮面ライダーは特撮映像作品でしかなく、一般人の認識としてはひと昔前の子供の見るもので、流行しなかったからこその噂レベルだったのだが。

 

救助された人たちからは感謝の言葉や、ヒーローに対する是正の言葉がほとんどだったが、それがネットワーク上になると、まさに賛否両論で、むしろ隠れ潜んでいることに不満の声が大きくなりつつあった。

 

次に、俺の能力だ。

やはり、元々俺が考えていたように、オーロラによるゲート移動は強力過ぎたのだ。

日本国内の闇の手の連中だけではなく、米国の圧力や、テンリングス、ヒドラ、中華系マフィアや、中東系のテロ組織に狙われているらしいという情報が入ってきていて、身動きが取れなくなってしまった。

 

幸い、俺はこの世界では戸籍のみの存在なので、もとの世界に帰っていれば問題ないのだが、どう事態が動くかがわからないので、出来るだけこの世界にいて欲しいと言われている。

 

ちなみに、飛電其雄さんの場合は元々が、ニューヨークに出張で来ていて、変身も混乱し始めに乗じてだったらしいし、主に高速移動による救助活動がほとんどだったらしいので、あまり話題にならなかったみたいだ。

仮面ライダーのあり方そのものとしては、それが一番正解なのかもしれない。

 

 

それと、俺だけではなく、野上良太郎さんの方にも、本部内にいる必要の理由がある。

 

椅子に座っていびきをかいているマタギにも似ている、キンタロス。

 

時折、女性職員を口説こうとして、モモタロスに頭をはたかれている、ウラタロス。

 

画用紙にクレヨンで落書きをしているらしい、リュウタロス。

 

こいつらの出現である。

 

元々はモモタロスがこの本部内ならば自由にしてもいいという条件で、野上良太郎さんがついて回っていたようなのだが、いつの間にか、増えていた。

 

コーヒーを吹いて二度見するという体験を真面目にするとは思わなかったが、理由を聞いても、わからないという。

 

ウラタロスの仮説では、あの戦いの折りに、モモタロスと再契約したことで、野上良太郎さんとのつながりができ、そのつながりにタロスズがいないのはおかしいと契約が反応してここに現れたのではないか?

ということらしい。

 

まあキンタロスの、知らんがな。という言葉に思わず納得しそうになった俺もいる。

電王関係は結構あのタロスズにおいて見ると複雑怪奇な存在だし、ギャグキャラとは、こういうものといわれれば、納得するしかないというのが結論だ。

 

今後は、いつの間にか、ジークが増えてやしないかと、周囲を見渡すのが癖になりつつあった。

 

 

さて、本部内で生活をはじめて一月ほどの時に、女性職員の日常会話で気になる話をしていた。

 

曰く、行きつけの喫茶店がいつの間にか、写真館になっていた。

 

曰く、そこの、おじいさんが入れるコーヒーが美味しい。

 

曰く、俺様系のカメラマンが、イケメンらしい。

 

 

…門矢士がこの世界に来ている!?

 

 

え?いなかったのかと、いう第4の壁の向こうから声が聞こえそうだが、そもそも、この世界には仮面ライダーがいなかった。

 

門矢士は仮面ライダーディケイドそのものなので、ディケイドがいないイコール、門矢士もいないということになる。

例えいたとしても、それは顔が似た名前の違う赤の他人ということだ。

 

 

この世界での、門矢士の役割も気になるが、海東大樹さんもこの世界にくる可能性が出てきたことが、俺にとっては恐怖でしかない。

 

そんなことを悶々と考えながら、俺が寝泊まりしている部屋にいる時だった。

 

 

俺が出してはいない銀色のオーロラが目の前に現れた。

 

ついに来たかと思っていたら、現れたのは、トレンチコートを着た眼鏡の男性だった。

 

「…鳴滝さんか。良かった~。」

 

「良かった?何を言っているのかはわからんが、私を知っているようだな。

であれは、私が現れた理由もわかるだろう。」

 

「門矢士だろ?」

 

「そうだ!あの悪魔がこの世界に現れたのだ!

奴を倒さなければ、この世界は破壊される。

この世界の仮面ライダーとして、あの破壊者を倒さなければならない!!」

 

「この世界の仮面ライダーっていう呼び方をするなら、あんたが会いに行くのは、ウィザード、操真晴人だと思うよ。

俺はどっちかというと、別の世界の仮面ライダーだし、というかディエンドの二代目だし。」

 

「ディエンドの二代目だと?

私の能力では、お前がこの世界のライダーなのだが。」

 

「鳴滝さんの持ってる能力ってなんなの?」

 

 

率直過ぎた疑問だったからだろうか、無言でオーロラの中に消えてしまった。

 

 

「逃げたなあの人。

それよりも、身動きできない今の俺にどうしろと?

ようやく、ディエンドの二代目として戦う覚悟ができてきたっていうのに、どうなるんだろう?

…保険はかけておくべきか。

それと、あのことも報告しないとな。」

 

 

そして俺は、一度クラインの壺の内部に行くのだった。

 

 

 

 

side門矢士

 

世界から世界に旅を続けて行けば、俺の世界が見つかるかもしれない。

そういう考えで、新たな世界にきたかと思えば、久しぶりに光写真館での移動だった。

最近は、俺個人での移動が多いように思えたが、まあ、一人の方が動きやすいことでもあるんだが。

 

「士君。この世界はどういう世界なんでしょうか?」

 

「さぁな。いつものように、トラブルの方が俺にやってくるだろうから、その時に対処すればいい。」

 

相変わらず、夏ミカンは心配性だし、ユウスケは一人ではりきって外出していた。

ユウスケのことだから、この世界の情報を俺に言いにくるだろうさ。

 

「さっきまでいた客から何か聞かなかったのか?

まあ、いつもみたいに喫茶店に間違われて、じいさんのコーヒーを飲んだだけだったけどな。」

 

「おじいちゃんは、いいんです。

お客さんが来てくれるだけでも楽しそうですから。

士君こそ、さっきの人達のことを勝手に写真撮っていたじゃないですか!」

 

「俺がいるべき世界かの確認をしていただけだろうが。」

 

相変わらず、ぼやけた写真しか撮れなかったということは、この世界も俺の世界じゃないんだろうな。

 

あわただしい足音が聞こえくる。

これはユウスケだな。

 

 

「士!海東さんが!」

 

「…やあ、士…っッ。」

 

 

 

そこにはぼろぼろで傷だらけの海東を支えてきたユウスケがいた。

 

 

「大変!?おじいちゃん救急箱!」

 

「大変だ!ユウスケ君。ソファーに座らせてやって。」

 

「この世界のことを調べようとしていたら、路地裏に倒れてたんだ。」

 

 

夏ミカンと、じいさんがぼろぼろの海東を座らせて、治療しようとする。

 

 

「どうしたんだ海東?随分とぼろぼろだな。」

 

「この世界のライダーのせいさ。見たまえ。」

 

ユウスケの手に握られていたのは、一面にクウガとディエンド、そして仮面ライダーではないヒーロー達が写った新聞だった。

 

「お前、ニューヨークで宇宙人と戦ったのか?」

 

「残念だけど、それは僕じゃない。」

 

「何だ?また奪われたのか?」

 

シンケンジャーの世界で一度奪われていたことを思い出して、だんだんと笑えてきた。

 

「士君!笑ったら駄目ですよ!」

 

「君にとっては残念かもしれないけど、ちゃんと持ってる。」

 

この男はディエンドライバーをキザったらしく、回しなから取り出している。

 

「じゃあ何だ?ディエンドライバーが2つあったのか?」

 

「僕が大ショッカーから奪った時、ディエンドライバーは一つだけだった。

あの時にもう一つあったなら、旧タイプのドライバーということになる。

だけど、写っているのはネオ化されたドライバーだ。

つまり、写っているのは、未来の僕か、僕のドライバーを未来で誰かが使っているということになる。」

 

「でも、この世界に未来の海東さんがいるのは、電王の世界で言われたのが確かなら、おかしいことになります。」

 

「過去が変われば未来も変わる。

つまり、海東がこの世界の今の時代にいるのは、同じ人物が二人いることになってしまうからな。

どちらの人物が優先されるのかわからなくなってしまい、この世界の崩壊につながる。

…だいたいわかった。

つまり、お前を倒せば、俺がこの世界でするべきことが完了して、この世界から移動できるってことだ!」

 

「どうしてそうなるんですか!?

別の人が変身している場合の話を無視してるじゃないですか!」

 

「親指をたてるな夏ミカン!?

今のは、ほんのジョークだ。」

 

そういうやり取りをしていると、出入り口から音がして、誰かが入ってくる。

また喫茶店と間違えた客だろうか、壮年の男だった。

 

「やっぱり栄ちゃんの店だった。

久しぶりだね。」

 

「なっ!?

琉ちゃんじゃないか。どうしてここに?」

 

その男は、真っ直ぐ、じいさんのところに行くと、親しそうに話出した。

 

「じいさんの知り合いか?」

 

「そうだね、親しい友人だよ。だけど…」

 

「積もる話をしたいけれど、私も忙しいんだ。

よかったら一緒に来てもらえないだろうか?

ああ、君達も一緒にね。」

 

そういうと、どこからともなく、執事やらメイドやらが現れて、外に止まっていたリムジンに乗せられて、どこかに行くことになってしまった。

 

 

 

 

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